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30 サーチ&デストロイ

少々ですが、グロテスク描写あります。


微グロ注意。ええ。


 こうやって毎日走っていると少しは慣れてくるもんだね。こんな状況にも慣れてくるなんて人間って本当にすごいよ。必死に走りながらも俺が心静かに人間の偉大さに感動していると、セシルが大声で叫んだ。

 

「レティシア師匠!右の森に多分……ゴブリン5体!いきます!」

「うん、頑張って。アレク、ほら槍だ。前衛は急いでね?」


 さすがに走ってる最中に槍は持ってないよ。カールの槍はルーが収納魔法に収納してくれている。その優しさに泣きそうになる。それだけで優しさを感じてる俺ですが、おそらく心が風邪を引いてる。もう情緒が不安定なのかもしれない。


 急げ、か。軽く言ってくれますね!返事も出来ないくらいにへばってるけど……ああ、確かに3人の陣形(フォーメーション)では俺が前衛ですよ。チクショウめ、お前らついて来い!行けば良いんだろう、行けば!歩兵が騎兵に先行しろとか無茶にも程があると思うよ。


 街の外へ出て、これが初めての魔物との戦闘だ。お約束通り、最初の相手はゴブリン。さぁ、ついに俺達の冒険の始まりだ!走ってきた勢いのまま、カールの槍で1体目のゴブリンの胸を貫く。迷宮内で散々繰り返しただけあってゴブリン相手なら楽勝ですよ。ただ俺が、ゴブリンを倒したと同時にここで死にそうになってますが。ついさっき始まったばかりの俺達の冒険、俺だけここで終わりそうなんですが。


「グギャガガ…!」


 やかましい…!しんどいんだよマジで。今はお前たちにリアクションしてる余裕も体力も無いんだから。いやいやいや、マジで。リアルガチで。俺の肺と喉と心臓が破れそうなの。今の俺、既に体力ゲージが真っ赤だから。画面の文字も真っ赤。既に瀕死。


「ギャグルル…!」

「ギギギィ!」


 俺が倒したゴブの声を聞いたのか、わらわらと残りのゴブリン達が集まってきやがった。好都合だ。一気に片付けてやる!


「《氷槍》!」


 クリスの魔法で2体目のゴブリンは全身を氷の槍に貫かれて絶命。俺に向かってきた3体目も鳩尾辺りにカールの槍をお見舞いした。


「これで終わりだよ」


 奥に居た4体目5体目を立て続けにセシルが矢で射抜いた。セシルが言う通り、もう辺りに動くゴブリンは居なかった。が、俺も動けなくなりそう。息が…!心臓が破裂しそう!ゴブリンと共に死す、か!?


「ちょうどいい。ゴブリン解体のレッスンも始めよう」


 いつの間にか、背後にルーが追いついていた。俺が息も絶え絶えなのに通常営業ですね!少し息を整えるのだけ待って。馬と並んでの全力疾走はマジでキツい。しかも目の前はゴブリン in 血の海。ここは地獄か。それともここは大分県地獄巡りなのか。

 戦闘は慣れたモノだけど解体に関しては、俺達は全く未経験なんだよ。アムブロシアの迷宮(ダンジョン)で沢山の魔物と戦ってはきたけど、あそこでは解体前に蘇っちゃうからね。はじめてのかいたい、ですね。


「ゴブリンはね、ほとんど使える素材がないんだ。もしかしたら今の時代にはあるのかもしれないけれど……とりあえず魔石だけ採ろう」


 そう言ってルーは手際良くゴブリンの心臓の辺りに小刀で切開を入れて切り進む。もちろん、血が溢れ出るけどお構いなしだ。結構グロ。ちなみにゴブリンの血は人間のそれより随分赤黒い。やがて、中から小さな緑色の魔石が見えた。ほぉ~、これが。これがゴブリンの魔石。へぇ……これも売れるんだろうか。

 お手本を見せてくれた後、ルーが俺達3人に解体用のナイフを配った。さっきの光景を思い出しながら俺達もそれぞれが解体の作業に入る。槍を突くより、解体用のナイフで皮膚を切開する方が妙に緊張するのはなんでだろうね。大きく深呼吸してみた。

