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64 恋する王子

 


 ちょうど午前の政務が終わったところだったので、国王であるお父様の昼食後の時間を少し頂くことが出来た。既に謁見のためレティシア先生は正装のドレスに着替えている。このドレスも収納魔法で持っていたそうだが……見慣れた先生の見慣れない姿、その美しさに僕が照れてしまう。




 ショウゴ・サイコウジの処刑を数日、延期して欲しい。


 わざわざ王に直接お願いするにしては、些細でしかも意味不明な要求だなぁ。僕個人にとっても、あのショウゴ・サイコウジは気分の良い相手ではなかった。アレクが前世で同じ国の国民だったせいか色々と熱心に動いていたようだけど、正直言って僕には意味がわからなかった。


 初めて囚われたショウゴ・サイコウジに面会に行った時、こいつはただの狂人だな、と思った。あの優しいレティシア先生ですら、まるでモノを見るような冷たい目で見ていたのを思い出す。コイツはアレクがそこまでするような相手なのだろうか……?

 それが今日、面会したショウゴ・サイコウジはアレクが言っていたようにまるで別人だった。今日の彼は真に仲間を愛し、そして仲間に愛されていた。


 どっちが本物のショウゴ・サイコウジなんだ?


「アレは……アレがショウゴ・サイコウジだ」


 レティシア先生がそう断言した。

 ならば今日面会したのが本物なんだろう。

 迷うな、前回と同じ人物だけど今日会ったのが本物。


 レティシア先生が言うには、なんでも邪神の加護というものによって以前の彼は自我を失っていたそうだ。そして今日のショウゴ・サイコウジはその邪神の加護に打ち勝った姿らしい。

 話を聞いてもよくわからないが、だとしても裁判の結果を覆すことは出来ない。僕の立場で言うのも変かもしれないが、権力者というものは体面を重視する。そしてショウゴ・サイコウジは貴族の長老達の目の前で暴挙に出てしまった。それが本当に邪神の加護のせいであったとしても、そして先生の神眼にはそれが見えたとしても証拠として提出は出来ない。

 それに僕には詳しい事情はよくわからないが、ショウゴ・サイコウジは数日のうちに死んでしまうそうだ。だったら……それまで待ってやれないか。牢獄から出られなくても彼のパーティメンバーと残された時間を過ごせないか。

 アレクならそう言い出すと思ってたよ。僕もそれは甘いと思う。しかし、だ。この優しくて少々……かなりの……いや他に見た事が無い破格レベルのバカな親友はそういう男だ。


 僕もアレクには甘いんだよなぁ。

 アレクが頼むなら可能な限り叶えてやりたい。


 こんなの、僕がこれまでアレクに叶えて貰ったことに比べたら微々たるものなんだよ。そして、それはレティシア先生も同様のようだ。今日まで先生は王族として名乗り出ることを避けていた。しかしアレクの為なら躊躇わない。逡巡しない。迷わない。分かってはいたことだけれども、その事実にまたほんの少しだけ親友に嫉妬してしまいそうだ。








「そなたが私の妹であったか。うむ、父から話は聞いておるよ」

「……余り驚かれていないのですね、お父様」

「うん?まぁ……初めてでもないしな」


 え、前例があるんだ!?御祖父様……こういうのは、その、如何なものでしょうか。アレクが知ったら「な!あいつはやっぱりエロジジイなんだって!」って言うこと間違いなしですよ。僕もそれを否定出来ないじゃないですか。


 実は先生とお父様はこれが初対面ではない。僕が王城に戻ったあの日、皆んなと一緒に夕食を共にしている。しかし、先生が王族の一員として会うのは勿論初めてだ。王家でなくても、家族が急に増える場面なんてそうそうない話だろうけど……思ってた以上にお父様は先生を受けいれてくれているようだ。形の上で先生は御祖父様の娘なのでお父様の妹になる。しかし先生は、こう見えて実は1000年の昔から生きてらっしゃるそうなので正確に言えば姉なのかもしれないが。


「クリストファーが今まで世話になっている話も聞いておる。これから王族として責務を果たせ、などとは言わぬ。だからと言って家族として、そなたを無下に扱うつもりもないぞ」

「シメオネル国王陛下、身に余る光栄なお言葉です」

「うむ…うむ。お兄様、と呼ぶのもよいぞ?」


 お父様?いつもと違いませんか?父親のこういうとこは見たくなかったなぁ……そしてお父様も御祖父様の子供なんだなと再確認できました。もちろん尊敬はしておりますが、その、どうかとも思いますよ?


