114 英雄、色を好む
ラウルシュタインの帝都に着いて6日目。本日も晴れだけど少し風が強くて肌寒い日。
順調に進んでいれば冒険者ギルドにお願いしたグリフォンの解体は今日辺りに終わっているはずなので、そろそろ時間を作ってもう一度冒険者ギルドに行く必要がある。その必要があるんだけど今日は休みの日じゃない。もうしばらくしたら再び休日が貰えるはずなのでそれまで預かっといてもらおう。
今日のクリスは午前中は会議に参加。なんの会議なのか興味ないから俺は知らん。そして午後……というか夜には、またラウルシュタイン貴族のパーティに参加の予定。王子は相変わらずの日程だ。外務大臣サミュエルはどうか知らないが、一緒に来た事務官達も毎日スゲー忙しそうにしてるよ。
クリスは自嘲気味に会議打ち合わせがメインでお見合いなんかついでだ、と言っていたけど……確かにそうかもな、と思うほどに事務官達は忙しそう。外交って本当に大変なんですね!頑張って!サミュエル以外の皆さん!サミュエルは過労でも食中毒でも隕石が頭に当たったでも倒れていいよ!
基本的には、そんな感じで事務官連中が話をまとめてくれるんだけど最終的にはクリスやサミュエルが承認しなくてはいけないらしい。そして本日、一部の議題についてクリスも会議に参加する必要があるのだ。うん、実に退屈そうな話だよな。俺なら途中で寝ちゃう自信があるわ。うん、絶対寝ちゃう。
「それが終わったら明日はいよいよお見合い本番か。楽しみだな!」
「全然楽しみじゃないよ……あー、憂鬱だ」
多分、出会ったら高確率で結婚する相手だもんな。一発勝負のガチャだ、憂鬱になる気持ちはわかる。課金して何度もガチャするなんて実際の人生では滅多に許されないのだ。大丈夫、きっとSSRが出るよ。だって皇妃さん綺麗だったじゃん。まず間違いなく、その娘もかわいいだろう。お前の大好きな巨乳かどうかは……やっぱり賭けになるけども。
そんな雑談をしながら我々が向かうのは大会議室。始まりますよ、ルシアス王国とラウルシュタイン帝国の外交交渉途中経過発表!漢字が多い。意味が分かりにくい。
今日のクリス警護は俺、セシル、ルーの3人体制。3人とも気配察知が使えるから、仮に忍者が襲ってきたとしても対処可能だ。……忍者が出現する会議ってなんだよ。そしてその会議に参加するのは、ルシアス王国側はクリス以下、事務官達。そして豚野郎のサミュエルもいやがる。対するラウルシュタイン帝国側は、ヘルムート・フォン・ノルトハイム皇太子以下偉そうな雰囲気の大臣や将軍らしき人々が多数。歴戦の勇者!と言わんばかりの、顔を見ただけで強そうな人もいる。全員が顰めっ面で……もう少しにこやかにしていて欲しいわぁ。
俺達が案内された大会議室は本当に広い。こんなに広いと掃除が大変そうだなぁ…。お掃除ロボットどころか掃除機も無い世界で、こんなフカフカの絨毯ってどうやって掃除してるんだろう。掃除機的な魔導具でもあるんだろうか。華やかに見える城ってのは、恐らく多くのメイドさん達の地道な掃除と努力で、この煌びやかさが保たれているのだろうなぁ。
清潔さでは、うちの屋敷だって負けてないよ。メイドは一人も居ないけれどルーが管理していてくれてるから基本的に塵一つ落ちていない。そうだ、メイド服をリクエストしたら着てくれるだろうか。いつだったかメイド服の話をしたら持ってないと言っていたけど……今なら作ってあるのかも。魔神にメイド服、か……なんか罰当たりな気がしてきた。
こんな風に今日も俺は現実逃避と言うか、目の前の会議を全く無視してくだらない考え事をしてるよ。だって、さっきから言ってる内容も全然わかんねぇし。
「……交換留学生に関しまして、以上のように報告いたします」
あ、ようやく少し知ってるワードが出てきた。交換留学生……あれだろ、剣聖達ガールズも交換留学生としてルシアス王国に来ているんだろ。あの子達にとっては勉強が目的というよりショウゴ・サイコウジに同行する方便だったのだろうけどさ。そして、これは意外と重要な話でもあるそうだ。
「なんで?」
ただの学生の話だろ?
