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4 いい仕事してますねぇ


「父上、ぼくにも剣や槍をおしえてください!」


 決意した俺は、夕食後に思い切って父に武術修行を願い出てみた。男は決意したなら明日から頑張ろう、じゃなく今日なんだよ。今から頑張るんだよ。そんな男の……いや漢の決意を前にして父よ、はぁ?と言わんばかりの顔はやめてくれませんか。


「はぁ?」


 ……言うんかい。もう少し俺の心意気を汲んでいただきたい。そちらからも歩み寄って欲しいものだ。


「アレクシス、お前まだ3歳だぞ?ちっちゃいくせに何を言ってるんだ?」


 わかる。わかりみが深いよ。父が至極真っ当なこと言ってるのはわかってるんだ。しかし、のんびり成長を待つなんて無理ぽ。幼少期からのセルフ英才教育は転生者のお約束でしょう。俺は…俺は今なんだよ!


「ぼくもレスリー兄さんやジェロム兄さん……いや父上のように格好良く剣をふってみたいんです!父上のように!」

「ほぅ……俺みたいになぁ…格好良くねぇ…」


 露骨なお世辞だが、ちょっと得意げな顔になってきたな。少し鼻が膨らんでるぞ。我が父ながらチョロそうだな。嫌いじゃないぜ、父のそういうとこ。


「う~ん……普通はな、勉強でも何でも『水鏡の儀』が終わってから始めるもんだぞ。レスリーやジェロムもそうだったし」


 サラッとなんか重要そうなキーワード言いやがったぞ、この親父。3歳児相手なんだからさぁ……もう少し詳しく説明しろよ。好きじゃないわぁ、父のそういうとこ。


「水鏡の儀?ってなに?いつやるの?」

「あー………えっとな、お前にどういう才能があるのか、どんなスキルを持ってるかを神様に聞く儀式なんだ」


 スキル!?やっぱりそういうのあるのかッ!お約束だもんな。でもホントか?ホントなら俺は定番のチートスキルを授かってるんだろうか。そんなことを言い出したら俺の内の中二病の病巣が疼き始めるじゃないか。前世では結局完治しなくてなぁ……皆もそういうもんだろ?誰だよ、皆って。


「いつやれるの?!どこ行けばいいの?」

「慌てるな。神殿でやるんだけど……あれは何歳でやるんだっけ?もう少し大きくなってからだよなぁ?」


 男親はどこの世界でもいつの時代でも雑だよな。テキトーっていうかさ。ほれ、母がちょっと呆れてるぞ。俺だって呆れているからな。しっかりしろよ、父。


「学校が始まる7歳の春にやるのよ。この街の子供、全員がね。そして自分のスキルにあった訓練や勉強をするんだよ」


 なるほどね。

 合理的というか無駄がないというか。

 それで7歳まで待つ、と言うのはわからんではない。でもな。


「がんばったことは無駄になりません!今のうちから武術をおしえてください!」

「良いんじゃない?今日さ、一緒に海まで馬で連れて行ったんだけど、アレクはかなり速度を出しても全然平気だったんだ。大したもんだよ、こいつ」


 おおっ、ナイスアシストだよレスリー兄さん!俺は兄さんは出来る男だと思っていたよ。信じていた。この残念な父にもっと言ってやってくれ。


「お前は初めて馬に乗せたとき泣いてたのにな」


 それで怖くないかと俺に何度も聞いたのか。経験談だったのか。泣いたのか。泣いたんだな。レスリー兄さんにも歴史があり。


「な、泣いてねーよ!泣いたのはジェロムだろ!?」

「ああ、ジェロムも泣いたな」


 兄貴2人全滅かっ。

 そこまでいくと父側にも問題あるんじゃねーの?


