72 あんなの飾りです。偉い人にはそれが分からんのですよ
昨日の午後から38℃以上の熱が出ました。
加えて腹痛、下痢。
ついに来たか新型コロナ、と思って今朝からかかりつけを受診。
結果、胃腸風邪でした…!
良かった!
胃腸風邪は胃腸風邪で高熱と腹痛と下痢に悩まされていますけども。
寝すぎて全身が痛いし、もう眠れません。
健康って大事ですね。
メーヌの迷宮の最奥で過ごす最後の夜。何故か突然ボリスさんがルーに戦いを挑んで、そして笑顔で完敗していた。ボリスさんにも色々と思うところがあったのかもしれないけど……連日の激戦で俺も頭が上手く働かない。
もしかしたら………ボリスさんって意外とそういう趣味や性癖があったんだろうか。だってさ、美少女にド突かれたのに清々しいほどの笑顔でダウンしてるんだもの。うわぁ……大人には色々な扉を開いちゃった人がいるもんだなぁ。
いや、これも多様性ってやつだ。時代だよ、時代。みんな違ってみんな良い。俺もSな時もあるがMな気分の時もある。そういうもんだろう?え、違う?そういう話ではない?それにしたって、ボリスさんのはハード過ぎて……マジでドン引きだわ。フォー!とか言ってた人でも、あそこまでハードじゃないと思うよ。俺の嫁をそんな性癖に付きあわせないで頂きたい。大恩人じゃなかったら距離を開けたくなるわ。
うん。君は君、我は我也、されど仲よきってやつだよ。全部を理解して受け止めることは出来なくても、なるべく歩み寄ろう……いや、今回は寄りたくないなぁ。個人的に妙に落ち着かない一晩を過ごした。
「それではボリスさん、大変お世話になりました。また地上で会いましょう」
「ああ、こっちこそ色々と助かったよ。元気でな。もしアインとニックに出会ったら早くここまで来るように言っといてくれ」
昨日の夜がきっかけになったのだろうか。ボリスさんは妙にスッキリした顔で……多分、良い顔をしていた。人にはそれぞれ事情はあるんだろうけど……そんなに溜まってたんだろうか。何が?って……そりゃ男は色々と溜まる生き物なんだよ。くれぐれも今後はあまりルーに近づかないでください。
伝言は承るけど正直言えば、お弟子さん達の顔はよく覚えていない。もしリリア達とパーティを組んでいる人達が居たら、多分その人たちなんだろう。もし会えたら伝えますね。
皆で別れの言葉を口にして、再び俺達は今度は迷宮出口を目指してスタートだ。出来ることなら、今日中に地上に出れたらいいな。来るときは1泊2日だったけども。急げば行けるだろ。
「なんせ、帰りの道はセシルがわかってるからな!頼むぞ」
「はぁーい。早速だけど、そっちじゃないよ。こっち」
わかってるよ、わざとだよ。基本は来たときと同じだ。出会った魔物は全て倒す。依頼が出ている食材は確保。罠を発見したらローテーションで解除。そして定期的に小休憩。
ホントな、こうやって文字にすると楽なんだけどな。
今からでも歩いてきてみ?例えば近所を1時間でもさ、ウォーキングしてきてみ?たった1時間やで?たかが1時間、されど1時間。疲れるっての。しかもそれなりの装備を身に付けて罠に注意しつつ魔物と戦ってさ。マジしんどいっすよ。道はセシルがナビしてくれるので迷わなくても済むんだけど……こいつ、スキルも無いのに大したもんだよな。
「セシルは地形把握のスキル、もう持ってるよ」
「え、そうなの?スキルが新たに生えてきたパターン?」
「そうだよ。頑張ったねぇセシル♪」
セシルがルーにわしゃわしゃと頭を撫でられている……いいな、羨ましい。というか、そこじゃない。スキルって本当に新たに習得出来るんだ…!だったら、もう10年間も色々修行してるんだし俺も何か…何かスキルゲットしてませんか!?レアなスキルとか贅沢は言わない、皿洗いとか梱包とか投石とかそんなんでいいからさ。
「うん、うん。君が頑張ってるのは私もよく知ってるよ………これからも頑張ろうね!」
無いのか。無いんだな。彼女の言わない優しさが身に沁みるねぇ……。涙を零さないように空を見上げた……がここは迷宮だった。東京には空がない、と智恵子は言ったらしいが迷宮にも空がない。クソがぁっ!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「うん?何か…居る?ある?」
もう少しで地上。俺達は驚くほど順調に進んでいて、これなら本当に今日のうちに外に出てゆっくり夕飯を食べられるんじゃないかな。そんな時にセシルが何かに気付いたようだ。気配察知じゃないよ。前の方に何かが見えたって話。もしかして宝箱か?ついに宝箱か?宝箱だよな?
