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22 まるで成長していない…!


「うむ、馬上の戦いならば確かに俺がオルトレットでも最強だろう。全て俺に任せておけ」


 久々に息子に頼られて、これまでに見たこともないようなドヤ顔してる我が父。一瞬、人選を間違えたかなと思うくらい頼りない顔だ。セシルん家のロレシオおじさんも自称最強らしいが、実際この2人がオルトレットの2強ってのも間違いないらしい。その点、俺達ってサラブレッドなんだよな。普段から雑でいい加減なだらしない父を見てるせいで自覚が無かったわ。家ではイマイチでも、昼間のパパは男だぜ。確かに馬の扱いに関してなら俺達は父達の足元にも及ばない。そういう訳で、本日は俺達の自宅裏の訓練所で馬術の達人(自称)から乗馬のレッスンだよ。


 まず初日は騎馬戦においての下半身の上手な使い方を改めて1から教わった。以前にも教わっている基本の姿勢、腰の使い方、膝の使い方、そして脹脛から足先の使い方まで。まずは基本を確認し、そして応用へと。



 意外なことがわかった。


 ウチの親父、実は理論派。脳筋のくせに。体力が全て、と思ってる節があるのに。具体的かつ丁寧に、馬に乗る姿勢と力を籠めるべき身体の場所・位置を意味や効果と共に教えてくれる。そしてそれがすげーわかりやすいの。え…?もしかして双子?叔父さんなの?それとも宇宙人に洗脳でもされた?もしやクローンなの?うちのパパはパパじゃない…?

 もっとこう……感覚派の人間かと思ってた。実際、剣とか槍を教えてもらう時はそうだったし。シュッ!とかズバッ!とか効果音を中心に教えてくれてたのに。なんだか、本当に意外な一面を見てしまった。父の分かりやすい教え方に加えて、セシルはスキルのお陰なのか上達が異様に早い。それと比べたら俺は……まぁボチボチですかな。上達が感じられると更にもっと練習したい!と思うけど俺達が大丈夫でも、馬が疲れてくるので本日はここまで。

 馬に無理をさせるのはよくない。練習が終わったら愛馬を丁寧に時間をかけてブラッシングして、餌と水もたっぷり与えた。お疲れ様でした。明日も、よろしくお願いします。


「そうだ、馬上戦用の鎧をカール爺さんに頼んで来い。そんな練習用じゃカッコ悪いし危ないぞ」


 防具……そういやあんまり用意したこと、ないんだよな。ほら、ルーさんとの修行って防具の意味ないし。むしろ下手に用意しても防具ごと黒い大剣に真っ二つにぶった斬られて用意した当日に使用不可能になるだけだったもん。それに、あの師匠は防御は基本的に避けろ、もしくは躱せ、としか言わない。


 一応、世間の目もある騎士コースでは、動きに支障がないように簡単な軽鎧のようなものは使ってたりもしてたけど……馬上戦用の鎧か。そんなのを用意しても俺達は騎士にはならないんだけどな。


「ボクも父様から防具を買うように言われてたんだった。じゃあ行こうよ、お爺ちゃんの店」

「うん。父さん、一緒に槍も新しいの買っていいかなぁ?」

「またか。まぁ……しょうがないな。卒業祝いだ」

「ありがとう!あとね、学校を卒業したらセシルとクリスと一緒に王都へ行こうと思うんだ」

「あぁ!?それは聞いてないぞ!……まぁその件は後で母さんと一緒に聞く。早く行ってこい」


 申し訳ない。つい先日、決めたんだもん。

 いや、ホントにごめんよ。

 あ、王都に発つ前に父や母にルーさんを紹介しないといけないな。

 ごめん、更に驚かせることになりそう。

 許してね、パパン。











           ◇◆◇



 


 

 




 初めて来た3歳の頃から、もう何度となくカールさんの店に訪れている。回数では負けるけど期間という意味ではアムブロシアの神殿より長く通っている馴染みの場所だ。他の鍛冶屋さんは全く知らないけど、俺にとって世界最高の鍛治師はカールさんだ。そして、おそらく今回がその世界最高の鍛治師に作ってもらう最後の機会になる……かもしれない。


