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46 半端ないって!

 


「本当に君はラスブールから来てくれたのか、まさかあのドラゴンゾンビを単騎で討伐するとは…!」


 戦っていた3人の戦士達も無事だった。その姿はボロボロで泥に塗れていたけど、この3人は紛れもなく勇者だな。同時にバカな人達だ、とも思った。あんなの相手に戦うなんて自殺行為じゃないか。ここへ来るきっかけになった『血塗れの火炎』の連中だってそうだ。あんなバケモノに立ち向かうなんてどうかしてる。どうかしてると思うけど……あの心折れない姿は崇高にすら見えた。うん、俺は感動していたんだよ。

 おそらく30歳前後の短髪の男性と、それよりは若そうではあるけど坊主頭のマッチョ。そして白く長い髪の若い綺麗な女性。うーん、相変わらず俺の出会いは男比率が高いなぁ……3分の1で女性が居ただけでも上昇傾向か。伸びしろがあると、前向きに考えよう。俺の頭の中で、金髪のモノマネ芸人が「伸びしろですねぇ!」と叫んでいた。うるせぇよ。


「「はい、緊急依頼が出たと言うことで、俺だけ先行して推参しました」」

「申し訳ないが知らない顔だな。昼に連絡したばかりなのにこんなに早く……しかも単独でドラゴンゾンビを一蹴出来るなんて、まさか若いのに君はA級冒険者なのか?!」

「「はは、失礼ながらB級C級の連中と一緒にしないでください」」


 嘘は、言っていない。


 実際に俺はB級でもC級でも……D級ですらない。下から2番目のE級ですので。でも言わなきゃバレない。そしてバレなきゃ犯罪じゃないんですよぉ…そもそもバレても犯罪じゃないよ!それよか、まだ他にも居るんですよねドラゴンゾンビ。それと被害状況はどんなですの?


「街の北部は壊滅したが、事前に避難も始まっていたから住民の被害は数十人の死者で済んだ。俺達も…想定よりも被害は少なかったな、3人分だけだが」


 もはや本気なのかヤケクソのジョークなのか、わからん。想像以上に結構な大災害じゃないですか。遠くから煌々と光を放っていたのは、やはりと言うか残念ながら街の北部の火事でした。今も深夜なのに薄明かり程度に周囲が見えるのはそのせいだ。

 3人分の被害が少なかった……って、もしかして今ここに居る3人のことですか?想定では全滅かよ。あんなバケモン相手なら逃げましょうよ。

 

「おいおい、ヤンクロットを甘く見るなよ?逃げるような冒険者は居ないさ」


 前世を平和な日本で過ごして、この国でも最も安全な街オルトレットに生まれて、その次に安全だろう王都の冒険者ギルドに所属している俺からすると信じられないほどに命が、軽い。でも多分、この世界のスタンダードは彼らなんだろうな。

 だとしても、そんなことを言わないで欲しい。逃げてもいいじゃないか。命あっての物種だよ。そう思いながら俺の頭にあったのはワレンの事だった。そして1000年前の自分の事も。自分に出来ない事を勝手に他人に押し付けようなんざ……つくづく浅ましいよな。


 今回は、偶然の流れでルーが動いてくれた。

 それで3人の命が救われた。

 3人が救われただけでも僥倖なんだ。

 それ以上を望むのは俺の力量では自惚れだろう。

 ああ、また自己嫌悪に陥りそうだ。

 そんな資格も無いくせに。

 今は考えないようにしよう。

 それより、まずは脅威の排除だ。


「「残りのドラゴンゾンビはどこにいるんですか?」」


 ヤンクロットの北に複数出現としか聞いてないもんで。2体だけでも複数だし100体居ても複数だ。まぁ100体も居たら群れとか大群とでも表現するかもしれないけど。

 

