65 戦場のマリー・アントワネット
「必殺技が、欲しい」
「誰を殺したいの?理由次第では私が片付けてくるけど」
おい、魔神よ。いきなり何を物騒なこと言ってるんだ。もっと平和に優しく楽しく生きていこうよ。ラブ&ピースだ。
「君が言い出したんでしょうが、必ず殺す技が欲しいと」
「違うんだよ!こう……カッコいい、派手な技が欲しいんだ」
本当の意味で必殺な技じゃなくてさ。プロレスで言うところのフィニッシュホールドが欲しいの。最近ね、たまに剣聖クレア嬢とギルドの訓練場で組手したりするんだよ。百年に1人だけ誕生する剣士の頂点に立つ者、と言うだけあって彼女の剣術においての技量は俺達を遥かに超える。実に参考になるんですよね。その上で彼女は多彩な技を放ってくるんですよ。飛ぶ斬撃とか炎や氷を纏った刀みたいなやつを!
……羨ましい!かっこいい!
断言しよう、必殺技は浪漫だ。
「断言されても、私にはその浪漫は全く理解出来ないよ」
「烈絶極撃斬!とかやってみたい」
「それはどういう技なの?そもそも君、槍なのに斬るつもりなの?」
ああ言えばこう言う……。
なんで浪漫がわからないかな。
皆さんならわかるだろう?誰だよ、皆さんって。
「ルーにも必殺技くらいあるでしょうが」
「マンガとかアニメとかゲームみたいなやつ?……そんなの要る?そんな事しなくても相手が攻撃する前に普通に斬るか、相手の攻撃を避けて斬ればいいだけじゃない」
……戦場のマリー・アントワネットめ。
あなたは通常攻撃が一撃必殺だからな。
わっかんないかなぁ!
「師匠はえらいよね。アレクがどんなバカな話しても、ちゃんと聞くもんね」
うむ、頭から否定されてるけどな。
これがちゃんと聞く、ならば俺の扱いが雑すぎる。
いくら仕事中だとしても、だ。
今、俺達が何をしてるかと言うと、マドレリアの厨房をお借りしてルーが新作ケーキを試作中なんですよ。新作っていうかシンプルなショートケーキを作っています。いわゆるイチゴのショートケーキだっ!
それと並行してセシルが旬のフルーツタルトを製作している。桃とかメロンで作る初夏の果実のタルトをルーの指示のもとにテキパキと仕上げている。
俺は俺で、バタークッキーを作っています。俺だけ難易度が低そうなんだけど、お菓子製作は前世も含めて初めてなんだよ。あまり多くを求めないでほしい。でも美味しいよね、バタークッキーって。
3人ともマドレリアのパティシエの制服を着て頑張っています………なんで俺やセシルまで頑張ってるんだろう?ルーの付き添いで来ただけなのに。美味しいケーキを試食させてくれると言うから来ただけなのに。
セシルがフルーツタルトを作ってるのも、俺が余計な事を言ったせいだ。いやね、フルーツはそのままで美味しい、ケーキも美味しい。一緒に乗せる意味があるの?と素朴な疑問を言っただけだったのよ。そしたら、全員から盛大な溜息を頂いた。このバカ、なんっっにもわかってねぇのなと言わんばかりの溜息。そこまでですか?そこまで罪なこと言ったかな?
「一度、美味しいフルーツタルトを食べてから言いなさい」
バカを諭すようにルーがそう言って、セシルがその製作担当になったのですよ。じゃあなんで俺がバタークッキーを作ることになったのか。
「ほら、手を休めない!手早くだ、生地に触りすぎると固くなったり、風味が落ちてしまうぞ」
「はいっ!」
マドレリアのオーナー、ラファエルさんに捕まって直々に教えてもらってるせいだ。なんか今日は珍しく手が空いてるらしくてね。ありがた迷惑、という言葉が頭に浮かんだ。
やっぱり、今日もおっさんパラダイスやないか。ショウゴ絡みで女性枠の為に頑張った俺の努力はなんだったのか。解せぬ。
「レティシアさんの弟子なら、この程度も出来ずに何を作るつもりかっ!」
何を作るつもりもないんですが。俺達は武術や魔術の弟子であって、スィーツの弟子ではないのです。そりゃ、たまに料理の助手はしてるけど……せめて、それならそれでルーに教えてもらいたい。しかし、現実はマッチョなパティシエが俺の相手だ。この国の頂点に立つ超一流のパティシエ直々ってのも光栄な話だけど……コレジャナイ感がすごい。なんだろう、前世の俺ってそんな悪いことでもしたかなぁ?
