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相当な無理をしたことは秘密だな

 2日ほど歩いたところにそれはあった。


「縦穴ですね」


「ほへー」


 ひたちさんとセポナが見上げるが、上は真っ暗で何も見えない。

 懐中電灯……ではないが、セポナの使っている機械でも同じだ。どこまで続いているのか想像もつかないだろう。


「こんな場所が出来ていたのですね。流石は大変動といった所でしょうか」


 この縦穴はあちこちの道に繋がっているのだろう。そして現在の迷宮はつるつると滑る。

 一体どこから落ちてきたのかは知らないが、底には転落死したらしい人間や芋虫、大トカゲ、一つ目四つ腕の巨人など、様々な生き物の死体が転がっていた。

 そして当然ながら、それに群がる芋虫なんかもな。

 一応確認だが、人間は普通の人間だ。召喚者ではない。今更言うまでもないか。


 匂いはあまりしないし、ハエなどもいない。まあ、腐ったり蛆が湧く前に全部喰われてしまうのだろう。

 ここにある死体も、1日か2日で骨すら残るまい。


「それで、本当にここを登るの?」


 手で壁をつるつると擦りながら、セポナが嫌そうな顔をして聞いて来る。

 まあ気持ちは分かる。失敗して落ちたら、目の前にある彼らの仲間入りだ。


「問題は無いさ。俺が登って安全圏を確保する。その後で引き揚げれば良いだろう」


成瀬(なるせ)様、それは……」


「これは譲れない。やらなきゃ上手くいって半年。最悪の可能性だってある。そもそも、途中で現地人や他の召喚者と合流して、何も無いという保証もない。それに、これまで何か月が経ったのか……もう僅かの時間も無駄にはしたくないんだ」


「分かりました……」


 観念したように、ひたちさんが言葉を絞り出す。


「ですが、休憩中は可能な限りスキルを鎮めて頂きます。その条件、受けて頂けますね」


 彼女の真剣な眼差しと現実的な可能性。議論の無意味さ。そう言った様々な要素を検討した結果、その条件を受ける事にした。

 いや、受けるしかないんだ。そうでなければ桁違いに無駄な時間を過ごす羽目になる。





 こうして俺達はつるつると滑る、到底登攀とうはんなど不可能な壁を登る事になった。

 下から見上げた時は垂直だったが、実際に上ると結構湾曲している。そして最初から分かっていたが、無数の横穴が開いていた。


 そういや、初めて足を踏み入れた時もそうだったな。この迷宮は、入り組んだ大きな道以外にも、小動物の通るような穴が無数に空いている。

 絶対に自然環境ではありえない地形だろう。だけど苔のような質感をした緑の壁は、どことなく幻想的な空気を醸しだしていた。

 スキルを使っているせいで、セポナのライトが無くても明るく見える事も影響しただろう。


「本当に大丈夫なのでしょうか?」


「絶対に落とさないで下さいよ。心中になりますからね」


 二人の声が聞こえるが、まあその辺りは大丈夫だろう。

 今更だが、俺はスキルを使って壁を登っていた。下に落ちるという状態を外す。滑るという状態も外す。

 見た目は垂直なので違和感があるが、まるで普通に歩いているように壁を登る。マジで何の苦労もない。


 そして人が入れそうな横穴を見つけたら、一応中を確かめる。

 下に落ちるような形は絶対にダメだ。

 それに奥が広く、何か落ちて来た時に巻き込まれるような地形もダメ。

 それなりに条件は厳しいが、中には休憩に最適な場所もある。袋小路で少し下がった所。

 滑るだけあって、一度入ったら普通じゃ出られない。こういった場所が逆に安全だ。


 こうして休憩場所を見つけたら次は二人の番だ。

 ベルトにロープを結び、安全地帯まで引き上げる。二人の重さも外せたら楽なのだが、残念ながらそれは不可能だった。

 しんどいが、我ながら慣れてきた。実際の位置は全く分からないが、ひたちさんが言うにはもうレルメデスの深度は過ぎたらしい。


「あのセーフゾーンからここまで3日か。かなりのショートカットが出来たはずだ」


「かなりどころではありません。前代未聞でございます。こんなすごい縦穴が出来ている事も驚きましたが、それを苦もなく見つけた事も感嘆いたします」


「このままずっと上に行けるの? 凄いねー。来た時とは大違い」


「途中で他の縦穴まで何度か歩くけど、大体そんな感じだ。あと数日で目的地に到着する」


 感心しているセポナとひたちさんだが、実際には少しだけ違う。

 あの時、俺が変えたんだ。確かに縦穴はあった。何本も。

 だけどそれを伝っての移動では、やっぱり何か月もかかる。

 だから無理矢理迷宮(ダンジョン)を崩し、穴を開けた。ここまで出来るとは思わなかったが、出来たのだから良いだろう。


 この点に関して、スキルで少し分かったことがある。

 俺のスキルは、物質の結合を外すことが出来る様だ。竜の肉を切ったり食べたりできたのは無意識にそれをしていたからだ。

 その点に関しては非常に強い。こうして迷宮に大穴を開けてしまうほどだからな。

 それに召喚者が放ったスキルも、ある程度なら干渉できる。


 一方で、生き物に関しては俺のスキルは直接的にはほぼ干渉しない。まして召喚者相手ではからっきしだ。

 あの夜もひたちさんをどうにかしようと思ったけど、どうにもならなかった。


 でもまあ、やれることが分かって来るのは良い事だ。

 いや、影響を考えれば良くないんだけどな。特に今回はやり過ぎた。うん、自覚できているさ。

 この件はひたちさんには内緒にしておこう。


挿絵(By みてみん)





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