 むむ……臭い。ゴブリンくっさい。体臭が臭く、血も臭い。嫌な二重奏だな。みんな……臭くないの?いくらでゴブリンの魔石が売れるのか知らないけど、これでは割に合わない気がする。それでも慣れないぎこちない手つきで、なんとか俺達も魔石を取り出した。もう両手が血塗れですわ。


「アレク、手を洗いたいから水を出して」

「ボクも洗いたい」

「僕もお願い」


 いいけど……俺、さっきまで全力で走ってたんだよ?ここにも先陣を切って駆けてきたんだよ?肺が張り裂けそうな勢いで戦ったんだよ?その俺に水を頼むんですか?なにこれ、いじめ?いや、水くらい出すけどさ。俺も手を洗いたいし。うん、これも魔法の練習だ。

 のんびりと待っていてくれたジャンさんの馬車に戻って、再び走り出す。しばらく行くと、またセシルが魔物を察知した。今度は3匹のゴブリンだ。再び全力で走り出して、問題なく倒して解体。しばらくしてまた走る、倒す、解体。飽きずに走る、倒す、解体。はい、りぴーとあふたーみー。走る倒す解体。


 てか、何回出るねん。

 街道沿いにこんなに魔物が出たらやばいっしょ。

 世界は既に闇に沈んだのか?

 ここは魔界なのか?


 でも、解体の時間は休憩の時間にもなるので魔物出現はちょっとだけ嬉しい。その前のダッシュでプラスマイナスゼロ、っていう気もするけど。


 それから数度の戦闘を経て、ようやく本日の午前が終了。ようやく俺もセシルと交代して馬上の人となった。ここまで走ってバテバテなので乗馬も結構きつい。あの乗馬っぽいダイエットマシーン。スポーツジムに置いてあるのを見たことがあったけど、あれも結構効くのかもな!いや、間違いなく効く。皆さんも機会があればやった方が良いですよ!もう全身がキツいよ。



 馬車に近づいて、ルーに魔物が多くないっすかと質問したら


「ジャン殿に頼んでね、メインの街道を逸れてなるべく魔物のよく出る道を走ってもらっているんだ」


 それで……それであの余裕のある日程だったんですね!通常の1.5倍近い時間をかけて行くのかと思えば、こういうプランだったのか。のんびり異世界を見物して行こうと思ってたのにぃ!魔物を狩りながら走る、返り血に塗れた旅になるのか。グロ注意な旅になるんですね。


「心配しなくても大丈夫だよ。セシルが走ってる間は私が魔物を探索する。すぐに見つけるからね」


 そんな心配は微塵もしてない。それよりもっとさ、見た目相応に綺麗な花でも探してくれないかな?綺麗な小鳥でもいいや。俺、そんな無茶なことリクエストしてないと思うよ?

 結局、午後は今夜の宿にたどり着くまでに10回くらい戦った。相手は全部ゴブリン。たまにホブゴブリンてのも混じったけど、要するにゴブリンですわ。全身が超くせぇです。ゴブリン、クセがすげぇ!


 走るだけだった序盤の数日間もキツかったけど、この数日間も更にエグい。本当に、どこの体育会系の強化合宿だ。俺、学生時代は文化系だったのにな。昼間は実戦も交えつつ体力を限界まで振り絞るような訓練。宿に着いたら今度は組手で魔人にボッコボコにされる。まさに集中強化合宿じゃん。

 ご飯はどの町も村も中々に豪勢で美味しいのが救いだけど、あまりの疲労で食ったらすぐ寝てしまう。修学旅行の夜的な雰囲気が1ミリもねぇよ。ベッドで横になりながらお前好きな子いんのー?とか言ってる余力がない。部屋を抜け出して女子の部屋に行く体力がない。高校は男子校だったから、前世でもそんな経験は無いのに。今夜もベッドに倒れこんで動けなくなっていた。


 ちなみに部屋は3部屋に分かれてる。ジャンさんは個室、そんで男子部屋と女子部屋だ。王子は個室じゃねーの?と思ったけど、話し相手&護衛として俺が同室なの。ああ、うん……セシルは女子部屋だよ。

 もう誰も何も言わないしセシルも自然に向こうに行ったので、俺も疑問に思わないことにした。流石の俺も少しずつ訓練されてきた。まぁ……今の年齢であんな感じのセシルがこっちに来られても、ちょっと、その、困る。もうこちらもいつまでも子供でもないので。既に精神も肉体的にもぼーぼーですから。婚約しといて新しい扉が開きました、では洒落にならん。

