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61 異議あり!

 


 なんとか無理矢理ではあるが今後の方針が決まったので、次は彼女達をどうやって止めるか具体的に対策していきましょうか。ほら、3人寄れば文殊の智慧と言うじゃないですか……まぁ実質2人なのかもしれないが。


「さて……まず彼女達の動きがどうなっているか、なんだけども」

「今のところは3人共、宿にじっと待機しているようだよ」


 ………わかるんだ?そんな追跡みたいなスキルがあるのかな?あるんだろうな。この先、俺が逃げてもすぐに追い付かれるって事でもあるんだろうな。逃げるつもりはないけどさ……多分な。


「彼女達には一度会ってるからね。そう距離も離れてないし、私の神眼からは逃れられない」


 アレの邪眼とは違うんだね、色々と。随分と高性能ですね、神眼。良いよね。俺も欲しいけど市場で売ってないかな。売ってたとしてもめちゃくちゃ高いんだろうなぁ。


 まぁいいさ、彼女達は宿で待機って奪還作戦でも練っているんだろうか?


「帰りを待ってるだけじゃないの?まだ、あの子達はえーっと……ショウゴだっけ、アイツが逮捕されたこともまだ知らないんでしょ」


 そうだ、セシルの言うとおりだな。国家の要人であるキリヤマさんですら事情を殆ど把握出来てなかったのに、外国人である彼女達に情報が来てる筈もない。おそらくは不安な時間を過ごしているんだろう。


「例えばさ。もし、逆にボク達がラウルシュタイン帝国に行ったとして……アレクが勲章貰う、って一人で王様に会いに行ったとしてだ。そのまま帰ってこない。さぁどうしようか」

「一日くらいなら……歓待を受けてパーティでもやってそのまま泊まった、とか好意的に考えるかな?」


 お目出度い考えでしょうか。でも褒められに行ったら逮捕されてました、なんて平和ボケしてる俺からしたら想像も想定も出来ないよ。それにもしも俺がラウルシュタイン帝国で勲章を貰うとしたらルーも同行するだろう。それが許されなきゃ憑依してでもついてくるはずだ。そして俺は何が起ころうと無事帰宅、さ。何が起ころうとも彼女は手段を選ばず俺を助けてくれるだろう。この場合の手段を選ばず、ってのにはラウルシュタイン帝国崩壊・消滅も含まれている。この子は俺を助けるのに必要ならば躊躇うことなく全てを滅ぼすはずだ。チートキャラは全てを根底から覆すから想定が難しいなぁ。そして、こんな魔神はショウゴにも彼女達にも憑いていないだろうよ。


「そうだなぁ、ボク達が師匠抜きで考えるなら明日くらいにはクリスに頼んで事情を聞いてもらうかな。どうなっていますか、ってね」

「俺達なら、そうなるか。王子が聞けば何かしらの返事は貰えるだろうし。じゃあ、あの子達なら……ラウルシュタインの外交ルートから問い合わせるかもしれないね。彼女達もそれなりに重要人物らしいし」


 もう1日くらい待つかもしれないけど多分、明日にはこの国にもラウルシュタイン帝国の領事館とか、それに準じた施設があるだろうから相談に行くかもな。聖女なら教会ルートもあるのかも知れない。剣聖や聖女が重要な人物ならラウルシュタイン帝国の領事館もルシアス王国に問い合わせくらいはしてくれるとして……そして更に午後にはその返答が来たとしてだ。返答内容が既に処刑されました or 近いうちに処刑されます程度の違いはあるかもしれんけども。


「明日の早々に処刑なら話は早そうだね。怒るだろうけど、案外さっさと国に帰るんじゃないかな」


 ま、既に処刑されていたら……可能なら遺体でも引き取って帰ってくれるかもな。それはそれで、めでたしめでたし、だ。仇討ちに殴り込む可能性も微レ存かもしれんけど。そして仮に明後日処刑と聞かされたら……明日の夜に救出に向かう、かな。何処に捕まってるかも分からんだろうにな。でも多分、きっと彼女達は行くだろう。だったら今からでも彼女達に会いに行こうか。止めとけ、って言いに。