重要な話になる要素、ある?
「その交換留学生の一人がショウゴ・サイコウジだったからだよ」
会議中なのに俺の内緒話に返事してくれる第3王子は本当に良いやつ。へぇ…ショウゴ・サイコウジがキーパーソンなんだそうだ。俺にとっては、かなり不愉快な、あんまり性格の合わない3人目の日本から来た転生者でしかなかったけどな。しかも既に死んだし。そんなショウゴもラウルシュタイン帝国から交換留学生としてルシアス王国に来ていたそうなんだよな。今更どうでもいいんじゃねーの?
「ん…?アイツがラウルシュタインの国民だとして、なんでルシアス王国で勲章をもらうことなったのよ?」
えーと功績……確かオークエンペラー討伐だっけ。アイツはあんなヤツではあったけれど100年に一度レベルの災害級の怪物を食い止めた英雄なんだよな。そんなもん、ラウルシュタインで勲章を貰えよ。
「忘れたのか。ショウゴはルシアス王国内でオークエンペラーを討伐したんだよ。本来なら爵位を獲得してもおかしくない程の功績だったんだぞ。でも彼はラウルシュタイン国民だったから受勲という形で落ち着いた訳だ」
そうだったっけ…?そういえばキリヤマさんがオークエンペラー事件があった場所としてルシアス王国の街の名前を言っていた気がする。サノワだかサマワだかそんな感じの名前の街だ。
へぇ〜……。
で、そのショウゴがだよ、今更国交になんの関係があるの?
「少しは頭を使え!そのショウゴは最終的にルシアスの国王に銃を向けて大逆罪で捕まったんだろうが」
俺に頭を使えなんて無理を言わないでくれ。ああ、なるほど。ラウルシュタインの国民が、それも公費で留学していた学生が留学先の国王に大逆罪……よく考えたら、いや考えなくても凄い話だな。アイツ、とんでもないことやらかしてるよな。確かにラウルシュタイン側は暗殺者を送り込んだのかと言われてもしょうがない。宣戦布告も無しに戦争ふっかけたレベル…は言い過ぎかな。
俺もこの城に入る前に魔神達の力を使ってラウルシュタイン征服の話をしてたけど……いや、あれは冗談ですやん。あんなのジョークですよ。可能か不可能かで言うと可能なだけで実行はしないよ!