 昔はセシルと2人でベッドで寝てたこともあったし、なんなら3人で風呂に一緒に入ってたしな。無邪気ってすごい。男の子なら普通か?もう何が普通なのかわからなくなってきた。


「疲れた……アレクはこんな修行を毎日してたんだ?」

「いや、体力的には今の方がキツイよ。今回のは王都に着くまで特にクリスの強化がテーマらしいからな」

「僕の強化?なんでだろ」

「オルトレットでも勉強に忙しかったからクリスの修行の時間が一番短かっただろ?王都に着いてからは尚更忙しいだろうし。その分をこの旅の途中でやるつもりらしいよ」

「そうか。厳しいけど、それはありがたいな」


 王子がそんな強くなっちゃってどうすんの?とも思うけど、今後何が待ち受けてるかもわかんないからね。お互い出来るだけ強くなっておこうぜ。宮仕えは勘弁だが、こいつが必要としてくれるなら、俺は頑張って槍を振るうつもりだ。でも力技だけで万事オッケーなほど人生って単純じゃないんだよなぁ……多分。


 それはさておき、だ。


「他にも言いたいこと、あるんちゃうの?」


 言ってみ、少年。前世持ちが悩みくらい聞くよ。俺って日本人だった時も不思議と優秀な奴とか美男美女に縁があった。友達が妙にカッコよくてモテるとか、元カノがモデルだったとか元地下アイドルとかな。でもね、話を聞いてみると頭が良くても顔が良くでも悩みながら生きているという点では一緒なんだよ。当然ながら王子だって魔人だって悩みくらいあるさ。立派な地位にあったとしても才能や実力に恵まれても美男美女でも、悩みってのは必ずついてまわる。俺みたいな凡人とは悩みの種類が違うとしても、な。

 ただし大した答えは期待するな。人生はケセラセラ、で全て乗り切るつもりの俺ですから。毛サラサラじゃないぞ。悩み相談では定番の、悩むのは良いが迷ってはいけない、程度の言葉なら差し上げましょう。ちなみに特に毛髪の相談なら詳しいぞ。言っとくけど俺は前世でも禿げてはないからね。


「………王都についたらね、多分、僕は婚約させられるんだ」


 おおぅ、なかなかヘビィな悩みですね。そうか………まぁね。多分、貴族だの王族だのって下手したら生まれる前から許嫁っていうの?ああいうのがいたりしてね。こういうのは珍しい話じゃないのかもしれない。むしろ年齢的に言うならクリスは遅い部類なのかもしれん。

 本当に今更、だよねー。今までほとんど何も言ってこなかったくせに急に婚約しろってか。下衆に考えたら、碌に期待もしてなかった第3王子だけど予想外に死なずにちゃんと成長したから、なのかもしれない。

 だとしたら……ちょっぴりムカッとするよねー。俺達の第3王子に随分と舐めた扱いしてくれるもんだな。事情は知らないけど俺はまだ見ぬ王にちょっとイラッとした。


「相手は?」

「知らないよ。父様がもう決めてるのかもしれないし、これから会う人の中から選ばれるのかもしれない」


 婚約させられる、というからにはクリス自身は望んでいないんだろうな。望んでないってことは、好きな人がいるのか。もしくは、まだ若いしこれから自由に恋愛したいのか、あるいは男が……まさかな!?

 俺が開かないように抑えてる扉を既に全開にしてるんじゃあるまいな。そんなの腐女子のお姉さま方を喜ばせるだけだぞ!……まぁその辺も個人の自由なんで止めはしないけど。いや、俺はノンケですよ!


