不安がなかったわけじゃないけど達成感の方が大きかった
「それで、これからどうなさるのでしょうか? セポナさんには、聞かれたことは全て答えて良いと言ってありますし、ここが見つかるのも時間の問題かと」
「実は出入り口はもう一か所あってね。そちらを使う」
「本当に、どれだけのスキルを使ったんですか……」
なんかひたちさんから黒いオーラが立ち込めている気がする。
それに目が怖い。味方でなければ、間違いなく眉一つ動かすことなく俺を殺す目だ。
「だから勘弁してくれって。これはまあついでみたいなものだよ。一度そこへ行ってから、ひたちさんには待機していてもらいたい」
「一人で大丈夫なのですか?」
「むしろ一人の方が良いんだよ」
こんな美人と今まで一緒に居ましたなんて説明を、その場でしている余裕なんて無いだろうからな。
それに外では、俺の認識を外す予定だ。他に人がいると、かえって無駄になる。
一度迷宮に戻ってから別の横穴へと入る。
無言で付いて来るひたちさんが怖いが、こうして無事だったのだから機嫌を直してもらいたい。
それに、俺のスキルは未知だらけだ。暫く使わなかったら普通の状態へと戻っていくのか、それとも容量の決まった容器の様なもので、一定量を使ってしまったらお終いなのか。そんな事も分かっていない。
後者ならかなりピンチかもしれない。見えないリミッターに向かってのチキンレースだよ。
だけど、たとえ万が一の事があっても召喚された人たちは帰す。その時俺がいなくても奈々たちだけは……その覚悟は出来ている。
だけどその前に消えてしまったら全てがパア。
ひたちさんの言う通り、注意するに越した事はないな。状況が許せばの話だけど。
もう一つの出口は迷宮を結構戻った先だ。来たところとは違うが、途中に大きな縦穴もある。万が一の事があっても、ここを超えてくる奴はそうはいないだろう。
こうして移動した先は、地下墓地のような場所だった。
崩れたレンガの様な壁があり、その先には幾つもの土の箱が並んでいる。
「ここは墓地なのか?」
「かなり古い遺跡の様ですが、詳細は分かりません。こういった場所があるとは思わなかったもので……」
先入観の違いだろうか? 俺は普通にあっておかしく無いと思ったが。
だけどまあいいや。
「それじゃあ上に行く事にするよ。場所はこれで合っているんだよな?」
セポナと別れた後、ひたちさんに貰った地図を確認する。
まあどうせ俺の目的なんてのはバレているのだろうから、彼女がいる時でも良かったけどな。一応の用心だ。
そこに記されているのはみんなの宿舎。奈々は比較的中央に近い位置だが、瑞樹先輩たちは郊外――迷宮に潜る為の、唯一変わらない出入り口――つまりは外のセーフゾーン近くの宿舎にいるらしい。
距離は先輩たちの方が近いが、やはり奈々からだろう。あいつはいざという時にボケるからな。先に連れ出す必要がある。
それにセポナと別れたのは明け方だが、こちらは迂回した関係でもう昼過ぎだ。急いだ方が良いだろう。
「あ、これを忘れないでください」
そう言って渡されたのは、可愛らしいうさぎの髪留めだった。
もちろん奈々や先輩へのお土産ではない。というか、他の女性から受け取ったものをプレゼントする様な鬼畜なつもりはないからな。
これは通信機だ。髪にとめておくと、着用者にだけ声が聞こえるそうだ。
「もう少しまともなのは無かったのか?」
「これも発掘品ですので」
迷宮に眠る魔法道具がこれとはねぇ……いったい、いつの時代に誰が作ったのやら。
「まあいいや。これから俺は外に出るけど、何かあったら逐一報告してくれ。俺や俺の周りに係わる人間、係わった人間、それに町全体の変化など、どんなものでも報告を頼む」
「畏まりました。それでは行ってらっしゃいませ」
深々とお辞儀をするひたちさんに手を振って、俺は外へと出た。
この世界に来て、初めての街へ。
ここまでありがとうございます。
次回より新章に突入。遂に地上です。大切な仲間たちとの合流です(*´▽`*)
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