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ここからが本番だが

 さて、本当は急がなければいけない。

 もう双子はいない。出来る限り迅速に奴を倒しに行かなければならない。

 正確に奴を把握できるのも、これが時期的に最後だろう。

 なにせ磯野いそのが本体を追跡できるようになったのも、あの戦いがあっての事だ。

 それまでは奴を判別する術がなかったからな。


 一人で行くのは心もとない事を考えると、龍平(りゅうへい)も連れて行きたいところか。だが他はどうしよう。

 前回の問題点も改善され、今は完全ではないにせよ大抵の召喚者と連絡がつく。集合を掛けようと思えば可能だ。

 風見(かざみ)児玉(こだま)にも……じゃないな。この時点では、児玉里莉(こだまさとり)はまだいない。正確には帰してから戻って来ていないんだ。

 俺の予定では、奴を倒した後は召喚を停止する予定だったが、死んでも日本に戻れるようになった今、その点は考え直しても悪くはない。


 もしかしたら、良いアイテムを使って帰ったらスキルの一端が残るとかいう話も何処か真実を含むのかもしれない。俺は確実に戻されているのだから、試した可能性も捨てがたいしな。

 となると、絶対に誰も死なないし、日本に帰れば記憶も失われ、もしかしたら何かの力を得ているかもしれない。

 ラーセットも発展して良いことづくめだ。

 俺が生きてい限り、止める理由もない気がするな。

 ただ俺が消滅した場合は大変だ。今こちらにいる全員が帰れなくなってしまうからな。

 考えれば考えるほど、責任は重大だな。


 もし召喚を続けるのなら、俺は楽隠居に入るべきだろう。だけど今は、当然ダメだ。

 奴に対抗できる最大の戦力が俺と龍平(りゅうへい)だ。こればかりは、ちゃんとやらない訳にはいかないんだ。


 何にせよ、最初にやる事は毎度おなじみ塔の改良からではあるが、今この時、やっておかなければいけない事が他にもある。

 伝えておかなければいけないと言った方が正しいか。


「ケーシュ、ロフレ、ちょっといいか?」


「何でありますか?」


「改まって、どうかしましたか?」


「3年前に養子の話をしただろう?」


 そこまで言っただけで、二人が目を輝かせながら身を乗り出してくる。

 更に――、


「もう候補はちゃんと選定してあるであります」


「毎年ちゃんと候補者は入れ替えているんですよ。いつクロノス様の気が変わっても良いように」


「全員良い子であります。きっと気に入ると思うでありますよ」


 まあそういった内容であったわけだが――、


「そっちは却下だ。自分の養子として育てた娘を抱くつもりはない」


「その点なら大丈夫であります」


「わたしたちの養子という事に致しますから」


「いや、そういう事じゃない。大体一緒に暮らす事になるんだ。とてもそんな気にはならないよ」


「でしたら何処かの施設で――」


「そうじゃないんだ。それに、そっちの事はそんなに考えないでくれ」


「ですがあの時にも言ったように、わたしたちももうお役目に堪えられるような齢では……」


「これからの事を考えたら、絶対に――」


「いや本当に大丈夫だから。今回の話はそういった話じゃない」


「では?」


 二人は意味が分からないと言った感じだ。まあ当然だな。


「普通に迷宮孤児から何人かを選んで養子にする。まあ社会貢献の一環だ。それに、召喚者と現地の人との壁を僅かでも取り払いたいと言った意味もあるんだ」


「突然どうしたのでありますか?」


「突然じゃないよ。ずっと考えていたんだ。養子にするのも女の子だけじゃない。ちゃんと男の子も養子にする予定だ」


 そう――提案された時からではなく、二人が俺にあてがわれた時から考えはあった。

 でも決断する勇気がなかったうえに、俺の相手をさせるために孤児を育てるという不純な計画が持ち上がったせいで立ち消えとなった。

 だがケーシュが亡くなった時に、なぜやらなかったのかと散々後悔した。

 そしてロフレも逝ってしまった時に確信した。

 もし奴を倒し続けてこの時まで戻る事になったら、絶対にこうしようって。

 養子にした子供達は、やがて家族になる。そして結婚して、子供も出来るだろう。

 俺の経済力なら、10人位養っても大した問題はないし。きっと将来は大家族になるぞ。

 そうなれば、あんな寂しく二人を逝かせる事は無い。

 それに引き取られる方もちゃんと志願する人間だけを選ぶ。俺の家族になって良いかをね。メリットは多いと思う。

 看取る家族が増えるのは精神的に少しきついだろうが、その位は甘受しよう。


 これが日本ならちょっと心配だ。何せ国家の中枢である4長官の一人の養子になるんだ。

 だけど幸い、この世界の人間は権力欲に乏しい。歴史を見ても、古代から王という存在が無いんだよな。

 だからそういった、権力を乱用するような文化や風習が無いんだろう。

 そんな訳で、俺の養子にしても増長して問題を起こす事は無いと思う。

 実際にやってしまった時は……まあ親の責任だよ。俺がちゃんと収めよう。


 そもそも、召喚庁のトップはずっと俺だし、仮に何かあっても別の召喚者が継ぐだろうしな。

 将来どんな道に進むかは分からないが、それは自由意志だ。召喚庁や他の庁で働くも良し、迷宮(ダンジョン)に潜るのも良いだろう。それが自分で選んだ道ならね。

 少なくとも、俺の女にはしないけどな。たとえ何が有っても。


「そんな訳で、当面はそうだな……3人か4人、二人で選んでくれ」


 後は様子を見ながら、徐々に増やしていった方が纏まるだろう。


「クロノス様は選ばないの?」


「それだと楽しみが無い。二人が自分の子供にしても良いと思える子を選んでくれ。それが俺の子供だ。必ず責任をもって育てるよ」


「了解したであります」


「正直に言えばまだちょっと意図が分からないんだけど……養子の話はわたしたちから言い出した事だものね。ここはクロノス様の言うとおりに致しましょう。でも……」


「でも?」


「いざ自分の子供を選べって言われると、緊張しちゃいますわね」


 そう言ったロフレの顔は、まんざらでは無いと言った感じの笑顔だった。






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― 新着の感想 ―
[良い点] これは驚きました。バトルだけの時間遡行かと思っていたら、心残りだった養子の件をこんな形でやり直すとは…こんどは幸せになってほしい。前回も幸せだったには違いありませんが。
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