「まぁ卒業の対抗戦で鎧を作るのは毎年のことだがな。最後に最高の槍が欲しい、だと?」

「うん、たぶんカールさんに槍をお願いするのはこれが最後……かどうかわかんないけど、俺達はしばらくオルトレットを離れることになるんだ」

「そりゃ淋しく……はならねぇが、俺は楽になりそうだな。お前ぇみたいにしょっちゅう修理だなんだと来られちゃ割にあわねぇからなァ」

「暇になったら託児所か、おもちゃ屋でもやったら?子供が一杯来るよ」


 ツンデレ子供好き爺さんには天職じゃないかな?その為には、もう少し笑顔ってものを覚えていただきたいけども。俺達以外の子供なら、泣くよ?通報されるよ?誰もしないなら俺が通報するわ。


「お前みたいなガキが、そうそういるワケねぇだろうがよ」

「お爺ちゃん、ボクも弓と矢をお願い。お爺ちゃんの最高傑作、作って」

「お前もか。少しは老人を労われ。槍と弓な……今からじゃ対抗戦には間に合わんぞ」

「構わないよ。俺達は卒業してから王都に行って、冒険者をやることにしたんだ。その冒険者用の装備なんだよ」


 セシルがお爺ちゃんと呼ぶのは御老公とカールさんだけだ。こいつにとっちゃ王国のトップだろうと無愛想な子供好きの鍛冶師だろうと、好きになったら一緒なんだろうな。ロックな生き方してるよね、セシルは。

 そして俺にとっては、前世も今生でも爺さんと呼ぶべき人は生まれた時には既に死んでいた。この世界で爺さんと呼べるのはこの人だけなのかもしれない。今まで呼んだこと無いけど。クソジジイとかロリコンジジイとか呼びたくなる人は別に居るんだけどなぁ。


「対抗戦は来月だったな、もう少し早く言えよ。鎧もギリギリになるぞ」

「申し訳ないけど今回は無理して。俺達は爺さんの鎧で勝ちたいんだ」


 負ける理由がない。

 師匠が良くて、装備が良くて、戦うのは俺達だ。

 約束しちゃったんだよ、圧勝するって。


「俺とセシルが勝つところ、爺さんも見にきてよ。爺さんのおかけで俺達がどれだけ強くなったかを見せるからさ」

「………お前はホントに大バカ野郎だな。ガキの頃より更にヒデェぞ」


 あのね、人にバカって言うやつがバカなんだよ。













         ◇◆◇◆◇◆◇◆











 北の街ベルカーンは、海の向こうにあるハイランド王国との国境の港街でもある。もう100年以上抗争も無いが国境防衛の要の街だそうだ。この平和な国にあって、最も戦場に近い街という訳だな。つまりは結構強いんだよ、連中は。


 あっという間に日は過ぎて、もう明日には対抗戦の本番である。対抗戦っていっても、もちろん同じ国内でやるわけでね。毎年のことだけど半分お祭りですわ。相手も遠くから来てくれたんだし、ってことで街をあげての歓迎ムードですよ。一応……というか一応も何も闘いに来ているので、出場予定の選手はピリピリした雰囲気だったりするけれど、街のみんなは関係ないもんね。

 今年も遠くからよく来たなー、ようこそ!、てなもんですよ。随分と昔、レスリー兄さんの頃はこっちが相手側に出向くことが多かったそうなんだけど、今この街には大公がいるから。対抗戦はもはやオマケとして(どうせオルトレットの騎士見習いなんて毎年ザコ揃いだからね)各地方から大公への挨拶を目的として来るようになった。寒い時期に、街の外に行かなくて良いのは楽でいい。

 そう考えると、あの爺さんもたまには役に立つじゃねーか……感謝するほどではないけど。相変わらず、俺の御老公用感謝の気持ちは在庫切れなんです。どうも元々の生産量が少ないようでね。少し生産されても、すぐ転売ヤーが買っていくので中々手に入らないんですよー。そろそろ政府がなんらかの対策をして欲しいね。