「ありがとうございます。……陛下、不躾なお願いで申し訳ありませんが聞いていただけませんでしょうか」

「うむ、この兄に出来ることであれば言ってみよ」


 兄推しが、すごい。そういえば、お父様には弟や姉は居ても妹は居なかったんだったか……憧れていたんだろうか。僕も妹は居ないが……でもセシルが居たからね。

 色々違うことはわかってる。でもセシルは実質妹なんだよねぇ……この前、ジェロム先生の結婚式にマティアス兄さんを連れて行った時は、セシルには随分怒られた。いや、本当にめちゃくちゃ怒られたよ。一国の王子が、こんなにも怒られる事ってある?ってくらいに怒られた。ここまで僕を怒ってくれるのも妹分のセシルだけさ。アレクは基本的に僕を怒らないしね。いや、今はそれも置いておこう。



「………お兄様にお願い致します。兄妹の対面が叶ったという事で、乞い願わくは恩赦が頂ければ」


 あ、先生が歩み寄った。

 その分少し無表情に…スンってなった気がする!

 すみません!ウチの父がなんか……すみません!


「恩赦、か。先日のあの若造のことだな」


 お父様の表情が一変した。

 やはりショウゴを怒っているんだな。

 確かに護衛の騎士が3人も重傷を負っている。

 やはり一国の王。すごい迫力だ…!


「彼の罪を許して欲しいとまでは言いません。せめて、彼の処刑を3日だけでも待ってください。そして彼の友人との面会をお許しいただけませんでしょうか」


 先生の言葉に対して無言の王。

 その表情から心中は伺えない。

 余りの緊張感に、僕は一歩も動けないでいた。

 沈黙を破って王から発せられた言葉は……!


「もう一度、お兄様と頼んでくれんか」


 ………もうこの国はダメかもわからんね。



















 結局ショウゴ・サイコウジの処刑はもともと来週の予定だったので最初から問題なかったみたいだが、それでも無期限延期となった。その上でレティシア先生の願いにより牢獄からは出られないものの、彼の仲間達はショウゴ・サイコウジと自由に面会して良いという事になった。僕達がしてあげられる精一杯はここまでだ。


 後日、少し時間があったので彼らの様子を見に行ったが……幸せそうだった。そりゃ牢獄の中にいるのだから快適ではないし楽しいはずもない。更に言うなら彼らには……少なくともショウゴ・サイコウジには、この先の未来や希望もないはずだ。本来なら不憫に思われるはずではないのか。

 なのに、彼と少女達は幸せそうだとしか思えなかった。哀れとか不幸とか、そんな言葉とは無縁にすら見えた……どうしてなんだろうな。


 ずっと考えてみたけど、わからなかった。

 そもそも僕に男女の機微などわかるはずもない。

 そして、わからない事は聞いてみるべし。


 次の日、面会から帰る少女たちをお茶に招待して直接聞いてみた。

 何故、と。




 剣聖クレアは誇った。


「私達の思いは報われたからです。心の底から愛した人に、同じように心の底から愛されていた。生まれてきて良かった。生きてきて良かった。この思いは生涯消えないし、この思いを持ったまま私達はこれから先も誇らしく生きていける」



 賢者クラウディアは語った。


「あやつはの、わらわ達を誇りだと言いおった。ならば、わらわ達はこの先も愛した男に相応しく生きるしかなかろう。誰よりも愛したあやつの誇りを傷つける訳にはいかんのでな」



 聖女ティナは微笑んだ。


「彼と私達の絆は既にこの心の中にある。これから彼と一緒に過ごせる時間が、あと100年であろうと……例え数秒であろうとも、もう私達には一切の後悔もない。他の全ての人に無意味に見えようとも彼と私達の人生には意味があった。彼と私達の人生には価値があった。なら、もう何も怖くない」




