102 息子が反抗期
俺達の目の前には、全裸の男が蹲っている。
これが街中なら即通報するんだけどなぁ。
お巡りさん、こっちです。このひとです。
でも、もしお巡りさんが来てくれたとしても会話次第では見逃してしまうかもしれない。そんな事はあり得ないんだけど、そんな気がするくらいに、この全裸の男が自然にそこに佇んでいるというか……どうにも絵になりすぎている。なんだよ、これ……男が見ても惚れ惚れする程に顔も身体も均整が取れていて、まるで彫刻のようだね。良いのは顔だけじゃないの?平然と、「ついうっかり手違いでこのような事になって……すみません」とか殊勝に謝ったらお巡りさんも「今度からは気をつけるんだよ?」なんて言って許して帰っちゃうかも。どんな手違いで全裸になるんだよ。ダメだろ、お巡りさん。町のみんなを守ろうよ!
警察官となって18年、この町に赴任して2年。
もうすっかり町に溶け込んだ駐在さん、野田匠38歳。愛する妻と中学生の息子と今年小学生になったばかりの娘さんがいるんだ。娘は目に入れても痛くない程かわいい存在で日々の生活の癒しなんだ。だけど、そんな野田さんの悩みは最近、息子が反抗期なこと。
この頃はサッカー部でも中々結果が出ないようだ。
「クソジジイ!」「俺は親父みたいなつまらねぇ人生は絶対嫌だ!」「親ガチャ大外れだよ!」
そんな酷い暴言を吐かれた日もあった。でも、野田さんは怒るより前に……悲しかったんだ。今でこそ上手く仕事を回せるようになったけど、息子が小さい頃は仕事にかかりきりだった。
俺は息子に親父の背中を見せてやれなかったんだろうか。
俺の人生、つまらなさそうに見えるのか………。
悩む野田さん。
めったにないが、たまの晩酌や飲み会が楽しみの人生。
いや、俺の一番の楽しみは息子……お前なんだよ。
サッカー部では1年の頃から試合に出て活躍していた。
野田さんに似たのか、息子は身体も大きいし足も速い。
ちらほらと有名なクラブチームからの誘いもきているようだ。
しかも息子は勉強の方も上位5番以内から落ちたことがない。
実はコレ、過去の野田さんの一言がきっかけだったりする。「両立っていうものは一方が駄目だった時の保険じゃない、互いに繋がっているんだ。勉強はサッカーに役立つし、サッカーは勉強に役立つ」と中学生になったばかりの息子に熱く語っていた。野田さんも、どこかで読んだ文章を我が物顔で語っただけだったんだが、これが息子の心に響いたようだ。
そうなんだよ、野田さん。
息子はしっかりと、あなたの背中を見て育っているんだよ。尊敬する人の欄には憧れのサッカー選手の名前を書いたりしているけど、内心では親父を誇りに思っている。町のみんなから頼りにされている親父……カッケーよ、なんてさ。
将来の夢はプロサッカー選手。でも、もしそれがダメなら…………警察官も悪くないよな。そう、あの誇らしい父のように。
そんな野田さんが…!
こんな全裸の男を見逃してどーする!
この町の守護者だろ、野田さん!
アンタの背中……息子が見ているんだぞ!
いや、誰だよ野田さんって。
誰でもいいが俺は野田さんの生き方、嫌いじゃないぞ。
頑張れ、野田さん!頑張れ、日本のお父さん達!
