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79 レベル上げツアー第二弾、出発。


 秋の終わりか、冬の始まりなのか。ここは暖かくて気候の良い国だけど日々少しずつ寒くなってきたよ。


 新しい我が家は、かなり断熱構造がしっかりしているので防寒に関してもばっちり、広い屋敷だけどしっかりと暖かい。大きな暖炉はもちろん、暖房用の魔導具もあるし、更にルーが魔法を駆使して室内を温度・湿度共に快適に保ってくれているんだ。おそらく、この世界で最も不快指数が低い屋敷になっているよ。日本で一人暮らししてた時よりも快適だ。


 

 そして先日、クリスとルーの学園での試験も問題なく終わりました。この2人だけじゃない、賢者や剣聖、聖女達も試験が終わったよ。ああ見えて……ハッキリ言ってバカな面も多々ある連中なんだが基本的に優秀なんだろうね、全員追試や再試も無いんだって。ホント大したもんだな。


 そして俺達のレベル上げツアー第二弾。ロマノアの迷宮(ダンジョン)探索へ出発の日がやってきたよ。クゥムは当然ながらお留守番だ。精霊であっても危険だし、土を詰めたリュックを持って迷宮内をウロウロしていたら俺達と一緒でも危ないよ。

 でも、小さな子はそんな理屈はわかりませんからね。毎日遊んでもらってたのに、急にひとりでお留守番と言われても受け入れてくれない。散々駄々をこねたけど最終的にクゥムはセシルの言う事なら絶対に聞く。精霊に愛されし者の言葉は、精霊にとっては絶対なんだそうだ。


「だから、クゥムは大人しく良い子で待っててね」

「………はぁい」


 グスグス言いながら。かわいい幼女が目に涙をためて我慢してるの。ヤバかった。危なかった……もう少しで俺が土を持ってくー!と言い出すところだったわ。大丈夫、俺はロリコンじゃないから。


 出発前のそんな試練も乗り越えて。


 俺、この旅が終わったらワイン作りを始めるんだ………こんなんならフラグも建たないんじゃないか。いやね、この前ルーと作ったビールが、殊の外好評でね。ビールは大麦さえあれば、いつでも作れるけどワインは葡萄の収穫期に作らないといけませんからね。そして今、葡萄収穫期の真っ盛り。このムーブに乗り遅れないようにしよう。乗るしかない、このビッグウェーブに。迷宮(ダンジョン)に行って帰っての後だから、かなりギリギリになっちゃうんだけどね。

 目指す今回の目的地ロマノアは、王都から普通の馬車で3日程の距離なので俺達の通常移動なら2日の距離かな。しかし今回はガールズが一緒なんだよ。彼女達が馬車移動なので早朝に出発したとしても途中で一泊だな。かわいい女の子達とキャンプとか、思春期真っ盛りとしてはドキドキワクワクしちゃいますよね。まぁ向かう先は血みどろで阿鼻叫喚の迷宮(ダンジョン)だったりするんだけどね。違う意味で心臓がドキドキしたりしてな!むしろ心臓がドキドキしなくなったりしないだろうな……。










「走るって本気だったのか?」

「俺達も未だに冗談みたいな話だなと思ってるんだよ」


 よく晴れた早朝に出発して早々に剣聖クレアに呆れられた。あー、やっぱり変ですよね。第3者の視点って大事だな。今更ながら俺達の移動は普通じゃなかった。当然のように我が国の王子も走らされてるからな。いや、わかってる。十分にわかってはいるんだ。まぁ気にすんなよ。俺達も気にしていないから。大丈夫、君達にも走れなんて言わないしさ。その代わり自国に帰っても、ここで見たことを誰にも喋るんじゃねぇぞ。

 俺達は普段の日も街の中で邪魔にならないように毎日走ってるからね。日課ですよ、日課。継続は力なり。前回の迷宮(ダンジョン)でのレベル上げではスタミナ切れでボロボロになったから強化しないと。

 それでも今回はゲストもいるということなので、普段より早めにキャンプをすることにした。本日も本格的な釜やオーブンを設置してルーは料理を開始。それが完成するまでの間に俺達の分と聖女達『ドレッドノート』の分と、それぞれがテント設営だ。もう何度かやってるから慣れてきたけど、それでも彼女達の方がベテランなだけに早かった。俺達はどうもテントの設営が下手だな。


「さて、今日の夕飯は何ですかっ」

「今日はラザニアとミネストローネだよー」


 聖女達もルーの作る料理の美味しさを知っているので全員から歓声が上がった。美味しい料理はそれだけで人々を幸せにしてくれる。ええ、俺達は毎日幸せなんですよ。

 本日の料理はイタリアン。それも涼しくなってきた時期にありがたいホカホカな料理ですよ。つーかキャンプで作る料理なんだろうか。今回も当然のように用意されたけど持ち運びも出来るオーブンなんて、どこで買ったんだろう。