「何かって何よ?」
「そこまではわかんないよ……あっ」
そこにあったのは残念ながら宝箱ではなく遺体だった。うん、ヒトの……成人男性の遺体。多分、冒険者の。首に切傷で出血も多そう……もう血の色も変わってる。えーっと一応バイタルチェック。あー……やっぱ脈無し。体温も低い。ド素人鑑定でも死後かなりの時間が経過していそうだ。南無阿弥陀仏。
「確かギルドカードを回収だったな。アレク、探してみて」
重いドアを開けさせたり、御遺体の身体検査をさせられたり……俺ってリーダーだよね?雑用係じゃないよね?まぁ、やりますけども……うーん、装備がごちゃごちゃしてて……ギルドカードがどこにあるのか、よくわからん。面倒くせぇな、このまま連れて行くか。ルーに出してもらった大きな布に包んで御遺体を持ち上げた。防具ごとだからクッソ重い。あー、御遺体に触るのは前世の母が死んで以来だな。既に俺は人殺しではあるけど、それでも少し感傷的になっちゃうよなぁ。南無阿弥陀仏。
「大丈夫か?収納魔法に入れたらどうだ?」
「まぁ……あと2階層分だからこのまま行くわ。クリス、悪いけど前衛を頼むよ」
なんか……ヒトをモノみたく収納するのが少しだけイヤだった。それにね、遺体と一緒に収納してあった食材って食いたくなくなるじゃないか!俺はデリケートなんですよ。繊細なの。初心なの。初めては痛くないように優しくしてほしいタイプなの。どこのどなたかは存じあげないが、不運にも迷宮で命を落とした冒険者をお姫様抱っこして地上を目指す。南無阿弥陀仏。
「ふルー畑警部、犯人は誰でしょうね?」
「んふふふ~♪まだ登場していない犯人は、私にもわかりません~」
今日も似てるかと聞かれたら贔屓目に見て微妙としか言いようがないモノマネだけど、ノリノリだな。この御遺体は明らかに斬られていた。この迷宮には野菜やキノコばっかりだったから、刃物を持った魔物は居なかった。つまり魔物にやられたのではなく、人にやられた……のかもしれない。いや、魔法で斬られた可能性もあるね。だとしたら魔物の仕業か?ってやっぱり人の仕業だと思う。残念ながら。何故ならこの御遺体が武器も荷物も持っていなかったから。防具は身に付けていたのに。荷物は……もしかしたら一緒にいたパーティメンバーが持っていたとしても武器も無いのはおかしい。誰かが持って行った可能性があります!根拠として弱いですか!弱いですね!でも例の台詞を言ってみたいじゃない。
「真犯人は………この街に居ます!」
広い。範囲がめちゃくちゃ広い。そもそも犯人探しをする理由も時間もないけどな!俺の方から、ふルー畑警部に話を振っておいて申し訳ないけど。
「えぇ~、捜査しないの?ふルー畑、頑張るよ?」
かわいいけどダメ。捜査しません。このまま外に出たら夕ご飯を食べて寝るよ。そして明日には帰るの。捜査とかメッ!
迷宮の出入り口には常時数名の警備兵が待機している。何を何から警備してるのかは知らんけど……。その人たちに発見した御遺体を渡す。はい、あとのことは任せた!彼らに経緯を説明して、この件は終わり。俺達は善意の第三者ってだけです。南無阿弥陀仏。
ああ、外に出ると開放感!
