表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/216

59 粗にして野だが卑にあらず

 


「また呼びだされたのぉ~?」


 セシル……そういうけどさぁ…俺だって今回は行きたくないんだよ。またショウゴ君絡みの話だなんて聞かされたらそれだけで気持ちは罰ゲームなんだよ。

 しかし、キリヤマさんの気持ちもわかる。現状、この世界にたった3人だけの日本人の話だからな。その日本人絡みで何かあった場合、キリヤマさんが相談できるのは俺だけなんだよ。そして、俺はそれを無視するほどキリヤマさんのことを嫌いじゃないんだ。


「じゃあ今日も師匠と2人で修行かぁ。ボクはその方が嬉しいから良いけどね」


 今日もルーとクリスは学園へ行っている。昼過ぎには授業も終わって帰ってくるはずだが、それまで俺がセシルと別行動することは厳禁されている。

 ここでセシルを放置してキリヤマさんのところへ急いだなら、後で間違いなくルーにボコられる。婚約者だろうがなんだろうが、そんなことは一切関係ない。間違いなく本気で怒られる。死なないギリギリを見定めて死に向かってのバンジージャンプをさせられるのですよ。それも、何度もだ。目の前ぎりぎりまで死が迫るのは……痛いし怖い。剣か拳か蹴りかの違いはあったとしても、美少女に殺されかける体験なんてしたくないよ。保護対象Aであっても保護対象C1もしくはC2を危険な目にあわせることは絶対に許されない。目を覆うような過激な懲罰が待っているのです。そこに容赦は存在しないのです。

 じゃあ、いっそのことキリヤマさんの所へ一緒に行くか?とセシルに提案もしてみた。既にセシルには日本の話もキリヤマさんが日本人である話もしている。秘密は無いのだから話を聞かれても問題は無い。そもそも日本語で会話するだろうし。


「えー……どうせ詰まんない話をしそうだから、ヤダ」


 はい、却下されましたー。

 キリヤマさんごめんね。


 そもそもショウゴ君絡みの用件なんて俺にとっても、そこまで急ぐ理由でもない。申し訳ないけどルーと合流するまで自主訓練をしよう。俺は前夜に頭の中でシミュレーションした動きを実際に身体を動かして確認をしてみたりしてる。セシルは……多分あれは精霊召喚でもしてるんだろうか?1人で何かぶつぶつ言いながら矢を射っている。そんな感じでルーが帰ってくるまで、各々の個人練習をしたり2人で組み手したり休憩したりして過ごしていた。

 そんな事情もあって、ようやく俺がキリヤマさんに会えたのはおやつの時間、と言っていい時間だった。すみませんね、甘いモノも持たずにやってきましたよ。お待たせしました。お待たせしすぎたのかもしれません。


『なんですか、3人目絡みって。ショウゴ君が何か言ってきました?』


 だとしても、それはキリヤマさんとショウゴ君の2人で話し合っていただきたいんだけどな。俺はもう関係ないでしょ。アレと機嫌良くトークするなんで無理っすよ。アイツが何を言おうとどう思おうと知ったことではないけれど、それでも怒らせたい訳でもない。だからせめて互いに無干渉とさせてください。


『いやいや、とんでもないことになりましたよ』


 キリヤマさんの口癖だな、いやいや。

 ……よく考えたら俺もよく言ってる。


『どうしました。死にましたか』


 繰り返すが正直、アイツがどうなろうとどうでもいい。死のうが生きようが結果だけ教えてもらえたら……結果もどっちでもいいか、どうせ俺には関係ない。


『うん、いや、まだ死んではいないけどね。そうなりそうなんだ。だからどうしたもんか……』

『はぁ!?なにがどうなってそうなるんですか?』


 いやいや、死んだとか冗談ですやん。

 キリヤマさんの口癖がうつってしまった。

 えーと、3日前に会ったばっかりで元気でしたやん。

 それが何故死ぬことになるの?


