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37 ここまでが第1話


 城の厩舎から、預かってもらっていた俺達の馬を返却してもらい3人でのんびりと冒険者ギルドに向かっていた。そのうちルー用の馬も用意する必要があるなぁ。いや、俺とニケツでもいいかな?黒鎧モードじゃなきゃ問題ないだろ。彼女に密着も出来るし、このままでもいいかも。いや、このままの方がいいな。


「はぁ……ほんっとに疲れたよ…」


 俺はルーと並んで、自分の愛馬ディープとセシルの馬の両方の手綱を曳いて歩いている。セシルはさっきから自分の馬に乗ったままグッタリしてブツクサ言っている。どうやらさっきの対マティアス王子でかなり消耗したようだ。まぁ、アレだ。とりあえずお疲れさんと言ってやりたい。


「アレクも全然助けてくれないしさぁ……」

「え?なんだって?」

「朝から疲れたって言ってんの!」


 なんだよ、ヒステリーかよ。よくわかんないけど休んでろよ。ギルドの場所くらい俺でもだいたいは分かってるからさ。しばらくすると漆黒の鎧を着たまま、俺の横を歩いているルーが話しかけてきた。


「あの王子、想像以上に強いぞ」

「C級って言ってたもんね。体もでかかったしなー。俺と闘ったらどうなりそう?」

「十中八九、君の勝ちだろうな。でも油断してると足を掬われるよ?」


 あのね、油断なんて出来る訳ないでしょうが。俺の対人戦の戦歴どんなだと思ってんのさ。練習込みだと勝率1割以下だぞ。2万回以上、貴女に黒星を付けられてるのに調子に乗れる理由がない。

 実は今日、師匠に恩返しを目論んでいるんだ。一晩寝て多少は回復しただろうが魔力のガス欠の翌日だ。今ならチャンスありじゃないだろうか。セコい?ズルい?せめて戦略的だと言っていただきたい。どこかで隙を見て挑戦してやるぜ。








 よし、無事に冒険者ギルドに到着した。昨日はチラッと見ただけの冒険者ギルド……改めて間近に見ると、かなり大きな建物だなぁ……なんというか歴史がありそうというか、汚れている訳ではないが、簡単に言うと古そう。入り口の上にはドラゴンと剣が2本交差した看板がデザインされてる。いかにも!なデザインだよな。捻りがないというか。捻られたら、今度はひねくれてるよねと思うだろうが。

 さてと、まずは馬……どうしよう。日本で言う駐輪場みたいなのないかな?こういう時はクリスが役に立つんだが、今は居ない。セシルはまだふて寝してるので俺が頑張るしかない。大丈夫、ひとりでできるもん!の精神だ。気分は初めてのおつかい。ホラ、あの曲が流れてくるぜ。おやおや、アレクシスくん1人で大丈夫かな?


「すみません、馬を繋ぐ場所ってどこでしょうか?」

「あぁ?お前ここは初めてか?……あそこ、見えるか。あそこから裏に入れるから、そっちに繋いでこい」


 ギルドから出てきたおじさんに聞いて無事ミッションクリア。怖そうな外見だったが、話しかけたら良い人だった。ホント申し訳ない。俺達、田舎からのお上りさんなんです。そんなの言い訳にならないけど。


 はい、セシル起きて。

 降りましょうね。はい、おっきしなさい。

 

「よし、いくか」


 さぁナーロッパでの最大のお約束の一つだ。色々と期待しようぜ!期待と不安と共に勢いよくスイングドアを押し開いて中に入ると、そこは想像したほど騒がしくもなく人も多くはなかった。

 うーん、人が少ないのは時間帯のせいかもしれない。もう昼近い時間だもんね。そして建物の中を見て俺が連想したのは、ヨーロッパの古いパブだ。内部は結構広いが半分以上はテーブルも並んでいて酒場の雰囲気の方が強い。

 奥には受付カウンターがいくつか並んでいるが、今はカウンター内に人が居るのは一つだけ。


「おい、お前ら。見ない顔だな」


 早速、世紀末救世主伝説とかで出番の多そうな人に声をかけられた。口癖はヒャッハー!的な人だよ。なんかトゲトゲの服を着るタイプ。そんな人に秒で声をかけられた。テンプレか。これがテンプレなのか。まだなんにもしてないのに。中に入って歩いて数歩やないか。こうならないように、ルーには黒鎧モードで来てもらってるのに。


「私とセシルを君のような若造が連れて歩いていたらテンプレじゃなくても絡まれるぞ」


 事前にそう言われて、なるほどなと思ったんだよ。確かにな、と。それがどうだ。セシルがそのままで居るけど同時に魔王のような黒騎士も連れていて、そんな俺達に声かけるかね、ヒャッハーな人よ。それとも、こんな魔王みたいなのが当たり前のように居るようなギルドなのか。だとしたら、やべーギルドだな!


