説教してやらないと気が済まない
セポナは大神殿と呼ばれる場所へと移送されているそうだ。
知らない場所ではあるが、立ち入った事はある。俺達が召喚された場所だそうだからな。
そういや外に出た事は無いので、外見は知らないな。どうせこの翡翠色の建物のどれかなんだろうが。
しかしなんでそこなんだ? 俺を誘っているのか? だとしたら、彼女は見捨てるのがベストだ。
物事には優先事項がある。俺にとっては奈々。そして先輩たちだ。
もし連中が俺を誘っているのなら、当然大神殿とやらは相当に警備を固めているだろう。
それは逆に言えばチャンス。その分だけ、目的の警備が薄くなるのだから。
そうなんだよ。それが正しい考えだ。
「大神殿の位置と外見を教えてくれ」
「行くのですか?」
「彼女には返しきれない恩と義理があってな。ここで負債をちょっとだけ返しておきたいんだよ」
もっとも、それもまた俺が原因なんだけどな。
「それでは地図の★3印に移動してください。そこで合流致しましょう」
場所としては奈々が暮らしているという宿舎に近い。
終わらせてからでも間に合うか? いや、間に合わせるしかないんだよ。
目的地は周囲の翡翠色をした超高層建築に囲まれた繁華街といった感じの場所だった。
……見たところ召喚者も多いな。
奈々や瑞樹先輩もいないだろうか?
そんな感傷もあるが、会ってしまったら終わりだろう。俺はセポナを見捨ててでも二人を連れて行かなければならない。何があってもだ。
会いたいけど会ってはいけない。そんな苦しいジレンマの中、目的の位置には既にひたちさんがいた。
というか、初めて出会った時といいますか、それからずっとといいますか、とにかく毎度おなじみの衣装。
革ともゴムとも判断が付かない真っ黒なボンテージ衣装。
上乳バーン! 下乳横乳ドーン! そしてそこからはみ出そうなほどに大きな脂肪の玉。
そして下はハイレグでパンツは履いていない。正面からは見えないが、背中はモロだしだ。
ロングの手袋にニーハイのハイヒールブーツ、そして茨のような棘だらけの鞭もそのまま腰に下げてある。
今までは暗がりだったし、迷宮という特殊環境だった。
しかしこうして明るい所で見ると、やっぱりこの服色々とやばい。
多少慣れたとはいえ、ひたちさんは金髪青い目の超美人。
もし元の世界で小学生なんかがこんな女性と出会ったら、一生消えない性癖かトラウマ、そのどちらかを確実に植え付けられるだろう。
「他に服は無かったのか」
ついつい本能で口走ってしまった。
「申し訳ございません。なにぶん急でしたので。それにこういった露出の高い服は普通でございますから、さほど気にする人もおりません」
この世界の男は皆、去勢でもされているのか。
それよりもセポナの事だ。
「セポナの事、気が付いていたんだろ? 分かっていたのなら言ってくれよ」
改めて考えてみれば、セポナも知っていたのだ。自分の運命を。悔しくってしょうがない。ただの一言でも良い、頼って欲しかった。
俺に助けてもらいたくはないのか? 心当たりがあるから胸が痛い。だけど今は別問題だ。
「なぜ大神殿に連れて行かれたと判った?」
「既に何人かの仲間が潜入しています。詳しくは申せませんが、そこからの情報でございます」
「確定事項ならそれ以上の追及をするつもりはない。状況が変化したとはいえ、どうせいつかは挨拶に向かう予定だったからな」
ひたちさんはぺこりとお辞儀をすると、「こちらです」とだけ言って駆け出した。
当然俺も一緒に向かう。ついでに、セポナにも一言いってやらないとな。
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