「………まぁ、そんな感じで父さんの教え方は少々荒いけどアレクがやりたいならやらせてやれば?」


 荒いのかよ。やっぱ父側に問題あるんじゃねーか。

 ちょっと怖くなるじゃねーか。

 それを知ってて推してるのか兄よ。

 意外と黒い部分もあるのか兄よ。


「………俺はまだ早いと思うけどな。まぁいいさ。やりたいならやってみ。あー、でもちびっこサイズの剣なんてないからな。しょうがねぇな、木剣でも作るか……それが出来るまで待つんだな」

「それなんですが、父上。まず槍を習いたいので槍をください」


 いや、槍は兵器の王っていうじゃん。剣道三倍段、剣術三倍段ってヤツだよ。素手で剣に挑むには三倍の段が必要……の方じゃない。本来の、長物を相手するには剣は三倍の段が必要とされる方だ。ほら、俺も詳しくは知らんけど幕末の剣豪を軒並み倒した薙刀使いの女性も居たそうだし。


「槍?馬も乗れないちびっ子がランスなんて10年早いわ」


 ちゃうねん。そういうのじゃなく長柄の……両手で持つ……先の尖ったやつだ。槍だよ槍。なんていうの?!アレ。身振り手振りで説明に四苦八苦したが、なんとか伝わったようだ。


「スピアのことを言いたいのか?どこで覚えてきたんだ……。おい、ジェロム。すまんがアレクをカール爺さんのトコに連れて行ってくれるか。あの爺さんなら、なんでも作ってくれるだろ」


 お手数をおかけします。父に俺を押し付けられたジェロム兄は「じゃあ明日、学校が終わったら行こう。昼過ぎになるかな」と優しく言ってくれた。ジェロム兄さんは母に良く似た、これまた綺麗な顔のナイスガイだ。母はともかく、あの残念な父の子とは思えないぜ。

 ほんと助かるわぁ。ジェロム兄さんは13歳のはずだが学校に在籍中でたる。学校は7歳から通うらしいが結構長期間通うんだなぁ。小学校中学校が合体したくらいのノリなんだろうか。俺はワクワクしつつも、そんなどーでもいいこと考えながらその日は眠りについた。


 今日も良き日であった。

 俺は幸せの中に眠りについた。

 あぁ、仕事の無い日々って最高だなオイ。















 次の日の朝、俺は全力で変顔をしていた。


 碌に鏡も無い家なので、俺は自分がどんな顔してるかよく知らん。周りの皆からは母親にそっくりのかわいい顔で良かったねと言ってくれてるが、実際に自分の顔なんて見たことないからな。なんせ鏡が無いからさ。

 そういうハンデはあるが、この変顔は前世で姪っ子甥っ子に鉄板だったネタだ。例え子供たちがギャン泣きしてても、こうかはばつぐんだ!という自信があったのだが……今その自信は崩壊しようとしてた。

 いやね、昨日セシルの機嫌を損ねたからね。そのリカバリーに必死なんすよ俺も。所詮幼児、一晩経ったらすっかり忘れてるだろうと思いきや全然ですからね。無駄に良い記憶力をしやがって…!


 ちゃんと2人の秘密基地にまで来てくれるところは微笑ましいが会うなりプイってしやがった。そこで変顔ですよ。俺のポリシーは初手全力だ。出し惜しみ無し手加減なし。二の太刀要らず、薩摩の示現流の精神です。

 格好つけてもやってることは変顔ですけどね。俺の全力の変顔に不機嫌モードのセシルも一瞬ぷぷっとほっぺを膨らませたが今度は反対方向にプイされた。

 初太刀をかわされた…!打つ手無しか…!?しばらく変顔したまま動けないでいると、セシルがやれやれお手上げだぜと言わんばかりにジェスチャーしやがった。アメリカ人かね、君は。


「反省してるの?」


 逆にお前こそ反省の意味を知ってるのかと問いたい。問い詰めたい。小一時間問い詰めたいが我慢だ。たぶん、両親の夫婦喧嘩でも見て聞いて覚えたんだろう。子供ってそういうのすぐ覚えるからな。


「うん、反省してる。すっごいしてる」


 ……別に俺は悪いことはしてないと思うが。変なことをしたのは間違いないからな。ある程度は自覚はしていたよ。


「なら、ゆるしてあげる。今日はなにしてあそぶ?」


 よっしゃ!無事、セシルの機嫌を取り戻すことに成功したようです。ミッションコンプリート!もう無理かと思ったぜ。ホッと安心した俺は、機嫌良くなったセシルと2人していつものように遊びながら、今日は槍を作ってもらう話をした。


「槍ってどんなの?」


 セシルの父親も騎士なので剣は知ってたが槍は知らなかったようだ。俺もランスだスピアだのよく分かってないけどな。


「アレクが作ってもらうならボクもっ!」


 そう、セシルはボクっ娘だ。あざといとか言っちゃダメだよ。ボクっ娘……俺は嫌いじゃないですよ。そんな俺は決してロリコンじゃないけれど。マジでマジで。ホントにホントに。