「お前ら……もしかして新規登録に来たのか?」

「はい、そうですが」

「ケッ…あのなぁ。あそこは素材買取のカウンターだ。新規登録ならこっちのカウンターだ……おい!ミシェル!新人が来たぞ!」


 ………良い人でした。失礼しました。その去り際に「頑張れよ」と応援もしてくれた。もうね、ときめいたね。恋に落ちそうだわ。ギャップが。見た目と言動のギャップが酷い。いつか、あなたとモルガン先生とでギャップ選手権を開催しよう。開催日時はまた連絡します。


 そんな愛すべきヒャッハーで親切な人に言われたカウンターに向かうと、少し気怠そうな様子の受付嬢が席に座っていた。暇だったのかな?


 そうだ、受付嬢だ。


 ここまでを俺の人生を振り返れば、ナーロッパな割に女性に出会わないなと思ってたんだよ。そう、これまで……おっさんや爺さんや貴族の子息に出会って、他所の街の騎士見習い達と戦って、その直後におっさん3人組&魔物達に襲われたり。故郷を旅立ったら同行はおっさんで道中で行商人のおっさんと出会って更に複数のおっさんに襲われて、王都に着いたらケーキ屋のおっさんに挨拶して。城に着いたら爺さんに部屋を用意してもらって友達の親父に挨拶したかと思ったら昨日今日と親友の兄貴2人に遭遇。更にギルドに入るのにも優しいおっさん2人に手助けしてもらって……本当におっさんパラダイスだな!おっさん尽くしやないか。


 しかも平均年齢が高いんだよ!

 誰得だよ。いや、若けりゃ良いってもんでもないけど!

 チガウデショウ!こんなもん乙女ゲーでも売れないよ!


 本来はさ、冒険者デビューするや否や、幼馴染・同業者・依頼者・受付と若くて可愛い女の子に囲まれるんだろ?その上、何故か若くてかわいいのに有能で訳アリな奴隷とか買っちゃったりしてさぁ!露出狂みたいな格好の聖女とかが現れてエロエロなビキニアーマーなのに生真面目な姫騎士がやって来たりしてさぁ!更には日本から来た、かわいい女子高生のもう1人の転生者とかが登場してさぁ!

 そうやってパンツを履く暇もない人生が始まるワケでしょうが。そうだよ、今日から始まるぜ俺の冒険者人生。今からでも取り戻そう、ナーロッパな世界を。


 長かったが、ここまでが第1話だ。

 今日から飛躍の第2話が始まる。


「はぁい、新人さんだね。3名?」

「はい、オネガイシマス」


 受付嬢のウェーブのかかった茶色い髪が揺れる。その長さは肩くらいで、柔らかそうな綺麗な髪だと思う。その翡翠色の瞳は見るものを魅了しそうだ。小柄なのに巨乳なのも素晴らしい。微乳にも価値はあると思うが、やはり巨乳は正義だ。








 ただ……オバちゃんなんだよな。

 煮物とかが抜群に美味そう。

 経理の計算とかめっちゃ早そう。


「話が、違う」

「何が?あたしゃまだ何にも説明してないよ?」


 ごめんね。オバちゃんは悪くないんだ。

 悪いとしたら俺……でもないような。

 日本人の欲望の果てし無さが悪いのかな。

 つまり、お前らだよ。お前らって誰ですか。

 あぁ、パンツを履く暇もないような生活……憧れてたんだけどなぁ。


「……よくわかんないけど説明するよ?まずはギルドカードを作るからね。字が読めるんなら、この注意事項をよく読んでこっちの用紙に名前と出身地と特技を書くんだよ。推薦者が居れば名前だけでも大丈夫だよ。登録料は1人1000(ガル)。代筆が必要なら1500Gだよ」


 注意事項………冒険者ギルドでクエストやら依頼の仲介をするだの素材の買取をするとか。遵法精神を尊ぶ・冒険者同士の諍いは控えなさい、万が一諍いを起こしてもギルドは関知しないとか。

 冒険者の皆さんってのはだいたいが脳筋なのか、基本的にそうでしょうね的なことばっかり書いてあるんだね。これは身分証の役割もある分、保証してくれる推薦者が居ないと基本的には名前だけじゃダメだそうだ。……そりゃそうだよね。日本に住んでた時の近所のスーパーの会員証だって名前だけじゃ無理だったわ。出身地を書いただけで身分証明ってのも片腹痛い話ですが。


 特技…なんて書いたらいいんですかね?早起きとかでもいいのかなぁ?


