表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

342/685

龍平は大丈夫なんだろうか

 小動物の様な蔵屋敷里香(くらやしきりか)の話は続いていた。


「だけど加部佐(かべさ)さんや田路(とうじ)さんは何の事か分からないって感じでそこに留まっていたんです。そこに青白い変な怪物(モンスター)の集団が現れて。それが強くって、どうしようもなくって、でも教官や平八(へいはち)さんが道を切り開いてくれて、とにかく逃げたんです」


「現れたっていうより、濁流みたいでした。あまりにも多くて、もうパニックになっちゃって」


「それで逃げたのか?」


「ええ。とにかく教官が『こっちだ』って言って、みんなついて行きました」


 妙だな。そこから逃げるならむしろ近くに……いや、それは違うか。

 近くに行けば行くほど、地下の町は増え普通の人間と出会う率も高くなる。

 そこで被害を考えてそう判断したのだろう。ラーセットから遠ざけるという事に。

 確かに俺にとってはたいした相手ではないが、普通の召喚者からすれば案外強いからな。

 迷宮産の武器を豊富に持っていたイェルクリオでもまるで歯が立たないくらいには。

 どうせ戻らなければ俺が確認する事は確実だ。後は任せたって事か? 無責任すぎるぞ。


「それでどうしたんだ?」


「途中でどうしようもなくて、もうダメだと思ったんです。だけど狭い道で平八(へいはち)さんが残って」


 あの野郎……恰好付けやがって。


「何か言っていたか?」


「『俺は奴等を倒さなくちゃいけない。何故かは分からないけど、そんな気がするんだ』って。だけど数日したらやっぱり追ってきて、仕方ないから教官と、戦闘には自信があるって言って半田(はんだ)君と新山(にいやま)さんが残りました。

 私たちは逃げたんですが、もうどんどん周りが減って行って、最期は仕方なく……」


 ああやって天井に張り付いて耐えていたわけか。

 結果論だが、村越栄一(むらこしえいいち)志垣陽水(しがきようすい)磯野(いその)と一緒に残ってやっていればな。

 後悔しても仕方がないが、悔やまれる。

 それにしてもだ――、


「途中でセーフゾーンには逃げ込めなかったのか?」


「この辺りは対策できるような仕掛けもなくって、それにセーフゾーンと言っても怪物(モンスター)は平気で入ってきますから」


 まあそりゃそうだ。見えないバリヤーが張ってあるわけじゃない。

 俺が初めて人間が利用しているセーフゾーンに入った時も、町とかではないにも関わらずちゃんと怪物(モンスター)対策がしてあった。

 まあ俺から見ればザルだったし、あの程度じゃ連中は防げないだろうが。


「あの、私たちは帰れるんでしょうか?」


 実はそれが一番の問題なんだよね。

 俺のスキルは場所と場所との距離を外せるが、実際に移動できるのは俺だけだ。

 テレポートや入れ替え系と違って、誰れかを連れていく事は出来ない。

 現地人のセポナですらダメだったのだから、召喚者など絶対に無理だ。


「すぐに返してやりたいが、残った連中を置いてはいけない」


「でも、どう考えたってもう――」


「例えそうであってもだ。君たちだって、あのまま誰も来なかったらどうするつもりだったんだ? 正直に言えば、俺はもう絶望だと思った。君たちが生きていてくれて本当に嬉しいと思う。同時に、それ程に召喚者ってのはしぶといものなんだよ。だから今は近場のセーフゾーンで待機していてくれ。水と食料は全部渡すから、待っていてくれればいい」


「でもこの近くのセーフゾーンの位置なんて」


 そりゃそうか。磯野(いその)がいなければ地形は分からん。俺も知らんしな。

 だけど方角は分かる。ここからなら、直進なら1時間程度の距離にあるな。迂回したらどのくらいかかるか予測もつかないが。

 そんな訳で、そこまで一直線に壁を外す。

 突然できたトンネルに呆然とする4人だが、説明しても仕方があるまい。


「この先にセーフゾーンがある。全部終わったら戻ってくるから、そこで待っていてくれ」


「で、でも……いえ……はい…………」


「安心しろ。俺の力は見ての通りだ。あの怪物(モンスター)程度など造作もない。それに俺一人なら移動も楽でな。そうはかからないから、安心して待っていてくれ」


 そうは言うものの、ここから龍平(りゅうへい)達を探すのは大変だ。

 それに申し訳ないが、もし奴等の本体がいるのならそちらを優先する。

 これは千載一遇のチャンス。まさに砂漠の中に落ちた針に出会えた様なものだ。

 この機会を逃すわけにはいかない。


 全周囲に気配を飛ばす。

 だけどダメだな。近場には何もない。

 やはり、この子らの話から考えるとかなり離れている。

 少なくとも、3ヵ月は戦いながら移動したんだろうからな。

 仕方がない、移動しよう。





いつもお読みいただきありがとうございます。

ご意見ご感想やブクマに評価など、何でもありましたら感激で超喜びます。

餌を与えてください(*´▽`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