「セシルも槍を練習するの?」

「ボクは……弓の方がいいな。父様がやってて格好良かったんだよ!」


 セシルの父とうちの父は親友同士で、しかも同僚だ。だから隣同士に家を建てたらしい。そんで裏庭には両家共有の訓練所が設けてある。そこで馬術から武術弓術と練習できるワケですよ。俺も時々、父や兄またはセシルの親父さんの訓練風景を見たりしていた。

 そんなこんなで、セシルも俺と一緒に武器を見に行くことになった。もしかしたら弓もあるかもしれないし。そもそもカール爺さんが鍛冶屋なのか武器屋なのか何でも屋なのか、俺も知らんけどさ。槍をなんとかしてくれるなら弓とかあるんじゃねーの?多分。


 昼過ぎ、学校を終えたジェロム兄さんの帰宅を待って、幼児2人で兄さんに突進した。おもちゃ屋に連れてってもらうレベルの勢いで突進したもんだからジェロム兄さんが若干引いてるじゃないか。そこで俺はセシルも同行したい旨を説明して、カール爺さんの店に一緒に連れて行ってもらえるようにお願いした。もちろん、優しいジェロム兄さんはすぐに許可してくれたよ。さぁ、3人で仲良くカール爺さんとやらの元へ向かうよ。

 今までほとんど外出する事すら無かったのに昨日は海、今日はカール爺さんの店へとお出かけだ。俺も随分とアクティブになったもんだぜ。昨日の経験がある分、俺は落ち着いたものだがセシルの方はおのぼりさんそのものに周りをキョロキョロしてやがる。ふっ、まだまだガキだな。

 目的地であるカール爺さんの店は俺たち幼児の足でもそんなに時間のかかる距離でもなかった。店というが看板らしいものはないようだ。常連さんか紹介だけで遣り繰りしてるのかな。中へ入ってみると店内には、やはり武器が並んでいた。武器以外に農機具や漁具らしい物も見えるから武器屋というより鍛冶屋的な店なんだろうな。


「すみませーん!カールさぁん!居ますか~!?」


 ジェロム兄さんが店の奥に声を掛けると、奥からゆっくりと小柄な男性が出てきた。中学1年相当のジェロム兄さんと比較しても身長はずいぶん低く……見た感じ1メートル少々程度だが、その腕も脚も首も太く屈強そのもの。なんとなく岩の塊を連想した。長く見事な髭は白くて年齢を感じさせるが、全身の筋肉から力が溢れてるようだ。


 知ってる……ゲームで見たことある!

 この人は、ドワーフってやつか!?


「狭い店でデカい声を出すな、聞こえとるわ!」


 ジェロム兄さんよりはるかにデカい地声で言われても。一行で矛盾しとる。この人がカール爺さんか。怒ってるわけでもないんだろうが愛想は控えめな人生なんだろう、素気ない顔でジロリと俺とセシルを見た。


「おれの弟のアレクと、こっちはロレシオさんとこのセシルです」


 兄に紹介されて2人で頭を下げて挨拶をした。

 挨拶も人生では大事だよ。

 しかも基本無料(タダ)だしな。


「……ウチは託児所じゃねぇぞ」

「わかってますよ。このアレクがね、槍を修行したいらしいんですよ。でね、この子のサイズにあったスピアを作って欲しいんです」

「ウチはおもちゃ屋でもないんだがな。こんなチビが来るなんて初めてだぞ」


 そういいながらも、バックヤード?の方から何本か棒を持ってきた。即座に却下しないとは愛想は無いが悪い人ではなさそう。


「ほれ、チビ助。これ持ってみろ……太すぎるな。これはどうだ?重いか?持てるか?」


 カール爺さんによる丁寧なサイズチェックが続く。案外この爺さん、子供好きなのかもしんないな……そんな気がしてきた。結局、当然ながら今の俺に合う柄は無いので太さ長さ共にオーダーメイドということになった。長さは1メートルちょい、短槍の更に小さめバージョンだ。すぐ大きくなるからと少し長めにしてもらった。ほら学校の制服買うときに、すぐに大きくなるからと少し袖の長いのやつを買うノリだな。


「お爺ちゃん、ボクは弓をみせてくださいっ」


 俺のサイズチェック中に店内を探索してたセシルが戻ってきた。店内に弓もあったみたいだけど、当然大人用だ。今のセシルには短弓でもデカ過ぎる。

 カール爺さんに再びお前らみたいなちびっ子には無理だろ的な顔をされたが結局こちらも採寸となった。そういやセシル……お前、親の承諾取ったのか?朝、ココへ来る話をしてから俺達はずっと一緒だったよな?事後承諾で良いのか?これも料金が発生するんだぞ?

