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もう消えるのかよ

 理外……そう言われても『これだ!』という認識には至らない。

 だけど言われてみれば、納得できる点も多い。

 竜の肉を切れるようになったのは? 食べられるようになったのは?

 慣れたからでも強くなったからでもない。『出来ない』という部分を外したからだ。

 こうして出来るという現実だけが残る?


 いや、まだ少し違う気がする。だけど大きく間違ってもいないのではないか?

 そんな予感と共に恐怖も感じる。


『使い続ければ、やがて戻れなくなるだろう』


 それが正しい事だけは、何となく本能で理解できていたからだ。


「今すぐ、このスキルを止める手段は無いんですか?」


「無いな。それに貴様はもう使いすぎた。一部はもうこの世界の存在ではない。普通の人間の目には分からずとも、我には分かる」


 覗き穴の無いつるんとした鉄兜。そんなものを被っている相手だからこそ、その言葉は現実となって肩にのしかかる。


「だが悪い事だけでもあるまい。貴様は今、確かに目的の場所へ進んでいる。そう、これだけの枝道のある迷宮を、迷わず一直線にな」


「それも……俺のスキルなのですか?」


「そう言って差し支えはあるまい。クク……目的地から外れる道を選択肢から外す。実に強力なスキルよ。大事に使う事だな」


 そんなことを言われても、使い続けたら消えるなんて言われたら慎重にもなる。

 いますぐオフにしたいが、そうしたら一歩も進めない。そもそも完全にオフにするためのアイテムが無い。

 それに、今までの話が真実なら、あの痴女神官はわざと俺にアイテムを渡さなかった事になる。

 説明が無かったのもそのせいなのだろうか? だがこの話、鵜呑みにして良いものかどうか……。


「聞けば聞くほど、聞きたい事が増えてしまいますね。よろしければ全て聞きたいのですが」


「元よりそのつもりよ。我は貴様を勧誘に来たのだからな。じっくりと言葉を交わそうではないか」


 勧誘? いや、それ以上に聞きたい事は山ほどあった。

 なぜ俺が召喚された事を知っていたのかや、その後の事。今の目的地も知っているようだった。

 そして奈々(なな)たちは無事なのだろうか?

 俺の事を知っているのなら、知っていてもおかしくはない。

 だけど、それをここで聞くことは出来なかった。なぜなら――、


 黒い騎士の耳元に、何やら黒い渦が現れる。なんだ?


『ザ、ザー……おい、平八(へいはち)! 聞こえているか、平八!』


「ブラッディ・オブ・ザ・ダークネスだ。何度言えばわかる」


『面倒くさいんだよ。それより緊急事態だ。セーフゾーンの一つが潰された。連中だ』


「また大事を引き起こしてくれたものだ。分かった、すぐに向かう」


 そう言うと――、


「すまぬな。今はゆっくりと話している余裕がなくなった」


「何かあったのですか……ええと、平八さん」


「ブラッディ・オブ・ザ・ダークネスだ」


 もうそれでいいや。


「それで――」


『転送まで30。下手に動くなよ』


 その言葉と同時に、双子がブラッディ・オブ・ザ・ダークネスの馬に飛び乗って抱えられる。


「我は行く。非常事態でな」


「いや、説明不足過ぎます。俺も行きます。行かせてください!」


「ダメだな。貴様は目的の場所があるのだろう? その目で確かめ、自分で結論を出せ。だがお前一人で答えが出せるほど、この世界は簡単でも単純でもない。我らもまた、貴様と同じよ。真実を探す放浪者、それが我らだ」


「なら――」


「代わりは誰が来る」


『ひたちが行くことになった。本人の希望だ、何も言うな』


「だそうだ。再び出会うまで死ぬなよ。その時は、お前が導いた答えを――」


 そこまで言うと、黒い鎧の騎士、そして双子は掻き消すように消えてしまった。





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毎回あとがきがあってうるせーと思われそうですが、ご容赦いただけると嬉しいです。

ではではー。

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[良い点] >「聞けば聞くほど、聞きたい事が増えてしまいますね。よろしければ全て聞きたいのですが」 なぜブラッディと形容詞にしたのかとか
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