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21 お前の頭はハッピーセットかよ


 予想外だ。





 と言っても、今回は嬉しい予想外ですけれども。

 そもそも、俺の予想なんて碌に当たらないからね。


 事態は急転直下、解決した。ええ、不死の迷宮に囚われていた姫は無事に助け出された。だからと言って、このまま彼女を自宅に連れ帰ってスヤスヤと2人してベッドで寝るわけにはいかない。俺はそれでも全く構わないが、朝になったらパパとママを交えて修羅場になる事は間違いなしだろう。平和に生きているパパママを驚かせるのはなるべく避けたいところだ。何より、きっと朝になってやってくるボリスさんを、そのまま放置しておくのも不義理だし失礼でしょ。昨日の時点でも土色みたいな顔色してたのに。あの人は俺達の恩人なのだ。そして恩人を粗雑に扱うのは俺の好きな生き方ではない。


 もう朝方近くだったので、神殿の周辺で2人で色々な話をしながら夜明けを待った。とりあえず、ルーさんにはフルプレートアーマー状態になってもらった。何故か?俺も考えたんだよ。美人と鎧。どっちが目立つか。

 多分、俺も久しぶりの完徹をしたので深夜のテンションだったんだと思う。それに、ついに念願が叶ったことで更にハイテンションだったんだと思う。ルーさんと2人で相談して、鎧を着た状態で居ようと結論づけた。


 結果からいうと、バカか。お前らはバカ夫婦か。

 手前ぇら2人の頭はハッピーセットかよ。


 うん、俺はともかく彼女が禍々しいビジュアルだからね。

 すぐ警備兵に通報されちゃったよ。早朝から。

 でも彼らを悪くは言えない。


 俺だって逆の立場で、こんな鎧が街中に立っているのを見かけたら通報するし尋問する。通報した市民にも、警備兵にも落ち度は何一つ無い。とは言え、俺達も大人しく連行される訳にもいかない。俺がなんとか警備兵の皆さんに必死こいて説明&言い訳してると、ボリスさんたちが来てくれた。助かった!本当に一流冒険者の朝は早いんだな!





「えーと、これはつまり大先輩の封印はもう解除されたということで良いんだな?」

「はい、これが封印具のようです」


 ルーさんを封印していた小さな針を渡す。こんな忌々しいモン、俺が持っててもしょうがないしさ。何に使えるのか知らないけど、もう要らない品物だよ。むしろ、二度と見たくない品だ。


「細かい成り行きは後で聞くとして……良かったねぇ。おめでとさん」

「ああ、ありがとう。ボリス殿には世話になった」

「いやいや、俺達は結局大した事出来なかったからね、申し訳ないよ。さぁて……先輩が外に出られた以上、俺の仕事ももう終わりかな。それじゃ一緒に大公殿のところへ報告にいこうか」


 そういってくれるけど、全てはボリスさんが来てくれたからこそだよ。そうじゃなきゃ、まだまだ何年も封印は解けなかったかもしれない。依頼だったとしても、A級冒険者が全力で頑張ってくれたんだ。どれだけ感謝しても感謝しきれないよ。俺は心の底から感謝して深々と頭を下げた。本当にありがとうございました。


「しっかし、そうなるとあの迷宮は今、ダンジョンマスター不在になるのか……どうしたもんかな」

「不在ってのは不味いんですか?」

「うん?まぁ…すぐにどうこうじゃないけどな。その辺は大公殿の領分だな。子供は心配しなくていいだ、あの人に任せときゃ大丈夫だよ」


 ルーさんにもう一回戻れ、とか言いだされたら御老公でもボリスさんでも怒るよ?俺はこの人を2度とあそこへは行かせたくないんだからな。もうあんな狭い籠の中に閉じ込めてなるものか。俺達は世界に羽ばたくんだからね。


 そんな話をしながら歩いていたら直ぐに大公邸に到着した。厳重な警備の大公邸であっても、さすが高ランクな冒険者のボリスさんは顔パスだ。そしてボリスさんが言ってくれたお陰でルーさんも鎧姿のまま門番を通過。

 ありがたいが、いいんだろうか。俺が言うところじゃないがダメだろこんな怪しい人を通しちゃ。鎧の中身はこの世界で一番美しくて尊いけど、外見はどう見ても魔王寄りだからな。これ以上の不審者、世界中を探してもそうそう見つからないと思うわ。






