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6 え、待って!ちょっと待って!

 


 気が付いたら、普段とは違う上等なベッドに俺は横になっていた。こういう時に思わず、知らない天井だ……などと呟きたくなるのはお約束だよな。一定数の日本人の悲しいサガだよな。ある程度の年齢以上のオタにとっては、もはや義務と言ってもいいかもしれない。


「「起きたっ!」」


 ……耳元で大声を出すなよ、セシルもクリスも。結構重傷なんだぞ、俺。学会に症例報告をするのなら、野犬に襲われてたまたま死ななかった5歳児の一例、ってやつだ。自分でも不思議だわ、なんで死んでないんだ。運か。運が良かったのか。これも普段の行いの良さだな。それとも前世でかなりの徳を積んだのかな。多分その両方だろう。


「大丈夫か、痛いところはないか?!」


 ああ、父も居てくれたのか。痛いも何も痛くないところ探すほうが大変………ってあれ?痛くない。あの獣に抉られた右足も平気だし、最後の瞬間げいぼるぐ(笑)で獣の喉を貫くと同時に獣の牙が俺の左手をズタズタにしたと思ったが……痛くない。血も出てないし、そもそも傷が無い。あれは全て夢か?


「……何がどうなったんですか?」


 軽くパニックだよ。酒に酔って記憶無くした時よりパニック。本当にあれは全部夢だったのか?あれが夢だというのならフロイト先生、なんて解釈します?やっぱ性的欲求不満ですか?それにはまだ早いだろ。俺、まだ未就学児だぞ。ツルツルやぞ。いや……100%は否定しないけども。むしろ大いに認めるところだけども。


「はぁ~……良かった…!」


 問題なさそうな俺を見て、父は緊張の糸が切れたと言わんばかりにへたり込んだ。


「お前のお陰だ。よくやった!みんな無事だぞ」


 あ、やっぱり夢じゃなかったんだよね?その後、父の話と随所で途中割り込んできたセシルとクリスの話を纏めるとだな。


 セシルとクリスは俺が頼んだ通りに全力で走って助けを呼んできてくれて、おそらくホントに1分くらいで大人たちを連れてきてくれたようだ。もちろん2人は危ないからとメイドさんたちに館内に隔離されて、警備の騎士達が俺を助けに来てくれたんだって。

 そんで来てみたら口を槍で貫かれた獣が死んでるし俺は俺で血塗れで動かないしで、騎士達は慌てて治癒魔法師を呼んで回復してくれたそうだ。そして事件から数時間、傷が治っても俺は眠ったままで意識を取り戻さないからセシルとクリスは看病……でもないが枕元で待っててくれたんだって。ありがとな。


「どうだい? もう痛いところはないかな?」


 初老の、少し髪が薄くなったおじさんが話しかけてきた。誰?と言わんばかりに思わず父を見ると「治癒魔法師のアルセン師だ」と紹介してくれた。痛いところねぇ……さっきも父に聞かれたけどホントに痛いところないんだよな…と右手を見ると手のひらの皮がズル剥けになってた。ああ、やっぱりあれは事実だったんだな。


『――……―――…』


 アルセンさんがよく聞き取れない祝詞のような言葉を唱えると、俺の手のひらが淡く青く光った……と思ったら、まるで逆再生を見るかのように手のひらが綺麗に治ってしまった。それを確認したアルセンさんは「それでは私は失礼させてもらうよ」と軽やかに去っていった。クールだなオイ。涼しげなのは頭だけじゃなかったようだ。父は何度も頭を下げてアルセンさんに感謝を伝えていた。俺もありがとうございました!とお礼を述べた。おかげでグラビアアイドルへの道を諦めずに済みそうです。いや目指してはないけども。

 本来なら父は仕事中のはずだが息子が王子を助けようとして意識不明の重体、と聞いて慌てて来てくれたみたい。心配かけてごめんよ。まぁ俺が問題無さそうなので、父はすぐに職場へと戻っていった。


 ちなみに父から聞いた話によると、あの黒い獣は領主館の近所に住むナントカって伯爵だかなんだかのよく知らん貴族がコレクションとして違法に街に持ち込んだブラッドウルフっていう魔物の子供だったそうだ。