「そこは剣とか弓とか得意な物を書いてくれる?魔法が使えるなら魔法とかね。そしたらパーティメンバーとか探すのに便利でしょ?」


 なら、俺は槍だな。


「冒険者にはね、Fから始まって最上級のSまで7つのランクがあるんだよ。もちろんアンタ達は最下級のF級からスタートだね。原則として自分のランク以下の依頼しか請けることはできないからね」


 聞いた事ある、見たことある、いわゆるベタな王道なアレだ。どうせなら異性関係も、これくらいベタであってほしいものだね。俺の魂の叫びだ。皆もそう思うだろう?だから皆って誰だよ。


「ランクに応じた規定の回数の依頼を成功させることで昇級するよ。D級以上になるには昇級試験もあるからね。逆に依頼失敗すると違約金が発生する場合もあるからね!あとは……緊急依頼かね。例えば魔物の群れがこの街を襲ってきたとするよ?そうした場合にギルドから緊急依頼が出されるときがあるんだよ。これを無視した場合は、最悪は除名だから気をつけてね……書けたかい?」


 はい、書けました。クレカ発行に比べてなんと簡単なことか。ここから、ギルドカード作製ということで少々待たされた。Now Loading……と言っても10分弱くらいかな。


「はい、お待たせ。これがギルドカードだよ。名前、あってるかい?大丈夫ならね、カードに少し魔力を流してくれる?それで自分のカードとして登録されるからね。無くしたら再発行料は高いよ!気をつけな」


 そういうのもお約束として言われるけど、再発行してる場面を見たこと無いわ。そう思うと……失くしてしまいそうで怖い。これって紐つけるとこ、無いんでしょうか。


 よし!これで、俺達も正式に冒険者か!

 ここまで実に長かった…!


「頑張ってね!それと……アンタ達は新しくパーティ登録するの?それとも、どこかのパーティに入るのかい?」


 パーティ……?思わずセシルと顔を見合わせるが、何にも考えてなかった。そんなの必要なの?まぁ……どこかに入るという選択肢はないな。伝も情報も無いし。


 ……あ、マティアス兄さんが居たわ。あの人なら頼めば入れてくれるんじゃないかな?


「アレク?ボクも本気で怒るよ?」


 はい、マティアス兄さんの線は消えましたー。セシルさん、マジじゃないですかー。久しぶりに凄まれて、馬上対抗戦で怒られたあの日を思い出したわー。軽くトラウマが蘇って漏らしそうだったわ。小さく「ヒッ…!」て声が出たわ。今も少し足が震えてるからな。


 じゃあ新規でパーティを作るしかないな!


「新規だね?パーティ名は?」


 パーティ名って……だから、何にも考えてこなかったからなぁ。

 セシル、ルーは何かアイデアないですか。


「アレクがリーダーなんだから、任せるよ」


 俺がリーダーなの?初耳だよソレは。まぁ、リーダーなのは良いけど名前だよ、パーティーの名前!地獄の錬金術師(ヘルアルケミスト)とか悪意と悲劇(マリスミゼル)とか悪夢の道化師(ナイトメアクラウン)的な?痛い厨二病を全開にすればいいの?分かってるさ、痛いセンスだってことは。


「マティアス王子とかボリス・オスマンとかどんなパーティ名なんですか?」

「有名だよ。王子なんて『白き新星(ホワイトノヴァ)』ってパーティで若手のホープだね。ボリスの『深淵の探索者(アビスシーカー)』はこの国の双璧の一つだよ」


 ふ~ん、そういう感じでねぇ……何か…何も思いつかないわ。どうしようか、お姉さん。


「何でもいいんだけどね、自分達の特徴を捉えて名付けてるそうだよ、みんなは」


 特徴ねぇ………そう言われて、振り返って見てうちのメンバーを見て特徴的なのは…漆黒の魔王、戦乙女(ヴァルキリー)、今は居ないけど金髪王子くらいか。碌なのが居ないな。


戦乙女(ヴァルキリー)はイヤだ」


 はい、ひとつ消えたー。他には……クリス、金髪王子はお兄さんと被るからな。魔王要素で行くか。ダメだ、これも怒られそう。ゲームでも名前なんでデフォルトでやってた俺にパーティ名なんてなぁ……。

 あー……そういえば昨日言ってたな、俺達4人は一個師団以上って。もうこれでいいか、漆黒の師団。あとからいつでも変更も出来るんでしょ?じゃあテキトーでいいや。


「はいよ、漆黒の師団ね」


 はい、これで手続きは終了かな。改めてギルドカードを見ると……なんというか、最低ランクなせいか、地味だな。


「これからボク達の頑張りで、このカードを輝かせるんだよ!」


 お、おぅ。何故かセシルが燃えている。

 どこでスイッチ入ったんですか。

 でも少しわかるよ。いよいよ俺達の冒険のスタートだからな!


