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14 ちっちぇえな

 


 これで3度目の賢狼との対面だ。正直言って2度も3度も会いたい相手じゃないんだよな。出来る事なら今日を今生の別れにして欲しい。次はもういらない。いやいやマジで。これが美女となら話は別なんだけどなぁ……だいたいがさぁ、お約束だとそろそろ堅苦しい喋り方はよせ、とか無理に敬語など要らぬとか言ってくれるもんじゃないの?俺はそんな敬語とか碌に知らないからね、そろそろマジで勘弁して欲しいんだけどな。ま、マトモな偉い人は普通そんなこと言わないわな。そして実際言われなかった。まったくクソジジイめ。


「御祖父様、お約束の品を持って参りました」

「おお、早かったなクリス。それが?」

「はい、アレクシスより説明させて頂きます」


 え?俺がですか?おい、クリス君?俺が言うの?なんで?……もしかして怒ってるの?なんかクリスを怒らせるような事しただろうか………してるね。してるわ。どちゃくそしてるわ。しょうがない、ケツの穴に力入れて頑張ってみるか。


「どうぞ御検分ください。3つありますが、それぞれ付け心地が少しずつ違いますので陛下が使いやすいものをお選びください」

「これは………随分と立派だな。正直、ここまでとは期待していなかった」


 あったりめーだろハゲ!いやハゲてはいないけど。それは俺達3人で苦労して材料を集めて俺が全力で集中して製作してルーさんが仕上げてくれた国宝級の逸品だぞ。グダグダ言わずにさっさと使え!…ってもちろん、思ってはいても言いませんよ。思ってるだけです。顔に出てる?それくらいは許してよ。


「鏡も用意しましたので、入れてみてください……これはダメですね、サイズが合ってないので老けて見えますね。こっちは……そんなに悪くないけど保留。最後のは………おぉ見た感じだと、これが一番合いそうですね」

「うん…うんうん!いいなこれ!どういう仕掛けだ…?俺の歯が元に戻ったようだ!」


 こりゃラッキーだ。予想以上にジャストフィットしてるんじゃないかな?少なくとも見た目も噛み合わせもバッチリ、かなりジジイも若返ったように見えるね。実際に食べてみないと評価できないけど、流石は俺だよな。実に良い仕事ができたようだ。


「一度、軽く魔力を流しながら咬んでみてください。それで本当に完成です」

「うむ………うん!おい、誰かマルマを持ってきてくれ」


 マルマってのは言わばリンゴですな。見た目と食感はリンゴ。市場でもよく売ってるフルーツだよ。日本のリンゴほどは甘くないけど多分この世界では貴重な甘味なんだろうね。そのマルマをメイドさんが素早く用意して、ナイフで切り分けようとしたが


「ああ、よい。そのままでくれ」


 おぉ……爺ちゃん、ワイルドに齧り付いたよ。うん、シャリッと良い音してるわ。昔、こういうCMあったよね。どうやら見た目だけじゃなく性能もバッチリのようだ。流石はファンタジーな材料で作られたファンタジーな入れ歯だ。なんでも微量の魔力を流すことによって謎の吸着力が発生して更にしっかりと噛めるらしい。作った俺が言うのもなんだけど、訳がわからんものが出来たな。


「おい、マドレリアのケーキを大至急で注文してくれ。もちろん、この子達の分もな」


 クリスと目が合った。

 間違いない、大成功だ。

 よっしゃ!