 ………あれで子供とかマジか。


 そして与えていた餌が少なかったらしくて、そのブラッドウルフの子は飢えて伯爵邸から逃亡して領主館の庭に迷い込んだんだと。そこで美味そうな子供3人を見つけて襲い掛かったと。もう少しで王族を傷つけるところでもあったので、その貴族は重罰に処されることになるだろうとの話だ。バカヤロウ、賠償金を寄越せ。俺の肌に傷が残ってアイドルになれなくなったらどう責任を取るつもりだ……ってまぁ、それは今はいいさ。

 はぁ~、なるほどねぇ。本当に痛いところはないが、全身が鉛のように重く感じる程疲れていたのでもう一度ベッドに横になった。セシルとクリスも色々あったせいか、ソファで仲良くお昼寝中だ。昼寝というか、もう夕方だけどね。ホント色々な事があった1日だよ。


 ふぅ………ようやく一息だ。











 えええええ~~っ!?なにあれ?


 皆さんご存知の!て感じで治癒魔法師が出てきましたよ。魔物の存在にも驚くが、今は治癒魔法だよ!え、待って!ちょっと待って!S N Sでよく見かけた女くらい待って欲しい。いや知らん知らん、治癒魔法とか。いや意味はわからなくもないけどウッソだろ、オイ……どういうこったよ……。

 でも実際、俺の全身どこを見ても傷らしいものがない。確実に右足左手は重傷を負ったはずなのに、つるつる卵肌ですよ。その上、右手に関しては俺の目の前で治されたぜ。

 これならやっぱりグラビアアイドルを目指せるかも。そんで事務所の社長に際どい水着を着せられてギリギリなⅣとか撮らされるんだぜ。怪しいクラブのVIP席に呼び出されて怪しいプロデューサーや有名MCの接待をさせらたり、枕営業の強要もあるのかもしれない。華やかな世界の裏はドロドロしてるんだよな……そして苦労しながらも深夜番組のアシスタントとかに呼ばれたりしてさ。ガツガツした若手芸人に連絡先を聞かれたりしながらも少しずつステップアップして…………うん、現実逃避ですよ。こんな話、もういい?


 うーん…これはもうトリックとか言ってられないな。しつこい?でもそうそう簡単に異世界とか納得できますか?しかし疑り深い俺もついに覚悟を決めたよ。ここは本当にナーロッパ(剣と魔法の世界)なんだと認めよう。


 グッバイ、壮大なモニタリング説。

 またどこかで会おう。


 この世界に産まれて5年と少し。ようやく俺は自分の状況を把握出来たようだ。これはこれで……というより男の子はみんな大好きな剣と魔法の世界、これこそ浪漫でしょ!それならそれで、俺も魔法を使えるようになれるかなぁ?使えるようになれるよな?使えるだろ。それがお約束ってもんだろう。みんなのお約束事項だ。きっとヒャッハー出来るようなチートスキルも授かってるんだろう。今から練習しておこうぜ……やれやれ、また何かやっちゃいました?とかの決め台詞をさ。夢は広がるが………アカン、今は頭が重い。めちゃくちゃ眠い……ダメだ思考が纏まらん。寝よう。


 起きたら全てが夢オチじゃありませんように。
















 うん、夢オチじゃなかった。目が覚めた俺が窓の外を見ると、もう相当に暗くなっている。いつもならもうすぐ夕飯の時間じゃないか。そういえば俺のげいぼるく(笑)はどこにいったんだろうか……などと考えていたら若いメイドさんが入ってきた。やっぱり良いよな、メイド服って。そこまでメイドスキーでもないつもりだったけど、少し心踊るわな。


「お目覚めになりました?夕食は食べられそうですか?」

「あ、はい。もう大丈夫です。夕食…ですか?」

「はい。今日は念のためにお泊り頂くよう公爵様から言い付かっております。もちろんレオン副長にもお話してありますよ」

「父はもう帰りました?」

「先ほどもこちらへ様子を見に来られましたが……いつもならそろそろ帰られる時間ですね、探してきましょうか?」

「いえ、結構です。ありがとうごさいます」


 寝てたから気が付かなかったけど、さっき父が来てくれていたのか。もう痛いところもないし基本的に元気だし……大丈夫だろ。母を心配させるかもしれんが、その辺は父が説明してくれる筈だ。


「もう少しで夕食の時間ですが、こちらで召し上がります?それとも食堂で?」


 食堂って公爵さんと一緒なのかな?俺、人見知りだからよく知らない人とご飯を食べるとか気が進まないんだけどな。しかし泊めてもらって挨拶もなしってワケにはいかんよな、もう元気だし。しょうがないな、行こうか。


「食堂ですね。では着替えをお持ちしますね」


 そういやセシルとクリスはどうしたかな?と思ったらメイドさんと入れ替わるように2人が入ってきた。入ってきたと同時に俺の腹に向かってダッシュしてきたよ。

 ぐふっ!口から内臓がはみ出るようなアタックだ。殺す気か!?せっかく今日という運命の日を生き残ったというのに。どうしても今日を俺の命日にしたいのか?


