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58 発見!こんなところに日本人

 


 人生とは山あり谷あり。楽しいことの後には、楽しくないことが待ってたりもする。逆もまたよくある話だね。今日、ここに至るまでも良いことも悪いこともそれなりにあった。死ぬ程痛いことも苦しいこともあったし。生まれてきて良かった、生きてきて良かったと神に感謝したこともあった。そんなもんだろ、人生って。多分な…………まぁ魔神に出会う人生はそうそうあるもんじゃないか。


 ジェロム兄さんの結婚式は、そりゃあ楽しかったさ。久々に父や母にも会えたし、ジェロム兄さん夫婦も素敵だった。故郷の海鮮料理もワイバーンの肉料理も堪能した。ルーの素敵なドレス姿も見れたし、どういう立ち位置から見たらいいのか知らないが、セシルのドレス姿もかわいかった。

 もうそれでいいじゃないですか。埋め合わせじゃないけど、反動があるとかおかしいじゃないですか。それが人生ですか。That is life. C'est la vie. うるせぇよ。しゃらくせぇ。どうにかならんのか。


 男は泣いてもどうにもならないときに泣いて、女は泣いたらどうにかなるときに泣くそうだ。だとしたら俺は今、泣きたい。どうにもならなくて泣きたいんだけど、そんなことすら出来ないのが今の俺の状況なんだ。






『いや~、カスガイさん。なんだかお見合いみたいで緊張するねぇ』


 緊張すると言う割には、緊張感の無いニコニコ笑顔のキリヤマさんだ。俺の気も知らずにめちゃくちゃご機嫌さんですね!これがクリスかセシル相手なら、呑気な事を言ってるんじゃねえ!とか言って頭を叩いてやるんだけどな。キリヤマさん相手にそれは出来ないわ。何十年とこの世界にたった一人の日本人だったのが、立て続けに新しい日本人と出会うのが嬉しい気持ちはわかりますよ。


『……お見合いしたことあるんですか?キリヤマさん』

『この世界に来る直前に、一回だけね。上手くいかなかったけど綺麗な人が相手だったなぁ』


 ありきたりな会話だけど、地味に返答に困る話題だね。お見合いの後にこの世界に来るなら結局別れることになるんで上手くいかなくて良かったですね!とか言おうか?それってなんのフォローにもなってない気がする。というか喧嘩売ってるよな。


 俺がなんで、こんなことに頭を悩ませなきゃいけないのか。


 いやね、ついにキリヤマさんとショウゴ君の面談が決まったんだよ。断じて俺を含めての3者面談ではない。俺はオマケ。俺には食玩ほどの価値も意義も無い。喋るつもりもない。そもそも来たくなかったんだけど……キリヤマさんに笑顔で一緒に会ってもらえますよね?って言われたらノーとは言えなかった。俺もノーと言えない日本人なんだよ……付き添いだけなんだから、楽にしてりゃいいんだぞ、俺。でも気が重い。

 そして、なんで今日が面談かというと、明後日にはショウゴ君が受勲するから。彼は王さん……つまりはクリスのパパから勲章を貰うのだ。俺もなんだかんだで何度か公爵や大公から功績を認められて御褒美を貰ったけどさ。あれらとは扱いが違う。公的にちゃんとした勲章授与だ。実は俺達の、この前のヤンクロットの一件も受勲してもおかしくなかったそうなんだよ。あれはそのくらいの功績だったんだって。しかし!我々は非常にイレギュラーの形で参加してしまったんですよ。なんせ勝手に行っちゃったからね。色々と公にすると問題になりそう、ということで揉み消された。正確には揉み消してもらった。いや、揉み消されたというと聞こえが良くないな。表沙汰にしなかった、でいいのかな。まぁそういうことだ。別に俺は勲章や名誉や褒美が欲しかった訳じゃないから、それは問題ない。





 話と時を戻そう。


 それでショウゴ君の受勲に際して彼の下調べみたいなのが必要らしくてね。その一環として、この面談をねじ込んだらしい。キリヤマさん、穏やかな顔の割に意外に豪腕なのね。

 場所は御馴染みのラスティン宮殿。嘘だ、全然馴染みじゃない。今日で2回目ですよ。前回はアポも無しに発見!こんなところに日本人的なノリで突撃しちゃって数時間待たされたけど。今回は約束の時間に来たので、待たされることなくキリヤマさんの部屋へ案内された。