「おお、リュシオール殿。まさかこんなに早く再び会うことになろうとは思ってもなかったぞ」


 メイドさんに案内された俺達は、応接の間で早朝から御老公と面会となった。先日まで、あんなにウゼーと思ってた御老公も今日だけは気分良く挨拶が出来るね。今日の良き日を迎えられたのは、全部じゃないけど一部はこのジジイのおかげだと認めないといけない。少しは感謝しなきゃな。

 そして、かなりの早朝ではあったけど御老公は既に起きていたようだ。この世界では夜の照明が貴重なので基本的にみんな早寝早起きだけど、それでも御老公の場合は老人だから早起きなのかもしれない。


「全ては大公陛下をはじめ、ボリス殿やクリストファー王子殿下や皆様方のお陰です」

「アレクシスは役に立ったかな?」


 そのニヤニヤ、ぶん殴りてぇ。感謝?そんなもん、もう在庫切れだよ。既に全部捌けたわ。あっという間に無くなった。次回の入荷も未定だわ。これから緊急入荷されたとしても他所に持っていかないといけないから御老公用の感謝は……無期限で延期だな。こりゃ転売ヤーが俺の感謝を買い占めてしまうかもしれないぞ。御老公も欲しかったら高値で買ってください。


「ええ、この上なく」

「さっき人をやったから、もうじきクリスとセシルもここに来るだろう」


 昨日の今日だから2人とも神殿の方へ行っちゃったかもしれないな。携帯電話も無いから連絡の取りようもないし、俺達も早朝に黙ってこっちに来ちゃったからさ。


「あぁ……今更ながら失礼致しました。この鎧姿は私の常でして気が付きませんでした。陛下の御前でありますが御容赦願います」


 そういって、ルーさんはその身に纏っていた鎧を収納した。昔からどうやって変身してるんだと思ってたが収納魔法で仕舞ってたんだよな。ほんとに便利だよね、収納魔法。俺も使いたいな。そのうち彼女に憑依してもらって教えてもらおう。


 そして素のルーさんを見て俺以外の男は全員、目を見張っていた。

 どうだ、まいったか。

 この美しさ、三千世界に並ぶもの無しだろ。


「改めまして、リュシオールと申します」


 そして御老公に優雅に敬礼してみせた。初めて太陽の光の下に見るその姿に…見慣れたはずの俺も瞬間、見惚れてしまったよ。口開けてポカーンとなったわ。


「これはこれは大先輩……えらい美人さんだったんですな!こりゃあ驚いた」

「アレクシス……なるほどな。やっぱりな」


 何がだよ。言いたいことはちゃんと言えよ。そういうとこだぞ、御老公。その新しくからかうネタが出来たと言わんばかりのニタニタ顔。ホントね、良くないよ。いつか、マジでぶん殴ってやるからな。


「リュシオール殿、離れに貴殿の部屋を用意させよう。俺の客分として、いつまでも存分に滞在してもらいたい。それにエクレアも是非、再現してもらいたいのでな」

「陛下より思いもかけぬ御高配を賜り、御礼の申し上げようもございません」


 ルーさん、そんなきちんと挨拶しなくていいっすよ。そいつただのテキトーなロリコンエロ爺ですよ。この世界のジュンジ・タカダですよ、絶対。あれ、ジュンジ・タカダってロリコンだったっけ。知らんわ。


 あ、セシルとクリスも部屋に入ってきた。おはよう。


「師匠ぉ~!」

「先生!」


 ああセシル、泣いてるじゃん。2人は口々に叫びながら……あ、いいな。2人ともルーさんとハグしてる…俺も途中参加してイイだろうか。昨日の夜はさんざんハグはしたけど、まだ足りない。足りないどころか、今後の一生を彼女に抱きついたまま過ごしたいわ。


「アレクシス、残念ながらお前はこっちだ。何があったか順序立てて説明せんか。現在の迷宮(ダンジョン)の状況もだ」


 ぐぬぬ…!確かにそれは必要だ。だけどしかし!このタイミングでか!ジジイ、空気読めよ、空気をさぁ!いや読んでるんだよな。完璧に読んだ上で言ってるんだな。絶対ワザとだよな……すげえ嬉しそうな顔してるもん。やっぱり、このジジイとは仲良く出来そうにないわ。


 いいなぁ、あっちは美男美女がきゃっきゃと抱き合ってて……その一方で俺はオッサン達とつまらない事務的な話……これは、なにかの罰ゲームなのか。俺が何をしたというのだ。解せぬ。