「もう元気になったんだね!?」


 今、お前らに今日三度目の衝撃をお見舞いされて元気だった、と過去形になりそうだけどな。


「セシルは帰らなかったのか?」

「だってアレクお泊まりなんでしょ?じゃあボクも泊まるよ」


 かわいいことを言うヤツめ。でもココは公爵さんのウチなんだから公爵さんに許可もらわなきゃダメじゃないかな?


「ぼくも2人が居てくれたほうが嬉しいし、もう叔父さまには許しを貰ったよ」


 仕事が早いなクリス。そんな訳で俺も着替えて早速3人で食堂に向かった。ああ、こりゃいかにも!って感じのお上品な服だな。これはクリス用の服なのかな?俺が着ると七五三みたくなってないか心配だ。いや、七五三みたいになってる。この世界では誰もそう言ってはくれないだろうが。



 そして俺達は、お上品なホテルのような食堂で公爵夫婦と食事となった。公爵さん夫婦には息子さんが2人いるらしいが既に2人共結婚されているそうで別宅住まいだそうだ。なので食事するのは公爵さん夫妻と俺達だけだった。

 公爵さんもそうだが夫人も子供が大好きらしく、突然やってきたクリスがかわいくてしょうがないらしい。そしてセシルは俺が太鼓判押してやりたいほどかわいいしな。俺もそこそこはかわいいはずだし。今日は子供パラダイスで夫妻とも相好崩しっぱなしだ。


「そんでアレクがね!バーンって!吹っ飛ばしてやっつけたんだよ!」


 セシル……公爵相手にフレンドリーだな。もしロレシオさんがこの場に居たら卒倒するかもな。俺の武勇伝を語ってくれるのは良いが、お前ら2人とも殆ど見てないだろうに。あんなの、僅か数十秒の戦いで一方的にやられて最後にマグレの会心の一撃が当たっただけだぞ。しかも吹っ飛ばされたのは俺の方だし。しかしここで真実を話して水を差すより盛り上がったほうが良いよね。そのことに文句を言う獣も、もう居ないし。


「すみません、コレのお代わりください」


 トークはセシクリに任せて、俺は我が家ではあまり出ない肉を何度もお代わりして腹を膨らませてた。やっぱ肉は美味ぇな!何の肉かわからんのが少し怖いけどな!見た目も味も牛肉っぽい柔らかいステーキでね、ソースがまた美味いんだわ。さすが貴族は良いもん食ってるんだな!思わずワインも欲しくなるね!でもワインは無理だろ……幼児がワインを要求したら笑顔の公爵夫妻もビックリして俺を二度見するだろ。今はワインは我慢して肉だ!


 今日は血を流した分、特にたっぷり食わないと。

 次、いつこんなに肉を食えるかわからんからね。








 ああ、ホテルバイキングに行った時レベルに腹いっぱいだ。食いすぎて少し苦しい。そして今は食後のティータイムだよ。そういえば、外はもう暗いが室内は煌々と灯りがついている。見上げるとテレビで見たようなシャンデリアが俺達の頭上で部屋を明るく照らしている。あれ…あのシャンデリア、火じゃないよな。電気でもないようだけど……ナーロッパ定番の魔導具とかそんな類のものかもしれない。


「アレクシスくん、今日は本当にありがとう。お陰でクリスはかすり傷一つ無かったよ」


 公爵さんが改めて俺に向かって感謝の言葉を述べた。すげぇなぁ……大したもんだよ。他の貴族は知らないけど庶民のガキ相手にこういう態度、中々出来るもんじゃないぜ。多分だけど良い人なんだろうなぁ。


「クリスもセシルも友達ですからね。2人とも無事で良かったです」


 地味~に俺が身体を張ったのはクリスだけじゃなくセシルのためでもあるんだよ、とアピール。俺の中じゃセシルとクリスは五分五分…若干セシルの方が大事かな。付き合い長いし。いかんな、どっちがとかじゃないな。訂正、どっちも大事。


「そうか……友達か。これからも仲良く遊んでやってくれ。それでな、君が王族を危機から身をもって護衛したことは十分に功績である。何か褒美を、と思うんだが欲しいものあるか?」


 褒美!