「あと一体、デカいのが残ってる。たった一発のブレスで、この街を破壊してくれた最悪のヤツだ」


 街の北部をブレス一発で壊滅させてくれた、とんでもないのがいるんだと。どうやら、そっちがメインで今さっき倒したのはオマケの方らしい。もし知性があるなら「ククク……ヤツはドラゴンゾンビでも最弱…人間如きに遅れを取るとは情けないヤツめ!」とか言って欲しいね。まぁでも、複数が2体で良かったわ。こんなんがいっぱいいたらヤンクロットどころか、この国が滅ぶ。


「少年、君がどれだけ強いとしても1人でアレに挑むのは無謀だ。増援はもっと来るんだろう?それを待ったほうがいい」

「住民の避難が終われば、兵士もこっちに来てくれるだろう……あまりアテにはできんが」


 短髪と坊主頭のおっさんに交互に待機を勧められた。これ以上被害が出ないなら、それもいいかなぁ。念願の初夜の時間が減るけども……いや、アカンアカン!減らされてたまるかっ!今となってはそれがメインイベントだぞ!言っちゃ悪いが、最早ヤンクロットのドラゴンゾンビ退治はメインイベント前の前夜祭みたいなもんだ。チャッチャと終わらせてイチャイチャさせてくださいよ!それで、そのデカいヤツはどうしてますの?


「アイツは最初に特大のブレスを放ってからは大人しくしている……魔力を回復させているのかもしれん」


 シン・ゴ○ラかな?

 じゃあ放置はまずくない?

 映画だって、大人しくしてる間に対策して退治してたぜ?


(動かないうちに聖属性魔法で昇天させてしまおう)


 そうだよな。爆弾がそのままじゃ安眠出来ない。

 やっぱり、今から行こう。


「「いや、俺が今から倒してきます。街の北ですね」」


 その後も3人に止められたけど、大丈夫ですよ。ここにルーが居る以上倒せないってのはありえない。だから安心してください、穿いてますよ。違う。安心してください、既にヤンクロットは助かったんだよ。大丈夫じゃないのは憑依が終わった後の俺くらいのもんですよ。どうぞそっちの方を心配してやってください。


 倒す手段があるなら、遊ばない。油断しない。

 最後、もう一体のドラゴンゾンビまで走るぞっ!












 その最後のドラゴンゾンビは街の北方、数キロほど離れた所に居た。あそこからブレス一発で街をこんなに破壊したのか……とんでもない破壊力だな。


 そういえば、ルーに憑依してもらってる今なら鑑定も出来るんだった。やってみようかな鑑定。ねぇねぇ、やってみていい?鑑定。


(あまり意味は無いと思うけど……やってみたら?)


 なによ、テンション低いわね。鑑定は転生モノのお約束であり基本にしてキングオブチート能力でしょうが。情報を制する者が世界を制するんだよ。本来は第1話かそこらでやることなんだからね。げ、これだけ距離があっても鑑定が出来るんだな。どれどれ……。





【タイラントレッドドラゴンゾンビ】


【レベル:117】



【HP:17670/17670】

【MP:8590/19500】

【筋力:12650】

【体力:19250】

【敏捷:722】

【知力:92】

【魔力:954】

【器用:646】



 暴君赤竜の息吹 身体強化(特大) 物理攻撃耐性 魔法攻撃耐性 状態異常耐性 精神異常耐性 自動HP回復 自動MP回復 治癒魔法弱点化 聖属性浄化魔法致命化………





 突然、詳細にして膨大なデータが頭の中に流れた。詳細過ぎて一瞬、目の前が数値や文字で埋め尽くされたわ。俺には理解出来ない訳の分からないデータも山ほどあって、見ただけで文字通り頭が痛くなった。マジで脳が焼けるかと思った…!鑑定ってこんな感じなの?想像と違う。それでも、なんとか知ってるデータだけは目に焼きつけた。いや~流石は鑑定、色々わかるんだね。そしてやっぱりドラゴンは伊達じゃないね、ステータスがエゲツないな。強そうだ………いや違う、間違いなく強い。