「クリス、大儀であった。実に見事だ。俺の想像を遥かに超えてきたな」

「アレクとセシルのお陰です」


 それを聞いた爺さんが、再び獲物を見つけたようにニヤニヤと嬉しそうに俺のほうを見てきた。だから目が怖いんだってば。こっち見るんじゃねぇよ、ジジイ……と思ってはいるけど言わない。


「小僧……いやアレクシス。お前の覚悟、確かにみせてもらったぞ……やるじゃないか、お前」

「身に余るお言葉をいただき恐縮至極に存じます」

「今更、そのように取り繕っても説得力がないぞ。それよりアレクシス、これは他にも作れるか?量産は可能か?」

「無理です。量産も不可能です」

「何故だ」

「材料の確保と作成法が非常に困難です。そして最大の理由は俺のやる気がないからですが」

「この俺の頼みでもか」

「今回はクリスの依頼だから作ったんですよ」


 俺には賢狼と呼ばれた先王よりも第3王子の方が優先されるんだ。まぁ多分2度と作らないだろう………将来、俺達3人の誰かが必要にでもならん限りは。だってクッソ面倒なんだもん。それにルーさんの協力が不可欠だからねぇ。


「……なるほどな」


 もし、どうしてもというならクリスに頭を下げて頼むんだね。俺もクリスかセシルに頼まれたのなら考えるよ。考えるだけで却下する可能性も十分にありますが。俺達3人が頼めばルーさんも力を貸してくれるだろうしな。


「よかろう。しかし俺を満足させる代物を作ったのも事実だな。褒美は何か欲しいものあるか?」


 来た。


 この台詞を言ってもらいたくて頑張ったんだよ。

 この褒美が欲しかったんだ、俺は。




「では……………謝って頂きたい。クリスに」

「ほぅ………欠陥王子がそんなに腹立たしかったのか」

「うーん、やっぱり友を欠陥呼ばわりされるのは……ムカつきますなぁ」


 それがクリスの爺さんであろうとも、だ。いや爺さんだからこそ、かもしれない。家族が、家族だけはそんな事を言っちゃダメだろうよ。

 こいつはな、俺の自慢の友なんだよ。この王子はな、すごい奴なんだよ。俺の誇りなんだよ。実の祖父だろうと賢狼だろうと、どこのどなたさんであろうと欠陥呼ばわりは、許せない。許さない。もちろん例えそれが一国の王であったとしてもだ。


「アレク、そんなことで怒ってたの!?僕はなんとも思ってないのに……!」

「いや、怒ってないよ。少しイラッとしただけで。だから最初にゴメンて言ったじゃん」

「言ってないよ。少なくともクリスもボクも聞いてない」


 あれ?言ってなかったっけ?言った気になってただけか。まぁあるよね、そういうことって。俺も気にしてないから気にスンナ。見ろよ、空はあんなに青いし雲は白いぜ。


「そんな理由で御祖父様に……先王に突っかかってたの?バカじゃないの!?」


 バカって言うヤツがバカなんだからな、バーカバーカ。お前にとって些細であっても俺にとっては大事なことなんだよ。俺は俺が気分良く幸せに生きる為に必死で頑張っているんだ。


「……で御老公、褒美は如何に?」

「嫌だ……と言ったらどうするつもりだ」

「後でお茶でも飲みながらクリスにお前の爺ちゃんケツの穴ちっちぇえな、とか愚痴るだけですよ」

「おいアレク!」

「不敬罪にするぞコノヤロウ……おいクリス。こいつは少々、いや相当な大バカだが……中々に得難いバカでもあるようだ。大事にしろ」


 お前もか。

 バカって言うヤツがバカなんだからな。バーカバーカ。


「クリス。クリストファーよ。俺は自然と、お前を身体が弱いが故に都落ちした哀れな孫としてみておった………お前に同情しておったのかもしれん。だが、この爺の目が曇っておったわ。お前はかくも立派に育ち、そして良き友に恵まれていたのだな。すまん、俺の不明を許してくれ」


 座ったままではあったが、賢狼とまで呼ばれた先王は、確かにクリスに……そして俺達に向かって深々と頭を下げた。本当に小僧相手に頭を下げんのかよ!この一族は全く……王らしくない。クソッ。まるで俺の方がガキみたいじゃないか。まぁクソガキな自覚はある。