 ここまでは待たされることなく順調だったけど、今度はショウゴ君が遅刻しやがった。まぁ何時間も待たされることは無かったけれど、時間にルーズなのは良くないぞ。


「やれやれ、また面接か。いい加減にして欲しいものだな。俺に何かメリットがあるのか?」

「いやいや、申し訳ないね。形式的なものだからすぐ終わるからね」


 待たせた挙句に不機嫌そうにやってきたショウゴ君をにこやかに迎えるキリヤマさんは偉いなぁ。不機嫌な雰囲気を微塵も見せずに……流石はキリヤマさんだ。内心までは分からないが立派な大人だなぁ。それに対してショウゴ君、君の態度はどうなんだね。ドカッと偉そうに雑に座り、偉そうに足を組んで座るショウゴ君……若いのに本当に態度がでかいなぁ。そう思う俺も精神年齢はキリヤマさんと同じくらいなのにガキなんだけどね。

 俺だけ何もしないのも申し訳ないので、紅茶を用意して2人の前に置いた。俺がどういう立場なのか自分自身にもよくわからないけど自分の前にも紅茶を置く。時々、ルーにお茶の淹れ方を習っているので不味くはないと思うけど、どうかしら。


「………こいつは?」


 まぁ、そりゃ気になりますよね。誰やねん、と逆の立場なら俺もそう思う。それにしても、いきなりコイツ呼ばわりは如何なものかと思うが。いいから紅茶でも飲めよ。


「彼は……臨時の補佐官だよ。まぁ回りくどい話は止めて、単刀直入に話しようか」

「そう願いたいな。なにしろ俺は忙しい」


 俺の格好を見て臨時でも補佐官と信じたのか。

 ショウゴ君、意外に良い奴なのか世間知らずなのか……。

 多分、興味が全く無いんだろうな。





『私は、以前は東京に住んでいた桐山士郎といいます。ええと、サイコウジさんも日本人ですよね?』


 さすがのショウゴ君も突然の日本語に大きく目を見開いて、口も半ば開いて驚いている。俺は多分そうだろうな、という予想の元にキリヤマさんに会いに行ったけど、あの日のキリヤマさんも今のショウゴ君と同じくらい驚いていたかもしれないね。俺だって<上上下下左右左右BA>の文字を見た時は同じくらい驚いたもん。


『ああ…!しかしコイツは……?!』


 俺を睨んだままショウゴ君が叫んだ。

 またコイツか。

 あのな初対面だぞ、俺と君。

 そして本当にショウゴ君は日本人だったようだ。

 まぁ……そうでしょうね。


『アレクシス・エル・シルヴァです。僕も元は日本人ですよ。日本での名前は春日井信也といいます。令和3年に死んで、こっちの世界に来ました』


 共通の秘密を持つ、てのも仲良くなるきっかけだよね。

 ……別にコイツと仲良くなりたいとも思ってないけどな。


『僕は30年くらい前に日本人のまま、突然この世界に放り込まれましてね。カスガイさんは17年前に、この世界に生まれ変わったそうなんで見た目もこの世界の人なんですよ。サイコウジさんはどうやってこちらの世界に来たんですか?』


 穏やかに、そしてにこやかに彼に話しかけるキリヤマさん。元々のキリヤマさんの気質なのか人生経験なのか、キリヤマさんの言葉は不思議と相手を落ち着かせる。もしかしたら、そんなスキルを持っているのかもしれない。一方のショウゴ君は、まだ少し混乱しているのか紅茶を口に運ぶ。そんなに一気に飲んで熱くない?


『なるほどな……確かに俺も日本から来た。それで、何が目的だ?』

『いやいや、目的ってほどでもないんだけどね?多分だけどサイコウジさんも日本に帰りたいんじゃないかなって思ってね。もし、そうならお互い協力しましょうって話ですよ』


 俺から言うことは、特にないかなー……それにしてもショウゴ君、名乗らないね。確かに俺達は君がサイコウジ・ショウゴという情報は把握してるけども。そして、キリヤマさんの質問は華麗にスルーなのな。まぁ質問したらキチンと返答があると信じてるほどピュアでもないさ、こっちも。


『日本に帰るだと…?ハハッ!』

『まぁ…確かにまだ帰る方法もわからない夢物語ですけどね。お互いに情報を共有して少しでも効率良く帰る方法を探しませんか、というお誘いですよ』


 キリヤマさん……言葉にして言わないけど、気付いて。

 彼はやっぱり協力者になり得ないよ。あの目を見てよ。


『それで……それは俺になんのメリットがあるというのだ?』


 またか。まぁでも大事だよなメリット。ただ働きってのはあんまり良くない。どんな小さな簡単な仕事であっても。


『メリット…?まぁ僕はこの国ではそこそこ重職なんで多少の便宜を図ることも出来るかな。あんまり大きな事を期待されても困るけどね』


 そう言って苦笑いのキリヤマさんに、ショウゴ君は話にならないと言わんばかりの仰々しいリアクション。おいおい、今こそ得意のやれやれを言うときじゃないかい?