 さっきのと違って、ゾンビとは言うが一見普通の状態に見える。そんな全身が腐ってるとかそんな感じじゃない。まだ新鮮なんだろうか。もっと近くで見たら実は顔色が悪いとか、地味に腐ってるのかな。まぁ普通の状態のドラゴンなんて見たことありませんけどね!それに初見でドラゴンの顔色の変化なんてわかる訳がない。


(通常のドラゴンと比べても、ずいぶん弱体化してる。魔法が使えなくなってるしスキルもかなり失って変質してる)

 

 そうなんですか。実際にドラゴンを見た人がそう言うのなら、そうなんだろうね。確かに治癒魔法弱点化やら聖属性浄化魔法致命化なんて普通の生物が持つスキルじゃないよな。デメリットしかないじゃん。アンデッド化したからか………というか、これで弱体化してるの!?敏捷とか脳みそは死んでいるのかもしれないけど……筋力も体力も半端ないっすよ。ドラゴン半端ないって!もう~!!あいつ半端ないって!

 大きさは……さっきのヤツと比較しても倍ほども大きい。もはや、小さな山だよ。こんなん人間が正面から戦うなら何人が死ぬかわかんないよ。というか大勢を集めて束になったところで勝負になるんだろうか。


(ス○ウターじゃないから戦闘力が表示されるわけでも、ないよ)


 結局はステータスなんて目安に過ぎない、って言うんでしょ。


(攻撃力が高くても攻撃を当てられなかったら意味が無いし、攻撃を避けられなければ体力がいくらあっても死ぬ。戦って生き残るには、こういう数値より大事なものがいっぱいあるんだよ。ちなみに私は神眼で見てるから、もっと詳細な情報や弱点もわかります。ふふん♪)


 見えないけど多分ドヤ顔してますよ、この子。そりゃ貴女は破天荒なステータスしてっからな……相手の数値がなんであろうと問題無いんでしょうけども。強さ、か。わかるよーなわからんよーな……って、何にしても放置はダメだね、コレは。こいつは存在自体が災害、悪夢だな。

 魔力量…MPが半分以下なのは、街の北を破壊したというブレスで減ったのかな。その回復のためなのか事情は知らんけど、確かにじっとしている。死んでいるかのようだ。いや、ゾンビだから死んではいるんだろうけどね……。

 そのまま動くなよ……さっきの聖属性魔法でとっとと昇天していただこう。緊迫した戦いとか盛り上がりとか、今は求めてないのだ。ここで必要なのは過程より結果だ。


「「《神聖なる五芒星》」」


 再びドラゴンゾンビの直下に巨大な魔法陣が出現した。それまでピクリとも動いていなかったドラゴンゾンビだが、流石にこれには反応した。

 俺に向かって即座に大口を開けて、マグマのような……というより、小さな太陽のような光球を作り出している。あれがブレスだろうか。いや~…竜の息吹なんざ、あんまり正面から見たいものじゃないな。これが他人に向かって吐かれるものなら感心もしようが、己に向かって吐かれるのは勘弁してほしい。アレに当たったら……めちゃくちゃ痛そうだし熱そう。そう感じる余裕も時間も無く消え去りそうだが。ヤベェ、来る!死ぬ!

 しかし、そのブレスは放たれること無くタイラントレッドドラゴンゾンビは魔法陣から立ち上った白い光の中に消滅した。あまりにあっけないが、即死魔法ってのは良いですねー。












◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇












「本当にあのデカい方も倒しちゃったのかよ。とんでもねーな……」


 弱点攻撃をしたからね。もし正面からやったのなら、それなりの戦いになったのかもしれないけど。いや、戦うのがルーである以上、結果は同じだろうな。タイラントレッドドラゴンゾンビを聖属性魔法で倒したら、こちらは後に竜骨の山と少々の竜の鱗、そして巨大な赤い魔石が残った。最初のは鱗が無かったのは腐ってたせいなのかなぁ?一見、普通のドラゴンぽかったけど肉とかは無いんだね。まぁゾンビの肉なんざ要らないけどさ。