「早速、Fランクの依頼やるか?あー……でも、やるならクリスと一緒にスタートしたいよな」


 クリスは学園での用事が終わったら、こっちへ急行してくれるらしいから。多分、昼過ぎには大丈夫だろうと言っていた。だったら初めての依頼は一緒にやりたいよね。


「そうだね。じゃあそれまでどうしよう?」

「私は……2階の資料室を見てこようと思う。少しは情報をアップデートしないと」

「じゃあボクも師匠についてこうかな……あ、宿!」


 それだ!今夜の宿も決めないと。という訳で、ルーはお勉強。俺達は宿探しで一旦別行動にしよう。しかし、黒鎧のまま本を読む気?目立つよ?


「変装用に仮面を用意してある。私もそこまで非常識じゃ……ないぞ」


 そういってルーは黒い鎧を脱ぐと同時にピエロの仮面を取り出して、資料室へと階段を上っていった。うん……確かに非常識度はちょっと下がったけど……結局アウトはアウトじゃないかな…アレはどこで買ったんだろう?他に無かったのか?疑問は尽きないが……まぁいいか。


 じゃあ、宿を探そう。

 しかし俺達は宿について何も知らん。

 でも、知っていそうな人は知ってる。

 ついさっき知り合っただけですけどね。



「ミシェルさーん、僕ら宿を探してるんですけどね、安くて美味くて快適な宿どこですか?あ、厩舎もあるところで!」

「お姉さん、ボクはお風呂付が希望だよ」


 セシル……お風呂は今は諦めろ。絶対高いって!そりゃ俺だって風呂付に泊まりたいよ。毎晩お風呂上りのルーが見られるんだから。でも我慢も大事。


「あんた達はまだF級だからねぇ……『メレスの黄昏亭』か『リーの篝火亭』辺りだろうね。どっちも値段の割には良い宿だよ。お風呂は付いてないけど…ごめんね、お嬢ちゃん」


 おお、早速情報ゲット。

 どこにあるんですか、そこ。今から行ってきますよ。


「お姉さん、ボクが場所を聞きますね。この人、方向音痴だから…」


 やめてよ、そういうイメージ付けるの。

 まるで俺がアホの子みたいじゃないですか。

 今朝もちゃんと、このギルドまでも来れたじゃないですか。

 城から、この冒険者ギルドまで一直線の道だったとしてもだ。


 本物の方向音痴は違うぞ?昔、ガラケーの頃。友達と田舎ではぐれた時に「お前どこにいるんだよ?」って電話したら、その友達に「今、林の横にいる!あ、民家が3軒見えてきた!」って嬉々として言われたからな。そんなもんで位置がわかるかボケ。その後、無事遭遇するまでかなり時間がかかった。やはり本物ってのは良くも悪くも凡人の想像を超えてやっぱりすごい。


「僕が案内しようか?」


 誰ですか?あなた。

 爽やか好青年っぽいけど……あなたも冒険者なの?

 まぁギルド内に居るからそうなんだろうなぁ。


「僕はニコラス・デランジェール。『紅炎の盾』のD級冒険者さ」


 はぁ。どうやら先輩らしい。ちなみに上記の台詞は全てセシルに向けて発せられている。俺の方には背中を向けて見向きもしない。俺は透明化のスキルでも得てしまったのかもしれない。やったね、スキルゲット。


「じゃあ両方とも、ここを出て左に行けばいいんだね。うん、多分この地図でわかると思う。わかんなかったら戻ってくるよ、ありがとう!お姉さん」

「うん、お嬢さん。僕が案内して上げるよ。でも、それよりどうかな……僕らの泊まってる『神秘の泉亭』に来ないか?大きくはないけど風呂もあるよ」

「……アレクー、どっちにするかは見てから決めようよ。ボクは料理が美味しい方がいいなー」


 あー、ちゃんとテンプレ発動してたんだー。これは後からのパターンだー。でも今回もギャップが。お前もギャップ選手権出場者なのか。爽やか好青年なのに、のバージョンだ。ヒャッハーな方が善人で好青年っぽいお前の方が絡んでくるんかい。逆にせい、今からでも間に合う。逆にしろ。