『僕も詳しくは聞かされてないんですけどね、どうやら不敬罪か、大逆罪を犯したようです』


 不敬罪……大逆罪…?まぁ不敬罪はなんとなくわかる。俺も御老公によく注意されたしね。粗にして野だが卑にあらず、をモットーにして生きている俺ではあるけども、世界をもっと広く上手く使えと教えてくれたのは御老公だ。未だにぶっ飛ばしたいランキング殿堂入り1位なのは変わらないし変えるつもりも無いが、同時に感謝も尊敬もそれなりにしている。認めたくはないが、それでも今もこうしてのほほんと俺が生きていられるのも御老公のお陰でもある。まぁ、それはいい。大逆罪ってなんですか…?


『大逆罪は王族の殺人未遂とか、王族の女性に手を出したりすると適用される重罪中の重罪だよ』


 ショウゴ君があの調子で受勲されたとすると、確かに不敬罪はやらかしてしまいそうな気がする。でも、そこまで馬鹿じゃないと思いたいけどな。大逆罪なら王族の殺人未遂……何がどうなったらそんなことするかね。それとも王族の女性……つまり王女ってやつかな?それに手ぇ出すかぁ。ハーレム持ちなのに?でもありそう。ハーレム持ちへの偏見ですかね。うーん、クリスにお姉さんや妹って居たっけかな?今までそんなの話に出たことないような。


『どうしましょう?正直言うとショウゴ君は、あんまり僕の好きなタイプの人間じゃないんですが、それでも死んで欲しいとは思いません』

『僕もいきなりだし想定外すぎてどうしていいやら分からないのですよ。もし冤罪なら是非とも助けたいんですけども』


 確かに俺の本音を言えばどうでもいい。あんな奴はどうでもいいんだが……それでも死ぬこたぁないでしょうよ。俺の中のショウゴ君の位置はワレンよりも随分下だ。ワレンも相当に下位だったけど、それを遥かに見上げるほどにショウゴ君の存在は軽い。

 ただ、キリヤマさんにとってはそうじゃないんだな。そして、そんなキリヤマさんの意思を無視するほど俺はキリヤマさんのことを嫌いじゃないんだ。なんとか出来るものならしたいけども……本当にどうしよう。国家の重職であるキリヤマさんですら碌に情報を集められていないんだよね。ならば国家のより中枢に近い人間に聞いてみるかな。何が出来るか分からないけれど、キリヤマさんの為にやれるだけやってみよう。











                ◇◆◇











「それで、僕に聞きに来たのか」


 たまたま、知り合いに王子がいるんだもの。

 大人しく利用されてやってくれないか。


「昨日の式典の話は少しだけ聞いてるけど、僕も詳しくは知らないんだよ。なんせ僕が学園に行ってる間の話だからね」


 そう、事件は昨日。午前中の勲章授与式で起こったそうなんだ。その時間、クリスは学園で授業を受けていたので式典には参加出来ていないようだった。王から直々に授与される式なんだけど意外と参加者は少なかったそうだ。


「それで、なんでボクも王城に呼ばれるワケ?……だいたい想像つくけど」


 クリスが色々事情を知っていれば話は早かったんだ。しかし、そうじゃない場合も想定しておいた。最近王都に戻ったばかりの第3王子には知らされてなくても、既に政務にも携わっている第2王子なら。しかも彼は式典にも参加してたらしいし、詳しい事情を知ってる可能性が高そうじゃない。

 そしてマティアス王子に話を聞くなら、セシルを連れてくるのが一番喜んでくれるだろう。問題はセシルが大人しく人身御供になってくれるか、なんですが、どうかな?