「………好きな人がいるんだよ」


 そうか。禁断の扉の向こう側だったとしても話だけは受け止めるつもりだったが、それは回避されたかな?まだわからないか。


 ……まぁ言わなくてもわかるよ。だいたい。


 俺達は10年以上、ほとんど毎日顔を合わせてたし。好きな人、か。これがパーティだの舞踏会だの、そんなので出会った女の子が相手なら出発前にクリスは言うだろうさ。それに、もしそんな子がいたとしたら俺達に言わなくても、大公殿に言えば普通に婚約ってなりそうなもんだし。あの爺さんなら嬉々として話をまとめるだろう。だから、多分クリスが言う好きな人は、そんな子じゃない。


 そうなると、候補は2人。


 これがセシルが相手なら、また禁断の扉問題になるから。さすがにもうそれはいいから。BLを期待されてもね、こっちサイド的にも皆さんサイド的にも困るから。そんなの詳細に描写出来ないから。それにセシルが相手というのなら、もっと早く俺に言うような気がするし……流石に結婚という訳にはいかないだろうけどな。日本の江戸時代の将軍だって、男の愛人が居たとしても正室が居て子を作ってる。仮にセシルが好きだったとしても、どっちみち婚約者は用意されるはずだ。多分だけど。


 だったら、婚約そのものは悩みとならないんじゃないかな。他に色々と悩ましい話ではあるけれども。


 という訳で、候補は最後の1人。

 しょうがないさ。ルーは素敵な人だからね。俺達はね、みんなルーに恋してるのさ。ああ、セシルも……多分な。


「それは……大変だな」


 それ以上は何も言えないなぁ。クリスだからといって譲れない。譲らないじゃない、譲れない。不可能。無理なんだ。俺があの人無しで生きるとか。だからって、お前は諦めろなんてことも言えないし、言っちゃいけない。誰が誰を好きになるも自由だからな。例え、この時代が恋愛に不自由な時代だったとしても、だ。


 止められないが、頑張れとも言えない。

 言わなくてもわかる。お互いにな。


「うん、大変なんだよ………」


 ほんと、人生って大変だ。青春って大変だよ。俺が止められないし背中を押せないこともわかってて言いやがって。この野郎、甘えやがって。まぁ無理に聞いたのは俺ですけども。それでも、だよ。


 この我儘王子め。


「クリスも俺に似てきたよな」

「えええっ!?そんなことないだろ!冗談だろ?嘘だと言ってよ!」



 ……うん、そこまで強く否定されると、俺も、その、少し落ち込む。俺も一生懸命に日々を頑張っているんだよ?お前の中の俺ってそんな可哀想な存在なの?お前のせいで俺に新しい悩みが出来そうだよ。











              ◇◆◇










「頑張れ~♪」


 ルーの声援に答えるようにクリスが力強く加速した。身体強化スキル持ちだけあってパワーアップがぱねぇっす。


 今日はクリス→俺の順番に走る。朝から乗馬では、久々に朝の空気を気持ちよく感じられる。たっぷり寝たせいか、ほとんど筋肉痛もないぞ。今の丈夫な身体に産んでくれた母に改めて感謝ですね。


「レティシア師匠!左手奥に恐らく魔物!ボクが初めて会うタイプです!」

「ああ、私も確認した!これはレッド・ボアだ!アレク、逃がすなよ!」


 おお、ついに登場のレッド・ボアか。待望のジビエ!にく!これは積極的に狩りにいくよ!


「ほら、クリス!ダッシュだ」


 ルーが剣を渡しながら激を飛ばす。いや簡単に言うけどね?前にも言ったけど、ソレ護衛対象だからな?この国の王子だからな?


 俺は今日は騎馬なので余裕を持って先陣を切るよ。あ、いた。見えた。大きさは1.5mくらい?十分に大きいけど、それでも話に聞いてたやつよりはかなり小さい。まだ若い個体なのかもしれない。確かに、その背中には赤毛だ。

 ルーは逃がすなというが基本的に魔物は人間に向かってくる、らしい。この世界においてヒトの天敵となる存在だから。逃げるとしたら、その本能を覆すほどの実力差を感じたときだろう。残念ながら俺の実力はレッド・ボアを震撼させる程のものではないらしい。レッド・ボアは結構なスピードで俺に突っ込んで来たが、すれ違いざまに馬上からレッド・ボアの背中に槍の一撃。まだだ。大きな悲鳴を上げるけれどレッドボアは、それでも止まらない。

 続けてセシルがレッドボアの眉間に深々と矢を打ちこんだ。あんな小さな的に当たるもんだな!結果としてはコレが致命傷だった。









「さて、お楽しみのレッドボアの解体だ」


 食うのは楽しみだけどな。解体は……もちろんやりますけども。まずは血抜き。これを手抜きすると、せっかくの良い肉でも台無しになってしまうそうだ。俺とクリスで、レッドボアをロープで引っ張り上げて木の枝に逆さ吊りにした。もし近くに川があるなら、そこにぶち込んだ方が冷えて良いらしいのだが今日は山の中で、それも無理だ。