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「リュシオール……か……」
水晶から出てきたクロードは、しばらく片膝をついて蹲っていたがゆっくりと再起動したようだ。なんだ、転移してきたターミネー○ーかよ。
「動くな」
あのルーが愁眉を顰めて、本当に嫌そうな顔をしてクロードの額に手を当てた。その手が、そのまま淡く光りだす。これは……何してるんだろうな。
『私が君に最初にやったことだよ。今回は逆に記憶を与えている。いちいち口頭で説明するのは面倒だし、コイツと長々と会話もしたくないし』
『え、全部?俺との夜の日々についても全部?』
『バカっ!そんな訳あるかっ!君の前世と……不便の無いように事務的な知識だけだよ』
口では本当に嫌そうだけど、この兄にも色々してあげるんだな。そもそも、この記憶のダウンロード……今回はアップロードかもしれないが、それ自体の仕組みも未だにさっぱり訳がわからん。その仕組みはさておき、俺の記憶を俺に無許可で他人にあげるのは……それは最愛の嫁だとしてもどうなんだろうか。個人情報漏洩の極致じゃないですか。違法アップロードは著作権侵害により「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、もしくはその両方」を科せられることになるよ?まぁいいか、今度これを理由にあんなことやこんなことをしてもらおう。
「むぅう……!これは…なんということだ」
しばらくして記憶のダウンロードが終わったのか、クロードは何度か頭を振って眠気でもふき飛ばすかのようにしている。それにしてもサラッサラやな、君の髪。
「全てはまるで昨日の事のようだが……アレから、もう1000年の時が経っていたのか」
水晶の男……クロードが静かに立ち上がった。髪の色がそうであるように、瞳の色もルーと同じ黄金なんだな。そして背がデカいね。クリスは勿論、俺よりも大きい。どちらかというと細マッチョに見えるが、それは身長がデカいし顔が小さいからだ。筋肉量も相当多そう……うん、ショウヘイ・オオタニのタイプだね。そして顔も身体も良いが、声もカッコいいんだな。俺が今まで会った人で1番のイケボはモルガン先生だったが、モルガン先生以上かもな。この辺は好みもあるから一概には言えない。
『なんでもいいから、まずそのぶらぶらしているものを隠せっ!見苦しい!』
そして股間の大砲も御立派だ。実にグレートだよ。皆さんにお見せできないのが非常に残念。そしてそれを隠そうともしていない。俺も負けてるつもりはないけどさ。いやいやマジで。
「なんで日本語で……そうか、この子がメルヴィルなのか。しかしリュシオール。服なんぞ…無いよ」
そういうと、彼は全裸のまま俺に向かって片膝を付いて日本語で挨拶を述べた。
『お久しゅうござります。メルヴィル……いやアレクシス。あなたのお陰で、この不肖クロード・ヴァロアもこうして生き延びる事が出来ました。先と変わらぬ奉公をお約束いたします』
『うん、はぁ……よろしく。えーと……とりあえず服、着ましょうか』
人見知りが初対面の、全裸の大男にした返事としては上等じゃないかな。これ以上は無理だッ!思ったよりマトモに会話が出来ているけど、状況も相手の格好も全然マトモじゃないんよ。
『大丈夫ですよ、私は構いません』
爽やかな笑顔でイカれてやがるのかな。
俺が構うよ。
妹さんも大いに構ってるよ。
この状況で構わないとかどういう強心臓だよ。
露出狂だって、もう少し空気を読むだろうよ。
この一言で、コイツもバカなんだなとわかった。
絵になるからってなんでも許されると思うなよ。
『本当に見苦しいっ!早くコレを身につけろ!』
ルーが上着や靴、パンツにインナーまで色々と放り出した。
……ちゃんと用意してますやん。アレもコレもなんだかんだ言って、お兄ちゃんの為に用意してきたやつですやん。だって、俺用じゃない証拠に明らかに俺より身体の大きいクロードにサイズがぴったりだ。ツンデレ魔神じゃねーか。
