こんなの冗談でもやめてくれ
それに7期の千鳥ゆうの所から引き抜いた持尾介司と丹羽静雄。
二人とも千鳥と同じチームだったという事もあって中学生だ。
……などと言っても空しい響きにしか聞こえない。なにせ第7期生が召喚されてから、もう28年が経過した。
見た目は当時のままでも、中身はすっかり大人と言う訳だ。
ただ見たに引っ張られているのか本体の時間が止まっているせいか分からないが、あまり老けたって感じはしないんだよな。
中学生の心を持ったまま落ち着いているという不思議な感じだ。
その持尾は元々中学生離れした178センチの長身に、鍛えられた上腕筋。
顔つきも高校生で十分通じるし、ちょっと童顔な大学生でも通りそうだ。
元々千鳥のチームから二人新教官として引き抜いた時に、見た目が中学生という事が新人教育のネックになるという懸念があった。そこで彼女に選んでもらったわけなので、外見上はあまり中学生には見えない。
そしてもう一人の丹羽は、身長159センチと逆に中学生っぽさが残る。
元々は黒髪だったが、こちらに来て早々に髪を黒と黄のツートンに染めた猛者だ。
まあ傷は日本に帰っても残る事は分かっているが、髪はどうだろう? まあ多分残るだろう。
その辺のことはあえて説明しなかった。面白そうだったし。
いや、何より本人の希望だったからな。余計な事を言うのは無粋というものだ。
それに、ちょっと斜に構えたふてぶてしそうな性格に合っていたからね。その辺は、言葉使いにも現れている。
ちなみに本人は稲妻カラーだそうだが、何故黄色と黒が稲妻なのか分からない。俺としては蜂の警戒色に見えてしまう。
まあそんな勇敢と言うか無謀と言うか猪突猛進な性格だが、とにかく視野が広く判断力に優れ、何より同胞が傷つく事を嫌う。教官にはピッタリだ。
スキルが龍平と同じく肉体強化という事もあって、舐めた奴は何度か痛い目に遭えば懲りるだろう。
残る1チームは緑川陽と川本彰浩の二人。
緑川は相変わらずどこかヤンキーっぽいが完全に陰キャラ。目つきが悪く、猫背で両手はズボンのポッケ。目の下には隈もある。
だけど実際話すと陽キャラで、なかなかギャップが凄い。
迷宮では鎧を着込むが、こうして地上にいる時は現地人と変わらない服装をしている。
チューブトップのボタンの無いシャツを、両肩の金具の縫付いた布で止めている簡素な服だな。ちなみに下は男女あまり変わりのない前垂れだ。
女性ほどではないが露出は高い。今日の色合いは青のコーディネイトだね。
川本は緑川の182センチに次いで背の高い179センチ。
千鳥の服――いやあれを服と呼んで良いのか難しいが、とにかく革紐を何本も体に撒いただけの簡素な格好だ。まあ男なので、股間にはファウルカップを装着しているけど。
金髪に近い程色素の薄い栗色に彫りの深い西洋風の顔立ち。それに中々の美男子だ。
これで緑川の彼氏なのだから世の中は分からないものだ。
俺と児玉、マーシアを含めたこの8人の立ち合いの元、今回の召喚は行われた。
――これでもう19回目の召喚か。
だけどまだまだ足りない。主に、やはりスキル面か。
奴を倒すには完全な支度と計画が必要だ。相手が相手だけに、どんなに準備をしてもやり過ぎるって事は無いだろう。
問題はやはり、タイムリミットか……。
そうこう考えている内に、7人が召喚された。
予定より少ない事が原因で混乱したことが以前あったが、今回は事前に予測があったのだから皆暢気なものだ。それに連絡が取れない連中が無事な事も確認できたのだからな。
ただ、その7人が問題だった。
正確に言えば一人だけ。それも俺にとってはの話だ。
俺はと言うと、自分でも気が付かないうちに地面にへたり込んでいた。
覚悟はしていた。だけど、それは必ず別の形で訪れると思っていんだ。
今回召喚されたのは、杉駒東高校の人間だった。かつての俺が卒業した高校。
バラ色が一瞬にして灰色になった、思い出したくもないあそこだ。
他の6人は知らない。だけど一人は知っている。忘れようが無い。
「……奈々」
俺は、その一言を言うだけで精一杯だった。
「大丈夫? 知り合いなの?」
さすがに俺の動揺の大きさに気が付いたのだろう。風見がいつになく感情を顕わにして心配してくれる。
彼女も児玉が召喚された時にはかなり動揺したが、今の俺は間違いなくそれ以上だと言える。
そんな訳で、他に一緒にいる児玉、神官長のマーシア。それに教官組の持尾と丹羽。それにもう一組の教官組である緑川陽と川本彰浩も同様に心配そうな様子だ。
さすがに気が付かない方がおかしいか。
「あ、ああ。ちょっと大事な話になるな。す、少し時間、いいか?」
だめだ、立つこともできない。正常な思考も保てない。
「その様子だけでただ事じゃないのは分かるよ。それじゃあマーシア、今回の召喚者は全員動かさないで。それと、今回の召喚に関しては緘口令を敷いて」
「かしこまりました、児玉様。では、外の者たちにも伝えて来ます。決してここには誰も入れぬようにと」
「助かります」
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