「お嬢さん、僕はこの若さでD級冒険者なんだよ?いや、そんな大したもんじゃないさ……この程度で収まるつもりもないしね。いずれS級にまで昇りつめる予定さ」


 その若さがどんな若さか知らないが、セシルの不機嫌さには気がつかないくらいには鈍感で若いようだ。若さゆえの過ちなのかな。なんとなく彼は一生、こんなことを言ってそうな気もするけど。


「なんだよ、なんなんだよ今日は朝から……!ボクが何したっていうんだ…ボクか?ボクが悪いのか?違うよね?」

「おい、何を無視してんだよ。ルーキー風情に、この僕が声を掛けてやってるんだぞ。ちゃんと可愛がって面倒見てやるからさ……そしてお前はいつまでそこにいるんだ。男は早く消えろよ」


 消えろと言われてもな。


「だから!逆なんだってば!!全部!」

「何を言ってるんだ、お前は……ヤバいヤツかよ、男は邪魔だからマジで消えろよ」


 この場から男が消えたら誰も残らないんだよ!せいぜいが受付のオバちゃんが残るだけなんだよ!アンタもキャラを修整してから来いよ。待ってるから。俺達……アンタを待ってるから。ちゃんと待……ごめんやっぱ待たないわ。そもそも誰なんだよ、お前は。


「ねぇ、お姉さん。ボクは……今、冒険者同士の諍いに巻き込まれてるのかな?ていうかコレは…諍いなのかな?」


 なんかセシルの瞳孔が開いてるんですが。ヤダ怖い。セシルさん、ダークサイド堕ちはやめましょうよ。帰ってきて!


「アタシの見解だと、今はお嬢ちゃんが乱暴に口説かれてる、ってとこじゃない?逆らうんじゃないよ。相手はD級だ、アンタ達が逆立ちしたって勝てっこない相手だからね。待ってな、すぐに人を呼ぶから…」

「おいおい、俺はこのお嬢さんを口説いてるだけだよ?ギルドは人の恋路にまで口を出すのかい?」

「アレク、聞いたかい?ボクは口説かれてるラシイヨ?」


 セシルさん、キレてないっすか。


「キレてないですよ…ボクをキレさせたら大したもんだよ……でもちょっとムカついてるかな」


 なんで長州さんなの。どこで覚えたんですか。というかセシルさん、目がやばいっすよ。なんか殺意の波動が溢れているんですが。それでキレてないってのは説得力がないんよ。ミシェルさんの言う通り、逆らってはいけない。今のセシルに逆らうのは自殺行為だ。


「なぁお嬢さん、いいだろう?強い男に着いていくのは自然なことさ。こんなヤバい奴はほっといてさ」


 そう言って、この先輩はセシルの肩に手を置いた。おいおい、トークならまだしも直接触れるのは禁止だろう。流石に俺が一歩踏み出そうとしたら、その前にセシルが右手を突き出して俺を制止した。


「……いいよ。ボクに勝てたら、ね」


 そう言って肩に置かれた先輩の手を振り払うと同時に、両手に圧縮した魔力をそのまま砲弾の如く打ち出した。先輩の鳩尾と股間の両方に。これは確か旅の途中から、セシルがルーと一緒に練習していた新しい技だ。射程距離はまだまだ短いが詠唱がいらないし高威力。何でも、少年直伝の技なんだそうだ。その言葉の意味はサッパリわからん。


 衝撃で吹き飛ばされた先輩は後ろの椅子とテーブルをぶつかって、色々な体液を流しながら悶絶してる。大丈夫か…?良かった、死んではいない。残念ながら股間のナニはもう使えないかもしれないが。その点に関して、俺は彼に深く同情したね。


「お姉さん、これは口説かれた結果だから法には触れないよね?まぁ諍いであったとしてもギルドは関知しないんだっけ」

「あ……ああ、そうだね。アタシが証言するよ。アイツはただ振られただけさね。それにしてもお嬢ちゃん…強いのね」


 俺はやっぱり戦乙女(ヴァルキリー)、パーティ名に入れたほうが良かったんじゃないのかと改めて思ったよ。でも頑張って、それを口にはしなかった。言えば今の技が俺に撃ち込まれるのが目に見えていたからね。ええ、俺は股間のナニを大事にしたいの。


拙い作品ですが読んでくださり、ありがとうございます。

この作品を読んで少しでも面白いと思ってくれた、貴方or貴女!

是非とも感想、レビュー、ブックマーク、評価を頂ければこれに勝る幸せは御座いません

(人>ω•*)お願いします。


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