決着
体を破壊され、苦悶の声を上げながら転げまわるが、何一つ気の毒だとは思わない。
こいつさえいなければ、俺は平穏無事な高校生活を送っていた。
奈々がいて、先輩がいて、龍平がいて……大変だっただろうが、人並みには幸せな人生を送れていたはずだった。
そりゃ先輩の気持ちを知ってしまった今となってはちょっと複雑だが、それでもきっと何とかなっただろう。
だがそんな未来は、全て破壊された。
再び衝撃波をすり抜け、体の一部を粉砕する。
「オオオオオオオオ!」
こいつがラーセットを襲った事で、何人の罪なき人々が不幸になったのだろう。
そして代々の俺は、地球とラーセットを救うという大義を振り掲げ、どれだけの人を死に追いやって来たのか。
前橋、犬童、芳賀、すまなかった。
石堂、長谷、王、三浦。俺の配慮が足りなかった。
峯崎や日黒、それに4期生のみんな。あの同士討ちも、結局俺のせいだ。
その後も全部、全員――悔やんでも悔やみきれない。忘れることは一生ない。
俺の生涯は、今後も彼らの死と共にある。
「クロノス……お前の様な……存在を呼び出したものを許さない。貴様を殺し、全ての召喚者を殺し、協力した人間を殺し、いつかは貴様の本拠地も滅ぼしてやる」
「そうかよ!」
喜べ。俺の記憶にはお前の死も刻まれる。
俺が壊れてしまわないためにな。
破壊された部分から一番深い部分まで手を突っ込む。
同時にその手は跡形も残らないほど簡単に粉砕されるが、当然痛みなんて外してある。
そしてそこには、何事も無かったかのように俺の手が存在しているわけだ。
何度だって外して戻してやるが、今回はこの一度で済んだな。
内側からこいつを完全に外す。体は避け、砕け、ゼリー状だがくっつくことは無い。構造自体を外したからな。
まるで泥を集めたように、そこには奴の体が積り残った。
背後では宮本の攻撃を秋月が増幅し、見事に狼型の眷属を倒していた。
あれは眷属の中でも特に強い奴だ。それを戦闘が主体ではない彼女たちが倒せたのは大きい。
まだ遠いが、近づいて来る龍平の気配を感じられる。
多分だが、この調子なら千鳥たちも大丈夫だろう。
改めて本体に目を向ける。
間違いなく、こいつは自分が死ぬ事を認識していた。
時差があるのは最初の件で分かっている。直に、最後の時間跳躍をするだろう。
それがラーセットが襲われた時か、地球か、それは分からない。
だけどどちらにせよ、最後はラーセットが襲われた時点に戻る。
その時こそが、俺という存在が召喚された時間。そして全ての原点。他の歴史は、全てそこから無数の枝の様に分岐した。初代から俺まで、毎回知識や行動が変わるからな。
当然、今までなら次の俺に引き継がなければならなかった。
だが、もうそんな事はさせない。
全ての始まり。分岐の起点。そこへ戻り、奴を倒す。
もうそれ以上過去へは戻れない。奴がそうした。俺が生きているか死んでいるかを常に確認するために。結果として、奴は俺が存在しない時代へは行けないようになってしまったわけだ。
感情があって、やりたい事が出来てしまうって事もある意味大変だな。俺と繋がなければ、こんな状況にはならなかったものを。
さて、そろそろ時間だろうか。
過去へ戻り奴を倒す。これでこのループは終わる。
だけどその前までは変えられない。俺は神じゃないからな。
極端な話、完璧に終わらせるには奴が異物になる前まで戻さないといけないんだ。
だけど、俺自身に時間遡行能力は無い。
だから結局はラーセットが襲われて俺は召喚される。
何の知識もない俺には気の毒だが、初代からここまでやってきたんだから大丈夫だろう。
それに、実際には何も考えていない訳じゃない。
これは大穴戦で閃いた直感でしかないし、実際には試してもいないから賭けでしかない。けど、多分できる。失敗したら、許せよ、俺。
それに、そもそもここから先だって簡単じゃない。むしろ一番きつい本番だ。
なにせ相手は飽和して地上に出てきた大軍。今よりも多いわけだ。
だけどやる。それ以外の選択肢は無い。
もう未来からラーセットに送られてくる俺はいらない。そんな事はさせない。
あるのは2つ。俺が奴を倒す未来か――いや、一つだ。
俺が奴を倒し、このループに決着をつける。その未来だけだ。
まあ実際には過去なんだけどな。
じゃあな、みんな。
これで俺がこちらに残ったら恥ずかしいが、そのときは悶絶しながら過去に戻った俺を応援しよう。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。
これにて第2部クロノス編が終了となります。
因みに全3部作。次回から最後の部に入りたいところですが、その前に第1部と同じくちょっとした世界説明と人物解説が入ります。
是非最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
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