それはさておいて、ショウゴのお陰でラウルシュタイン帝国はルシアス王国に対して大変な負い目を感じる事になってしまった訳だ。俺は知らなかったけど、あの事件の直後にはラウルシュタイン皇帝からの謝罪が届いたらしいし、クリス自身もここへ着いてから皇太子による丁寧な謝罪を受けたそうだ。それだけじゃない、このクリスのお見合い自体も、その謝罪の一環らしい。
ラウルシュタイン帝国からすれば、友好国とはいえルシアス王国にわざわざ数少ない姫をやる理由が少ない。もっと強国との同盟を結ぶ為の婚姻だったりを考えていたのかもしれない。
ところが、あの留学生がとんでもない大失態を犯してくれたお陰で事情が変わった。あんな事もあったけど…ほら、姫を嫁にやるから機嫌直してよ、とでも言いたいのかもしれないね。そうなると……クリスも随分なとばっちりだな。
「クリストファー殿下。昨年の出来事は大変残念であり申し訳ありませんでした。ただ、我が国としては今後も交換留学制度は継続したいと考えております」
改めて謝罪の言葉を口にするヘルムート皇太子。言葉だけじゃなく本当に申し訳無さそうな顔をしている。もしこれが演技なら凄いよね。
「はい、ルシアス王国も両国の友好の証として交換留学制度がこれからも継続することを願っております」
クリスが対照的に笑顔で返答した。噛み砕いて言うなら、そんなに気にすんなよ!と言いたいところかな。なるほどねぇ……ほら見ろ、ショウゴのバカヤロウめ。お前のお陰で随分と偉い人たちが迷惑を被ってるぞ。なんだか、ふと俺の脳裏にブーメランとか、おまいう、なんて言葉が浮かんだけど、これは何かの暗示だろうか。
そして、もう一点。
なるほどな、と思った事があった。
いやね、ラウルシュタイン側の……特に軍人ぽい人々の辺りよ。さっきから皆さんで苦虫でも食べてきたんですか?と言いたくなるほどの顰めっ面。腹立たしいと言わんばかり。なんで、そんなに激おこなの?と思ってたんだけど…なるほど。
ルシアス王国とラウルシュタイン帝国。彼我の国力の差は何割どころじゃ無い、何倍もの差があると思う。詳しくは知らないけれど騎士の人数だって、ラウルシュタイン側は桁違いに多いはず。その強国ラウルシュタインがルシアスに頭を下げる形になった。いかにジャイ○ンとス○夫のような関係だろうと、問題を起こしたら謝罪は当然だろう。しかし当然とはわかっていても、スネ○如きに頭を下げるジャ○アンは内心では怒り心頭に発してる、と。
皇太子さんは……心の内は読めないけれど、申し訳ないという気持ちが伝わってきた。本心でごめんねと思っているんじゃないか。そんな気がするほどに、その横に控える多分…大臣的な人々も同じように神妙な顔をしている。なんだか政治家、って感じがするね!その一方で、多分軍人的な人々は内心を隠そうとしていない。出来ないじゃなく、しようとしていない。その怒りはショウゴに対してですよね?ルシアス王国に対してじゃないですよね?
本当にね、全部ショウゴが悪い………違うか。悪いのは邪神だったわ。ショウゴ個人にも問題は多かったけれど、あの大逆罪に関しては邪神の影響が極めて大だった。だから恨むなら邪神の方へどうぞ、と言いたい。
言いたいけど今ここでそんな事を俺が言い出したら、全員からお前……誰?バカか?みたいな顔をされるんだろうな。そしてすぐにつまみ出されるだろう。変なバカが忍び込んでましたね、なんて言われてさ。はい、大人しくしてます。
既に交換留学に関しての話題は終わって、次の議題へ。会議はまだまだ続くようですわ。再び俺には意味がわからない、でも両国にとっては重要な事について議論されていく。だもんで、俺は目を開けたまま寝ることにした。さっき寝る自信があると言ったじゃん。それに、おっさん達のトークなんて興味ないでしょ?俺は無いよ。寝ててもバレなきゃセーフです。
「………以上ですが、他に何かありますか?」
「ひとつ、よろしいかな」
この時、挙手したのは将軍ぽい人々の中でも一番若そうなおじさんだったそうだ。そうだ、と言うのはこの時点では俺はまだ寝ていたから。ルーにはバレてただろうけど他の出席者には多分バレていないだろう。俺にとって隠れて居眠りなんて慣れたモノなのですよ。
「ミハエル・ヴィルト卿……なにかありましたか?」
「我が国とロザリア連邦との戦いも少々長引いております。以前…と言って百年以上昔ではありますが、ルシアス王国から援軍を得て勝利した戦いがありましたなぁ。我らの友好を誇示するためにも、故事に見習って援軍を要請するというのは如何ですかな」
議場がざわついたので、この時点で俺も目が覚めた。結構時間が経過したような気がする。冷静に行動しよう。ここで、クリスやセシルに「何だって?」とか聞いたら寝てた事がバレる。落ち着け、まだ動いてはいけない。
「ヴィルト卿、確かに戦いは継続していますが我々は特に苦戦している訳でもない。わざわざ他国に援軍を要請するような状況では無いと思いますが…?」
「確かにな。こう言っては失礼だが……ルシアスの騎士など戦場において足手纏いでしかないぞ。先日の共同演習でもクリストファー殿下の護衛騎士達も相手にならなかったそうではないか」
援軍?戦争に?はぁ?訳がわからん!それから、昨日の共同演習でクリスの護衛騎士である俺達は腕を奮っていないからね!