「………返事が、必要かなぁ?」


 セシルの笑顔が、怖い。そのまま人を刺しそうな笑顔だ。雄弁にNo!と返事している顔だ。昔で言うところのMK5、マジでキレる5秒前ですね。わかる。わかってるよ。でも一番手っ取り早いし効率的な手段じゃないでしょうか。そこを曲げてお願いします。


「………まぁ、いいよ。ただし!アレクには貸し一つだよ!」


 ものすごく高くつきそうな貸しだなぁ。でもありがとう。ああ、そんな貸しをキリヤマさんとはいえ、おっさんの為に作るとはな。もうヤダ、このおっさんパラダイスから抜け出したい。
















「お兄さん!ショウゴ・サイコウジは何をやらかしたの!?」


 ドアを開けて1秒、マティアス王子がセシル賛歌を歌いだす前に挨拶も無しに切り込んだ。そこには必要最小限、可能な限り短時間の接触で用件を終わらせようとするセシルの意図が秘められていた。いや、丸見えか。

 執務室に居たマティアス王子も、突然のセシル(とその他大勢の俺達)の訪問に驚いていた。まあね、セシルがノックもせずに扉バァン!と開けてますからね。俺も違う意味で驚いてるよ。お前スゲーな……お前が不敬罪で逮捕されるんじゃねーかな。されても俺、弁護できないぞ。むしろ検察側の証人になりそうだぜ?

 一方のマティアス王子だが、以前セシルが公務をしっかりやるように注意なのか応援なのかを言ってから比較的真面目に仕事をするようになったそうで、執事のフランツさんからも感謝されていた。今日も真面目にお仕事していたお兄さん王子だが突然のセシル襲来。それでも、この王子にとっては御褒美なのかもしれないけど。

 

「ショウゴ・サイコウジ?あぁ、昨日のあいつか。何故セシル嬢があんなやつのことを…?」

「ボクは無関係の関係だけど、アレクがその辺の事情を知りたいらしいの。教えてあげて?」


 マティアス王子は、セシル相手にデレデレになっていた表情を引き締めて俺の方を向いた。普段が普段だけに忘れそうだが、この人も相当な人物なので正面から向かうと迫力がある。


「アレクシス君、君はあのショウゴ・サイコウジとどういう関係だ?」


 意外に困る質問だ。関係……前世で同じ国に居たと言うだけなんだもん。この場でそんなこと言い出したら俺の方は頭の病院送りになりそう。この世界にその手の病院あるのか知らないけどさ。


「基本的には無関係です。先日知り合った友人の知り合い、くらいの関係ですね」

「先に言っておく。君が……いや誰が何を言おうと処分は変わらないぞ」


 マティアス王子は普段の態度や見かけによらず頭が良い。さすがクリスの兄、であるし優秀の誉れ高いルシアス王太子の弟でもある。まぁこんなタイミングで話を!なんてやってきたらお察しですね。


「処分、とは……彼はどうなりますか」

「当然だが処刑だ。昔なら四つ裂きの刑、だったかもしれないが……普通に斬首だろう」


 えー……チーズじゃあるまいし人間ってそんなに裂けるもんなの?


「本来、これは言うべきじゃないのかもしれないが絶対にあいつの関係者などと言うなよ。仮にアレクシス君がそういったなら……君にすら、なんらかの処分があるかもしれん」


 良かった…!無関係って先に言っておいて本当に良かったぁ!あぶねー!まぁ実際無関係なんだけどさ。内心では、よおっしゃあああああ!!!くらいのガッツポーズですよ。それにしても、なんかとんでもない事したんですね、彼。何したんすか。


「まず、あいつはなんなんだ?あの口の利き方は」


 えーっと、確かに傲岸不遜そのままって感じではあったけど。あのままの彼で王族とトークしたの?素材のままで?塩だけで召し上がれ、塩対応だけに。それを言い出すと、俺とセシルもクリスやお兄さんに結構な口を利いてるんだけどな。セシルなんざ大公に対してお爺ちゃん呼ばわりしてるよ。この前は抱きついてきたお兄さんを蹴ってたしな。ただしアレはお兄さんの方にも問題はあるぞ?反省しろ?