「何を?って言われるだろうね。そんであの男のことをどう説明する気?既に逮捕されてて明日にも処刑されるかもって言う?信じてくれるかなぁ。あー……どっちみち止めるのは力ずくでだろうから話が早くて良いかも」


 セシルさんは今日も武闘派やで……しかし向こうの出方次第では確かに力ずくで止めないと、だなぁ。衛兵や騎士相手に喧嘩を売ったら、聖女だろうが剣聖だろうが命の補償はない。あの子達……少なくとも剣聖は相当に強かった。ちょっとやそっとの人数の衛兵や騎士であっても簡単には止められないだろう。でも王城に居るのはちょっとやそっとの人数じゃないんだ。数十……いや数百の騎士達が居るかもしれない。流石にその数を相手にして勝てるはずがない……と思う。その場で殺されるか、捕えられて処刑されるか。それよりは殺すつもりのない俺達と戦うの方が多少でもマシじゃないかな。


「殺すつもりはない、か。必死の相手はそんなに容易くないよ?」


 穏やかなトーンの師匠の言葉に冷水を浴びせられたような心持ちとなった。そうだな……勝てないかもしれないな。この世の誰よりも死線の上で、必死で戦った回数が多い俺が何を言ってるんだ。偉くなったもんだな!必死の相手を舐めるんじゃねぇ!調子に乗るな!出し惜しみ無し手加減無しだろうが。忘れるな自惚れるな、俺。

 そんな訳で作戦は、彼女らが大人しくしてるなら良し。もしショウゴ奪還に動くなら、それを阻止。全力の力ずくで。結局の結論はシンプルにして野蛮。もう俺の頭脳じゃ考えるのが面倒でね……求む、軍師。どこに居るんだ、俺のコーメイ。


「彼女達は私が視てるから、君達はもう寝なさい。寝不足が理由で万が一にも不覚を取るようなら……少々厳しめに鍛え直すことになるよ」


 素でスパルタな人が言う少々厳しめってどういうレベルなんだろうな。多分、俺達の想像をかなり斜め上に超えてくるんだろう。そんな魔神の笑顔に、俺はセシルと2人して心の底から震え上がった。

 早く寝よう。敵である必死の剣聖達と戦うより、味方である過保護魔神の厳しめな訓練の方が遥かに恐ろしい。











 




 翌日。晴れ時々曇り空。朝夕は冷えるけど日中は暖かくなってきた。すっかり春だねぇ……のどかな春の日ではあるけど、もしかしたら剣呑な日になるかもしれない。

 ルーとクリスも今日は学園の授業が無い日だったので時間には余裕があった。一方のショウゴ’sガールズは、予想通り領事館やらに出かけているようだ。ここまでは予想通り。

 それとは別にクリスに確認したら、ショウゴは本日裁判(結果は決まってるけど一応やるらしい)の予定だそうだ。この国は法治国家なんですね、ナルホドね。それは頑張ったら逆転出来る裁判なんだろうか。一応、あのシリーズは全部クリアしてるから自信あるぜ。「待った!」で揺さぶるんだろ。そんで「異議あり!」って人差し指をつきつけてムジュンを指摘するんだろ。最後に証拠品を「くらえー!」って言いつつ突きつけるんだろ。任せろ、大逆転のシリーズもクリアしてるんだから。ちなみに本物の弁護士になった友達に言われたよ、本当の裁判では異議あり!なんて言わねぇんだってね。実際の裁判を見た事ないからわかんないけど。

 そして当然俺に弁護が任される筈も無く、そもそも見学することも出来ずに裁判は終わった。その結果、予想通り有罪。ショウゴは明日以降に処刑となったそうだ。現行犯逮捕だからそりゃ有罪でしょうね。さて。明日以降か。へぇ……ガールズはその情報をゲットしてるかな?