空を見上げると夕方を通り越してもう夜だ。でもメーヌの街はまだ十分に賑やかで楽しそうだねぇ。腹も減ってるしギルドに素材を納めるとかあるんだけど、まずは宿!
さもないと、街中でも「ここをキャンプ地とする!」と言い出しかねない。いや、それならまだいい。最悪は「夜でも道が見えたら大丈夫でしょう?」と走って帰らされる可能性だってある。言い出しかねない魔神なんだ。……いや絶対そうなる気がしてきた。なんとしても宿を確保だ。
「4人部屋でいいなら、あるよ」
なんとか見つけたのは、かなり…相当……滅茶苦茶にボロい宿だった。4人部屋と言うが、いわゆるドミトリータイプ。2段ベッドが狭い通路を挟んで置いてあるだけ。こんな部屋に泊まらせるなんて、また王子に非常に珍しい体験をさせることになった。バレたら王城の人々に怒られそうだ。多分、俺は悪くないと思うんだが。いや、俺だって自分はさておいてもルーをこんなトコに寝かせたくないよ。
「すごい狭い部屋だねー……いや、僕は結構楽しいよ」
お前は良い友人だよ、ホントに。この状況でその台詞が言えるところがイケメンだよな。顔だけじゃないね。せめて上の段に寝てくれよと思ったけど「ボクが上だよっ」と駄々を捏ねるセシルにすぐ譲ってやっている。良いお兄ちゃんも出来そうだな。とりあえず、宿は確保出来た。
次は飯だっ。
食べ○グも無い世界で美味い店を探すのは、それなりに難しい。じっくり聞き込みをするか、それとも運か。荒くれが多そうなこの街で聞き込みしたらボッタクリに案内されそうな予感がする。しかしな、俺達にはもっと確実に美味い店を探す手段があるのだよ。
「この店……うん、ここが1番期待できるよ」
ルーの神眼で料理人と素材を鑑定するのだ。その店の料理人のスキル、そして素材…なんなら既に他の客に出されている料理を鑑定評価すれば、そりゃハズレはないさ。神の眼を使ってやることか、と思うけどな。
そうやって決めた店は、その美味しさを証明するかの様に結構賑やかに混んでいた。ただでさえ当たり間違いなしなんだけど、更に期待は高まるよね。迷宮クリアのお祝いだ、さぁ今日は飲もう!
「レティシア師匠ぉ、ボクらのレベルはいくつになった?強くなったのかな、ボク達」
「なったよ〜。3人ともレベルは11まで上がったからステータスも倍以上に伸びたね。皆、よく頑張りました」
そうだろうな。実際ボリスさんに召喚してもらった魔物は最初1000体だったのが最後は2000体を倒してきたからな。アレも一種の深夜のノリというか。今更だが無謀だろ、あの数。3人揃って頭がおかしい。ホント、脳筋パーティだよな。ボリスさんも冷静な大人なら止めて欲しいわ。性癖はどんなであっても、そこは問わないから。……あ、よく考えたら止めてたわ。あんなほんのり控えめにじゃなく、もっと強く止めんかい!これは八つ当たりも甚だしいな。またボリスさんにはお世話になってしまったと言うのに。
美味しく夕飯をいただきながら話題はステータスになった。そりゃ気になるさ。実際、俺達のステータスはいくつになったのか。ステータスの数値なんて目安だよ派のルーは、あんまり教えたくないなぁと渋っていたが、俺達には甘いから。3人で駄々を捏ねたら最終的には教えてくれた。
その数値が以下。まずはセシル。
【レベル:11】
【筋力:186】
【体力:299】
【敏捷:446】
【知力:417】
【魔力:535】
【器用:395】
そして、クリスはと言うと。
【レベル:11】
【筋力:384】
【体力:349】
【敏捷:350】
【知力:452】
【魔力:443】
【器用:356】
そして、俺は。
【レベル:11】
【筋力:407】
【体力:410】
【敏捷:695】
【知力:137】
【魔力:263】
【器用:415】
ほほぅ。順調に成長してるんじゃないですかね。前に教えてもらった数値をキチンと覚えてないし他の人のステータスを知らんから評価しづらいけども。ルーが言うには、まず十分に鍛えてからレベルを上げていくとステータスの数値は等比級数的に伸びていくそうだ。………でも俺の知力、あんまり増えてない。十分に鍛えられてないからか?セシル、クリスの半分以下かぁ。しょうがない、人には得手不得手があるんだよ。
この街の名物だというキノコ料理を食べながら、ルーはちょっと不機嫌そう。そんなにステータスの数値で一喜一憂するのがお気に召さないのか。「あんなの飾りです。偉い人にはそれが分からんのですよ」と言わんばかりの顔しとるわ。困ったな……しかし今はスィーツも手元にない。ああ、今なら簡単に機嫌が良くなる別の方法があったわ。
「それはそうと、ふルー畑警部は捜査するならどうやって犯人を探すつもりなの?」
ほら、慌てておでこに手をあてて考え始めた。チョロインめ。
「んふふ~……第一発見者を疑うのは鉄則ですぅ~」
……第一発見者って俺達じゃないかよ。
おい、ポンコツ警部!
