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俺はただの高校生なんです

 結局、4年前に起きた反乱は鎮圧されたわけか。えっと、被害人数は38人で良いのか?

 あれ? ちょいと待てよ。


「それだけの反乱があったら、残った人数も皆殺しじゃないのか? 俺ならそうする」


 参加しなかったからと言っても、反乱を起こした理由は知っているんだ。

 たとえ体制側に協力する立場を表明していたとしても、潜在的な危険因子である事には変わりは無い。

 それこそ心の奥底まで洗脳する装置でもあれば別だが、そんなものがあれば反乱など起きはすまい。


「つか平八(へいはち)さん……じゃなかった、ダーククリムゾンさんは――」


「ブラッディ・オブ・ザ・ダークネスですわ」


 分かっているなら呼んでやれよ……。


「あの方は色々な意味で特殊な方ですので、なんとなく放置されています」


 なんとなくって……いや、何故か分かっちゃうけどさ。


「残りの二人は迷宮に潜伏しております。まだ人数は明かせませんが、独自にこの世界から脱出しようと動いている人たちもいるのです。今はその方たちに協力しているという状況でございますね。ですが、この動きは上も当然知っています」


「数がちょっと合わないが?」


「少し説明不足でした。申し訳ございません。不参加の2名の内、片方が平八(へいはち)様でございます。もう一人のお方は……お戻りになりました」


「すると潜伏している二人は反乱に参加したメンバーか」


 ブラッディ・オブ・ザ・ダークネスさんが呼び出された時の事を思い出す。

 あれはもしかしたら、他の召喚者の襲撃でもあったのだろうか?

 だとしたらとんでもない。召喚した奴らは笑っているだろう。愚かな使い捨ての道具たちによる殺し合いをな。


「話は分かったよ。状況も理解した。俺は一度上へ戻る」


「いけません!」


 完全な不意打ちに、俺は抵抗すら出来ずに押し倒された。

 当然目の前にはドーン! いや待ってオネガイ。とてもじゃないが直視できずに目を逸らす。


成瀬(なるせ)様はご自身のスキルを軽視しております。それは今までの常識を覆す力。もしかしたら、この世の法則すら捻じ曲げて帰還への道を見出す事が出来るかもしれないスキルなのです」


 自分にそんな力があるのだろうか。というか、両肩を掴んで揺らしながら話すもんで、視界の隅にどうしてもゆっさゆっさと揺れる白い双房がチラついてしょうがない。


「どうか考え直してください! 今は一度、わたくし達の元へ来てください。来るべきなのです」


 そう言って、股の間に膝を押し込んでくる。いや待って、わざとか? わざとなのか?

 あ、もう無理……。



「悪いがそれは出来ない。先ずは奈々(なな)瑞樹(みずき)先輩と合流する。ここまで遠回りしたのも、確実に説得するためだ。予想以上の情報が手に入って驚いたし感謝もしているが、それとこれとは話が別だ」


 俺はあえて、正面を向いてそう宣言した。


「スキルを使いましたね……」


 あ、ばれたか。急に冷静になったからじゃない。目を見りゃわかるんだったね。

 はい、性欲を外しました。そりゃそうだろ、もう無理、絶対無理。

 本人は必死かもしれないけど、ナイスバディの全裸お姉さんが俺の上に乗ってゆっさゆっさ……ごく普通の高校生が耐えられるわけが無いだろう。


「そのスキルの危険性はもう知っているのでしょう、どうしてそんな事をするんですか!」


 その目には涙が浮かんでいた。

 でも貴方のせいです。


「本当に馬鹿! 貴方はこの世界に呼び出された人間全ての希望なのですよ! もっと自覚を持ってください!」


 貴方も自分のしている事に自覚を持ってください――そんなことを言う間もなく、感極まったかのように、俺の頭を抱きしめた。

 ムギっと顔に柔らかいものが当たる。股の間に挟まった膝が、凄い勢いで押し上げられる。


 あぅ……。


 俺のスキルはまだまだ未熟。外したと言っても、ほんのちょっと脇にずらしただけの様なもの。

 そして長い禁欲生活で決壊寸前だった俺の心のダムは脆くも崩れ去り……。


「お、俺も体を洗ってくる」


 グイっ! と押し返し、俺も鍾乳洞の水溜りへと移動した。

 体を洗う、嘘ではない。だけど俺は、密かに泣きながらパンツを洗ったのであった。





全てを知っても、やはり目指すは地上。もうじきでございます。

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