 今日のメニューは俺も……いや皆んな大好きラザニア、肉もチーズもたっぷりの最強のパスタの一つだと思う。コス○コのラザニアとかも美味しかったなぁ。ミネストローネは、トマト嫌いのセシルの為に作った具沢山スープですよ。実はピーマン苦手なクリス用にピーマンも少し加えてある。完璧。

 セシルも生のトマトはまだ無理でも加熱したトマトはなんとか食べられるようになってきた。ラザニアの方にも実はトマトたっぷりなのだ。美味しく食育ですね。


「おい、アレクシスよ。このラザニアにはワインが必須じゃろうが………無いのかえ?」


 明日から迷宮(ダンジョン)に入ると言うのにお酒はダメでしょう……このダメ人間発言をしてくれるのは、のじゃロリ賢者のクラウディア。前から思っていたが、この人とは良い酒が……もしくはダメな酒が飲めそうだ。うん、言いたい事と気持ちはよくわかるぞ。


「ワイン、あるにはあるけど迷宮(ダンジョン)前はダメだ。全部終わって帰りになら出すよ」

「こんな美味しい料理を目の前にして、それは殺生じゃぞ……一杯くらいは良いのではないか?」

「そうだよな、一杯くらいなら水みたいなもんだよな」


 あっさりと説得されてしまった。さては賢者よ、交渉とか説得のスキル持ちか?恐ろしいやつめー(棒読み)。


「アレクの意思が弱すぎるんだよ。まぁ……でも一杯だけなら僕にもくれ」


 お前は本当に話の分かる王子だ。

 そういうとこも好きだぞ。

 結局、全員にワインを配布したよ。

 やっぱりラザニアには赤ワインだよな!

 さて全員、飲みながらでも良いので注目。


 さぁロマノアの迷宮(ダンジョン)について説明しますよ!ちゃんとリーダーが調べてきたので聞くように。この頼れるリーダーが真面目に詳細に調べたんだから。

 えーっと……最下層まで11階層の迷宮(ダンジョン)で……迷宮(ダンジョン)っていうけど実は迷路じゃないらしい。そう言われても意味が分からないと思うけど、そうらしいの。なんでも各階層はだいたい数キロ四方くらいのフィールドなんだって。それでも迷宮(ダンジョン)で良いのかな?判断に迷う所だよな。そういう意味では迷宮だ。罠は滅多にありませんが、全く無い訳でもないので気を付けるように!それぞれの階層は普通の草原があったり荒野があったり、雪原になってる階層もあるらしい。なので防寒装備もキチンと用意しましょうね。

 出現する魔物は獣系というか。四つ足のものが多いらしいぞ。代表的なものだと、ダイアウルフとかヘルハウンドとか。最下層近くではマンティコアなんてのも出てくる。マンティコアは毒持ちなので気をつけようね。前回の野菜の迷宮と違って個々の魔物のレベルは相当に高いらしい。くれぐれも怪我をしないように!前衛の俺、クレア嬢、ティナ嬢の役割が特に重要だから頑張ろうね。中衛はクリス、臨機応変によろしく。そしてクリスの役割には指揮もある。彼は指揮スキル持ちだから上手く指揮すればパーティメンバーのステータス微増効果があったりもする。そして後衛はセシルとクラウディア嬢。バックアタックにはくれぐれも注意だよ。

 以上、甚だ簡単ではありますが事前の説明を終わります。


「あのアレクがキチンと予習をしてきただなんて……」

「泣かないで、師匠。アレクはゆっくりとだけど、ちゃんと一歩ずつ成長しているんだよ」


 身内に、すごく遠回しにとんでもなくバカにされているような気がする。俺は怒った方が良いのだろうか。くそぅ、明日からを見てろ。目が覚めるような大活躍してやるぜ。












  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇












 翌日も早起きして出発し、急いで走った結果。俺達は昼過ぎにはロマノアの街に到着した。迷宮(ダンジョン)があるだけに、この街もそれなりに賑やかだ。メーヌと同様に夜の歓楽街も充実しているらしい。実に素晴らしいよな。まぁ……だとしても今回も、そんな魅力的な街並みは基本的にスルーするんですけどね。

 