「はいっ、焼きあがりました!」
それでも真面目に最後まで作り上げて、オーブンで焼き上げたバタークッキーをラファエルさんに提出する俺って殊勝でしょう?我ながらかわいいよな。こういうとこがルーの母性本能をくすぐるんだろうね。
「うむ、初めてにしては上出来じゃないか。材料の量をキチンと計る事と温度管理。これが基礎にして最重要だ。それを忘れなければ、君も立派なパティシエになれるぞ!」
褒められて俺も「はい!ありがとうございます!これからも頑張ります!」ときたもんだ。やっぱりね、興味が少なくても褒められるってのは嬉しいよね。ラファエルさんは厳しくもあるけど褒め上手だね、さぞかし弟子を育てるのが上手いのだろう。
出来上がったバタークッキーはルーとセシルにも好評だった。これは将来、パティシエになるものアリかもしれんね。いや、意外とあるかもしれないじゃない。各方面からパティシエ舐めんな!って言われそうだけど。野郎にあげるのも気が進まないが、残ったクッキーはクリス用に置いておこう。
ルーとセシルの方も最後の仕上げして、ショートケーキとフルーツタルトも完成だ。そして、そろそろ用事を終えたクリスも来る頃だが……新作は多くの人に食べてもらって意見を貰わないとね。
「遅くなりました…!あぁ、いい匂いですね」
「おおセシル嬢、その制服も素敵に似合うじゃないか!」
何故か2人の王子がやってきた。
おかしいな……呼んだ王子は1人のはずだったんだけどな。
「おい…クリスゥ~……クリストファー…!お前は!!お前と言うやつは……!結婚式の時といい、ボクに…ナニカ恨みでもあるのか…!?あるんだな!?上等だ!喧嘩なら買ってやるぞ!」
「違うんだって…マドレリアに試食に行くって言ったら無理矢理付いてきて!セシルのことを言ったわけじゃないんだってば!」
とりあえず、セシルはケーキカット用のナイフを置こうか。王子2人とお前が刃物を持って向かい合ってると痴情のもつれに見えるぞ。これはこれでドラマの見せ場みたいで面白いけども。まぁ登場人物全員悪人……じゃなくて全員男ですけどね。好きな人にはたまらない構図ですね!