「してるんじゃない?別に秘密にするような上等な情報でもないでしょう」

「仮に情報ゲットしたとして……あの子達はいつ動くかな?」

「そりゃ今日だよ。明日以降処刑ってのは明日かもしれないんだし」


 俺もそう思う。こんな待機を続けたくないし今日動いてくれたら楽でいいな。とっとと諦めてくれたらもっといいけど。

 あー、自分が言い出したくせにめんどくせぇ。でも、ここで頑張れば……ハーレムルートは無理にしても脱おっさんパラダイスには繋がるかもしれないしな。それだけをモチベーションに頑張ってますよ。こんなのはルーにもセシルにも言えない秘中の秘だよ。いや、女の子まみれにしたいとか、なりたいとか大きな夢を語ってる訳じゃない。今更そんな贅沢は言いたいけど言わないよ!でもね、せめて……せめてもう少しバランスの取れた世界に住みたいんだよ!巨乳なんだよ?3人中2人も。大事にしようよ。貴重な女性キャラ枠を守ろうよ。自分でも言ってる意味が全くわからないが。













「動き出した。3人一緒だ」


 ルーがそう教えてくれたのは、深夜になっておそらく日付も変わった頃だった。いや。正確な時間なんて時計を持ってないしわからないよ。少なくとも街中の人々はグッスリと眠りについている時間ですね。

 やっぱり悪いことは暗くなってからやるもんだよな。俺だってそうする。朝だろうが昼だろうが、すぐ行くべきだ!と言い張るルーとセシルは血の気が多すぎるんだよ。君たちは男前すぎると思うぞ。正面から国家と戦うつもりか!?確かに君たちなら勝てるでしょうけども。


「動き出したってどこへ?あの子らはショウゴの居場所を知らないだろう?」

「うん。逮捕や処刑の話は聞けたとしても、どこに収監されてるかなんてルシアス王国も言うはずないしね。でも、彼女達は正確にアレの方向に向かってるよ。どこぞから情報を得たのかな……」


 彼女らにもそれなりに正確な情報源があったんだね。それともショウゴの位置がわかるナニカ……魔導具かスキルがあるのかも?まぁその辺はどうでもいいや。動き出したと言うなら、すぐに説得して危ないことは止めてもらおう。素直に止めるようなタイプじゃなさそうだけどな。多分、力ずくで止める事になるだろう。さぁ覚悟しようぜ。

 そんで、俺達はどこに行けばええのん?王城で待ち伏せして……いやダメだ、そんな場所で戦闘が始まったら衛兵や騎士団がすぐに来ちゃうよ。


「あ……そうか、場所の事を忘れてた。そうだね……私が彼女達をギャスラン広場で足止めしておくから君達は急いで来て」


 いつもの様に、走れ!ですね。貴女はこのくらいの距離は秒で移動出来るからいいけどさぁ……自分基準に考えてたから俺達の事を忘れてたのか。このかわいいうっかり魔神め。こやつめ、ハハハ………ってアホかァ!!この期に及んで何を言い出すか!普通、こういうのは最強キャラは遅刻して俺達が時間稼ぎをするのがパターンじゃないですかね。いや、そんなこと考えてる場合じゃなかった。もう彼女達は動き出しているんだ、さぁ行こう。


 静かに宿を抜け出して、セシルと走り出した。



 よし、やるか。 


 なんとかあっちもこっちも無事に終われたらいいな。










            ◇◆◇◆◇◆◇










「誰だ!?」

  

 剣聖の、凛とした声が静かなギャスラン広場に響いた。私達の常宿と王城の中間に近い、そして今は誰も居ないこの広場。子供達が喧嘩をするにはちょうど良いんじゃないかな。


「申し訳ないが……ここは通せない」


 3人の少女の前に立つ。


 もう深夜ではあるけれど、今夜は月が明るい。そして私達は、お互いに会話をした事はないけれど学園で何度か顔を合わせている。彼女達にもすぐに私が何者であるか、わかったようだ。