 マジか。なんて素敵な響きだ。


 なんにしよう?金か?金は子供にはいらん。金なんてものは成長してから自分で稼げばいいや。剣か槍か?子供が名槍を貰ったところでサイズが合わなきゃ大人になるまで飾っておくだけだな、パスだ。物じゃないな……じゃあ権利とか待遇か?


「学校が始まるまでだけでも、クリスと一緒に勉強させてもらえませんか?魔法とか色々!あ、セシルも一緒に」


 王子なら、どうせ一流の家庭教師とか呼ぶんだろ?あぁん?学校は7歳、つまり来年からだがどうせ貴族階級は先に予習するんだろ?クリスが俺達と一緒の学校に通うかどうか知らんが……ついでに頼みますよ。


「前例のない褒美だな。そもそも水鏡の儀前の子供が功績を挙げたこと自体が前代未聞か」


 そういって公爵さんは楽しげに笑った。

 これは好感触じゃないの!?


「叔父さま、ぼくもアレク達と勉強したいです!」


 お、いいねクリスくん。ナイスな後押しだ。セシルは一人だけ意味がわかってないのかキョロキョロしてますけども。意味もわからず「したいです!」言うてますけども。


「わかった。ではそのように取り計らおう。学校が始まるまで、などと言わずこれからは共に学ぶとよい」


 やったぜ、言ってみるもんだ。まだチートスキルは貰ったのかどうか分からんが、破格の教育環境は手に入れた!これからゴールデンエイジも始まるし、俺達の冒険はこれからだ!

 ここが剣と魔法の世界であるならば、下手するとあっという間に生命を失いかねない。実際、今日死に掛けたからね。これまでは健康のためにそれなりに鍛えよう、くらいの気持ちだったが。これからはそれこそ世界最強を目指す勢いで全力修行だ。生き残るために!







 食事会が終わったら子供チームはクリスの部屋へ移動した。


 はぁ〜、緊張した。ネクタイしてたなら、こう…左右にぐにぐにして緩めてふぅー…とか言いながらソファに座り込みたい。一仕事終えた!って感じするわ。文字通り一息ついていると、素早く着替えと共にメイドさんがやってきた。


「お風呂の用意ができております」


 おお、さすがプロのメイドさんだ。仕事にそつがないね。これでお背中も流しますとか言われたら、たまんねぇな。でも今そんなことを言われても何も出来ないから生殺しだ。もう少しボーボーになってから言ってほしい。股間のソレが火を吹く年齢になったら是非お願いしたい。そういうプレイ、嫌いじゃないですよ……正直に言います、大好きです。


「じゃあクリス、先に入っておいでよ。俺達待ってるから」


 王子を待たせて先に一風呂浴びましたはマズいでしょ。今日、頑張ったけどそれをぶち壊しかねない。よく知らんけど、そんなもんじゃないの?


「ん?みんなで入ればいいじゃないか。大浴場だから広いんだよ」


 この時代のことはまだよくわからんが、この街で自宅にお風呂てのはかなりすごい、と思う。日本で言う自宅にプールレベルかもしれん。シルヴァ家も勿論銭湯通いだ。それが大浴場だと!?


「そうなの?じゃあ大丈夫か……ってセシルはいいのか?一緒は恥ずかしくないか?」


 幼児とはいえ、異性とお風呂には抵抗があってもおかしくないだろ。俺は気にしないけど、お前は気にした方が良いんじゃない?週刊誌にすっぱ抜かれない?


「なんで?ボクは構わないよ。早く行こう、大きなお風呂入りたい」


 まぁここで妙に抵抗するのも意識してるみたいで嫌らしいかな。大丈夫さ、俺はロリコンじゃないし。…いやホントだって。













 「おぉ~!大きい…!」


 俺やセシルは基本的には、お湯を沸かして身体を拭くとか時々の銭湯で木桶の風呂に入るくらいだからさ。こんなテルマエロマエみたいなのは滅多に行かないよ。無駄にでかくないか、ここの風呂。これが貴族の見栄か。


「叔父さまの自慢のお風呂だよ。ゆっくりしてくれ」


 クリスに促されて、脚を伸ばして肩まで浸かる。

 こりゃもう控えめに言って天国だよ。

 もう季節は晩秋で夜は結構冷えてきている。

 そんな日にこんなお風呂、最高ですね!

