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交渉が決裂するなんて分かり切った事だ

 首が転がった後、ゆっくりと男の死体が崩れ落ちる。これでセポナの奴隷印は消滅するわけだ。


 以前に戦った時も思ったが、こいつらは人間と何一つ変わらない。

 ここはゲームの世界じゃない。琢磨(たくま)という男がそう言った。確かにその通りだ。

 だが法の通じない世界で敵意ある相手に出来る事もまた、もう決まっているのだ。


「まだ名前を聞いていなかったが、この際そんな事はどうでも良い。聞きたい事は山ほどあるからな。まあまずはこの世界で死んだらどうなるのか、それを教えてもらおうか」


「それを既に伝えた通りです。貴方がたは元の世界へと帰還します。それよりも、ここは神聖な場。召喚者様にはご負担をかけている以上、我々は寛大に接しています。ですが、あまりの狼藉は許されませんよ」


「面白い事を言うものだ。なら俺はなぜ元の世界へ帰れなかった? それに一緒に帰るはずだった2人。他にも4人の死体を見た。あれはどういう事だ。それにスキルの事も聞かないといけないな。なぜ俺の正しいスキルを言わなかった」


 そう言って、切っ先を痴女神官に向ける。


「さて、答えてもらおうか」


 まあ実際に答えるわけがない。こんな事でペラペラしゃべって全部解決となるのなら、とっくに全てが終わっているだろう。

 だが俺に秘策アリだ。


「〇■■▲ ★●〇▲◆」


 予想通り、現地語で指示を始めた。交渉は決裂だ。

 何と言っているかセポナに翻訳してもらおうとも思ったが、彼女にはもっと大切な事を頼まないといけない。


「セポナ、奴隷印のハンコその他もろもろを一式用意してくれ。こいつには聞きたい事が山ほどあるんでな」


「あら、それは無駄になるでしょう。私はいかなる手段を使われても、奴隷になる事など合意しませんもの」


 そう言えば合意が必要だった―!

 契約書を書かされたのをすっかり忘れていたよ。

 セポナは……まあ逆らえる状況じゃなかったか。


「それは残念だ。穏便に済ませたかっただけなんだけどな」


 極力顔には出さないように、冷静に応対する。


「その心配はご無用でしょう。この様な不敬をして、それこそただで済むと思っているのですか?」





 冷静に対処していたが、痴女神官――いや、教団の司教であるヨルエナ・スー・アディンもまた焦りの中にあった。

 本来なら、今頃は予定通り木谷敬(きたにけい)が到着し、この狼藉者を始末しているはずであった。

 なのに未だに到着しない。一体何処でさぼっているのか。

 だけど、あれでも地上に残る教官の中では職務に忠実な男。意味もなく遅刻するとも考えられない。


 だが他の援軍を頼めるかと言われれば、事態はそう簡単ではない。

 目の前にいる男は帰還者。この世界に存在していけない人間なのだから。

 いざとなればどうにかするしかないが、今は極秘裏に始末をしたい。





「ではその体にでも聞くさ。まずはそうだな……俺のスキルを制御する道具。そいつを渡してもらおうか」


「そのような物はありません。貴方はスキル無しの外れ。当然、それを制御するための道具(アイテム)も存在しないのですよ」


 こいつ……俺の目を見ても平然とそんな事を言う。

 スキルを使ってどうにかなるだろうか? こいつが素直に全てを自供し道具を渡す可能性――それ以外を全て外す。


 ……まあ考える必要もなく無理だ。可能だとしてもあの様子だ。ちょっとやそっとじゃダメだろう。

 それに俺のスキルは無機物や受動的な事には作用しやすいが、相手が生き物、そして意思を持つ人間の行動を変えようとすると相当に難しい。

 更には同じ召喚者が絡むことに関しては一切無力と考えていいだろう。


「素直に観念なさいませ。そうすれば悪い様には致しません」


「苦しまない様に殺してくれるってか? あの穴に放り込むのは、もう無駄だと判っただろうからな」


「仕方ありませんね。○○■※ ▽ ■※※!」


 言うまでもなく交渉は決裂した。まあ当然だろうな。

 平八(へいはち)さん――いや、ブラッディさんやひたちさん、更には他の先人たちも何とかしようと努力してきたんだ。

 突然に、ここで全部明かしましょうなんてなるわけがない。

 全てが解決するなんて最初から期待してはいなかったよ。





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― 新着の感想 ―
交渉が成立する可能性はなかったろう? いや、失敗するのをハズしていけば、いけた?
[一言] 「苦しまない様に殺してくれるってか? あの穴に放り込むのは、もう無駄だと判っただろうからな」 悠長に話をしないで、逃げないように取り敢えず脚でも切っておいて欲しいね。
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