「私も戦力として期待している訳ではありません。ただ、これを機に両国の友好をアピールし、同時に戦意高揚しようという策ですよ」
ようやく寝ていた俺にも話がわかってきた。
ルシアス王国から戦争に援軍を出せ、だって。
でも戦力として期待してないと言い切ったね!
要らないけど来い!って下に見られてるなぁ。
「クックックッ……確かにアレでは戦力としてはな。良いのではないですかな!お客様に前線を見学していただくのも一興ではありませんか」
白髪の老人……これも多分偉い軍人だろう人が、ニヤニヤと笑いながらヴィルト卿に同意した。なるほど、なるほど。どうもこれが軍部からの意趣返しのようだ。ムカムカイライラしていたジャイア○がルシアス王国に少しでも嫌がらせしたいのか。しかも援軍を寄越せなんて、序列をあからさまにアピールしたいとでも思ってるのかなぁ。
更に先日の共同訓練の結果も踏まえて、戦力にはならないと強調してますね!確かに完敗だったもんな。コテンパンってあんな感じ。ユーゴさんは健闘したけれど、それでもラウルシュタイン、強いな!ルシアス、弱いな!と俺も思ったよ。
主にラウルシュタインの軍部連中の間に、バカにしたようなクスクス笑いが広がっている。どうやら俺達は○ネ夫でも無くのび○レベルの扱いのようだ。やったね、主人公だぜ。
俺はこういうのは全く気にしない。しかも誤解でもなく実際にルシアス王国側は弱かったからさ。でも、屈辱に耐えている奴が2人居た。クリスは無表情のままに、でもグッと強く拳を握っていた。わかったのは俺だけかもしれない。
もう1人はわかりやすかった。文字通り怒髪天を衝く勢い。屈辱に耐えるつもりも、憤怒の表情を隠すつもりもないらしい。この子は導火線が短いからね。
「セシル、今は抑えろ」
小声で宥めた。お前だってそんなに愛国心がある訳でもないだろうに……血の気が多過ぎる。献血でも行ってこいよ。もし血液型がAB型なら歓迎してもらえるらしいよ?そうでなくても若い人の献血は喜ばれるらしいよ?皆んなで行こうよ、献血。人の命を救う献血。
「即答は出来ませんが、我々としても良い経験となるかもしれませんな。なにぶん、我が国の騎士団は実戦経験が足りませんで不甲斐ないですからな!」
てめぇはどっちの所属だよ、と聞きたくなる程にラウルシュタイン側に媚びへつらった笑顔で返答したのは豚の化身サミュエル。不甲斐ないのはお前だよ、死ねばいいのに。ルシアスの騎士団にも強い人は居るんだぞ。少なくとも俺の親父とセシルの親父さんは並のB級冒険者以上に強いよ。昨日の合同演習で見たのがラウルシュタイン帝国騎士の平均と言うのなら、ある程度は互角に戦えるはずだ。
でもね、友好国同士で喧嘩してもしょうがないじゃない。仲良くしようよ、お互いに。Love&Peaceだよ。
「なんで抑える必要があるのさ!ルシアス王国はさておいても、あれはクリスがバカにされてるんだよ…!許せるもんか……!」
セシルは愛国心の代わりに友情の方で怒りに燃えていた。その気持ちはわからないでもないけど……怒るほどでもないだろ。俺達はそもそも最弱の街、オルトレットの出身じゃないか。侮られるなんて慣れたもんだろう。
「そんなモノに慣れてたまるか……!!」
確かにそうかもしれん。でも、ここで騒いでクリスに迷惑をかける訳にはいかない。みんな貧乏が悪いんや……ではないけれど、弱国なのが悪いんや。
「静かにしろ」
「でも…!」
「セシル・ドゥ・ベルナール。俺は静かにしろ、と言っているんだ」