 その強い強いベルカーンの騎士見習いの連中が本日我らの街へやってきた。別にわざわざ出迎えとか偵察に来た訳じゃない。セシルと日課のランニングしてたら、たまたま遭遇しただけだよ。それにしたってベルカーンの連中、人数が多いなー……多分30人近くいるだろう。俺達はクリスを除いたら総勢14人なので、そんな大人数で来られても……それに、例年の他の街の連中と違って皆さん笑顔だねぇ。国境を守る街から、魔物も出ない平和の街に遠征に来てくれて観光気分なのかな?それも無理もない。この対抗戦は大切な就職活動ではあるけれども、なんせ対戦相手は最弱の街オルトレットなんだもの。


 例えるなら、甲子園優勝チームにバットも持ったことがない茶道部かなにかが野球で挑戦するようなものかもな。彼らからすれば、結果は既に見えている。だったら楽しまないと損だよね。うん、俺だってそう思う。




 そうだ、既に結果は見えている。


 今回は茶道部が甲子園優勝チームに野球で勝負を挑むような戦いになる。ベルカーンが、こちらの倍以上の人数で来た所で結果は変わらない。俺とセシルが薙ぎ倒す人数が増えるだけですよ。せっかく遠くから来てもらったのに申し訳ない。本当に申し訳ないけど、彼らには地べたに這いつくばってオルトレットの土の味でもたっぷりと味わっていただきましょう。


 俺は、茶道部が相手でも容赦はしないぞ。




















 翌日の朝。つまり本番の日。本日も晴天なり。


 卒業記念の馬上試合対抗戦が行われるオルトレットの闘技場は、この手のモノとしては大きい方ではないらしい。大きくないらしいけど……こういうの見慣れてない俺としては充分広くて大きいよ。馬に乗って戦うのだから、ある程度の広さは必須なんですね。

 これくらいの敷地面積があれば……ここに将来、家を建てたとしても3LDK駐車場付きくらい余裕だな。どうせならキッチンはアイランドキッチンにしたいな。やっぱり料理中の奥様の顔も見たいじゃないですか。あれって匂いが気になりやすいらしいけど……その辺は実際どうなんだろうね。なによりルーさんの意向も大事だしな、間取りについては今度聞いてみるか。それから収納も大事だよな。荷物ってどんどん増えるし。子供が生まれたら更にモノは増える。収納についてもしっかり相談しないとな。「……何の話?」とか言われるかもしれないが。


「ねぇ、聞いてた?寝てなかったけど聞いてもなかったでしょ」


 そして今は開会式の最中である。セシルに注意されるまでもなく、しっかり話は聞いているよ………まぁ聞いてるつもりではある。でも余計な事を考えていたのも事実ですな。なんでも騎士の闘いとは神に捧げるものだそうで、今は正面の祭壇に司祭がお祈りしてる。多分、怪我のありませんようにとか、騎士よ、民を守る盾となれだの敵を討つ矛となれ、とかの意味じゃねーのかな。よく知らんけど。

 校長先生の朝礼みたいなもんでしょ?これ、スキップとか早送り出来ないのかな。せめて倍速で聞けたら良いのに。


 司祭殿のお祈りに続いて、今度はセルジュ先生が前に出てルール説明だ。相変わらずダンディだぜ、セルジュ先生。実に渋い。久々の出番だけど先生だから俺は毎週会ってたからね?だからこそ俺にはわかる。今日のセルジュ先生の髪型は相当に気合が入ってる。

 寄せて上げて盛って、残り3か4の髪を9にも10にも見せている。もはや魅せている、と言っても良い。まさに綿菓子。むしろ芸術の域。あれはもはや職人芸すら超えて神業だな…!流石だぜ、セルジュ先生!ビバ!


「予想を遥かに超えて、すごい気合だな…!」

「そうだね。ベルカーンの連中、全員結構強そうだよね」

「え?」

「……んん?」


 え?ベルカーンの連中がどうしたって?