 アレクは、聞けばちゃんと答えが返ってくると思ってるうちは子供だ、とよく言うが……やっぱり聞いてみるものだな。

 彼女達は王族であろうとも容易には手に入れられない黄金を手に入れたようだ。僕は彼らの物語を一切知らない。それでも彼女達の表情を見ればわかった。彼と彼女達は幸せに満たされているのだ、と。そしてそれは王国にも邪神にも奪えない尊いもののようだ。


 一切の後悔無し、か。

 彼女達が口々に言う誇りがそうさせるのかもしれない。

 それはなんとも、美しい生き方に見えた。











                ◆◇◆










 僕達が王都に来て、初めての夏が始まる。


 学園の生活も数ヶ月が過ぎて登下校もすっかり慣れたものだよ。今日も王城から馬車に乗って出発し、待ち合わせの場所へと向かった。

 そこに待っていてくれているのはレティシア先生。僕達の最愛の先生と毎朝ギャスラン広場の端で合流してから学園へ登校していた。僕達はいつも4人で居るのが殆どだけど、学園に居る間だけは僕が先生を独占できる貴重な時間だ。学園生活には慣れたけど先生と2人きりなのは未だに少し緊張してしまう。僕達は初日から一緒に登校していたわけではなかったんだ。こうなったのにも理由があったんだよ。





 あれは編入初日のことだった。新入生が集められた教室で………レティシア先生は浮いていた。だって冒険者ギルドでも初期に付けていたピエロの仮面を付けていたからね。その姿は贔屓目にも異様だった。そうでなくても先生は……顔を見せてなくても、不思議と目立つ。


「先生、レティシア先生。あの……その仮面は、如何なものでしょうか」

「…………異様なのはわかってる。でも多分これを外すともっと目立つ気がする」


 僕はかれこれ10年近い付き合いだから見慣れているが、確かに先生の美貌は尋常の域ではない。先生の言うことも一理ある気がする。だけど、だ。既に周囲がざわついているんだよなぁ……。


「しかし、これでは目立った挙句に更に変な人と思われませんか?」

「……どうしよう。どうしたらいいのかなぁ?」


 仮面のせいでわかりづらいけど、先生がアタフタしてる。これはこれで微笑ましくもあるが先生も学校生活は初めてと言っていたから意外と緊張しているのかもしれない。ここにはアレクもセシルも居ない。僕しか居ないのだから、この僕が先生を護らなければ!


「ゴホン。僕はこう見えても王子ですよ?僕の近くに居れば胡乱(うろん)な連中は寄ってきませんよ」

「なるほど!……しかしそれではクリスに迷惑ではないかなぁ?」

「先生、これは僕にもメリットがあるのです。オルトレットの学校でもそうでしたが、僕も1人でいると困るのですよ。女性が大勢寄って来て」


 昔、アレクにこの事について相談したらかなり本気で殴られた。助走付けてグーで頭を殴られたなぁ、あれは痛かった……。あいつは贅沢な悩みと言うが僕としては本当に悩まされていたのにな。結局、オルトレットの学校でも殆どの時間をいつもの3人で過ごしていたなぁ。


「素晴らしい!つまり相互支援できるのだな。是非お願いします」


 まぁ僕の最大のメリットは堂々と先生の傍に居られることなんですけどね。アレク達には申し訳ないけど、これは役得ってことでいいんじゃないかな。こうして学園内では、僕とレティシア先生は共通の悩みを持つものとして同盟を結ぶこととなった。






 そんな事情から始まった一緒に登下校なんだけど、今日の先生はいつもと様子が違った。


「今更になって気づいたんだけど……私はクリスの邪魔になっていないかな?」

「多分に的外れだと思いますが一体、何に気が付いたんですか?」

「クリスは年上で気が強い女性が好みで探してるんじゃなかったっけ?学園なら貴族の子女がいっぱい居るのに……私と一緒に居たのでは素敵な女性との出会いのきっかけを失ってしまうんじゃないだろうか」


 えーっと……真剣な顔してるから、先生は本気でそう思ってくれているんだろう。落ち着け、昔から時々変な事を言い出す人だったじゃないか。

 気が強い人が好き、と言った覚えはないけれども。確か、あの時の僕は歳上の強い女性が好きと言ったんだっけ。つまりそれは貴女の事なんですけどね。きっと先生にとって僕の事は仲の良い弟くらいの存在なんだろうな。いや、家族として人並み以上に愛してくれているのはわかる。でも、そうじゃないんだけどなぁ。