「あのな、君らとクリスや俺との関係性ってものがあるだろう?俺だってアンディやルネがタメ口でもなんとも思わんよ。俺がボケたことしでかしたら、あいつ等がブン殴ってくれるのも信頼の裏返しと理解している」


 まぁわかりますよ。そしてボケた事を言ったらブン殴るというなら、アンドレさん達はもっとこの人をボコボコにすべきだとも思いますよ。セシルは既に実行してるしな。


「そういう関係のあいつらだって公の場では俺のことをマティアス殿下、と相応の接し方をしてくれている。ラフォルグ家の人間は……爺様がああいう人だからな。時や場所や場合をわきまえてくれりゃ口の利き方に五月蝿くないと思うんだが……それでも限度はある」


 クリスのお父さんの王さんも割とゆるかったもんなぁ。それでも俺は精一杯の敬語を使ったつもりだ。そして俺だってセシルだってクリスが相手でも公式の場ではキチンとクリストファー殿下と呼ぶ。この前、王さんの前でもそうしてたよ。そんなゆるい王家の、更にゆるめのお兄さんがここまで激怒するって……マジで何を言ったんだショウゴ君。


「あれだけ腹立たしい男も初めてだったが……俺は冒険者もやってるからな。冒険者って生き物がどんな連中なのか、よく知っているつもりだ。それだけならここだけの話、一発ブン殴って終わりでもいいんだ。ただな、親父や兄貴にもあの口の利き方だったのは不味い。それに式典には長老格の貴族の爺さん達も居たんだ。王家の面子もある。厳罰に処するしかないんだ」


 ほほぅ。さて困ったな。取り付く島もなさそうな……まだこれでも比較的お兄さんは寛大な部類みたいだけども。それでも結構な激おこっぷりだよ。


「まだある。というより、こっちが最悪だ。俺もアレが如何なる魔法なのか知らないが、あいつは奇妙な銃のようなものを召喚出来るようでな。王の目の前だぞ?発砲までして、王を庇った近衛騎士が3人重傷だ」


 はぁ!?騎士を撃ったの?


 あかん、無理や。むしろ、その場で殺されなかっただけでも感謝すべきじゃないか。ショウゴ君……いやショウゴ、あいつ頭おかしい。そんな熱心にフォローするつもりも無かったけどフォローのしようもないだろ。ここから逆転できます?ナルホドくんの連絡先も知らないのに。

 ちなみに、この世界でも既に銃はある。こう……クラシックな火縄銃チックなやつ。コストを始め手間や精度、射程距離や威力等どれをとっても熟練の魔法には遠く及ばないけど、皆が魔法を使える訳でもないのでそれなりの需要はある。


「……兄さん。そのショウゴ・サイコウジに面会することは可能ですか?アレク、両方の岸から見てこその川、だ。兄さんを疑うつもりは一片も無いけれど念のため相手の話も聞くべきだ」


 そうだね。お兄さんが嘘を言う訳ないと思って即断しすぎてたな。相変わらず俺は視野が狭い。この場にキリヤマさんが居てくれたら、もう少し必死にショウゴを弁護してくれてたのかもしれないのに。俺にはそもそも弁護する気がないんだもんなぁ。

 


 マティアス王子に改めて尋ねた。


「よろしいですか?」


 しばらく考えた後、条件付きで面会の許可を出してくれた。その条件として護衛の騎士を1人、連れていけ、だと。さすがにお兄さん王子が同行するとは言わなかった。犯罪者に面会するのに貴人がうろうろされても俺達も困る。まぁクリスは来るんだけど…。


「セシル嬢も行くのか?危険じゃないか。やはり俺も行こうか」

「一番の危険人物と一緒に行けっていうの?それこそ危険じゃないですかー」


 ホントにね、お前こそ不敬罪適用になるよ?なるべきだと思うよ?



拙い小説ですが読んでくださり、ありがとうございます。

この小説を読んで少しでも面白いと思ってくれた、貴方or貴女!

是非とも感想、レビュー、ブックマーク、評価を頂ければこれに勝る幸せは御座いません

(人>ω•*)お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