「泊まらないの!?」


 ガールズは驚いているが、俺達は今夜も宿には泊まらないんですよぉ。ぼちぼちと早めに仕事を終えた冒険者が迷宮(ダンジョン)から帰り出しているタイミングですけれども、俺達は今から迷宮(ダンジョン)に突入します。そしてまた途中でテントを張りやすそうな場所を見つけて「ここをキャンプ地とする!」と宣言されるのだ。俺達はそういうものしか知らないし、そういうものだと思ってるし。

 今回も、まず最初にロマノアの冒険者ギルドで手続きを行い、ついでに達成できそうな素材収集依頼を全部受けておく。メーヌの場合と違って、この辺りをサッと話を進めてるけど……別に受付が男性だったからじゃないよ。色々と慣れたからだと思っていただきたい。チッ、わざわざイケメンを用意しやがってよぅ……なんだあれは。嫌味か。俺のやる気は大いに削がれたわ。

 失ったやる気は、ロマノアの食堂で美味しいモノを食べて回復させよう。この街の名物料理はウサギ肉料理のようだ。出発前にしっかり腹を膨らませようぜ。流石に出発直前にアルコールは飲まないよ。



 そして、お目当ての迷宮(ダンジョン)の入り口は街の真ん中。この街も迷宮(ダンジョン)を中心として形成された街だそうだ。ノリ的には鉱山とか、そんな感覚なんだろうかね。

 そんな訳で真っ直ぐ入り口に向かって移動しているが、パッと見で俺達は7人中4人がかわいい女の子(ルーは漆黒のフルプレートアーマーを装着している)なんだよ。だから毎度の事だしテンプレのように絡んで来る奴が居るかと思ったけど、今回は全然そんなこともなかった。おぉ、意外!

 多分、この街にいる冒険者はほとんどが中級者以上でチンピラレベルが少ないせいだろう。それと漆黒の鎧を来たルーが一緒にいる。なんせ本物の魔王様だ、まともな奴もまともじゃない奴も近寄ろうとは思わないわな。


 入り口周辺に近づくと、広場になっていて疎らだが露店商の連中がいた。出店というか商店もある。探索用の食糧や備品販売や武器屋、鍛冶屋。他には荷運びしますよ的な人や地図を売る人。実に迷宮(ダンジョン)らしいっすね。そうそう、こういうのでいいんだよ。

 朝や夕方ならもっと人が多くて賑やかなんだろうが、時間的に今は昼過ぎ。まぁ人が少ないのは歓迎ですよ。それより、出発前に最後の準備を整えないと。


「すみません。その地図、いくらですか?」

「お、お兄さん。俺に声をかけるなんて見る目あるねぇ!初めてなんだろ?3階層までの地図で5万Gだよ」


 見る目もクソもない、たまたま1番近くに居たから声かけただけだ。前回の迷宮(ダンジョン)ではルーに地図なんて要らん!と却下されたけど今回は買うよ。


「最下層までの地図は無いの?」

「あるけど……初心者が最下層まで行くつもりかい?あのなぁ兄さんよ。10階層だってC級冒険者のパーティが1週間以上かけてたどり着くもんだぜ」


 それは困る。今回はクリスの休みは10日ほどなんだ。王都〜ロマノアの行き帰りで1泊ずつすることを考えたら、迷宮(ダンジョン)自体は1週間くらいで帰る予定なんだよ。それでもちゃんと教えてくれるあたり、この地図売りのおじさんは悪い人ではないようだ。


「ありがとう。でも最下層までの地図が欲しいんだ。おいくらですか?」

「売れというなら売るけどさぁ……お兄さん、命は大事にするもんだぞ。下層までの地図は、えーっと…これだな。50万Gだ」


 結構なお値段だ。でも情報はあった方が良い。それに値段も冒険者ギルドのイケメンお兄さんから聞いている適正な値段だもの。きみにきめた!他に買うものは無いので、地図を眺めなら迷宮(ダンジョン)の入り口に向かう。


「アレク、地図はボクが預かるよ。その……わかんないでしょ?」


 もう少しオブラートに包んで言ってくれると嬉しいぞ。包もうとした気持ちは嬉しいけどオブラートの大きな穴が空いてて苦味が駄々漏れなんだよ、お前は。しかし確かに地図を有効活用するには地形把握スキル持ちのセシルが持ってた方が良い。クソっ!任せた!


 迷宮(ダンジョン)の入り口は建物になっていて、その前には衛兵が2人。メーヌでも思ったけど、彼らは一体何を何から守ってるんだろうな。

 ギルドで貰った許可証を見せて入り口から中に入ると長い下りの階段だった。最初は1階層からの筈なんだけど、結構地下にあるんだな。階段を降りきったら、そこには大きな扉があった。ここからスタート、ということらしい。



 よぉし、行くか。





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