「迷宮内殺人事件だけに、迷宮入りですぅ~~」
うわぁ…。
それが言いたいだけちゃうんかと。
覚えておこう、魔神は推理は苦手。
せっかくの美味しい料理と酒で気分は最高だというのに、ホスピタリティだけじゃなく防犯とかセキュリティにも縁遠い狭くてちょっと臭う宿で一泊した。気分もさがるわなぁ……だから俺は典型的な日本人なの。デリケートなのよ。清潔大好き日本人だよ。セキュリティに関してはセ〇ムも裸足で逃げ出すような魔神セキュリティが作動してますけども。
多分、毎日は洗っていないだろう寝具……いっそこの上に寝袋を広げて寝ようかとまで思ったが、これ以上…いや以下の環境で寝ることもあるだろう。何事も経験だ。デリケートと自覚してるけど意外と俺は図太いのか、疲れもあったのですぐに寝ちゃった。
起きたらメーヌの冒険者ギルドに依頼の品を納品。フフフ…!実はこれで俺達はD級昇格資格を得られるのですよ。勿論、全員。迷宮内で大量に素材ゲットしてきたからな。それはイコール多くの依頼達成でもあるのだ!
どこの農園に行ってきたんですかと聞かれるレベルに野菜類が溢れている。農協か、ここは。今回も受付で処理できる量じゃなかったので倉庫の方に提出してカウントしてもらう。
「すごい量……初めてでこれだけの量は新記録かもしれませんね」
お世辞でおだてて俺達の気分良くしてくれてるのは、最初に色々教えてくれた赤髪の綺麗なお姉さん、マーシャさんだ。コレだよ、コレ。美人受付嬢と仲良くなってイチャイチャするのがお約束ってもんだろ。そうは言っても極めて事務的な会話しかしてないけどさ。お世辞だろうけどさ、例えばベッドの中でこんなこと言われたら嬉しいよね。あ、また物凄く下品な事を言ってしまった。
「………以上27件の依頼達成を確認いたしました。報酬はこちらになります、御確認をお願いします」
周りの目もあるから金額は言わない。でもデカイ袋で大金なのは丸分かりだね。おいおい、周りは冒険者がウヨウヨいるんだぜ。冒険者って言ったらアレだろ、輩だろ。反社だろ。対暴法の対象だろ。時代が時代ならモヒカンで肩にトゲトゲ付けるタイプの連中だろ、俺達以外。アッシンさんとか、アウトローの先頭を走ってるタイプだろ。
「おめでとうございます。これで皆様はD級昇格試験受験資格を得ました。試験の御予約手続きを進めてよろしいですか?」
「僕らは王都に戻るんで、あっちで試験を受けるつもりなんです。ありがとう、マーシャさん。お世話になりました」
「そうでしたか、了解致しました。それと……皆様が昨日発見されましたイアン・ジャジについてですが…」
誰だよ、と思ってはいけない。イアン・ジャジは、あの昨日の迷宮で亡くなっていた冒険者のことね。うん、ふルー畑さんが捜査したがっていた人。まぁ俺達も初耳な名前ですよ。昨日発見した、って言うから察しただけ。
「犯人は見つかりましたか?」
「いえ、そのことに関して事情をお聞きしたいのですが……お時間は大丈夫ですか?」
美人からのお誘い……是非とも伺いたいね、これが殺人事件絡みじゃなければ。ま、後は王都へ帰るだけなんで時間はあるっちゃある。それと同時にイアンさんには悪いけど、どうでもいいなぁと思う気持ちもある。
俺の後ろで捜査だっ!とウッキウキしてる魔神がいなければ帰るんだけどなぁ……どこで手に入れたのか黒いジャケットまで着て……こんな楽しそうな彼女を見て、いや帰りますとは言えない。言えやしない。