 本式の武芸大会のトーナメントだと不公平の無いように、開会式でクジ引きして対戦相手を決めるそうなんだけど、今回が騎士見習いの大会なので事前に組み合わせは決められている。怪我の無いように全員になるべく見せ場が作れるように各々の力量に応じて両校の先生達が話し合ってトーナメント表を作ったそうだ。

 それはそれでどうなのか?と思わないでもないが一応、これは学校行事だから色々と考えられてるんだね。今日は個人戦のトーナメントで明日は集団戦をやる予定ですよ。俺の初戦の相手はもちろんベルカーンの選手だよ。あっちは総勢29人。こっちの倍以上もいるからね。俺は逆シードの位置だ。えーと、全部で6回勝てば優勝か。

 セシルは…俺と反対側の山だな。順調に行けば決勝で当たるだろう。それはそれとして試合で使用する馬や防具は自前で用意する場合も多い。もちろんレンタルもアリ。騎士の子が多いので、馬はさておき防具は自前が殆どのようだ。それから武器……まぁ基本は槍ですね、コレと盾は会場で用意された殺傷能力の低いものを使う。なるべく不公平が無いように、そして怪我しないように、という事なんだそうだ。やっぱり学生だし死んじゃマズいからね。学生じゃなくても死んじゃダメだ。あ、別に馬も鎧も武器も無しでもいいよ!とにかく死ななければね!





「俺はいきなりの出番か。ちょっと緊張してきた……」

「ちゃんとトイレに行っときなさいって言ったでしょ?ほら、武器持って盾持って!」

「やーめーてーよー!お前はお母さんか!俺がバカみたいでしょうが!あ、盾はいらない」

「まだバカの自覚なかったの?ほらほら、早く乗って」

「押さないでって……うわっ」


 新調した鎧を身につけて、セシルに尻を蹴られるようにして俺、出陣。うわ、めっちゃ緊張してきた。まさか、俺が1発目とはな。ほら、M -○グランプリでもトップバッターは不利とか言われてるじゃないですか。お客さんもまだ温まってなかったり、審査員も基準点とするから点数を調整したり。まぁ、今から漫才をする訳ではないけれども。いや、案外相手次第では……それもありえるかも?

 その場合、俺はボケをすべきなのかツッコミをすべきなのか…それともダブルボケか。意表をついてダブルツッコミで行くか………ダブルツッコミって誰がボケるんだよ。


 扉が開いてさっきまで開会式をしていた闘技場へ進みだす。暗い控え室から場内に出ると、眩しさと歓声もあってさっきとは別世界のようだ。俺は愛馬ディープをゆっくりと前に促す。うん、俺は競馬について詳しくないが史上最強のインパクトを与える名前だと思うんだ。さぁ、今日は特訓した乗馬術も披露しようじゃないか、頼むぞディープ。


 最初の対戦相手は既に闘技場の中央付近に居た。

 本日、一回戦での相方を待たせちゃったな。


「ヘッ、ビビッて帰ったのかと思ったぜ!」


 ニヤニヤと嫌な笑顔の相手だった。

 いきなり喧嘩腰だねぇ、チンピラかよ。

 もっと穏やかにいこうぜ。


「私語は慎むように。お互いやり過ぎないようにねっ」


 主審は俺のアイドル、セルジュ先生だ。ああ、やはり今日の髪型は最高だせ!セルジュ先生!この会場の誰も先生を薄毛だと……ハゲてるとは言うまい。いや、ハゲてないよ!ちょっとだけ周りの人よりおでこが拡大してて頭頂部の髪の密度がやや低いだけだよ!30代だが独身。この世界の女性達は見る目がないな……俺としては、是非ともプッシュしたい男性一位のセルジュ先生だ。

 いやいや、話と時を戻そう。オルトレットとベルカーン、どちらにも不公平の無いように交互に審判は入れ替わる。果たして、それで公平なんだろうか。他所の街から連れてきたらダメなのか?審判。子供達の学校行事如きにそれはいらないのか。まぁセルジュ先生は贔屓するような人ではないよ。