『話にならんな。そもそも……こんな理想の世界から地球に帰ろうなどと愚の骨頂だ』

『理想の世界…?ここがですか?』

『そうだ。この世界なら力があれば全てが手に入る。金も、女も!何の為に日本に帰るというのだ?』

『何って……そりゃ家族とか友達とか、大切な人も居たでしょう?』

『………………』


 あ、キリヤマさんが地雷を踏んだかな。どうもショウゴ君は日本で寂しい人生を送っていたタイプなのかもしれない。それは関係無いだろうが!と言われたら俺もそう思うよ。いや、俺も相当にオタ寄りな人生を生きていたけど普通に家族も親友も居たからね。


『せっかく手に入れたスキルと異世界での生活だぞ。俺が日本に帰る理由は全く無いし帰るつもりもない』


 帰りたくてしょうがない、そして帰りたくても帰れないキリヤマさんに残酷な事を言うねぇ。もちろんショウゴ君からすれば、知ったことか!だろうけど。


『………………そうか、そうですか。それは実に残念だけど、もし気が変わったら連絡をください。可能な限りは協力させてもらいますんでね』


 ショウゴ君の言葉に対して、長い沈黙の後、なんとか絞り出すようにキリヤマさんが言葉を紡いだ。しかしそれに対して嘲笑、としかいえないような嫌な笑みを浮かべてショウゴ君は立ち上がった。何が面白いんだろうか。笑う要素があったかな?あんまり俺には理解出来ないタイプだ。


『ところで、新型コロナはどうなりました?』

『は?どういう意味だ?』

『いえ別に。それにしても、サイコウジさんは日本でもそんな感じだったんですか?』


 あー、やっぱり俺ムカついてたのかな。余計なことを言ってるなぁ。そもそも、どう考えても年上のキリヤマさんに対して、その口の利き方はどうだね。キリヤマさん、ごめんね。まだガキなんだよ、俺は。世の中には10歳で大人をやれる子も居れば、30歳を超えてもガキなままの奴も居る。そして俺とショウゴ君はガキの方だ。少年の心を忘れない、なら美徳かもしれないがクソガキなのはどうしようもない。


『はぁ!?なんだそれ!くだらん!帰らせてもらう』


 案の定、怒らせた。

 やっぱり来なきゃ良かったかな~…。

 ショウゴ君がけたたましく扉を閉じる音が響いた。

 気まずい……嫌な沈黙が部屋の中に充満していた。

 しばらく、そのままだったが沈黙を破ったのはキリヤマさん。


『なるほど……カスガイさんが言ってた通りですね。間違いなく日本人、そして……帰る気は、あまり無さそうですね』


 キリヤマさんの価値観からすれば信じられないだろう。ショウゴ君はこの世界を理想の世界とまで言ってたからなぁ。俺も…ショウゴ君程じゃないけど、この世界は嫌いじゃないよ。でもそれはセシルに出会ってクリスに出会ってルーに再会したからだよ。あいつらと一緒って言うんなら、別にこの世界じゃなくても地球でも更に別の世界でも構わないと思ってるしね。そもそも記憶は無いけど俺は元々この世界の人間だし。

 しかしまぁ、実際ショウゴ君について何もわからなかったな。ワザとなのか知らないけど殆ど情報くれないんだもん。せいぜいが、多分日本ではボッチだっただろう、くらいか。いらねぇ情報だな。


『多分、彼は令和を知っていたようなんで……しかし新型コロナは知らなかったみたいですね。もしかしたら令和元年辺りにこちらに来たのかも。だとしたら生まれ変わったパターンなのかもしれませんね。髪や目…肌も見た目は日本人そのままでしたが』


 どうでしょうか。キリヤマさんが言うように、彼は日本から「来た」と言っていた。見た目も日本人だったし、キリヤマさんと同様に転移してきたパターンなのかもしれない。今となってはどうでもいい話だけどね。お互い邪魔しないように人生を頑張ろうよ。


『日を改めて、また話してみましょう。彼にとっても良い話だと思うんだけどなぁ…』


 さすがキリヤマさんだ、まだ諦めていない。

 俺はとっくに彼には何も期待していない。

 無理する理由もないしね。

 運命の螺旋の上で再び巡りあう事があったら、よろしく。

 でも神様、出来ればあんまり巡りあわない様にしといてください。

 









 そして、運命ってやつは想像以上に単純に……いや複雑に絡まっていたのかな?神様はチートスキルをくれないだけでなく俺の要望は一切聞いてくれないようだ。再会は驚くほど早かった。いやいや、実際に驚いたよ。



 ショウゴ君が逮捕されたって聞いたんだもの。


拙い小説ですが読んでくださり、ありがとうございます。

この小説を読んで少しでも面白いと思ってくれた、貴方or貴女!

是非とも感想、レビュー、ブックマーク、評価を頂ければこれに勝る幸せは御座いません

(人>ω•*)お願いします。

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