「貴女は確かアレクシス殿達と一緒に居た……こんな時間に何故こんな場所に?いや、なんでもいい。私達は少々急ぎでして、失礼いたします」

「貴女達が急ぐ理由は分かっている。その上で、ここは通せないと言っている」


 3人の少女達の顔に困惑の色が拡がった。私の言っている意味がわからない、そんな顔だ。無理もないが、私も一から十まで説明する気は無い。


「何を仰っておられるのか、よく分かりませぬが……」

「惚れた男を救いに行くんでしょう?」


 私の言葉に、困惑から……徐々に彼女達は殺気を帯びていく。察しが良い子達だなぁ。そういうとこ、嫌いじゃないよ。


「……知っていて邪魔をしようと?」

「最初に言ったでしょう。申し訳ない、と。惚れた男の為に、という理由は私も嫌いじゃないが……」

「事情を知っているならば……憐憫の情あらば、通していただけませぬか!我らは貴女と敵対するものではありませぬ!」


 通してあげたいな。

 ほんの少し、そう思った。

 でも、ごめんね。

 今回はダメなんだ。


「貴女達の止まれない理由が惚れた男なら、私がここを通せない理由も惚れた男の為だ。お互い……女なら譲れないでしょう?」


 元より言葉で引いてくれるとは思っていない。

 そして彼女達の気持ちは、私にもよくわかる。

 しかし、私にも私の譲れない理由がある。

 アレクがそう望むなら、それだけで私には十分だ。

 私はアレクの望みを全て叶えてあげたいのだ。


「そなたは、たった1人で我ら3人を相手に出来ると思っておるのかえ?」


 既に戦闘モードの幼い印象の魔法使いが言った。笑顔ではあるが、その殺気を隠そうともしていない。良い覚悟の決め方だ。その姿は幼く見えるが、意外と一番年嵩なのかもしれない。


 私達以外に誰も居ない広場に遠くから近づく足音が2つ。残念ながら、貴女達如きが相手では私にとって役不足も甚だしい。私に相手をして欲しくば、千の……いや万の死線をくぐり抜けてから来い。


「私はただの時間稼ぎだよ。貴女達の相手をするのは別の2人だ」


 時間稼ぎが私に見合った役かどうかは疑問だけど。時間稼ぎが最後まで倒してしまってはヤンクロットの二の舞だ。私はそれで構わないと言えば構わないんだけど……アレクにジョーカーは大人しくしていろと言われた。

 確かに子供達のじゃれ合いに私の存在は反則でしかない。それは分かっているけど……仲間外れのようで、ちょっとムカだな。あ、急にかなりムカついてきた。後でアレクで色々ストレス解消しよう。あんなことやこんなことをしてもらおう。

 私は武装もしていないし威圧したわけでもないけど、彼女達はかかってこない。()()とは違って、随分と優秀なようだ。密かに私の中で彼女らの評価を上方修正した。


 しばらく睨み合ううちに、ようやくアレクとセシルが彼女達の背後に追いついてきた。よし、任務終了。私の出番、終わり。


「なるほどのぅ。3人ならば、なんとかなると時間稼ぎをしておったのか」

「君達のお相手は俺達2人だよ。そんで君達の事情はわかってる。このまま帰ってくれるとお互い平和な春の夜を眠れると思うんだけど……どうかなぁ?」

「惚れた男が死ぬかもしれんのに、平和な夜などとはありえんじゃろう」

「確かにな。でも君達までも死ぬこたぁないだろう。行かせない」

「……うるさい。問答はもういい、殺す。邪魔するならば、全て殺す」


 決別は聖女の、聖女らしからぬ殺気に満ちた台詞。私は広場全体を消音の結界で覆った。アレクとセシルが怪我しないといいな。人に見つからないうちに終わるといいな。そして私のかわいいかわいい弟子達と戦う彼女達の気持ちが少しでも救われる結果になるといいな……アレクが願うように。


 魔神である私の願いは、天上の神に届くのだろうか。

 天上の父よ。この娘の願い、どうか叶えてください。



拙い作品ですが読んでくださり、ありがとうございます。

この作品を読んで少しでも面白いと思ってくれた、貴方or貴女!

是非とも感想、レビュー、ブックマーク、評価を頂ければこれに勝る幸せは御座いません

(人>ω•*)お願いします。

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