 やっぱり緊張するなぁ。ふぅ~……ゆっくりと深呼吸をひとつ。さて、確かに相手は強そうだ。俺の指先が緊張でかすかに震えてる。まぁ……つまりは、いつもと変わらないってことさ。いつもと違うのは、場所。相手。そして馬に乗ってる事くらいか。結構違うじゃねーの。

 冷静になれ。あの迷宮(ダンジョン)で、魔人相手に戦うことを思えば今回の対戦相手など……チワワの様に微笑ましい相手ではないか。会場の人々の数には気圧されていたけど、チワワ相手に緊張するなんて勿体ない。


 さぁこい、チワワ。


「はじめっ!!」

「――……―」


 あ、こいつフライングして呪文詠唱してやがる!これアリ?!そりゃアリでしょう!そもそも、こういう模擬戦で魔法を使う機会は少ない。だって魔法には呪文詠唱ってのがあるからね、普通は。打ち合い組み合いの中で、そんな悠長に呪文を詠唱しているタイミングなんて、そうそう無かったりする。

 だったら、この試合開始の時。これって魔法を撃つべきタイミングなんですよね。ボーッとしている方がバカなんですよ…………って誰がバカやねん!俺は慌ててディープの腹を蹴って前へ出た……がヤツの魔法の方が早かった。


「《火球(ファイアボール)》!」


 過去に何度も何度も迷宮(ダンジョン)で俺が焼き殺されてきた火球。それに比べたら、今が寒い時期だけに暖かそうな感じがする、かわいらしい小さな火の球だ。それに速度も遅い。手に持つ槍に魔力を纏わせて飛んできた火球を横から槍先でそっと進行方向をずらす。俺の背後で火球が壁に当たって、その衝撃音が響いたが問題ない。


「いきなり怖いなぁ。ビビッて帰ろうかと思ったぜ」

「このガキッ…!」


 ガキって君も同い年だろうが。今年卒業なら同じ16歳か17歳やろが。更に精神年齢で言うなら俺はもう還暦近いんだぞ。なんか、今のでコイツの力量は見えたな。ちなみにルールとして個人戦は相手を落馬させたら1本だ。2本先取で勝ち。


「うがぁっ…!!!」


 先も長いので、早く終わらせよう。ディープを前に進めて、相手の盾ごと槍で身体を薙ぎ払った。危ない…!いつもの黒い鎧の魔人が相手のつもりで少々……いや、かなりやり過ぎだな。これ、相手を死なせないようにするのが難しい…!俺達は魔人に手加減してもらうことはあっても手加減することなんてなかったからさぁ。


「アレクシス選手、1本!!!」


 よし、幸先良く1本先取。この調子で連取するぜ!

 見てろよ、オルトレットのみんな!


 ……………と思ったが、相手が立ち上がってこない。セルジュ先生が慌てて呼んだ救護係が倒れたベルカーンの選手に駆け寄るが、意識不明にて続行不可能で試合終了だった。大丈夫、死んでない。……死んでないよね?うん、死んでないらしい。セーフ!大丈夫!内心、かなりヒヤヒヤしたけど。


 まずは1勝。特別観覧席の方を見上げると、そこにはルーさんが笑顔で拍手してくれていた。その横のクリスは立ち上がって喜んでいる。主賓である、俺にとってはオマケの御老公はこの程度か?まだこれからだろ?みたいな顔してやがる。もちろんだ。ベルカーン全員に圧勝してみせるんだからな。






「やったね、アレク!」


 選手控え室に戻ると、笑顔のセシルが待っていてくれた。

 ありがとう、やったよ!