しかし男の着替え待ちってのはなんというか、つまらんし手持ち無沙汰だな。着替え用のカーテンがある訳でもないし。見たくもないし視線の置き場所に困るよね。
『君は久々に逢った私の顔を見て涙してくれたのに、やっぱりコイツ相手ならノーリアクションなんだね。やっぱり私が……私だけが君に真に愛されているんだなぁ…』
それはそうなんだけども。あながち間違いでもないんだけども。しみじみと言葉にして言うこともないんじゃないかな。1000年ぶりに解放されたお兄ちゃんを目の前にして言う台詞かね。俺とお兄ちゃんしか居ないせいか、ルーの雰囲気がいつもと違う。完全に油断してやがる。かわいいから良いけど。
『お待たせしました。このクロードを再びあなたの盾としてお使いください』
再びと言われても、1000年前の俺と貴方がどういう関係だったのか覚えてないんだよ。とりあえず、もう一度『あ、はい…』と人見知り的に挨拶をしておいた。俺にとっては初対面の美形イケボな大男でしかないんだもの。改めて仲良くなれるかしら。
『居なくても全く構わないけど、居たら居たで、肉の壁程度にはなるし少しは君の役に立つでしょう』
『もうそれはクゥム以下の扱いだな。あの子は色々と役に立つけど』
『クゥムはかわいいけど…コイツはね……死ねばいいのに』
手加減全く無しにルーの兄への当たりがキツい。
俺がクロードの立場なら、もう泣いてるぞ。
『リュシオールは相変わらず、美しいな』
クロードはクロードで、ルーの罵詈雑言が全く聞こえなかったかのように涼しげな顔で微笑んでいる。全部スルーですか。マジで強心臓だな!もしかしてドMなのかな。
『オマエは相変わらず、不愉快だな』
兄妹の仲が良さそうで、何より……。この2人に挟まれると、めちゃ気まずい。この2人と一緒に暮らしていた1000年前の俺、すごい。殆ど初めて1000年前の俺、つまりはメルヴィル・クロゥを尊敬したわ。
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そのまま、2人で降りてきた階段を3人で登ってきた。
ここで色々と話というか事情を聞かせてもらいたいんだけど、ルーが早くみんなのところへ戻ろうと言うので早々に戻ることにした。過保護魔神は、クリス達の周りに人間の騎士が何十人居ようが心配なようだ。
『アレクシス、旅立ちの前に少々お時間を頂きたい。なにか役に立つものが残っていないか、少し探して参ります』
そういってクロードは、そっちが物置なのか知らないが奥の部屋の方へ消えて行った。ルーも『そうだね、私もちょっと見てくる』とクロードが消えた方向とは別の方へ行った。なんというか、兄嫌いが徹底しているのな。
それにしても1000年前の自宅兼研究所に帰ってきて、初めて1人きりになった。ここはリビング……多分リビングなんだろう部屋だ。ここへ来れば少しくらいは何かを思い出すかなと思ったんだけどなぁ………全く何も出てこない。ふと、机の上に指を滑らせる。指先に、ほんの少し埃がついた。この埃程度でもいいから何かを思い出せたら良かったんだがなぁ……。
まぁ予想通りだ。そこまで都合良くはいかないさ。例えここがナーロッパだとしても。…………俺はどれくらい、ここに住んでいたんだろ。何一つ懐かしいとも思わないのは、やっぱり少し残念っつーか寂しいかな。まぁいいさ、所詮は昔の居場所だ。大事なのは今の居場所だろう。
そういえば、クロードは俺の記憶を持っていないんだろうか……メルヴィルはルーの方に多く魂を移植したとしても、記憶の部分だけはクロードに……なんてことはないか。
ま、そのうち聞いてみるかな。
『ダメだね、ほとんどがボロボロになってて使えそうにない……これだけは取っ手を直せば使えるかも』
しばらくして戻ってきたルーが手に持っていたのは古い魔法の鞄だった。へぇ、1000年前にもあったんだ!?おぉ、いいじゃん。まだ使えるなら、セシルかクリスにあげよう。やはり物資の集中はよくない。コレがあればあいつらにも水・食料・燃料に衣類などサバイバルに必要なものをたっぷり持たせる事が出来る。……今もなにか不足してないだろうか。ああ、なんだか急に心配になってきた。