         ◇◆◇◆◇◆◇◆









 


 後日、御老公に聞いた話によると迷宮(ダンジョン)はとりあえずは領主である公爵殿下の管理下に置かれることになった。


 とにかく極秘に、ということで今は選抜された衛兵がローテーションを組んで交代でダンジョンマスターをやってるそうだ。やり方は知らんけどダンジョンコアがあれば簡単にマスターの委譲も出来るんだってさ。給料が出るとはいえ、あそこにジッと待機してるのか……何もない場所だから楽だけど退屈だろうな。Wi―Fiとスマホを用意してくれて充電用にコンセントもあれば、俺も立候補しても良いかも………いや、やっぱり嫌だわ。

 そして、あそこはやはり相当に特殊な迷宮(ダンジョン)らしく、おそらくは、そう遠くないうちに国王直属の研究機関の管理になるだろうって言ってた。そうなると神殿も含めてリフォームしなきゃいけないんだろうな。

 もちろん、死んでも蘇るけど代償として地獄を味わう話もしたよ。それも含めて、あの迷宮(ダンジョン)を今後どう研究してどう利用していくか、なんて俺にとってはどうでもいいことだ。どうぞ勝手に自由に思う存分やってください。



 それより今、俺の目の前に広がる光景の方がよっぽど問題だ。








「うむ、エクレア……正しく神が与えたもうた神秘と言うに相応しいな!」

「大公陛下。こっちのフルーツを挟んだエクレアも絶品ですよ。あぁ、このナッツをトッピングしたのも捨てがたい…!」


 オルトレット甘党の党首と、新たに甘党に入党した元ダンジョンマスターは相変わらずだ。相変わらずというか……色々と加速しているよね?しかも色々と問題のある方向に。誰か止めろよ……俺以外の誰かが。しかもルーさん、どっちかっつーと枯れ専だったよな……この2人はやっぱり混ぜるな、危険だったのかもしれない。まぁ、以前よりルーさんの笑顔が格段に増えたので良しとしようか。

 それにしても俺、日本で生きてる時にそんなスィーツのレシピとか見てたんだっけ……見てたんだろうね、全く覚えてないけど迷宮から解放されたルーさんはマドレリアのオルトレット支店アドバイザーとして新作スィーツを連日、開発している。

 確かに、久しぶりに食べるエクレアは美味しい。なんだかルーさん……俺より、よっぽど正統派に現代知識で無双してるやん。思わず、遠い目をしてしまった。俺の存在価値ってなんなんだろうね。


「そういえば、クリスの話はどうする?」


 セシルがエクレアを食べながら聞いてきた。行儀が悪いよ、ほらチョコが鼻についた。しかし、今の最大の問題……と言うか悩み事はそれだ。実はね、クリスからセシルと一緒に(当然ルーさんも)王都へ行かないか、と誘われてるんだよ。ルーさんが迷宮から解放された以上、もう俺達はこの街に縛られることもない。クリスは王都にある学園通いだが、王都なら当然ながら冒険者ギルドもあるらしいんだな。どうせなら王都で冒険者デビューしたら?って言うんですよ、あの子。どんだけ寂しがり屋なんですか。どんだけ~。まぁ俺はルーさんとイチャイチャ出来るなら王都だろうとド田舎だろうと……痛ってぇええ!!!


「……ボクが質問しているんですけど?」


 本気で脛を蹴ることないじゃないですか。言葉は人間の文化やぞ。折れたかと思った…!もうちょっと幼馴染に優しく出来ないもんですかね!


「うん、そうですね、王都も良いよね。一度は見物に行ってみたいかな」


 足をさすりながらの俺の返事に、セシルは明らかに不満そうだな。わかる、わかるよ。お前の言いたいことはわかるけども。でもさ、こうやってルーさんがそばに居て。お前という可愛い幼馴染が……穴はないにしても…居てだ。

 旅立つ必要が、ね?幸せの青い鳥は身近にいるもんなんだよ。そして、今は幸せの青い鳥が両肩に止まってるようなものだ。下手に動いたら飛んでいってしまうかもだろ?実に分かりやすい話じゃん?



