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こうしている間にも世界は動いている

「当日に帰還した成瀬(なるせ)様に、わたくし達は何の関心もございませんでした」


「そりゃそうだろう。ハズレ、スキルなし。即日にお帰りだ。注目されていたらその方が怖い」


「ですがその日から1か月と少しして、わたくし達の仲間が成瀬(なるせ)様の反応を感知いたしました。当時のわたくしたちの衝撃の凄さをお分かりになりますか?」


 ……1か月。にわかには信じられないが、聞いてもあまり意味は無いな。

 ここは流しておこう。


「すまない。そこまでこの世界のことを理解していないんだ」


「ふふ、クイズなどではありません。言い方が悪かったですね。ただわたくしたちは、真実に辿り着くための必要なヒントの一つを見つけたのです。この世界で死んだら本当に帰ることが出来るのか? そこへ至る、無数の仮説の一つと言うべきでしょうか」


 そうか……そうだな、当たり前だ。

 ここで死ぬと、光に包まれて消える事はわかった。見たところ、苦痛もなさそうだったな。

 俺以外の人間は、それしか知らなかった。体は消え、現実に戻る。何の疑問も持たない人間の方が多いだろう。

 だけどそれを調べようとしている者たちが、俺以外にもいた。

 ある意味当然だ。賭かっているのは命なのだから。


 この世界で死んだら元の世界に戻る。何事もなかったかのように。

 それが、この世界で最初に受けた説明だった。

 そして何やら宝を手に入れたら、力を一部継承して帰還できる。そうやって成功した人間が沢山いる……だったな。


「この世界から帰った人間の反応が迷宮内に存在する。それも一か月以上が経って。平八(へいはち)様など、それはもう直ちに行くと言って聞かなかったものです。ですがその時は別件の問題もありましたし、何より手の打ちようが無かったと記憶しております」


「俺みたいな例は、やっぱり珍しい事なのか?」


「初めてのケースと断言してよろしいかと……。ただ成瀬(なるせ)様の存在自体は特定できたのですが、座標を示す要素がございませんでした。この迷宮内――と言うだけでは、まるで雲をつかむような話です」


 まあ確かにそれは無理だ。迷宮の事を聞けば聞くほど不可能に思えてくる。

 全容の見えない広さ。大変動による構造変化。それに伴って、モンスターも変わるんだったか。

 と言うか、存在は感じても場所までは特定できない。そう言ったスキル持ちがいるのか。

 話しぶりからして、ひたちさんでは無いな。


「そういえば、ひたちさんはゲームで遊んだりはします?」


「え? ええ、一通り有名なところは」


「例えば最初の町周辺はレベルアップ用の雑魚ばかりで、奥に行く毎にモンスターが強くなるとか、モンスターが強くなると得られる宝も良くなるとか、そういったゲーム的な法則はあるんですか?」


「そうですね……全くありません。ゲームのような世界と最初に言われたこと自体が、ある意味一つの罠ともいえるでしょう。一応はその点に関しての講習を受けますが、結局肌で体感するまで何の実感もわかないのです」


 即日帰った俺は受けちゃいないがな……。


「変動から(しばら)くは、召喚者達によるモンスター退治が始まります。ですがその強弱はバラバラです。滅多に出現しないような強力なモンスターに、いきなり10人以上の召喚者が帰された――いえ、殺された事もあると聞いております」


「まだ確実に死んだとは断言したくは無いけどね」


「そう……ですね」


 ここには俺が倒した二人の他、更に二人の遺体があった。合計4人。

 その内1人は全く知らないが、もう一人はそれとなく見覚えがある。俺の記憶が確かなら、同じ日に召喚された同じ学校のやつだ。

 もう、あの日のメンバーがこんな状況になっている、

 ひたちさんの話だと、ゲーム的な法則は通用しない。そしてもう死者が出始めている。大型のモンスターが登場しているってわけだ。上はどうなっているんだろう?

 心配が募ってしょうがない。早く奈々(なな)達に会いたい。






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[一言] (/ω・\)チラッ こんばんは。更新お疲れ様です。 ここはネタバレ防止の対策ないですから、ネタバレなことは書かない方がよかったのかなと今更ながら思っております。 かといって当たり障りなく…
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