「セシル、落ち着いて………こっちに座りなさい。ほら、アレクは皆にケーキを配ってくれる?」
ルーの仕切りで、皆が大人しく着席した。セシルはルーの向こうに隠されてしまった。皆の目の前にはそれぞれ日本風のショートケーキと旬のフルーツタルト。それに紅茶を用意させてもらったよ。
「ほぅ……ショートケーキだが柔らかいのですね。苺とクリームとスポンジが層になっていて…面白い」
ラファエルさんにも他の皆にも好評みたいだ。俺もよく覚えてないけど、本来のショートケーキってのはサクサクしてるんだって。所謂、日本で食べていたようなショートケーキって日本のオリジナルなんだそうだ。
だから本日のショートケーキも、この国で売れるとは限らない。ケーキに限らないけど日本向けってことは他国向けじゃないってことだ。カレーだって醤油だって味噌だってこの国でウケるとは限らない。
……なんだけど、ラファエルさんは早速商品化に向けて動くそうだ。結構なことです、どうぞ頑張ってください。
「アレク、ボクの作ったタルトはどう?」
「これはセシル嬢が作ってくれたのか?!俺の為に!通りで妙に美味いと思ったら…クリス、お前の分もくれ!」
「違うって言ってるでしょ?!お兄さんが来ることも知らないのに俺の為もクソもあるかっ!それとクリスの分を取るなっ!」
うん、すごく美味しいよ。残念ながら美味しいと言うタイミングが無いけれど。本日も君達が楽しそうでなによりだ。
フルーツタルト、日本でも食べたのは一度か二度じゃないかな。嫌いじゃないよ?美味しいよ。ただ、意味がわからないだけで。今日のは確かに抜群に美味しい。めっちゃ美味しい。それでも俺の中のケーキランキングで上位進出は難しいんじゃないだろうか。俺の匙加減一つですけども。
真に美味しいフルーツタルトってものが存在するならば、それを励みにして日本に戻れるように頑張りますよ。誰か教えてください。新聞社の不良社員さん、教えてください。
ここだけの話、抹茶アイスや抹茶チョコなどの抹茶スィーツもそうだ。俺には理解できない。意味がわからん。チョコを食べて抹茶を飲む、これは美味しい。ケーキを食べて抹茶を飲む、これも美味しい。ここまではわかる。
何故、それを同時に味あわせようと…?いや、皆の言い分もわかる。皆って誰だよ。その言い分はわかるけど、俺は断固としてアンチ抹茶スィーツ派だ。この世界の素晴らしい点の一つは、まだ抹茶スィーツが存在しないことだ。俺からそれを提案することはない。絶対にない。……なので注意すべきはルーなんだが。
この街の市場をチェックしてみたが紅茶はあっても緑茶はない。この近辺では茶葉が採れないのかもしれない。現状なら大丈夫だろう。お茶の産地に行った時は気をつけよう。
人は誰にでも、秘密がある。
俺の秘中の秘が抹茶スィーツとはな。
ね?今日も平和でしょう?
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「あ、必殺技の話を忘れていた」
既に常宿の『メレスの黄昏亭』に帰ってきていた。俺達もそこそこ稼いではいるんだけど、料理の美味しさが抜群なので、もうすぐD級昇格が近づいているけど未だに、この安くて美味いで有名な『メレスの黄昏亭』に宿泊中です。既に全員が個室に泊まれるくらいには稼いでるけど、まだ3人部屋です。青少年の性欲的には大いに不満だけど現状維持なんです。こんなんじゃ1Pも出来ないじゃん。
「まだ言ってる……」
「セシルは精霊を降ろしたりとかあるじゃん。俺もカッコいいのが欲しいんだよ」
はい、中二病が完治してないんです。
適切な治療を施していないんです。
でも、こんな自分が大好きなんです。
「ゾーンがあるじゃない。私も集中力は異常の部類だけど…君の集中力は私以上に凄いよ。それに魔法だって」
「魔法……は普通じゃないかな?」
「うーん…君にわかりやすく言うなら普通の魔法はアプリとかソフトで簡単入力でポンと結果が出る、みたいな感じ。君はそういうソフトを使わずに直接魔法を構築してるんだよね。1から…いやゼロから魔法を構築して魔力を制御して魔法を顕現してるんだ。これって凄いことなんだよ?」
俺の頭の中をよぎったのは遥か昔の思い出。専門学校生の頃、インターネットの黎明期にホームページ作成とか流行ったんだよね。ああいうのって基本はHP作成ソフトで作ったりするそうなんだけど、俺はそういう作成ソフトを持ってなかったからメモ帳とかワードにタグを打ち込んで本当にゼロからチマチマと作ってたんだわ、ホームページを。音楽を流したり、マウスカーソルに追いかけてくるキラキラを付けたり、雪を降らしたりとか。あー、今となっては王道の黒歴史だ。
でも、あんな感じで魔法を使ってるんだろうか俺は。生まれ変わってもあんまり根本が変わってねーなぁ。なるほど、皆は自動でパッとやってることを俺は毎回プログラムから作成構築してやってるのか。時間かかるし手間なだけじゃん!