マーシャさんが、小さな応接室のような部屋に俺達を案内してくれた。部屋の中には捜査一課の刑事、といった風情の男性。なんだよ、美人受付嬢とお話じゃないのかよ。やっぱり帰ります、とは今更言えない雰囲気だ。鋭い眼光の持ち主はギュスタヴ・ルーヴと名乗った。ここの冒険者ギルドのサブマスターなんだとよ。
捜査一課の刑事に会ったことはないけれど日本でミステリー系のドラマでは色々と見てきた。冒険者ギルドのサブマスターが探偵役であってもおかしくないよな。彼の推理に期待したいね。
最初に、発見と遺体を運んだ事について礼を言われた。
そして事情聴取ですよ。
「君達が発見した時、周りには誰も居なかったんだね?」
改めて、色々と聞き取り調査を受けた。迷宮内殺人なんて、一緒にパーティを組んで入った奴が犯人ちゃうの?知らんけど。
「それがな、イアンは今回は単独で行動していたんだよ。ここの迷宮の浅い階層なら、そう珍しい話でもないんだ」
むぅ……やっぱり事件は迷宮入りか。昨日、迷宮から出てきたのにね。困ったねぇ、監視カメラでもないのか。
「よくあるんですか、こういう事件は」
「ここは初級者が多いんでね、魔物との戦闘で死ぬのは珍しくない話なんだが……こういう事件はな」
初級者には人が襲う程の財産や装備も持ってないからなぁ。
その割に、それなりに強い人も居たりするしね。
襲うには、あんまり効率は良くないかもしれないね。
「ならば、怨恨の線か……彼の身辺を洗うべきですね」
いや、ふルー畑さん。だから俺達は帰るんだってぱ。捜査はしないよ?俺達には捜査権も無いし時間も無いんだから。
「……犯人逮捕だけでも、したいの」
だけ、て逮捕したら事件解決やん。その犯人探しが困難だって話なんだよ。
「犯人はパトリック・ゴスランとトマ・バヴィエールだ」
「その、皆さん御存じの!的な勢いで言われても。誰よそれ」
「何故……君達がその2人の名前を知っている?確かにかなり評判の悪い2人ではあるが」
いるのかよ!?前から言ってるでしょ、貴女には説明ってもんが足りないんだよ。重要な過程をすっとばすな。そんなもん推理でもなんでもないぞ!
「君が私に捜査させてくれないのが悪いんだ。しょうがないから死霊魔法でイアン・ジャジの霊魂に誰に殺されたか聞いたの」
だからね、説明不足だっての。皆さん御存知の死霊魔法!じゃないんですよ。つーか貴女はそんなんも出来るんですか。だいたい、証拠が。証拠が無いのに逮捕は出来ないでしょうが。
「証拠集めは私の仕事じゃないもん。それは鑑識の出番だ。それに私には証拠など必要ない」
鑑識……この世界この時代にもいるのかね。サブマスターもこれだけでは困るだろうよ。しかし、俺達には余り関係ない話だから犯人が判明しただけでも良しとしていただきたい。ふルー畑警部の事件簿としても、かなり特殊なケースだな。証拠も何もなく被害者と犯人の名前だけ分かってるというね。ミステリーとしては論外だわ。サブマスターは「重要な参考意見とさせてもらう」と言っていたが、どうするんだろうね。
少しだけ真犯人がどうなるのか気になったけど、俺達は行く街全てのトラブルを解決する便利屋ではないの。預けておいた馬に乗ってさっさと帰るよ。もちろん、帰りも順番に走るよ!