「大丈夫ですよ。でも珍しいですね、先生がそんなトンチンカンな事を言い出すなんて」

「こう見えても私は少女漫画や恋愛ドラマにも相当に精通しているんだぞ。これからは恋愛マスターと呼びなさい」


 真剣な顔から一転、今度は妙に得意げな顔をしている。何を言ってるのか全く意味はわからないが、多分アホな事を言ってるんだろう。初めて会った時は優しい反面、常に怖い顔をしていて結構緊張感のある人だったんだけどな。今でも武術を指導してくれる時は身の引き締まる思いがするけれど、普段の先生は……本当にかわいい人だ。


「王族の身で恋愛なぞ望むべくもないでしょうが……頼りにさせてもらいますね、恋愛マスター」

「継母に虐められていた可哀想な姫や、毒りんごを食べてしまった美しい姫を助けるのは素敵な王子様って決まってるんだ。君と恋に落ちる筈の素敵な姫が、きっとどこかで待っているよ」


 その姫が、先生だったら良かったのにな。


 そうか。ようやく分かった。僕は多分、あの3人の少女達が羨ましかったのだ。ショウゴ・サイコウジが天に召されてからも彼女達は以前と同じように学園に通い続けている。彼との約束だから、と言うが悲しくないはずもないだろうに。

 彼女達の強さが、その誇りある生き様がなんとも眩しくて羨ましい。僕はこのまま生きて、最期の死を迎えたとき彼女達のように人生に後悔はないと言えるだろうか?彼女達のように自らの生涯を誇れるのだろうか?僕も誇りを我が手に……!


「では、恋愛マスターに相談です。僕の好きな人は既に好きな人がいるようなんですよ。こういう時はどうしましょうね?」

「お…おお!そ、そうだったのか。クリスにそんな人が……!どんな女性……いや、恋愛マスターは全てわかっていたよ。落ち着け、大丈夫だ。しかし君なら……こう言っては何だが女性なんて選り取り見取りでしょう?」

「幾人に言い寄られようと、やはり欲しいのは好きになった、たった1人なんですよ」

「その気持ちはよくわかるが……うん、どうしたものか……贈り物…手紙…何がいいのかな……」


 わかりやすくうろたえている。

 もうちょっと頑張ってください、恋愛マスター。

 こうなると逆に何の助言が出来るんですか、恋愛マスター。


「忍ぶ恋も良いものだが……鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす、という異国の言葉もあるんだよ」

「忍ぶ恋……蛍、ですか」

「私の名だよ。(リュシオル)。私には……そういう恋は無理そうだけど。あー、ダメだ!やっぱり恋愛マスターは廃業する。ごめん、もう私には聞かないで。まぁ、あれだ。後悔のないように頑張りなさい」


 馬車の中に初夏の風が入ってきて、先生の長い髪が柔らかに揺れていた。それはいつも通りに綺麗で、僕にいつも通りじゃない台詞を言わせるには十分だった。きっかけって多分、いつだってそんなものだ。分かってるよ。きっと僕は、あと何分か後にフラれる。でもね、分かっていても止められない時ってのはあるんだよ。そして今の僕はその時なのさ。


「レティシア先生、貴女が好きです」

「私も君が好きだよ」


 ……本当に、恋愛マスター廃業は大正解です。むしろ一度でも名乗ったことを恥じてください。アレクが言ってた、先生が意外とポンコツだという話が今ハッキリと理解できました。後悔のないように、という助言だけは受け取っておきます。ええ、僕も後悔したくはありません。あの、黄金を手にした少女達のように。


「僕が言ってるのは……愛してますってことですよ」

「だから、私も君を愛していますよ」


 あー!本当にポンコツなんだな!鈍いにも程がありませんか。アレクもさぞ苦労をしているんだろう。そう思うと不思議と笑えてきた。そうか、既に先生に愛されているのか僕は。だったら僕の人生もまんざら捨てたものじゃないな。


「僕は、1人の女性としてのレティシア・リュシオール先生を愛してると言っているんですよ」

「え?はい、ありがとう……………え?」


 キョトンとして、頭でまだ理解できていないという感じの先生が……なんだか面白くなってきた。先生は、そのまましばらく固まっていたけど、長いような短いような時間が過ぎて、ようやく再起動した。