『これは……アレクシスは使われますか?昔、あなたが作った武具が少し残っていました』
遅れてクロードが持って来たのは、RPGのラストダンジョンの宝箱から出てきそうなド派手な剣と戟、そして弓と矢だった。どんな素材から作られているのか知らんが錆ひとつ無い。ついさっき完成しました!て感じにピッカピカな武具、と言いたいが埃はそれなりに被っている。後で掃除しようか。それにしても、なんつーか前前世の俺……やっぱり趣味が痛い。こんなの………今の俺も大好きなデザインじゃないか。こういう根本的な部分の好みというか厨二病は本当に変わってないんだろうな。記憶は残ってなくても日本での日々はさぞ楽しかったんだろうな、メルヴィル。……だろうっていうか楽しかったよ。プラモにゲームにマンガにアニメを堪能してたよ!それは今の俺も覚えているだろうが。
弓と矢はサイズが大丈夫ならセシルにあげよう。この剣は……とりあえず予備として俺が持っていようかな。こう見えても、それなりには使えるんだからねっ!剣聖に剣で勝ったこともあるし!ま、あれはまぐれだとしても。戟は……保留。誰か使うかな、それともやっぱり俺が使おうか。また今度考えよう。
『ここにはいつでも戻ってこれますから、さぁ行きましょう』
クロードがそう言うので、研究所を出ることにした。過去の居場所ではあるが、どうでも良いという訳でもない。なんとなく後ろ髪が引かれるけれど……そうだな、また来ればいいや。ちなみに、出るときも内側の半球にタッチするだけで外に出られる。鍵はないのか、普通の扉と鍵は。つくづく気に入らない出入り口だぜ。
『あれは、私達だけが出入り出来るんだよ。君が作ったのに覚えてないの?』
そうなん?やっぱり作ったの俺なの?さっき作ったヤツ頭おかしいとか思ってたわ。嫌いだわーと思ってたわ。だいたいコレ、指紋認証なの?いや、生まれ変わって俺の指紋は変わってるから指紋認証ではないな。何を認証して出入りしているんだろ。前前世の俺って本当に頭良いんだな。そこで頑張りすぎた反動で今、勉強嫌いなんじゃないか。
3人で研究所の外に出てみると既に太陽は正午くらいになっていた。ちょうどお昼くらいだけど、この不思議な研究所を後にしてマイニッツの街に急ぎましょうか。夕方までにはマイニッツに着いて、みんなに合流しなくてはいけない。地図がないので案内人であるルーだけが頼りだ。目的地マイニッツは、ここからそう遠くはないらしい。今から出発すれば恐らくクリス達よりは随分早くマイニッツに着くだろう、って話だ。
『あー、そうだった。馬が一頭しかないんだった……どうしよう?』
俺はそもそも、ここへ人を迎えに来るつもりも無かったから一頭の馬で来たんだ。俺だってそれを知ってたらルーと別々で馬に乗ってきたのに。しょうがない、クロードには走ってもらおうか。1000年の寝起きに、いきなりハードかな?
『大丈夫ですよ。私は、飛べます』
へ?大昔のギャグじゃなくて?
Can you really fly?
『ええ。Z戦士のような感じで飛べますよ』
ああ……あなたも俺の日本での知識を手に入れたのでしたね…。ありがとう、ものすごく具体的でわかりやすかったわ。まさかこの世界でZ戦士なんて言葉を聞くとは思わなかった。
ありえないことなんてありえない。空を飛ぶクロードを見ると、しみじみとその言葉を痛感しますねぇ。人って飛べるんだぁ……彼は人間じゃないけどな。
『おい、目障りだからもう少し後ろを飛べ。邪魔だ』
『リュシオールは本当に恥かしがり屋なんだから…』
馬を走らせながらも、ルーの兄への毒舌が止まらない。一方で兄のポジティブシンキングですよ。心の鎧がすごい。そのうち、もう1人の残念な兄であるマティアス王子の対面が楽しみになってきた。なんか不思議な化学反応を起こしてくれないだろうか。そうか、よく考えてみると俺が知ってる限りでマトモな兄ってウチの兄弟だけだよな。良かった。本当に良かった…!ありがとう、レスリー兄さんジェロム兄さん。俺ってつくづく恵まれた子だったんだね。