「そうなんだけど、君の魔法は何故か時間がかからないでしょう?詠唱も必要ないし。その理屈は私にもわからないけど、君の魔法は寧ろ他の人より早いんだよ」
そうなんだ!どちらかといえば魔法より武器を振り回してたからわかってなかったよ。確かに詠唱してないしね。そもそも俺は呪文を習ってないから知らないもんね。やりたくても出来ないんだよね、呪文詠唱。
「まだある。さっきも言ったけど君はゼロから魔法を自分で構築してるから、この世に存在する全ての魔法を使える可能性があるの。魔法の構造を理解出来たら、きっと治癒魔法も使えるはずだよ」
全ての魔法か!
賢者か。賢者に転職だな!
そりゃ凄い。治癒魔法も使えるかも、か。
俺の説によると、スキルも魔法も技術だ。
向き不向きはあるにしても、ある程度は誰でも使えるのが技術だよ。
確かに治癒魔法も使えておかしくない……と思う。
ほほぅ、夢は広がるねぇ。
……む?褒められて忘れそうになってたけど、必殺技は?
チッ、覚えてたか……じゃなくて。
「必殺技はさておいて、得意技と云うならば君の中にしか答えはないよ。得意は教わるものではないでしょう?君の特長を活かして自ら編み出しなさい」
優しく、そして珍しく師匠らしいことを言われた。
ハイといわざるを得ない。
日々の積み重ねしかないのか……。
地味だよな。派手な必殺技がほしいと言っているのにな。
「そういうわけで、そろそろ私達も迷宮へ行こうと思います」
おおお!どういうわけなのかはわからないが、遂に!ファンタジーらしく迷宮に!冒険者といえば、ですよね!
「ついにエピナントへ行くの!?」
「前にも言ったけど、あそこはまだ君達には早いよ。まずはメーヌの迷宮でのレベル上げから始めます」
なんだよ、つまんねぇの。
俺は早く邪神の後を追いかけたいのに…。
いや、調子に乗るな。急がば回れ。
身の程を知るべし。
「レティシア師匠ぉー、レベル上げ……レベルって何?」
レベルって言ったらアレだよ。メタル系を倒して経験値をガッポリ稼いでファンファーレが鳴り響くんだよ。最近の作品ならレベルが上がると全回復までしてくれちゃったりしてな!新しい呪文を覚えたり。転職できるようになったり。とにかく強くなるんだよ。
そういえば、前にステータスを教えてもらった時は俺達のレベルって3とか4だったよな。ショウゴにも低レベルとも言われたなぁ………そんでレベルって何?
「私が聞いた範囲で言うと、レベルってのは魂の位階なんだそうだ。様々な経験を積むことで徐々に上がっていく……そしてレベルが上がるとステータスも飛躍的に上昇するんだよ」
「様々な経験とおっしゃいますけどね。俺達はこの10年、結構厳しめの修行をしてもらったよ。その割には低くない?」
「それは君達は魔物を倒した数が少ないから。それと君達のステータスが既にかなり高いことが理由だ」
いやいやいや。アムブロシアの迷宮でも、相当な数の魔物と戦ってますやん。そんな高レベルの魔物じゃないかもしれんけど、数千…いや万は倒してるはずだ。世界一かわいいダンジョンマスターがガンガン召喚してくれて戦ったやん。
「戦ったけど倒してないんだよ。あそこは不死の迷宮だったから…」
マジすか。あれノーカン?
魔物が生き返ったら経験値が入らないの?
「倒した魔物の魂の一部が経験値として変換されて、それを吸収して上がるらしいよ?レベルってのは。だからあそこで幾ら戦ってもレベルは上がらない」
「そんなわけないだろう!って根拠もないけど。…誰が言ってたのよ、その説」
水曜日の夜にバラエティ番組で言ってたなら、多分嘘だぜソレ。
「昔、知り合いの自称錬魂術師がそう教えてくれたもん」
前前世の俺じゃねぇか。覚えてないけど。
まぁいいさ。
そしてステータスが高いってのがレベル低いことに繋がる理由の方は?