「ものすごく分かりやすく腑抜けてるね」


 エプロン姿のルーさんが戻ってきた。かわいいだけじゃなく家庭的な魔人だなぁ。こういう格好も似合ってるよ。そして俺も腑抜けてる自覚は、ある。だって目標達成しちゃったんだもん。今、幸せ一杯なんだもん。


「男の子なら、こういうのを見て燃えるものはないのかな?」


 ルーさんが持ってきたのは、騎士見習い達による学校卒業を記念しての馬上試合対抗戦のチラシだ。チラシって言っても街中にバラまいてるものじゃなく、これから街中の高札に掲示されるやつを拝借してきたようだ。紙はまだまだ貴重なんだよ、この世界では。

 そして俺も知らなかったんだけど、こういう試合や武芸大会ってのは彼方此方で結構活発に行われているようなんだよ。特に、この国のような平和な国だと。逆に。平和だからこそ。

 何でかというと、まずは軍事演習として、だ。平和であっても軍であるだけに常に訓練をしていなきゃいけない。かれこれ100年は戦争の無い国であっても、お隣には交戦中の国があったりもする。何が起こって戦乱に巻き込まれるかもしれない。その為にも日々鍛えていなければならない。

 それから娯楽。要するに見世物ですな。令和の日本だって年末は格闘技やってたし相撲だって…そういや新型ウィルスはどうなったんだろうか。

 いかん、話を戻す。そう、時を戻そう。こういう娯楽の乏しい時代において武芸大会は最も盛り上がるイベントの1つなんだよ。やっぱり格闘技って観てて手に汗握るもんね。それに賭けもやってるのかもしれないな。いや絶対してるだろう。

 そして軍事演習や見世物として以上に重要なのは、これは騎士達の就職活動なんだな。ほら、平和だと武勲を立てる機会がないじゃない。だから、自慢の腕を見せる場が必要になるそうなんだよ。更に就職が出来たら出来たで、今度は雇い主の名前を売らないといけない。〇〇伯爵家の騎士が優勝した!なんてことになったら、その伯爵さんは鼻が高いし活躍した騎士も褒美も貰えるだろう。特別な理由もなく天下一武道会が大好きな世界じゃないのね、そんな現実的で切実な理由があったんだねぇ。


 まぁ……でも俺、騎士になりたい訳じゃないしな。

 あー、燃え尽き症候群だわー。だりー。ねみー。


 今回の馬上試合対抗戦はオルトレットvs北の街として有名なベルカーンとで行われる予定の大会なんですよ。今年卒業するオルトレットの騎士見習いとベルカーンの騎士見習いが馬上にて武を競うのだ。

 しかし平和の街と呼ばれる代償として、基本的にオルトレットの騎士はすごく弱いらしいのよ。流石にうちの父とかロレシオおじさんは全国でも上位の強さらしいけど2人共、元々オルトレットの出身じゃないからね。


 今回の対抗戦でも、戦前の予想はベルカーンの圧勝です。


「……例えば、これで好成績を挙げたらルーさんは喜んでくれるのかい?」

「君が活躍するなら嬉しいな。カッコいいと思うよ」

「リュシオール嬢。こいつはな、舞い上がっとるだけだぞ。なんだお前、初恋か?」

「バ…なにを言い出すんですか御老公!?」


 いつの間に来たのよ。エクレア食ってろよ!

 ……いやアンタ食い過ぎだろう!

 あれだけあったのに、もうほとんど無いじゃないの!