『それにしても、この辺りも随分と変わりましたね……まさかハーフェンの街が跡形も無くなっていたとは…』
そりゃ1000年も経てばねぇ。
そもそも、そのハーフェンがどこのどんな街なのか知らんけど。
時々、色々と気になるのかクロードは鳥のように高く舞い上がって周りを見回しているようだ。あんなに高く飛んで、怖くないんだろうか。高所恐怖症の俺には玉ヒュン動画並みにクる。見てるだけでヤヴァい。
『ね?ウザいでしょう?本当に邪魔。どっか行って欲しい』
反抗期の娘か。どこまでも兄に容赦がない。探し出して叩き起こしておいて、そりゃないでしょうよ。まぁルーが嫌がってたのをそうさせたのは俺だけど。今のところ、俺はそんな不快感ないよ。むしろ意外と接しやすいわぁ。しばらく俺とルーで馬に乗って進んでいると、上空からクロードが戻ってきた。
『そういえばクロードさんも魔神なの?』
『アレクシス……クロードさんなどと呼ばれると身の毛がよだちます。昔のようにクロードと呼んで下さい。そして、確かに私も堕ちた神……魔神ですよ』
なんで昔の俺は、そんなにホイホイと魔神と知り合ってるんだろうなぁ。普通に生きていて、そうそう出会うもんじゃないだろう、魔神とか。どこに行きゃ魔神に出会うんだよ。
……あ、いつだったか迷宮で魔神に会ったっけ。すぐルーに強制退場させられたけど。昨日、クリス達を3人目の魔神が襲うかも?なんて妄想してたけど、まさか俺が3人目の魔神を連れて帰ることになるとはな。
『遠い昔……あなたと知り合ったのはリュシオールよりも私の方が先だったのですよ。友として師として弟子としてメルヴィルと交わり……そして私を慕ってリュシオールがやってきた、と。そういう流れです』
『慕ってなどいない!捏造するなっ!』
………多分、慕っていたんだろうよ、昔は。その後、この2人の間に何があったか全く想像出来ないけれども。ルーは教えてくれないから俺とルーの出会いについてクロードに詳しく聞いてみたかったけど、ルーの怒声にクロードはまた上空の方へ飛んで逃れた。
いいなぁ、アレ…俺も使えるようにならないだろうか。夫婦喧嘩で効果を発揮しそうだよね。困ったら飛んで逃げる……アリですよね。その場しのぎだとしても。
『なぁ……あのクロードも強いんでしょ?』
『認めたくはないけど途轍もなく強いよ。私が自分を最強だと言わない理由の1人だ。言っておくけど過去に私がアイツに負けたことはないし、今だって闘って負けるつもりもないからね!』
確かにルーは決して自分を最強とは言わない。
俺達から見たら無敵にしか見えないけど。
そして、そのルーと似たような強さを持つのか。
規格外が、もうひとり味方になってくれたようだ。
あー、みんなになんて言って紹介しようかな……。
ルーのお兄さんです、で良いか。
その後はどうしよう。
使節団に勝手に加えて良いもんだろうか。
『良い考えがあるわ。マイニッツに捨てていきましょう!』
ここをゴルフ場にしましょう!的な勢いで言うんじゃないよ。それも満面の笑顔で。ダメだ。クロードに関しては、ルーが役に立たない。せっかく出会えたのに切り捨てようと必死になってる。実際問題、クロードの扱いは難しい。だいたい戸籍も無いしな。これから生活していくなら身分証も必要だし………とりあえず冒険者登録させるか。クロード本人が言うには俺に奉公してくれるらしいけど、ルーが居れば世話に関して他に人は要らないんだけどなぁ……とりあえず、色々試してみようか。まぁ、なんとかなるだろ。
『そうでしょう?君のことは全て、朝から夜まで……望むならベッドの中にだって私が居るのに、アイツは要らないでしょう?』
対抗意識を燃やさなくて大丈夫だよ。
これまでもこれからも、君が俺の一番だ。
かわいい婚約者を後ろからギュッとハグ。
馬に乗りながら、我ながら器用な話だ。
はるか遠くにマイニッツの街が見えて来た。まさか1人増えて戻ってくるなんで、クリス達もめちゃくちゃ驚くだろうな。
リアクションが今から楽しみだ。