「………ッ!」
本当に久々にちょっとだけ怒っちゃった。セシルは俺の言う事だけは聞くから、ね。そっちの王子の言う事はあんまり聞かないけど。頼むから今は大人しくしてようぜ。なんせ明日はクリスの人生最大級のイベントがあるんだから。断る事が可能とは思えないけど、クリスのお見合い前にトラブルを起こして弱みを握られる事もない。クリスの不利になるような行為はセシルだろうと許さないぞ。
「……では、本日はここまでとさせていただきます」
ああ、考え事をしてたら会議自体が終わってしまった。お疲れ様でした…なんだけど、事務官達は今日の結果や提案を踏まえて、今からまた下交渉や資料作りやらの激務が始まる。ファイトっ!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
クリスの部屋に戻ってくると、そのままセシルは無言で自分の控室の方は消えて行った。文句こそ言わないけれど、怒ってることを隠しもせず大きな音をたててドアを閉めた。
「何があった?」
ちょっと険しい顔をして俺に近づいてきたのは聖女ティナ。セシルと仲良し2人組の相方の顔が怖い。
「ラウルシュタインの軍人さん達にルシアス王国が軽くバカにされた。それをセシルが怒ったから我慢させただけだ」
大したこっちゃないんだよ。
「セシルにとって大した事かどうかは、あなたが決めることじゃない。セシルが自分で決める事だ」
「確かに。その通りだな」
そうであったとしても、物事には優先順位がある。そして今、俺達の最優先はクリスだ。クリスのお見合いが上手くいくように行動する必要がある。そして、さっきのセシルの行動はクリスの迷惑になる可能性があった。例えその行動の理由がクリスだったとしても、だ。
「セシルは私が慰めてくるから大丈夫だよ」
ルーがセシルと話をしてくれるようだ。今、俺が更に何か言うより良い結果になるだろうから、ここは近衛騎士隊の隊長に託しましょう。本日も夕方からクリスはパーティ参加が待っているけれど、今日のクリスの護衛はクロードが行く予定だからルーが来なくても大丈夫なのだ。
「私もセシルの所へ一緒に行く」と聖女が言いだしたので、セシルに関してはルーと聖女に任せた。「アタシもー!」ああ、クゥムも居たか。お前にも任せたぞ。
明日の朝にはセシルの機嫌も治ってることでしょ。
俺は俺で、今日の仕事をしなきゃね。
今夜は城を出て、ウィルーノス公爵邸でのパーティーに参加予定なんだ。ウィルーノス公爵が誰かって?俺は知らんよ。ラウルシュタイン帝国の偉い貴族でしょ、多分。公爵って……オルトレットの領主、ヴァリート公爵とか王さんの弟だったよなぁ。なら、ウィルーノス公爵さんも皇族の1人なのかもしれない。だとしたらスゲー偉い人だよ。本来なら俺は一生近づくこともないだろう人だ。まぁ、おっさんに近づきたいとも思わないし俺が直接トークする訳でもなく物理的に近い距離に立つだけだから大丈夫。
そして今日もクリスの背後に俺とクロードが控える。それとは別に剣聖クレアと賢者クラウディアがドレス姿で会場内を隠密警護してるよ。彼女達は今夜も華やかなドレスを着ている。しかもパーティーの度に毎回、新しいドレスを着ている。どこにそんな金が…!と思ってたら、全部ルーが作ったんだって。こんなこともあろうかと、だとさ。どこかで聞いたようなセリフだな!流石は縫製スキル持ち、サイズもぴったりなのは測ったのかな。美少女たちの3サイズ測定…!たまりませんな。なぁなぁクリス、お前も見たいだろ?