「いえ、御祖父様。僕は本当に何とも思ってませんので……」

「本当にお前は強く大きくなったのだな、クリス。ヴァリートのお陰なのか、その2人の…………色々とそいつのせい、な気もしてきた」


 オホホホホ、気にし過ぎですよ御老公。あなたのお孫さんは健やかに逞しく立派に成長しとりますよ。ところでヴァリートって誰だっけ、と思ったら公爵さんの事だ。そうかそうか、公爵さんは王弟だから御老公から見ると息子さんになるんだな。あんまり似てないのね。


「アレクシスよ、一度だけだが褒めてやる。この俺を相手にして、よくぞ吠えた!見事だったぞ」


 しょうがないでしょうが……クリスの為だったんだから。ほ、褒められたって嬉しくなんかないんだからねっ!


 自分のプライド………俺には無いと思ってたプライド、あったわ。

 こいつらだ。この2人が俺のプライドだ。

 それをそう簡単に傷をつけてもらっては困る。

 テキトーな男にも許せないことはあるんだよ。

 見たか、賢狼。見たか、先王。


「なんにしても実績は実績だからな。お前たち3人に褒美を用意しよう。何が欲しい?今年入学の年齢で功績をあげるとは前代未聞じゃないか?ええオイ?」


 ごめんなさい、マグレだけど2年前に功績あげちゃってるわ俺。純度99.9%以上の偶然の結果だけどさ。


「発案はセシルだし製作はアレクで、今回僕は何もしていません。僕の分を2人に上げて下さい」

「クリスよ、それは配慮でも遠慮でもないぞ。功は功として受け取れ。お前も将来、領主となり部下を持つ身となるのだから功と罪を正しく扱えるようにならねばな」


 なんだろう……多分言ってる事は正しいんだろうけど、この爺さんが言ってるかと思うとどうにもこうにも反発したくなる。これって反抗期かしら。これが第一次反抗期でしょうか。多分違う。どうも、この爺さんと俺はトコトン相性が悪いらしい。それはそれで全然構わないけどさ。どうせ再び会う事もねぇだろうしな。


「ねぇねぇアレク、褒美って何を貰うの?何、貰ったらいい?」


 セシルが小声で相談してきた。もし俺だったら何を貰ったらいいんだろうね……前はクリスと一緒に勉強できる権だったけど。今の俺って幸せなんだな、満たされてるわ~欲しいものが無いなぁ。どうも生まれ変わってから物欲が希薄なのかも。そもそもこの世界この時代には物が無い、というのもある。生きるのに必死で余裕が無かったというのもあるかも。


「セシルの欲しいものを考えたら良いんだよ。なにか欲しいモノ、ないの?」

「う~~~~ん…?欲しいもの……」


 セシルなんてリアル子供だから更に物欲が希薄なのかもしれないな。頭から湯気が出そうな勢いで悩んでるわ。日本でなら、おもちゃでも欲しがるのかな。前世での甥っ子姪っ子におもちゃを買ってやったことをを思い出した。あの子達は俺が死んだとき、今の俺達と似たような歳だったんだよ。あれから何年経って、いくつになっているんだろう。


「まぁ俺は先に褒美貰っちゃったし、2人はよく考えろよ」

「「え?」」

「アレクシス、お前……もしかしてさっきの俺の謝罪を褒美としてカウントしてんのか?」


 だって褒美として要求しちゃったし。先王の謝罪はそんなに安くないだろう?そこまで図々しくないよ俺も……たまには。


「あのな、大人相手にガキが背伸びするな。あんなのでお前の褒美はもう終わりだ、なんて言わねぇよ」


 え、マジすか。いやー賢狼さん太っ腹だね!

 全然ケツの穴ちっちゃくないね!

 意外とカッケーっすね!爺△。


「ホントですか。セシル、クリス、どうしよう何貰おう?」


 うわ、他人事だと思って完全に油断してた。

 何にも考えてないわ、どうしよう?


