やはり人を見かけで判断してはいけないな
「このダンジョン……と言うと少し変ですが、ここの大元を管理している国はラーセット。
そして地上のセーフゾーンは首都ロンダピアザにしかありません」
最後の支度をしながらも、同じような説明を何度も聞いていた。
未知の場所へ行き、絶対に失敗できない。
言い忘れましたや聞きそびれていましたなんて内容あったら大変な事になってしまうからな。
「結局のところ、行ける場所はいきなり首都。敵地のど真ん中ってのはどうやっても変わらずか」
少し変と言ったのは、他国のダンジョンと繋がる事もあるからって事だろう。
実際何処までが何処の国の境界線なんてものは、ダンジョンには書いてないからな。
「首都の周辺は、とても高い壁に囲われています。見たらきっと驚きますよ」
「まあ出来る限り驚かないようにするよ。目立つのは避けたいからな」
「後で細かな地図はご用意いたしますが、肝心の召喚者の方々は自由行動です。そのため住居はバラバラですし、地上にいるとも限りません。ですが……」
少し意外だった。召喚者は全員、同じ建物で共同生活をしていると思ったからだ。その方が監視しやすいだろう。
だけど監視なんてのは、逆に不安の種となる。そして不安を感じた人間が集まっていたら……。
そう考えると、グループを作らせてバラバラにしておいた方が楽なのだろう。
ただ――、
「ですがってのは何だ?」
「……奈々様は基本的に迷宮には入りません。以前は入っていましたが、色々その――訓練とかがありますので」
「詳しい事を教えてもらえるか?」
昨日は無事ならそれで良いとは思ったが、どうも煮え切らない態度に嫌な予感しかしない。
想定外の情報があるならぜひ知っておきたいのだが――、
「申し訳ありません。これは今ここで、わたくしが言う事に意味があるとは思いません。たとえ言っても、決して信じないでしょう。それどころか、話す事で今の関係が崩れてしまう……そんな気もするのです」
曖昧な答えだが、言葉を絞り出すように吟味している。
「改めて確認するが、無事なんだな?」
「それは間違いございません。大切にされていらっしゃいます」
確か奈々のスキルはかなり強力だったはずだ。
同時に迷宮探索にはかなり不向きだとも思った事を覚えている。
だが、何を隠している? 疑問はあるが、多分これ以上問い詰めても言わないだろう。
まあいい。自分で確認すれば良いだけの話だ。
「あー、それとセポナ」
「はい?」
「地上に出る時に、お前との奴隷契約は解除する。支度にどのくらい時間が掛かるか分からないから、タイミングはそちらで決めてくれ」
「あ、はい。でもそれはそれで傷つきますね。そんなに魅力が無かったですか?」
「魅力と言われてもなあ……」
鮮やかなピンクのショートボブ。身長130センチほど。童顔に痩せ型で、胸はぺったんこ。お腹はポッコリ。
確かに可愛いが、それはちょっと意味が違う。手を出したら間違いなく犯罪者だ。
「俺達の世界では、お子様に手を出すのは犯罪なんだよ。つか、俺達の言葉を話せるのならその辺の事も学ばないのか?」
「何を言っているんですかこいつは?」
コイツ主人をこいつ呼ばわりしやがった。
「えっと、セポナ様は成人なさっていますよ。おそらくわたくし達の中では一番年上かと…」
「え? これが? いやそもそもどうして分かるの?」
「この世界での初等教育は6歳から13歳までで、その間は頬に赤いハンコが押されます。今セポナ様が付けていらっしゃる奴隷印と違って何らかの拘束力を持ちません。消えない身分証のようなものです」
「へえ……」
「そして14歳から19歳までが高等教育となり、今度は手に学んでいる分野の紋章が押されます」
「それもハンコか」
「そうです」
セポナを見ると、当然ほっぺにも手にも何もない。流石に5歳は無いだろう。すると最低限19? これが?
「そして高等教育を卒業すると、それぞれの分野に進みます。失礼ですがセポナ様は召喚者言語とその文化が専攻ですよね?」
「いや待って、セポナって要するに何歳なの?」
「22歳ですが何か?」
マジで年上だった。これからはセポナさんと呼ぶべきだろうか。
今回でこの章は終わりです。
次回より新章。遂に地上へ向かいます!
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