「童貞臭いなぁ、お前……あと俺にバカって言おうとした?俺、大公なのに?先王だぞ俺」


 うっせぇ。知るかよ。

 俺だって前世含むならバリバリ経験者だわ。

 この場では声に出しませんけど。

 経験豊富かと聞かれたら…背伸びして人並みといったところか。

 その程度の見栄くらい張らしてくださいよ。


「大公殿下。私は彼に、迷宮の外に出してくれたら将来どんな職業で何をしても何もしなくても良いと伝えました。問題ありませんよ」

「師匠……目を覚まして。こいつはバカでダメ男だよ」

「ああ、もう!うるせぇな。燃え尽きとかフェイクだよ!ワザとだよ!こんな対抗戦程度!勝ちますよ!」

「賭けるか?」


 それが大公の言うことかっ。

 だが俺にも意地がある。口にしたからには引けないなぁ。


「御老公。御要望とあらば圧勝してみせましょう」

「ふん、久々に吠えたな。ああ、大公は孫たちの圧勝を御要望だ」

「はぁ」


 ……ま、望むのはタダだよ。ジジイが望んだとて、申し訳ないがモチベーションとしては弱いわな。怪我しない程度に頑張りますよ。


「アレク、私は我儘なんだ。私もかわいいかわいい弟子達の大活躍を御要望するよ」

「ベルカーンの連中がオルトレットの名を聞くだけで震えるあがるような勝利をお約束しましょう」


 素早く右膝を地について丁寧に礼をする。ジジイの御要望とは話が違う。まさに事情が変わった。我らが師の御要望とあらば全力で応えねば。


「俺と対応が違いすぎないか。そういうとこが童貞臭いって言うんだよ」


 うっせい。うっせいうっせいわ。


「そうとなったら、セシル!馬上戦の練習にいこう!」

「……別にいいけどさ、もう少しボクの機嫌を取ろうとは思わないのかなぁ?」

「そうだぞ。セシルを都合のいい女扱いするんじゃない」


 だから!うっせいよ、ロリコン爺め。だいたいセシルは女じゃないぞ。


「ああ、ごめんな。セシル、ここで勝って箔を付けて王都へ行こうじゃないか」

「少しやる気を出した君に、もう一つ火を点けてあげようか。………ここ、見た?」


 そういって、ルーさんが対抗戦のチラシの一番下の隅を指差す。この人は指先も綺麗だ。そっちに目が奪われるけど……頑張って誘惑を振り切った。これだけでも俺を褒めてくれ。ハードルが低い?いやいや、俺にとっては棒高跳びレベルだよ。


 ルーさんが指差すものは……これは名前?

 シロウ・キリヤマ……は?なに、これ。


 これは………たまたま、そういう名前が付けられた?バカな、コレってどうみても日本人の名前じゃん。こんな剣と魔法の世界にもう一人の日本人が転生するより、たまたま日本人みたいな名前の人が居る方が……可能性ありそうか?あるわけないか?確率的にはどんなものだろうね。しかし、そんな都合の良い予想を覆す文字列がシロウ・キリヤマの名前の後に続く。


「御老公。このシロウ・キリヤマと言う方は……?どういった方なんですか?」

「ああ?どれだ?これか、中央の事務総長だ」

「名前の後ろの、これは?」

「シロウはこういう告知にいつも書くんだ。こいつが言うには、シロウの故郷での強化の(まじな)いだそうだ」


 シロウ・キリヤマの名前に続くのは……上上下下左右左右BA。知ってるよ!通称コ○ミコマンドじゃん!つーか漢字じゃん!強化の呪いって……まぁ確かにド定番のパワーアップコマンドだけどさ。間違いない、この人は日本人だ。それも俺と同年代以降の世代の。たぶんゲーム好き。たぶん男。たぶん、ちょっとバカ。


 王都には、日本人がいる……!


「御老公、先ほどの賭けはまだ有効ですか?御要望が叶った暁には……俺達を王都へ留学させてください」

「ほぅ……よかろう。ただし圧勝だぞ?」

「セシル、力貸してくれ。勝つぞ」

「もぅ~しょうがないなぁ。ボクがいないとアレクはダメなんだから~♪」


 嬉しそうに言ってるから大丈夫かな。どうやら幼馴染は機嫌を治してくれたみたい。平地での近接戦なら、結構な確率で俺が勝つ。だけどセシルには騎乗のスキルがあるからな。馬上では、そう簡単には勝てない。今回の相手もかなり強いらしいけどセシルが居れば安心じゃないかな。


「クリスは誘わなくていいの?」


 うーん、そもそも王子がこういう対抗戦に参加出来るんだろうか。だいたい騎士コースに居ること自体が異例だし。ベルカーンの連中も王族相手に槍を振るうのは……厳しいんじゃないだろうか。滅茶苦茶やりにくいでしょ。クリスの存在自体が反則だよ。


「出たいと言っておったんだがな、さすがに参加させるわけにはいかんわな」


 うん、そうでしょうね。万が一クリスが怪我したら逆に相手の子が心配になるよ。まさか模擬戦で逮捕はされないだろうけど……護るべき王族を怪我させた騎士なんて洒落にならない。若人の将来を思えば、クリスは出ちゃダメですよね。いいさ、その分俺とセシルで全てを薙ぎ倒す!



「よぉし、やるか!」



拙い小説ですが読んでくださり、ありがとうございます。

この小説を読んで少しでも面白いと思ってくれた、貴方or貴女!

是非とも感想、レビュー、ブックマーク、評価を頂ければこれに勝る幸せは御座いません

(人>ω•*)お願いします。

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