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やっぱり精神が不安定になってしまうのだな

 こうして第11期は龍平(りゅうへい)のみとなったので、半年後に第12期生15人が召喚された。

 その後は3人が命を落としたが、帰還者は出なかった。

 落命したのはやはりというかなんというか、第12期生だ。どうしても新人を育てるのは難しい。

 それに何度説明しても、遺体が残ると動揺が走る。ここは何とか以前のようにしたいところだが、今のところそんなスキルを持っている人間はいない。

 これから来るのか成長で変わるのか……今は見守るしかないか。


 そして半年後に第13期生15人が召喚された。

 ただ順調というには程遠い。教官組が3人に減った事や、彼らのケアの為に自由行動を増やしたことが原因か、とにかく手が足りていない。

 特に探索が大好きで残ってくれた千鳥ゆう(ちどりゆう)に至っては、同じ第7期の生存者9人を引き連れて長期の探索に出発してしまった事が問題だ。

 実は12期生の教育にちょっとだけ参加した後は、10か月以上戻らなかった。

 それだけに成果は凄かったけどな。


 逆に風見絵里奈(かざみえりな)はあまり迷宮(ダンジョン)探索は好きではなく、案内や教育も最小限。自然と負担は磯野(いその)に集中し、それも限界近くであるわけだ。


 そんな状態だったので、今までなら防げたような事故や怪物(モンスター)との戦闘。そして口論から始まった同士討ち。そんな事があって、14期生を召喚しようという頃には12期と13期の新人から11人の死者と7人の帰還者が出た。

 今の状態で残った召喚者は30人。増やしても、また増やしても、なかなか上限に達しない。本気で頭が痛くなる。

 だけど嘆いてばかりでは進展が無いからな。実は千鳥(ちどり)のチームや、決まったリーダ無しであちこちのヘルプに参加している9期生の中から、何人か新しい教官を選ぶ準備は整っているんだ。当面は7人だな。選んだ理由は能力や人望、それに性格からだ。

 後は本人に確認し、了承さえしてもらえれば確定だ。


 そんな時、磯野(いその)が同期二人を連れて訪ねてきた。

 何だろうか? 取り敢えず、希望があれば何でも聞くし、訪ねて来たら何をしている最中でも会う約束にしてある。

 今は特に用件も無かったため、普通に執務室に通してもらった。


「やあ、磯野(いその)。それに村越(むらこし)志垣(しがき)も。何かあったのか?」


 彼等3人は第6期生。彼らよりも上は風見絵里奈(かざみえりな)しかいない大ベテランだ。

 実際に磯野(いその)だけでなく村越(むらこし)志垣(しがき)にも教官をして欲しかったが、二人ともそういった事にはまるで向いていないため断念していた。今回の候補にももちろん入っていない。


「実は次の召喚が終わったら、もう俺達は日本に帰りたいんです」


 あまりの急さに絶句してしまったが、憔悴しきった目が本気であることを雄弁に告げている。

 だが本当にいきなりだ。全てを告げた時には、あれほどはっきりと残ると言ってくれたのに。

 なんとなくだが、召喚者の精神には限界があるのではないかという思いが強くなる。

 ただそう考えると、先代クロノスと共にいた連中ってのは、いったいどれほどの化け物たちだったのか。


 他の二人も磯野(いその)と仲が良かったから残っていたが、反乱の首謀者であった(みや)と交流が無かったわけでは無い。

 しかも他人と一緒に行動するって事が絶望的にダメな二人だ。

 村越(むらこし)はとんでもなく短気で、“なんで?”というような些細な理由で平然と人を殴る。

 志垣(しがき)は逆に意味不明なほど無頓着で、隣で仲間が死にかけていても薬も使わない。後で理由を聞いたら“どうして?”と逆に質問された。本気で理解できていないらしい。

 まあそんな性格だが、ここまでベテランだと能力は一流だ。今までに幾つものセーフゾーンを確保し、多くの財宝を持ち帰った。

 一緒に探索した奴は、もう二度と組まないと離れていったけどな。

 まあそんな訳なので、肝心の磯野(いその)が帰ると言い出せばこうなる事は理解出来る。

 だが――、


「要求は可能な限り全て聞くと約束したし、これは可能な要求だ。拒否する理由はない」


「じゃあ早速」


「いやまあ待て。無理を承知で一つだけ頼む。次の召喚が終わったら、6期と8期の中から何人かを新しい教官組に迎えようと思っている。まあ本人が承諾すればだけどな。だから2か月だけ待ってくれないか? 最後の仕事として、次に召喚する第13期生の教育に同行して欲しいんだよ。村越(むらこし)志垣(しがき)に関しては、今すぐにでも構わない」


「……俺、先に帰るっす」


 さほど悩む素振りも無く村越(むらこし)が応えると、志垣(しがき)も同意した。

 こいつら磯野(いその)が残るかも決めていないっていうのに、薄情だなー。

 まあその辺りが、教官に出来ない所以(ゆえん)でもあったわけだが。


「分かりました、その話はお受けします。2か月だけですね」


 一方で、磯野(いその)は意外なほどにあっさりと承諾してくれた。


「ああ、すまないがよろしく頼むよ」


 本音を言えば、受けてくれるとは思わなかった。どうせ二人と一緒に帰るものだと思っていたのだから。

 だけどまあ、(みや)があんなことになって、真実を知ってもなお残ってくれた奴だ。義理堅いのだろう。





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[気になる点] サブタイトル 「やっぱり精神が不安定になてしまうのだな」 →なってしまう、だと思われます
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