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着々と準備は進んでいる

 挿絵(By みてみん)


 最後の一人が黒瀬川真理(くろせがわまり)

 身長は165センチ。彼女は3年生で、これで1、2、3年生と揃ったわけだな。ただの偶然だが。

 どっから掘り出したのか和服の喪服に喪帯。それを花魁風に着てキセルまで持っている。

 そのくせ髪はかなり癖っ毛の薄い茶髪。顔は童顔だが少し目じりが上がり、何となくギャルっぽい。

 容姿からするとかなり似合っていないが、似合われても色々と困るだろう。


 彼女のスキルは”調理”。

 その名の通り、岩だろうが武器だろうが何でも食べられる様にできる。

 当初は食べられるのは自分だけで使えないスキルの筆頭株だったが、今では他の人も食べられるように変化した。

 以前どんなスキルかを見せてもらった事があるが、ただ煮ただけの鉄兜にタレを付けてそのまま出された時はどうしようかと本気で思ったものだ。

 因みに鉄と醤油タレの味しかしなかった。

 栄養はまあ、相当に鉄分を吸収できたと思う。

 でも迷宮(ダンジョン)で食事に困らないのは良い事だ。


「みんな無事でよかったよ」


 この3人が、現在13期生最後の生き残りだ。

 本当ならもう2人いたのだが――、


「別行動中だった栄優(さかえ)遠藤(えんどう)は帰っちゃいましたけどね」


 栄優輝(さかえゆうき)遠藤美紀(えんどうみき)は13期生の生き残りだった。

 俺が黒竜探しの旅に出ている間に、戦闘で日本に帰ったと聞いている。

 意味はまあ、言うまでもないな。

 行方不明ではなく実際に帰ったと結論づいているのは、椎名愛(しいなあい)が見て確認したからだ。

 その椎名(しいな)の提案なのだが――、


「それでさっきの話だけど、あたしが過去を見ている間の護衛を何とかして欲しいの」


「彼女は5年ほど過去を遡って視る事ができますが、10分は無防備になります。長くなればそれだけ危険は増しますし、何より――」


「ああ、磯野(いその)の言いたい事はわかる。本格的に専門チームを編成したいが、多ければ良いって訳でもないのでね。もう少し現状でやって欲しい」


 今現在、彼に頼んでいるのは例の本体の探索だ。但し見つけて戦えなんて無茶な要求ではない。

 何処からあのセーフゾーンに行ったのか?

 どのくらい滞在していたのか?

 その前の行動は?

 (さかのぼ)れる限りの調査をしてもらっているわけだ。


 これは地図製作のスキルを持つ磯野(いその)と、過去視のスキルを持つ椎名(しいな)にしか出来ない事だ。

 因みに他の召喚者に出している磯野(いその)からの特別任務って言うのは、彼らの護衛の事だったりする。

 ただどうしても、通常の探索に比べれば実入りが無い。

 そのくせ危険度はさほど変わらない。むしろ一か所に留まる事で、怪物(モンスター)が集まってくる危険まである。

 まあ設置型のスキルを持つ谷山(たにやま)にとっては分散して来られるよりも楽なのだろうが、みんながみんなそうではない。

 しかも奴等の恐ろしさは、もう全員が14期が遭遇した話で知っている。

 そんな訳で、この任務はものすごく人気が無いんだよね。


 強制的にやらせても、やる気も忠誠心も皆無では話にならない。

 むしろ足手まといを守って危険になったり、いると思ったはずの背後の味方が逃げていたりしたらたまったものではないよな。


「それでクロノス様。奴自体の位置は分かっているんですか?」


「把握済みだ。問題無い」


 黒竜を探した時に、ついでに奴の本体も探しておいた。

 奴はこの迷宮(ダンジョン)に守られていない異物だ。むしろ黒竜よりも見つけやすいまである。

 ただ本体と眷族の見分けがつかない。そして眷族と雑魚も境界が曖昧だ。

 そんな訳で、紛れられると相変わらずお手上げなのは変わらない。

 ただ今はセーフゾーンの一つでじっと身を潜めている。

 周囲にいる眷族や雑魚、その配置から、本体の位置を割り出すのは容易だった。


 だけど今、手を出しても仕方がない。

 意識を過去に戻す――完全なチート級だ。

 例え倒したところで、奴自体は過去の自分へと移りかわっている。

 俺はもしかしたら倒した方の世界線に残るかもしれないが、結局は奴のいる世界線が存在する事には変わりがない。

 どっちにしろ、そこには相変わらず奴の退治法に悩む俺がいるわけだ。

 そして奴が過去の時間に戻るたびに、歴史は際限なく分岐してしまう。

 だから今は手を出せない。

 やる時は、全ての支度が整った時だ。


 ただその為にも、この4人には何が有っても生き延びて貰わないと困るんだよね。

 そりゃ特にキーになるのは二人だけだが、死ぬときは一蓮托生というか、まあ全滅パターンだ。

 もし生き残ったとしても、その時は日本に帰る事を選択してしまうだろうし。


「取り敢えず、これが今までに奴が行動した経路です」


「助かる」


 受け取ったのは何の変哲もない様な金属の板だが、この中には様々な情報が記録されている。

 USBメモリみたいなものだろうか? これも発掘品だ。

 セポナは――というよりこの世界の人間は、この迷宮(ダンジョン)星の内臓(パオローゾ)と呼んでいる。

 まるで生き物の様だが、案外完全には間違っていないのかもしれない。

 俺たちと同じような意思があるとは到底思わないが、それでも中にいる生物が求めている物を生み出しているのではないだろうか? 例え異物となった生き物の求めるものだとしてもね。そんな気がするよ。





いつもお読みいただき感謝です。

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