 もう少しで、()ってしまうところでもあったけど。

 次はセシルの出番だけど、それはまだまだ後だ。


「ああ、ありがとう。でもセシル、お前も気をつけろ」

「ああ、魔法?大丈夫だよ」

「いや、違くてさ。相手を殺しちゃわないように、そおっと加減してやれよ?」


 その瞬間、控え室に殺気が走った。


 いやね、本来こういうのってホーム、ビジターとかで控え室は分かれてるもんだろうけどさ。ほら、ベルカーン側の連中は人数が多いから。こっちの控え室にも結構な数が居たんだよ。その彼らから微笑みが消えた。


「うん、卒業までアレクのバカは直らなかったんだね」

「うむ、こればかりは僕も同意する」


 なんだよ、ワレン君も居たのかよ。ごめんよ、ついだよ。うっかりだよ。相手を殺さずに終わらせた喜びが爆発しちゃったんだ。俺にとっては快挙なんだよ。むしろ褒めてくれ。俺は褒められて伸びる子なんだよ。


「いや、皆さんゴメンね!悪気は無いんだ…よ?」

「気にしてないさ。平和の街……最弱の街オルトレットが我らベルカーンから奇跡の1勝をあげたんだ。君の人生最大の栄誉、二度と起こらない奇跡を喜ぶ気持ちはわかるよ」

「うむ、これにも同意しよう」


 どっちの味方だ、ワレン君。

 そこは同意しちゃダメだろうよ。

 そんで、君……誰や。

 我らベルカーン、ってベルカーンの子か。

 奇跡の1勝って言ってくれるね。

 どんだけ上から目線ですか。

 まるで昔のワレン君みたいなことを言いやがって。

 ………いや、よく考えたら今のワレン君も言うわ。

 めっちゃ言ってるわ。どちゃくそ言う男だったわ。

 まるで成長していない……!


「君が誰だか名前も知らないが、君が2回戦で当たるのが我が校最強の男、オリヴァーさ。実に儚い栄誉だったね。残念ながら奇跡は2度も起きない。今のうちに棄権したらどうだ?」


 だから誰やねん、君。俺も君が誰だか名前を知らないよ。興味がないから聞くつもりもないけども。


「あんなこと言ってますよ、ワレン君。どうしやす?」

「知るかっ!どうするもなにも、ぶちのめされてこい!」


 つれないなぁ、ワレン君は。

 今は味方なんだぞ、俺達は。


「そんな君は、最強じゃなくても何番手なの?ナンバー2?」

「レナード・リーヴスだ。今後、全国にこの名が轟くことになるだろうから、覚えておくと良いよ。そうだな、確かに今は僕がナンバー2だろうな。今回は僕とオリヴァーの決勝戦になる予定さ」


 そう言って、キザな仕草で髪をかきあげる少年。

 なんか……安易なキャラが出てきた!

 ちゃんと名前が出てくることに驚くぞ。


「……アレク、アレク。このレナードがボクの対戦相手だよ」


 対戦相手を同じ控え室に待機させるのは、その、どうなんだろう。子供達の学校行事にそこまで求めるのも酷なんでしょうか。やっぱりコレは体育祭みたいなノリなんだろうか。真剣勝負よりお祭り要素が勝つのかな。


「へぇ、そうなんだ?」

「トーナメント表で名前を見てないの?今朝、発表されただろ」

「だってぇ……誰と当たっても優勝するなら一緒じゃないか。全部薙ぎ倒すだけじゃん。途中の石ころの名前を覚えてもしょうがないだろう?」


 再度、控え室内の緊迫感が増した。レナード君も一瞬青筋を立てた。これ見よがしに大きなため息をついて、バカを相手にしても無駄か。と呟いて去っていった。失礼な。バカって言うやつがバカなんだぞ。ホント世の中バカばっかりだな。


「……セシル君、君は本当に今まで苦労してきたんだなぁ」

「わかってくれる?ボクは初めて誰かにこの苦労を理解してもらえて嬉しいよ」


 ちょっと。2人揃っての遠い目をするのは止めてくれませんか。初めて、お前ら2人の会話を目撃したと思ったら意外と意気投合してんじゃねーですか。今のは俺も言い過ぎたと思ってるからね?マジでマジで。

 



拙い小説ですが読んでくださり、ありがとうございます。

この小説を読んで少しでも面白いと思ってくれた、貴方or貴女!

是非とも感想、レビュー、ブックマーク、評価を頂ければこれに勝る幸せは御座いません

(人>ω•*)お願いします。

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