「まぁ子供達よ。ケーキが届いたようだから、まずは食おうじゃないか。俺は早くこの新しい歯を使いたくてしょうがないんだ。褒美は欲しいものを思いついたら言うが良い」


 庭には既に大きなティーテーブルが用意されていて、いかにもアフタヌーンティーって感じ。前世も含めて初めての経験なんでよくわかんないけど。昔、アンティークショップに行ったときにこういうマホガニーだかアホガニーだか、そういうテーブルを見たことがあった。材質が良いのか由緒があったのか、破天荒な値段が付けてあって値札を二度見したのを思い出す。


 メイドさんに席に案内され、俺達の前にも紅茶が注がれた。あ~、いい香りだ。すぐにケーキスタンドも運ばれてきたよ。おお~、見た目は日本でもよく見たようなケーキとかフルーツも乗ったタルトもあってカラフルだ。こりゃすげぇな。


「お前達も好きなケーキを食べるといい。色々な店のケーキを試してみたがな、やはりマドレリアは群を抜いておる」


 そう言いながら自身は全種類を1個ずつ持っていった。うん、御老公。アナタね………そりゃ虫歯にもなるわ。それどころか糖尿病が心配だわ。この国の甘党の党首じゃん。俺も甘いのは好きな方だが………流石に見てる方が胸焼けしそうだわ。それにしても、このケーキは予想以上に美味しいね!こりゃ大したもんだ、これだけのクオリティがあればルーさんも大喜びだろう。入れ歯作製の予算が余った分で早速買っていこう………あ、そうだ。


「陛下。御老公。褒美、思いつきました!」

「ん?ケーキが欲しいのか?ケチなことは言わんから好きなだけ食え。俺もケツの穴ちっちぇえなとは言われたくはないからな」


 いつまでケツケツ言ってるんだ、もう忘れてしまえよ!美味いものを目の前にして、品の無い事を言うんじゃないよ……そういうとこだぞ!そうじゃなくてだな。


「違います、槍ください。名槍とか魔槍とか、あればそういうの」

「槍ぃ?お前の年じゃまだ早いんじゃないのか?」


 だーかーら。知らないだろうけど、そのやり取りは数年前にやったんだよ。


「御祖父様、アレクはこう見えて槍使いなんですよ。単独で魔物を倒したこともあるんですよ!」

「あー……そういえば昔ヴァリートから聞いたが、あれはこいつの事か!名槍は……あるにはあるがお前が使えるようなサイズはないぞ?全て大人用だ」

「構いません、むしろ大人用をください。将来、陛下に貢献できるよう研鑽いたします」

「………お前の課題はな、もう少し嘘が上手くなる事だな。思ってもないことが顔見りゃバレバレだぞ」

「………努力します」

「アレク、努力の方向が違うと思うよ」


 うるさいっ。世渡り上手になれるもんなら、その方がいいじゃないの。


「どうするつもりなの?大人用だとまだ使えないでしょ?」

「うん、ルーさんに使ってもらおうと思ってるんだ。稽古で良い見本になるだろう?」

「なるほどね!だったら……陛下!ボクは良い弓が欲しいです。大人用の弓をください!」

「セシルは弓、だな。クリスはどうだ?剣か?いっそ鎧にするか?」


 呆れないでよ御老公。

 子供らしくなくてごめんよぅ。

 これも先行投資なんだよ。


「リュシオール先生は今も剣を使ってるからな。御祖父様、僕は自分の剣が頂きとうございます」

「変わってるな、お前達……俺がお前達くらいの歳の時は、そんなもん見たくもなかったがなぁ……まぁいい。王都から持ってこさせるからから一月ほど待て」


 さすが御老公、意外と名君じゃないすか。うん、ケツの穴ちっちゃくないよ!言うとまた怒るから言わないけど。多分、今日は人生で一番ケツの穴という言葉を口にして耳にした1日になったと思う。


拙い小説ですが読んでくださり、ありがとうございます。


この小説を読んで少しでも面白いと思ってくれた、貴方or貴女!


是非とも感想、レビュー、ブックマーク、評価を頂ければこれに勝る幸せは御座いません(人>ω•*)お願いします。


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