「一緒にするな。僕はそこまで好色じゃないぞ」
「じゃあどこまでなら好色なの?」
言っとくけど、俺は覗きにはあんまり興味ないからね。見るだけなんて、つまらないでしょうが!女体はもっと五感で楽しむものだよ。
「人並みだよ、人並み!下世話な事を聞くなっ!」
「クリストファー殿下、英雄色を好むと言う異国の言葉もございます。女性に精力的なのは決して悪い事ではありませんよ」
俺達の、あまり品と知性の無い会話にクロードが入ってきた。そうだよ、スケベは悪くない。良い響きじゃないか、女好き。拷問好きや人殺し好きや暴力好きより、よっぽど好感が持てるじゃないか。比較対象が悪いか?
「クロードさんも……その、女性は好きなんですか?」
「ええ。異世界にはゼウスという神が居るそうですが、彼並みには女性好きですよ」
………それってドスケベじゃねぇか!
キングオブスケベ…いやゴッドオブスケベじゃないですか!
よく、この前のギルド受付嬢に手を出さなかったな。
「クロードさんも…!そ、そうなんですね。そうか、女性に精力的なのは良い事なのか…!」
クロードは悪い事ではない、とは言ったが良い事とは言ってないが……それでも俺が長年布教してきてもクリスはむっつりスケベの仮面を被り続けたのに、クロードの一言二言で説得されそうだ。なんでや。解せぬ。それはそうと、クロードがスケベなのは全く問題無いけど賢者達に手は出すんじゃないよ?少なくともルシアス王国に帰るまでは。
「アレクシス、私は見境の無い野獣ではありませんよ。彼女達は大変魅力的ですが私にとっては生徒であり護衛対象でしかありません」
「ほら見ろ!クロードさんには理性ってモノがあるんだよ!アレクも見習えば?」
あるよ!俺にだって理性くらい!どこだっけ、確か心の隅に……あ、賞味期限切れか。電池を入れ替えたら使えないかなぁ。
「それに私は女性には不自由しておりませんので。役目に差し障りの無い程度に楽しませて頂いております」
クロードが現世に復活して約一週間くらい?
なのに、もう楽しんでるの?
野獣じゃん。下半身は野生の獣じゃん。
「すごい…!クロードさん、いやクロード先生!僕にも女性と親しくするコツを教えてください!」
えー。このスケベ野獣を先生にするの?天の神様、親友が悪の道に走りそうなんだけど、どうしたら良いのでしょうか………おい返事しろよ、アンタの息子が原因で問題になろうとしているって話なんだぞ!ま、俺は止めないんだけども。
「殿下。幸いな事に、このパーティー会場には素敵なレディがたくさんおられます。まずは声のかけ方からレッスンを始めましょうか」
女性の扱いが上手くなるのは良いこと……だよね?お見合い前日にナンパのレッスンを受けるのはいかがなものかと思うけれど。確かにこれはルーには教えられない事だろう。あの人は恋愛に関してポンコツだからな。この話の展開……確認しておくけど多分、俺は悪くないぞ。悪くないよな?
「はいっ!お願いします、先生!」
ルーにするのと同じようにハキハキと返事している王子が居た。キラキラした瞳でナンパの特訓に繰り出す王子……もう俺が言ってやれる言葉なんて無かったよ。だいたい、コイツはあのスケベジジイの孫なんだからさ。遅かれ早かれ目覚めたんじゃない?これも自然の流れだ。うん、そうに違いない。悪いのは御老公だ。今頃ジジイは大きなクシャミでもしているだろう。
それでも明日のお見合いの相手のお姫さんには申し訳ないな、と思った。
ほんの少しだけどね。
しょうがない、これもきっと運命なのだ。
次回は22日の金曜日更新に向けて努力する所存であります。
ええ。