 俺とセシルの採寸が終わったところでジェロム兄さんが料金と納期に関して質問していた。料金は納品のときで良いそうで、製品は10日後に取りに来いと言われた。カール爺さん、よろしくお願いします!







 家への帰り道、気になっていたことをジェロム兄さんに質問してみた。


「ジェロム兄さん、あのカール爺さんはドワーフなの?」

「ん?ああ、そうだね。よく知ってるな、アレク。あれ?……俺、言ったっけ?」


 マジでドワーフなの?地球でも差別的にドワーフ呼ばわりはあったそうだが、それとは違うやつ?異人種なの?じゃあエルフとかもいるの?定番(お約束)ならいるよね?いて欲しいよね?


「エルフは俺も見たことないなー。オルトレットにはあんまり居ないんじゃないかな」


 ということは、オルトレット以外なら居るかもしれないんだ!?ここはエルフやドワーフが居る世界なのか?いやしかし、俺は疑り深いんだ。チョロいけどな。すぐ騙されるけどな。昔観た映画の『トゥルー○ンショー』のように、実は街ごと撮影のセットで世界ぐるみのドッキリでした!の可能性はまだ捨てきれない。もはや微レ存だが。でも正直言うと、ワクワクしてるんだよ。なんだかんだで結構好きなのよナーロッパの世界。期待しちゃうよな。何を?と言われると……そりゃ色々だよ。


 家に戻ると、セシルが弓購入の事後承諾を得る話に俺も同席しろと言い出した。えー、マジで?というか、言いにくいくせに独断で先に発注するとは……セシル、恐ろしい子!


「おねがいっ!いっしょにきて?」


 後ろから上目遣いで袖をくいくい引っ張るなよ……これが10年後なら惚れてまうやろ。しょうがないな。かわいいには逆らえないよ。俺はロリコンじゃないけど、こんなかわいい子を悲しませる訳にはいかんだろ。









「「おねがいします!」」


 かくして幼児2人して、ロレシオおじさんの帰宅を待ち本日2度目の突撃を行った。まぁ父親の言うことなんざ大体同じだ。俺だって逆の立場なら同じ事を言うだろうしさ。セシルとロレシオおじさんの間に昨日、俺と父とのやり取りをコピペしたような会話が続いた。が、セシルにとって有利なのは俺が既に許可を得ていたことだ。


「アレクといっしょがいいのっ!」


 これは結構有効な一言だよ。みんな持ってるんだよ!と言われたらゲームやおもちゃでも買っちゃうよね。誰だって我が子には仲間外れになって欲しくないもんな。よそはよそ、うちはうち!って対おねだり防御用最強の言葉を出されたら終わりだけどね。

 はたして……ロレシオおじさんはセシルに甘かった。おねだり成功だ。そりゃ、こんなかわいい子にお願いされたら男親は勝てないよな。俺だって勝てねぇよ。しかし同時に条件を出された。


「力も足りないけど腕が短いからな。弓はまだ難しいと思うぞ……どうしても修行をしたいなら、剣もやってみなさい」


 修行に関して元々の言いだしっぺは俺だし、セシルが一緒にやりたいと言ってくれているのだ。俺もセシルの剣の修行に付き合おうじゃないか。剣も格好良さそうだしな。そんなわけで俺たちは次回カール爺さんに槍と弓を受け取りに行くときに木剣も作製してもらうことにした。セシルも俺も恵まれた家庭に産まれたことを感謝しようね。