 解体はルーがレクチャーしながら、セシルが捌いていく。丁寧に皮を剥いで、各部位をばらしていく。なんでも脂が特に美味しいそうで、なるべく脂を肉に残して皮だけを剥ぐのがコツだそうだ。ゴブリンと違ってレッド・ボアなら皮や牙も売れるので、それらは解体した肉のブロックと共に収納魔法入りだ。内臓も食えるらしいので、コレらも収納魔法に入れられた。異世界のモツ鍋か……アリかもな。



「他にもいるかもしれない…!次いこう!」


 魔人がカレーの時くらいに瞳をキラキラさせている。めちゃテンション上がってるじゃないですか。そんな好きなのかな?そこまで美味いのか。だったら尚更に食うのが楽しみになるじゃないの。


 この後、周辺を重点的にサーチ&デストロイ。


 ジャンさんがあまり見かけないというだけあってレッドボアを探すのは困難だったが、それでも時間をかけて更に2体を探し出して仕留めた。


 魔人恐るべし、すげー執念だな。










「う~ん、少々時間がね……今日はモージャンまで行きたかったんですが、ちょっと今からでは厳しいですね。ここからもう少し行ったところの村でもいいですかね?トラスコンっていうんですけどね」


 レッドボア狩りに夢中になってたら、もう夕方になってしまった。うん、一番はしゃいでたルーもちょっと反省モードだ。しょぼんとしているが、まぁ別に急いでる旅ではないし。日程にも余裕はある。

 そんな訳でジャンさんの交渉により、急遽トランスコンという村で1泊という事になった。と言っても宿屋も飲食店も無い本当に小さな村なので、宿泊は分散して泊めてもらう。いわゆる民泊だ。


 今夜は、ジャンさん、ルー、セシルは一人ずつそれぞれ別れて各々の村民宅で。俺とクリスが村長さん宅に泊めて貰うことになった。流石に護衛対象の王子を1人にはさせられない。


「泊めて頂くのだから、村の皆さんにレッド・ボアの肉を提供しましょう。炭火焼とカレーだ!」


 突然の宿泊で、しかもこの村には宿も飲食店も無いので俺達の今夜の夕食も当然、無い。なので自分達で作るのだ。今夜のシェフはルーで、助手に俺とクリス。王子を助手というのも如何なものかと思うが、今更でしょうよ。普段から散々こき使ってるし。まぁ料理スキル持ちだから遊ばせておくのも勿体無い。

 3分では完成しないが、あの例のクッキング番組の音楽が頭の中に響く。あの番組も実際に3分で作るじゃなく3分で説明解説する番組だもんね。しかも現在では10分番組だしな。1時間煮込んだものがこちらになります、とかざらにあるもんな。結構、見てたんだよ。俺は在宅の仕事だったから意外と見ちゃうんだよねぇ。


「私は炭火焼用のソース作りと肉の下処理をするね。アレクとクリスは野菜を切ってくれる?」


 最初は泊めてもらう村民の分だけでも、って話だったんだけど、全部で10数軒の小さな村だ。4軒分だけ作って残りは無し、というのも中途半端だから全員分作っちゃおうと話がどんどん大きくなった。王子が突然の来訪という珍しいイベントなんだから、ちょっとしたお祭りみたいなものかもしれない。村の皆さんは突然の王子の来訪を喜んでくれているけど、俺達が迷惑をかけているのには違いないし。これもサービスサービス。


 幸い、肉は捕獲・解体したばかりのレッドボアが大量にあるし、香辛料や野菜もたくさんある。これは出発前にルーと市場巡りを繰り返した成果だ。

 

 料理に不慣れだろうからクリスが少し心配だったが、さすがは料理スキル持ち。一度見たらどんどんコツを掴んで1人暮らし暦の長かった俺レベルにカレーを仕込んでいく。ただ、今日は俺もクリスも走る当番の日でもあったので疲労が。これは……今日はよく眠れそうだわ。

 

 さぁ、早く飯食って寝よう。



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