 それらの素材も収納魔法で回収できるものは回収して、後はのんびり歩いてヤンクロットまで帰ってきたよ。もうこれ以上、俺の肉体にダメージを重ねたくないんだよ。そこまで俺はドМじゃないの。ただでさえ死ぬ程ヤバいと言われた状態からドラゴンゾンビ2体と戦ってしまったからなぁ。


 ちなみに、まだルーのとの憑依は解いていない。憑依を解いた瞬間に、俺は激痛に襲われるそうだから今夜宿泊する宿までこのままだ。せめてベッドで寝かせてくれよ。








「おかげでヤンクロットは救われた…!ありがとう!」


 坊主頭のマッチョと白い髪の女性に涙を浮かべ感謝された。どういたしまして……だが本当に感謝すべきな人は俺じゃなくて憑依している中の人なんですけどね。中の人などいない!と言いたいが、居るんだよ今回は。

 もう1人の短髪の男性は、ヤンクロットの危機が過ぎたことを皆に知らせに走った。まだ街の北部の火事は完全には鎮火していないが、そこは街の人々に頑張ってもらおう。

 俺も、そろそろ限界だ。いや、一応は動けるんだけどルーから限界だと言われた。この後、俺の地獄タイムが始まるよ。どこかのボタンを押したらスキップ出来ないかなぁ。そうそう、その前に伝えなきゃいけないことは伝えておかないとね。

 短髪の男性と白い髪の女性に王都ラスブールから冒険者と騎士団の応援が既に出発していることを改めて伝えた。おそらく、早けりゃ明日の夜にも先頭の人は来るんじゃないかな。それと、多分明後日くらいに俺の仲間達がやって来る筈なので俺の居場所を伝えてください。

 それからどこか寝場所に案内してもらえません?多分、今から要安静になるので。ええ、僕が。元気そうに見えるでしょうけど、僕は今から寝込みます。ぶっ倒れます。ええ、この僕が。

 すると白い髪の女性……アンヌさんと名乗った女性におススメの宿まで案内してもらうことになった。綺麗な女性相手なので俺もちょっとキョドって「アレクシスです」と辿々しく名乗った。色々なことがありすぎて、ここまで名前を言うのも忘れていたわ。

 さっき、今日2度目の消臭をしてもらったけど臭くないだろうか。ほぼ瞬殺だったけど、やっぱりゾンビと戦ったとなったらどうしても臭いが気になるじゃないですか。特に美女の隣を歩くとなったら気にすべきだろ。



 宿までの道中は殆どの人が避難しているせいか、怖くなるほどに静かだった。そんなヤンクロットの街の中を歩きながら間が持たないので気になっていた事を質問してみた。

 

「「あの!アンヌさんは……リリアという子をご存知ですか?」」

「あら、わかる?あたしはリリアの姉よ。ああ、もしかして王都であの子達に会ったの?元気してた?」


 俺のヤンクロットに関する情報なんてほとんど無いに等しい。新人講習会であった3人と『血塗れの火炎』の面々が、この街の出身ってなくらいのもんだ。

 それでも、リリアの白いプラチナブロンドは印象的だったんで覚えていた。アンヌさんの髪がリリアにそっくりに綺麗な髪なので一応聞いてみたら、ビンゴだったようだ。ええ、3人とも元気そうで楽しそうにしてましたよ、たまに冒険者ギルドで顔を見かける程度ですけど。もうすぐ彼らもE級になるんじゃないかな。今は慣れない環境に少々手こずってるみたい。でも真面目に一生懸命、頑張ってますよ。

 そうですか、貴女はリリアのお姉さんなのね。じゃあ、この人もハーフエルフなんだろうか。あ、よく見れば確かに耳が長い……まぁいちいち言う事でもないか。今はとにかく早く寝たい。せっかく知り合えた美女との縁を雑に扱う男が俺なんだ。うん、ハーレムなんて夢のまた夢ですね。



拙い小説ですが読んでくださり、ありがとうございます。

この小説を読んで少しでも面白いと思ってくれた、貴方or貴女!

是非とも感想、レビュー、ブックマーク、評価を頂ければこれに勝る幸せは御座いません

(人>ω•*)お願いします。

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