 注文した槍と弓が完成するまでの10日間……早かったような長かったような。俺たちは今は毎日遊ぶのが仕事状態なので、ほとんど遊んでたんですけどね。

 それでも、少しでもトレーニングにもなりそうな鬼ごっこやケンケンパやら昔の遊びを思い出して取り入れたりしてみた。言っとくけど、前世のオッサンだったときの子供時代でもあんまりこういう古風な遊びはやってないからね?小学生の時点でファミコンが発売してたから基本インドアで遊んでたよ。ん…?じゃあその前は何してたっけ?田舎生まれなんで川遊びは好きだったし山で駆け回ってたりしたけど……やっぱり、よく覚えてないわ。


 時と話を戻そう。今日は再びジェロム兄さんとカール爺さんの店に行く日だ。この前の再現として、幼児2人で学校帰りのジェロム兄さんを迎撃したが、今度はかわされた。さすが兄さんだ。チッ。

 そのまま3人で再びカール爺さんの店に入ると、爺さんはすぐに注文の槍と弓を持ってきてくれた。おお…!初めてみる自分の専用武器ってのはアガるね。なんにもしてないのに強くなった気がする!もちろん気のせいだよ。あ、装備!武器や防具は装備しないと意味がないからね。これはどんな世界であっても共通ですよ。

 俺が感動してる横で、カール爺さんはセシルに弓を持たせて弦を調整していた。やっぱり見た目からは想像出来ないが、この爺さんはかなり面倒見は良いみたいだ。小さな弓だから、と専用の矢も作ってくれていた。この爺さん、顔に似合わず良い仕事してますねぇ。 


 それにしてもこの短槍、手に馴染むわぁ。練習用だし装飾もなしでシンプルな槍だけど気に入ったよ。後でなにか名前でも考えよう。そして、再びカール爺さんの(だからお前らにはまだ早いって)と能弁に語る視線をかいくぐりながら木剣を2本注文して帰宅した。待ちに待っただけに夜は槍を抱いて寝たよ。我ながら微笑ましいな、俺。そして危ないよ、俺。
















 それからの俺たちの日常はこんな感じ。


 基本的には昼まで一生懸命遊ぶ。午後は学校帰りのジェロム兄さんや休日の父上もしくはロレシオおじさんに見てもらいながら剣を振ったり槍を素振りしたり、セシルは弓に挑戦したり。確かに傍から見りゃ子供が遊んでるようにしか見えないかもな。でも一生懸命だよ!

 雨の日はエミリー姉さんや母上らに文字を習ったりした。やっぱりさ、本を読めるようになれば情報収集は飛躍的に捗るしね。と言っても、この家には本が少ないんだよな。文字を覚えるためか絵本は数冊あるが後は宗教関係っぽい本が一冊あるくらいで、お約束の魔法書とか無いんだよ。これが普通なのか?それともシルヴァ家の住人は脳筋ばっかりなのか?ああ、脳筋ばっかりでしたね!


「なぁ、セシルの家に本ってあるの?」


 今日は朝から雨が降り続いているのでセシルと2人で書き取りの練習中だ。タブレットくらいの大きさの板の表面に薄く蝋を流して、これに細い棒で引っかくようにして文字を書いてる。何度も書き直せるから、これは文字の書き取り練習には非常に便利だ。紙やインクはあんまり家の中では見かけないし、想像以上に贅沢品なのかもしれないな。


「あるよー。いっぱいあるよ」


 本当に?やっぱシルヴァ家の方が脳筋の家なのか?少なくとも父は脳筋の可能性大だ。もちろん悪い人ではないけどさ。


「絵本じゃないやつだぞ。難しい本だぞ?」

「………………あったかなぁ?」


 絵本がいっぱいあるだけかっ。まぁ絵本にも役立つ内容があるかもしれない。今度読ませてもらおう。ちなみに我が家の絵本は英雄譚ばっかりだ。王国の騎士やら勇者的な主人公が竜やら化け物退治してめでたしめでたしって話だ。竜がいるのか!?とも思ったが、こういう内容の絵本なら探せば日本にも多分あるだろう。これだけでは、ここが異世界である決定的な証拠と言うにはまだ弱いよね。もっと情報が欲しいなぁ。



拙い小説ですが読んでくださり、ありがとうございます

この小説を読んで少しでも面白いと思ってくれた、貴方or貴女!

是非とも感想、レビュー、ブクマ、評価、頂ければこれに勝る幸せは御座いません!

(人>ω•*)お願いします。


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