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当たり前だがやる事が増えてくる

 突然吹き付ける冷たい風が肌を刺す。


「ここは……迷宮(ダンジョン)か」


 そうだ。氷に覆われた、何処からともなくずっと冷風が吹き荒れていた厄介な時だった。

 体温や周囲の温度調節が出来たり、自身が低温に強いとかでない限り攻略はかなり厳しかった。

 そんな訳で、無理な人間は地上の警護とスキルの訓練。その分俺がこうして迷宮(ダンジョン)に潜っていた時だ。

 となると今は――ポケットからフランソワが作った召喚者の状況を確認する装置を取り出す。

 そこに表示されていた年号は大月歴の182年の11月だった。

 作戦を開始したのは185年。バリケードの設置は約1年前の184年。

 これはまた、随分と戻したな。


 先ずは急いで地上へと戻る。

 何せ本当の意味で召喚の塔が完成したのは185年の事だ。

 フランソワ達に言わせればまだまだ改良の余地はあるそうだが、それはこの際どうでも良い。


「フランソワ、いるか?」


「え! ひゃ、ひゃい!」


 今は夕方過ぎ。俺の知っている情報では、今日のフランソワは今頃研究所横にある菜園で実験に使う植物を育てている最中だった。

 その情報通り――というか休憩してお茶を飲んでいる最中だったけどな。


「く、クロノス様? あ、あの、何か急用ですか?」


 ちょっと焦っているが、少し嬉しそう。複雑な表情だ。

 だけど残念ながら、お茶しに来たわけでではないんだ。


「大至急、一緒に作ってもらいたいものがある。正確には、君は作ったんだけどな」


「……? 話を聞かせてください」


 一瞬の間があったが、すぐに事務的な表情に変わる。

 初めての頃と比べ、すっかりベテランの職人だ。

 今の精神のまま日本に帰ればどんな仕事でもやっていけそうだが、代わりに物凄く浮いた存在になるだろうな。

 ……ってそれはどうでも良い。


「今から塔の改良をする」


「ほえ?」


 理解出来ないという感じで、素っ頓狂な声を出す。まだ落ち着いていないな。

 だけど、この時代ならまだ説明できる。


「大穴戦の後から、本格的に奴と戦う準備をしていただろ」


「は、はいっ」


「実は今、その真っ最中だ」


「え……」


 まあ彼女にとって今は今。俺が未来から戻ってきたと言われても即反応するのは難しいか。


「まあとにかく、将来君と一ツ橋(ひとつばし)は画期的な発明をしてな。単純に言えば、この世界で死んだ者を本当に日本へ帰すシステムだ」


「そんなものをわたしがですか?」


「正確には光に包まれた死の猶予中に、俺の所に送るシステムだな。そこで俺のスキルで死の原因となった傷を外して日本へ帰す。それをコンマ数秒でやるわけだ」


「で、出来るんですか?」


「塔から俺に信号が来るからな。まだ試していないが、多分寝ていても問題無い」


「わたしたち召喚者は、みんな寝起きは良いですからね」


 ようやく落ち着いたようで、笑顔になって来た。

 まあ実際俺たちは寝ないようにしようと思えば幾らでも起きていられる。弊害はない。

 おそらくこの世界から外れた存在だからだろう。

 その点は俺も彼女たちも変わらない。全員、時間からも取り残されているからな。

 というかそのせいで、最初に追放された時に時間や日にちの感覚がずれまくったんだ。

 ただまあ習慣もあるし、体を休める事でスキルの悪影響も少しだが回復する。

 だから寝るには寝るが、起きろと言われればピタッと起きられるわけだ。


 さて、余談はここまで――、


「それで、急いで塔を作りたい。協力してくれ」


「それは分かりましたが、急ぐ理由は何です?」


 そう言いながらも、俺と彼女は最初の時点から研究室に向かって歩き出していたし、今は材料をごそごそと漁っている真っ最中だ。

 相変わらず話が早くて助かる。

 それに来た時にはあんなに真っ赤になってドギマギしていたのに、今はふと手と手が触れ合っても全く動じない。完全にプロの技術屋だ。

 地球でも、こんな子が助手に欲しかったな。


「急ぐ理由は単純だ。奴は意識や記憶を過去へ転写することで時間を戻る。だがそれは、同時に今の奴自身の意識を消す事だ。双方の意識がせめぎ合い、かなり疲弊すると聞いている」


「例の迷宮(ダンジョン)の情報通にですか?」


 彼女が言っているのは黒竜の事だな。

 正しくはないが、ここで否定して説明することに意味は無いか。


「まあそんな所だ。だけどこれは今後の為にも、絶対に今作っておかないといけないんだ。今話してもしょうがないが、これから過去に戻るたびに一緒に作ってもらう事になるぞ」


「は、はい……嬉しいです」


 あ、また乙女の顔に戻った。でもまあ、今のは俺のせいだな。





 □     ◆     □





 こうして半日を掛けて塔は完成した。

 改良とは言ったが、実際には新規の製作だな。

 後はこれを安置すればいい。


「じゃあ行ってくる」


「ご武運を」


 この後の事を考えたのだろう。真摯な顔をして深々とお辞儀をする。

 大丈夫、ちゃんと生きて戻って来るさ。

 なにせ、この時代はまだ双子が倒してくれるからね。


 そんな訳で、そのまま聖堂庁へ行く途中で磯野(いその)に連絡。

 俺の予想通り、奴は眷族を分散してカモフラージュしつつ、これまでとは全く違うルートへと進路を取っていた。


 根城から相当距離が離れた上、そもそも龍平(りゅうへい)は、今頃探究者の村となる場所でのんびりしている――って言う訳でもないな。武者修行と言った方が良いか。

 これまでとは勝手がだいぶ変わるが、結局は時間がかかる以外は同じ事。

 なにせ奴の進軍速度よりも、双子の方が早いからな。

 先生、よろしくお願いしますと言った感じだ。





いつもお読みいただき感謝です。

時間遡航の旅はまだまだ続きます。

ご意見ご感想やブクマに評価など、何でも頂けるとハイパー喜びます。

餌を与えてください(∩´∀`)∩

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