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致命傷で死ぬのならもう何度も死んでいる

 ――金属製!?

 思わず切り払う。だがそれはキンと音を立てて弾かれただけだ。空中で姿勢を直し、再び一直線に飛来する。どうなっているんだ。

 更に2つ3つと増える。更に水、血のダガーも混ざる。いったい幾つ制御できるんだ。


 再び金属のダガーを切るが、今度は液体の様に崩れて消える。

 意味が分から――いや、分かった。それと同時に、俺の勘違いもな。

 先ず金属のダガー。こいつは本物と水銀の二種類だ。だが分かっても、二つのダガーの見分けは困難。

 そもそもそれどころじゃない数が迫ってきている。数は完全にブラフ。もう隠す必要も無いって事か。


「クッ!」


 しまった!

 ひたちさんの右足に銀色のダガーが突き刺さっている。ボンテージのブーツを突き破って。

 あれは純粋な金属か。やはり硬度が違えば貫通力も段違いか。


 そう、こいつは液体操作の能力者じゃない。物体をダガーにして対象を攻撃する能力者だ。

 そしてあの形であれば、最初から作ってある金属製品でも同じことが出来るってわけだ。

 完全な勘違い。最初に水をダガーにした時点から思考を誘導されていた。先入観は――、


 そんな反省する間もなく、何かを踏み抜く。

 それは地面から飛び出た石のダガーだった。

 スパイク付きの分厚い金属底のブーツだが、水で人を刺せるなら石でもこの位は出来るよな。

 おそらく、事前に形成してあったのだろう。間抜けな罠に引っかかったものだ。それとも誘導が上手かったと褒めるべきか。


 だが、既に射程内だ。

 痛みさえ外してしまえば、返しの無いダガーを抜くなど造作もない。

 俺は全ての力を振り絞り、禍々しい短剣を振り下ろした。

 だがそれは縦縞スーツの左腕で受け止められる。やっぱりこれも、見た目通りの布じゃなかったか。

 だがあの時のおかげでスキルはワンランクアップしている。地上で戦った時よりも、俺は強い! 強度を外せ!

 スーツに切れ目が入る。そしてその僅かな切れ目が入った時点で勝敗は決した。

 一瞬――人の腕など僅かの抵抗もなく、サングラス男の左腕を斬り落としていた。


 同時に、俺は大量の血を吐き出していた。

 腹に刺さった無数のダガー。これは……砂鉄か。


「賭けは私の勝ちだな。見事なスキルと勇気を称賛しよう」


 俺の周囲を囲む、数えきれないほどの砂鉄のダガー。確かに、材料は山ほどあったな。

 数が多すぎて、逃げ場などどこにもない。

 なるほど、ここまでの戦いが全部罠。俺をここに誘い込むための……。

 斬り落とした左手からは血のダガーが生えていた。あれで止血できるらしい。便利だな。

 そして右手でクイッとサングラスを上げる。だが――、


「残念ながら、その賭けとやらは俺の勝ちだよ」


 体中に突き刺さる無数のダガー。その様子は針刺しよりも酷い。完全に穴だらけだ。

 確かに完璧な致命傷。これで生きている人間は存在しないだろう。

 だけど悪いな、致命傷を受けるのはもう1度や2度の話じゃないんだ。

 こいつは、最初から外してある肉体だよ。


 まるで空間から脱皮するかのように奴の前に躍り出ると、俺は短剣を迷わず後頭部に振り切った。





 ●     ■     ●





「うーん……」


「お、気が付いたか」


「これはまた……意外な状況だ」


 サングラス男に放ったのは峰打ちだ。俺はこいつを殺さなかった。

 左手のダガーは血に戻ってしまったのでちゃんと止血した。これで死んだら馬鹿だからな。

 ついでに縛って、現在は部屋の隅に転がしてある状況だ。


「あれで死なないとは……どうやら君のスキルを甘く見ていたようだ」


「こちらもあんたのスキルを見誤っていたよ」


「そうかね? その割には反応が早かった。早すぎたと言って良い。そうでなければ、目の前に出された金属のダガー……あれを避けられるとは思えんがな」


「最初は液体操作だと思っていたけどな。その割には同じ形のダガーばかり。だから逆だと思ったんだよ。操るのは液体ではなくダガーの方だとな。それは血のダガーを使った時には、もう確信していたよ」


「そこまで分かっていたわりには、よく被弾したものだ」


「うるせえよ。それと、スキルを使うアイテムはこれだろ。悪いが預からせてもらっている」


 それは緑のサングラスだった。


「そこまで分かっているなら、なぜ殺さないのかね?」


「賭けを勝手に仕掛けてきたのはそちらだ。勝った時の取り決めすら無しにな。だからこうさせてもらったという訳だ」


「なるほど……勝者には生が。敗者には死が与えられる。単純な賭けだと思ったのだがね」


「受けると言った覚えもないがな」


 こういったシンプルかつ自分が絶対って思考の奴が一番苦手だ。正直関わりたくもないがそうもいかない。

 こいつからは色々と情報を聞き出さないとな。

 他二人は……まあやってしまった事を悔いても仕方がない。

 正当防衛だしな。





あとがきに人物紹介を書いて行こうと思ったのですが、後で探すのが逆に凄い手間になって迷惑になりそうなので予定変更。

今度、第一部と第二部の間に、そこまでの人物紹介を追加しようと思います。


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