表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

501/685

本当の悪夢はまだ続いているんだな

 俺が見た限り、黒瀬川(くろせがわ)からは得体のしれない黒さを感じていた。

 だが同時に、接した限りではかなりまともな部類だと思った。まああの4人の中ではだが。

 この矛盾がどうにも気になっていた。

 だがまともかという点に関しては、(みや)の話からすればかなり食い違う。

 俺に見る目が無いのか?

 いや違う。


「それはお前が来たからだな」


 原因はやっぱり俺か。

 そこまでの影響力は……なんかありそうなんだよな。

 4人の中で最古。クロノスをよく知っている。寝室を共にする関係。

 はい、相当深い仲ですね。


「彼女がどうなるかはお前次第だ。いつかの大人しい彼女になるか、自暴自棄になって殺戮の限りを尽くすか……その時に私がいるとは限らない。むしろいないだろう。精々ご機嫌を取ってくれ」


 それは俺に死ねと言っている事に気が付かないのか!?

 あ、でもフランソワもどうしよう。

 今更誤魔化しようが無いけれど、奈々(なな)の前で無茶はすまい。

 しかし今更だが、色々な女性と関係を持ってしまったものだ。


 ひたちさんに彼氏がいた事に関しては、心臓にナイフを突き立てられたかのような感覚を味わった。

 けれどあれは仕方がない。元々、そういった計画だったのだ。未練は素直に断ち切ろう。

 だけどセポナや咲江(さきえ)ちゃんに出会った時、俺は何処まで冷静でいられるだろうか?

 というか、どうやったら奈々(なな)にバレずに済むのだろうか?

 ただでさえ先輩と龍平(りゅうへい)の気持ちにも配慮しながら仮面をかぶった関係を続けないといけないのに……。

 でもまあ、今はまだまだ先を聞く方が優先か。


「話はまだ途中だったな。そこから先のこと教えてくれ」


「そうだな。まだ肝心な事を話していなかったか」


 クロノスが消えた経緯は分かった。

 だがそこからダークネスさんになるまでの経緯。それに、現在までの状況だ。


「計画書は見ただろう」


「ああ、確かに目は通したが……」


 計画と違う点が多すぎてどれをどう答えて良いのかが分からん。


「確かにこれでは曖昧過ぎるか。ただこちらもあの年月を語るには難しくてな……まあいい。整理しながら順番に話そう。分からない事があったら聞くといい」


「そうさせてもらうとするよ」


「先ずはそちらの話は聞かせてもらったが、こちらのペースが遅いとは思わなかったか?」


「確かにそうだな……」


 ラーセットが襲われてからかなり忙しく働いた自覚はある。

 そりゃあ最初は召喚という行為に対して嫌悪もあったし悩みもした。

 だけど地球の結末やクロノスとなって知った事、そして奴を倒すという使命。

 手探りではあったが、やる事は次第に加速していった。

 途中第5期の同士討ちによる全滅や(みや)の裏切りなどもあったが、それでもさっきの話――(みや)が召喚された時には、もう既に一度ならず本体を倒し、俺と奴は繋がった。


 そして

 奴との最終決戦に入ったのが185年。そこから今に至る時間遡行が開始された。

 ここを決戦の時と定めたのには幾つか理由がある。

 奴が時計を手に入れてしまったであろう事。

 大量の人間を召喚し、尚且つ十分な戦力を蓄えておける広大なセーフゾーンが発見された事。

 それに、長くこの世界に留まっている人間の不安定さが常に気になっていたからだ。

 特にキーである磯野(いその)が時限爆弾のようなものだったからな。

 幸い恐れていた事態は起きなかったが、そこから僅か14年か……。


 だけど年数だけでは測れないな。

 この世界に風見(かざみ)が召喚されてから、クロノスを殺すまで49年。

 だけど俺がクロノスであった時は、風見(かざみ)が召喚されてから51年が経過している。

 やはり風見絵里奈(かざみえりな)が自分を保ち続けるには、児玉里莉(こだまさとり)という人物が不可欠だったのだろう。

 だがそういったもろもろを考えても――、


「確かにペースが遅すぎるように感じる。確か今は254年だったな。なぜここまでかかったんだ?」


「お前のせいだ」


 随分ストレートに言われてしまった。


「計画書を思い出してみろ」


 そう言えば気になる表記があったな。

 記憶だけでも問題無いが、あえてもう一度そのページに目を通す。

 そこには、『多少の誤差はあっても、150年までには新たな自分が召喚されてくる。そこからの猶予は状況によって変わるが、30年程の育成と説明を目途に帰還させる』と書いてある……が、


「これはこれで早すぎるんじゃないのか?」


「それが事実だ。今まではそれが基本だったのだろう。なぜそうなるかの理由は不明だが、その辺りの年代で召喚されると信じてクロノスも動いていた。だが――お前はいつまで経っても来なかった」


「俺の時もそんなに早くには来なかったよ。というより、俺は俺が召喚される前に決着を付けようとしたからな」


 それでも185年になっても俺は召喚されていない。

 知り合いという意味では143年に龍平(りゅうへい)が、165年に奈々(なな)が召喚されてきたくらいか。

 というか龍平(りゅうへい)は俺と同じ時代から召喚されてきたイレギュラーだしな。果たして数に入れて良いものやら。

 本来なら、俺はもう召喚されていてもおかしくは無かったのか。

 面倒な事にならなくて良かった。


「……別に責めたわけでは無い。そんなもの、お前が決められるわけでは無いからな。だがクロノスは焦っていた。召喚するペースも増えたし、死者も比例して増加した」


「それが最初に言っていた亀裂ってやつか」


「そうだ。だがそうするしか無かった。お前は水城奈々(みなしろなな)の神罰こそが奴を地球に送るキーだと言ったが、俺たちにそんな事は分からない。ただ計画が遅れている。その焦りは引き継いだ私も同様だった」


 そう言えば俺は状況的にそうだと思って発言したが、そんな曖昧な理由で口に出す事か?

 違うな。確信があった。理由も想像がつく――奴とのつながりだ。

 だけど俺以外にそんなものは無い。

 奈々(なな)の神罰が原因だと説明しても、全員『そうだったんだー』なんて心から思っちゃいないだろう。


「そこからはひたすら召喚し、失敗すれば減らした。召喚者を殺し合うように仕向けたのも私だ。危険な思想を持つ者を監視し始末する体制も私が確立した。全てはお前と水城奈々(みなしろなな)を召喚するためだ。二人さえ揃えば良い。それでこの地獄に一つの区切りを付けられる。ただそれだけを願って召喚を続けるしかなかった」





遂に500話まで到達しました。

ここまでお読みいただき、超感謝です。

これからもご期待を裏切らない様、頑張って行きたいと思います。


ご意見ご感想やブクマに評価など、何でも頂けると涙がはち切れんばかりに喜びます。

餌を与えてください(*´▽`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 500話おめでとうございます。更新日の際は楽しみに読んでいます、頑張ってください。 [一言] 色々と問題が山積みな状況で敬一はどうやって立て直しを図るのか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