「ステータスが高いとレベルを上げるのに必要な経験が多くなるんだよ。その分、上がったときのステータスの上昇も大きくなるの」
「それも、みんなの説?俺が言ってたの?」
「メルヴィルをバカにするなら君でも許さないぞ。私も例によってバカがバカなことを……いや、意味の分からない事を言ってるなー、と聞き流してたから詳しい訳じゃないの」
俺をバカにして俺が怒られるってのは理由として相当に理不尽な気がする。だいたい貴女もバカ呼ばわりしてるじゃないのさ。まぁレベルが上がる仕組みはどうでもいいさ。こうなんだ、と言われても今更逆らう気力もない。俺達が今までレベル上げしなかった理由も現状でのステータスを上げてたからなのね。
とりあえず、機嫌を損ねた魔神は膝の上に抱っこして頭を撫でておく。
こうかはばつぐんだ。
「君達のステータスも十分に上げたから、そろそろレベル上げするの」
なんか幼児化した?
まぁたまにはいいか。
そうか、レベル上げですか。
ようやく本格的に俺達の冒険が始まる!
「メーヌって確かここから馬で半日くらいかかるでしょ。日帰りは無理だよね?泊まるとなるとボク達は良いけど、クリスは行けないかもしれないよ?」
「大丈夫。私は伊達にクリスと同じ学園に通ってるんじゃないよ。来週の試験が終わった後なら1週間以上休めることは確認済みだし、お兄様…いや国王陛下にも了承済みだ。3人で迷宮に篭ってもらうよ」
それはそれは……用意周到なことですな。そして国王にはお兄様と呼ばされているのか。流石はあの爺さんの息子だな、趣味全開だね。マニアックだ。実に業の深い親子だぜ……その辺り、クリスに受け継がれていないと良いが。マティアス王子は……あれも血筋なのかな。色々と手遅れだな。それにしてもジェロム兄さんも国王と同じ呼び方されてると知ったら、心底驚いてくれそうだ。
「それに私も、そろそろ図書館の本はあらかた読み尽くした。これからは学園に通う時間も減らせるだろう。喜べ、アレク。君の大好きな私が、君と一緒に居てやれる時間が増えるよ」
「師匠、師匠ぉー、ボクだって師匠が大好きだよ」
「私もセシルが大好きだよ~♪」
仲よき事は美しき哉。きゃっきゃっと抱き合う2人を見てる分には百合なんだけど……これも男女なんだぜ。
あー、迷宮行く前に、そろそろ槍の整備に行かなきゃな。カール爺さんおススメしてもらったルディ・ガルトナーさんを探してみよう。それに防具もちゃんとしたものを揃えたいし。
大丈夫、俺も期待していない。
多分、今度も間違いなくおっさんだろう。
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「おう、俺がルドルフ・ガルトナーだが……お前ら誰だっけ?」
ほらな、やっぱり髭の似合うおっさんだ。
もう驚かない。
逆にここで女性、って発想がない。
大多数の予想通り、捻りがない。
どうかと思いますけどね!