「ありがとう……だけど、ごめんなさい。私は君の想いには応えられない」


 知ってます。知ってました。


 やっぱり先生はごめんなさいと言う前にありがとうと言ってくれる人だった。しまったな、フラれた男がこんなに笑顔でどうするんだよ。でも、何故か顔が綻ぶのをこらえきれない。


「わかってました。しかし僕も先生の弟子だけに忍ぶ恋は無理でしたのでね」

「教えてあげられたら良かった……のかなぁ?」


 先生には、無理でしょうね。

 恋愛に関してポンコツなのはよくわかりました。

 今度、恋愛マスターを名乗ったら怒りますよ?


「君は本当に素敵な人だから、きっと私より相応しい素晴らしい伴侶がみつかるよ。小さな蛍よりずっと眩しく輝く……月か太陽みたいな人が、ね」

「先生より素晴らしい人には、きっと世界中を探しても出会えないでしょう。でも先生と同じくらいに大切にしたいと思える人には出会えるかもしれません。僕は先生を愛した僕のまま、先生に愛された僕のまま、その人を愛してみようと思います」


 初夏の風に吹かれて、勇気を振り絞って告白したら……大好きな人は僕の事を好きだよって、愛してるよって言ってくれました。そして僕は初めての失恋をしました。


 ショウゴ・サイコウジのパーティメンバーが手に入れた黄金、残念ながら僕には欠片しか手に入らなかったようだ。そりゃね、本音を言えば悲しいよ。今も許されるなら涙を流したい程だ。でも、僕は逃げなかったぞ。この手の中の黄金の欠片、今の僕には充分な勲章だ。


 愛する父と母にこの身体を授かり、大好きなアレクとセシルと一緒に育ち、恋したレティシア先生に鍛えてもらったこの僕は。


 見たか!見たか!


 あの時、生きることさえ危ぶまれたクリストファー・デュ・ラフォルグは、愛する皆に支えられて、初恋と、そして今日は失恋まで経験したぞ!自分を誇れ、僕。負け惜しみとしては十分だろう?そして、僕はまだまだこれからだ。


「いつの日か、僕に大切な人が現われても……僕のこと、好きでいてくれますか?」

「当たり前でしょう?君は私のかわいいかわいい弟子であり、大好きで大切な私の家族なのだから。私は一生、君のことを愛しているよ」


 「その大切な人を泣かせちゃダメだよ」って笑うレティシア先生は、やっぱり最高に素敵だった。ポンコツ先生め。泣きそうなのは、今ここにいる僕なんですよ。ああ、もし僕がアレクのように生まれ変わるなら……次、僕はレティシア先生になりたい。だって他の誰かになろうとも必ずレティシア先生に巡り合って、再び彼女に恋をしてしまうだろうから。まぁ、それも一興か。次はアレクにも負けないぞ。




 心中の想いを吐き出して、気分はこの上なく爽快だ。

 大好きな先生に愛されたまま、これからも僕は生きていくんだな。



 本当は最後にもうひとつ聞いてみたかった。


「僕にそんな大切な人が現れた時、嫉妬してくれますか?」続けてそう聞いたら、先生はなんと答えてくれるのだろうか。


 その答えは、まだ今の僕には聞けそうにないなぁ。だって……その、いつか現れるかもしれない僕の大切な人が霞んでしまいそうなくらいの、最高の笑顔で僕を祝福してくれそうだから。ちくしょう。そう考えると今日だけはアレクが死ぬ程羨ましい。今度会ったら問答無用に一発殴ってやろうか。いいよな、アイツに文句は言わせないぞ。

 

 

 そうか、もう蛍の季節だったのか。

 今年は蛍、見られるだろうか……どっちでもいいや。

 今は、今の僕には目の前の世界一素敵な蛍を見ているだけで充分だ。



拙い小説ですが読んでくださり、ありがとうございます。

この小説を読んで少しでも面白いと思ってくれた、貴方or貴女!

是非とも感想、レビュー、ブックマーク、評価を頂ければこれに勝る幸せは御座いません

(人>ω•*)お願いします。

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