 おっさんくさいがしょうがない。

 実際、中身はおっさんだからね。


 はぁ~…生き返るぅ。今日、実際に死にかけたから、なおさら誰よりも説得力あるだろ。風呂場の中は明るいしお湯は豊富だ。めちゃくちゃに気持ち良い。こりゃたまらん。

 日本の銭湯に比較すると若干ぬるま湯だが……この辺も聞いてみたらそういうお湯を出す魔導具があるんだって。便利なもんだね。もう少し熱くしてくれると最高なんだがな。


「なぁクリス、一緒に勉強したいって言っちゃったけど良かったか?邪魔じゃない?」


 いや~独断でクリスに相談無しなのに言っちゃったからね。今からでもクリスが「えー……一緒に?お前らと?マジで?ないわー……」とか言い出したらどうすべよ。


「いや、ぼくもアレクやセシルみたいに剣や勉強に頑張りたくなったんだ。2人と一緒だと心強いし、むしろこっちからお願いしたいよ」


 なら、Win-Winの関係でお互いめでたし、だな。

 うん、セシルはお風呂でバタ足は止めようか。

 クリスが一緒に頑張ろうと言ってくれてるんだぞ。

 ほら、止めなさい。潜らない。泳がない。自由すぎるぞ!














 その後、公爵さんは正しく俺の望みを叶えてくれた。


 あと少しで新年になる。そうなると俺達は3人とも6歳になるのだが年が明けたら家庭教師の先生の授業を開始してくれるそうだ。それまでの一ヶ月ほど、遊んでいるだけじゃもったいない。やれることはどんどんやっていくことにした。まずは体力づくりだ。体力がなきゃ基礎の反復練習すら出来ないからね。

 先日のようなブラッドウルフだったか、あんな魔物にどれだけ遭遇する世界なのかわからんが生き残るためには気合を入れて強くならねば。


 まずは毎日およそ2キロくらいのランニングと自重筋トレから始めた。クリスはまだ体力不足だから相応に負荷は少ない目にしてあるよ。でもな、やっぱり男の子だね。俺達についていけないのが悔しいんだろう、ヘロヘロになっても止めようとしない。また寝込むぞ?しかしそのお陰で今一番めきめきと成長してるのはクリスだな。元がショボいせいもあるがね。

 そういえば、自慢のげいぼるぐ(笑)は先日の事件の後、助けてくれた騎士さんが返してくれたんだが……ええ、壊れてました。穂先が欠けてるし柄も亀裂が入ってしまった。これを父に相談したら「お前と王子殿下の命を救ってくれたんだ、良い仕事をしてくれた槍だったな。しかしこりゃもう新しく作るしかないぞ」だって。あ、やっぱりそうですか。でも新しいの買ってもええのん…?


「いいに決まってるだろ」


 クリスの命を救った御褒美ってことらしい。褒美は公爵さんに頂いたけど、パパがくれるというなら遠慮なく貰おうではないか。翌日には俺とジェロム兄さんは意気揚々とカール爺さんの店に再訪した。

 爺さんは「ガキがなにしてこんなにぶっ壊したんだ?」と言いながらジロッと睨んできたが、ジェロム兄さんから俺がブラッドウルフと戦ったことを説明されると、いつも無愛想な爺さんが目を見開いた。

 少しは爺さんを驚かせることに成功したようだ。どやっ。こう見えても俺もやるときゃやるんだよ。前にげいぼるぐ(笑)を作ってもらってから俺も少しは成長したので、再び懐かしの採寸をした。今度は少々重くなるが丈夫な素材で作ってくれるんだって。新しい槍にはなんと名付けようね?げいぼるぐⅡか。ダサいな。今更か。




拙い小説ですが読んでくださり、ありがとうございます。

この小説を読んで少しでも面白いと思ってくれた、貴方or貴女!

是非とも感想、レビュー、ブクマ、評価を頂ければこれに勝る幸せは御座いません

(人>ω•*)お願いします。




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