「オルトレットのカール爺さんからルディ…ルドルフさんを紹介されまして。はじめましてアレクシスといいます。こっちはセシルです」
「おー!この俺をルディなんて呼ぶなんざ誰かと思ったら……カールさんの紹介か。じゃあ、しょうがねぇな」
ルドルフさんは背が高いからドワーフじゃなさそうだけど、筋肉の塊みたいなデカいおっさんでした。そんなキャラなのにカールさんと呼ぶんだ……爺さんの弟子なのかな。なんにしてもカール爺さんが薦めてくれたんだから腕は良いんだろう、鍛冶場の中も人が多くてかなり賑やかだ。弟子が何人もいるっぽい。
「もう随分と顔を見てねぇが、カールさんは元気か?」
「はい、元気ですよ。俺達は子供のころから世話になってます」
「ああ見えて、あの人は子供が好きだからなぁ!顔はあんなに怖ぇのによ!」
そう言って豪快に笑うけど、そうですねとも言いにくいぜ。愛想笑いで顔の筋肉がつらい。そんな世間話をしながらも、ルドルフさんの俺の槍をチェックする目は鋭い。
「うん、いい槍だな。まぁ、あの人の仕事なら当然か。予約の仕事もあるから、これの整備なら2日くれ」
「はい、それでお願いします。全然関係ない話ですけど女性の鍛冶師って居ますか?」
「はぁ?女の鍛治師?そんなの居るわけ……あー、昔1人居たな。あれは例外だ。あのなぁ、力仕事だし火で肌も焼けるってのに、女にやらせる仕事じゃねぇだろ」
それは俺もそう思う。単純に向き不向きで女性には向いてない仕事だと思うもの。ただ、少しでもおっさんパラダイスに潤いが欲しかっただけなの。今は潤いより防具を探すか……俺もセシルも師匠の影響により防具は動きやすさ最優先だ。相手の攻撃は繰り出される前に倒せ、避けて倒せの精神ですわ。当たらなければどうということはない、の精神でもある。
そう教える師匠は、前前世の俺が作ったという最高峰の防御力を誇る黒い鎧に身を包んでいるけどな。動きやすさとは無縁の黒い全身鎧だけど速いし傷どころか汚れたところも見た事が無い。もし記憶と技術が残ってたら俺が自分で自分の防具も作った方がいいのかもしれない。しかし残念ながら今の俺には知識と技術と材料と金と設備がない。逆に何があるんだ。
「ルドルフさん、防具はありませんか?」
「作れと言うなら作るが、予約の分があるからなぁ。しばらく先になるぞ」
「来週には欲しいので、既製品でお願いします」
今、俺とセシルが身に着けている防具はオルトレットでカール爺さんが仕上げてくれたものなんだけど成長期のせいもあってサイズ的にきつくなってきた。セシルは身長が伸びているようには見えないけどそれでも合わなくなってきたそうだ。食い過ぎじゃねーの?とも思うが、それを口に出すほどのバカでもないぞ。
「この道をまっすぐ行った突き当たりに武器屋がある。うちの武器や防具はそこに卸しているから、そこで探してみろ。シャルネって店長に聞けば大丈夫だ」
クリスは既に王家所有の高級な装備があるので問題なし。さて、どんなの買おうかな。動きやすさなら革の鎧なのかな。
「あのさ、ワイバーンの素材ってまだ売ってないんでしょ?あれで新しい防具を作ってもらうのも良いんじゃない?」
……なるほどな。セシル君、その手があったね。あれな。確かに希少種の素材もあるしな。そっちはまだ解体もしてないけど。
「ルドルフさん、材料持ち込みで製作依頼ってのも可能ですよね?費用はいくらくらいになります?」
「どんな材料でどんなもの作るかにもよるわなぁ」
「ワイバーンの素材で防具を2人分、槍使い用と弓使い用お願いします。費用って例えばワイバーンの牙とか現物でも良いですか?」
正確に言うとあれはルーの所有物であって俺のじゃない。勝手にこんな話を進めて大丈夫だろうか。怒られることはないと思うが。完全にヒモになるなぁ…。
「それは構わんが……あのな、ワイバーンの素材ってのはな、お前らみたいな若いのがどうこう出来るモンじゃねぇんだぞ?そもそもワイバーンてのはだな…」
忙しい筈だが、ルドルフさんのトークは止まらない。アカン、変なスイッチを入れてしまったようだ。わかる。わかるよ。皆もいずれわかるよ、親父ってのは語りたい生き物なんだよ……つーか皆って誰よ。
拙い作品ですが読んでくださり、ありがとうございます。
この作品を読んで少しでも面白いと思ってくれた、貴方or貴女!
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(人>ω•*)お願いします。




