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結局はこういう関係になるんだな

 こうして、児玉里莉(こだまさとり)という大切な仲間を失ったが、代わりに2人の同志を得た。共犯者とも言うな。

 それに児玉(こだま)は死んだわけでは無い。日本に帰っただけだ。

 俺が彼女の為に出来る事は、ただひたすらに初志貫徹。たとえ犠牲を出そうとも、奴を地球に行かせない事だ。

 口で言うほど簡単じゃないけどな。


 先ずは失った召喚者の補充だが、その前に教官組に負担をかけさせていた事を猛省した。

 以前の(クロノス)の時も教官組はいたし、暇を持て余している所があったが、反乱を起こしたみたいな話は聞いていない。俺よりも上手くやっていた訳だ。

 その辺りのノウハウも聞きたかったが、やはり情報がまるで与えられていない事が気になる。


 最初は分かるんだ。『俺はお前だ。これから死ぬ寸前まで苦しんで来い。ついでに奈々(なな)は他の奴に寝取らせておくがな。ハハハ』なんて言ったらその場で大喧嘩――というか勝てなくとも徹底抗戦だぞ。

 だから最初は分かるが、最後がな—……もっと教えてくれても良かったはずなんだが。

 もしかしたら――というか、予想は付いているんだ。だけど本当にそうなのか……。


 まあその辺りがまるで分からないので、3人それぞれと相談して話し合う時間を設ける事になった。

 今回だけではなく、定期的にな。

 新人の面倒を見て心のケアをするのが教官組なら、その教官組のケアは俺がやらなければならない。今までやっていなかった事が間違っていた訳なんだよ。


 そんな訳で早速そのまま第一回代表者会議が開かれた。

 議題はもう言ったね。教官組の心のケアに関してだ。

 彼らの希望を聞き、可能な限り要望は受け入れる。

 だがもしそれが不可能であったなら、日本へと帰す事に決めた。悶々としたまま心を病んでしてしまう位なら、その方が良いという結論になったからだ。


「では改めて状況を確認だ。現在残っている召喚者は、俺たち4人を除けば29人。全員無事ならという場合だけどな。数を考えたらすぐに補充したいところだが、何せ今回の問題があったばかりだ。先ずは残っている召喚者達を落ち着かせるのが先だろう。だからそれをする前に、皆の希望を聞いておきたい。俺に出来る事なら何でも言ってくれ」


「じゃあ、今夜相手して」


 まるでコンビニでパンを買ってきてといった感じの軽さで風見(かざみ)がとんでもないことを言い出した。

 当然固まる他2人――なのだが、


「俺は特にないんで、希望が出来たら言います。ではごゆっくり」


 そう言って磯野輝澄(いそのてるずみ)はさっさと帰ってしまった。


「あたしはちょっと興味あるです。けどやるならやっぱり1対1。だからまたいずれ」


 そう言って千鳥ゆう(ちどりゆう)も去って行った。

 いやちょっと待ってと引き留めたいが、それもそれでどうかと思う。それに、人払いをするための口実かもしれないからな。

 こうして二人が帰った後、俺はそのまま切り出した。


「ええと、どんな用件なんだ?」


「言った通りよ。特に何か含むわけじゃないから安心して」


「いや急にどうしたんだって事だよ」


児玉(こだま)ちゃんを抱いたでしょ」


 誤魔化しようがねぇ……。


「はい、抱きました。でも実はちゃんとした理由があってね」


「理由なんてどうでも良いの。2日間も二人っきりでしてた事が重要なの」


 なんとなく理由は分かるんだが、


「それって張り合うような事か?」


「張り合うって訳でもないけど、先を越されたのはちょっと癪かな。これでも声をかけてくるのを待っていたのよ。それに児玉(こだま)ちゃんと約束したの。残った方がクロノス様の相手をするって」


「何でそんな話になったんだ?」


「なんとなく? なんてのは冗談。でも自覚はあるでしょ? 今の状態だと、もう今までの様にスキルは使えないって。そして限界を迎えた時、全部が終わっちゃう。だから決めてあったの。そんな日が来たら、どちらか……じゃないね。二人でそうしようって。でも自分達からは言い出せなかった。もし児玉(こだま)ちゃんに手を出していたら、児玉(こだま)ちゃんはこっちに残ったと思う」


「それはなんとなく察したよ。俺の人生、後悔の連続だな」


 そう、ケーシュとロフレは大切だ。だけど彼女たちは老いてしまう。

 もちろん一生添い遂げると誓っているが、それはすなわち俺の成長するスキルの反動を制御できなくなってくるという事でもある。

 俺が決めるよりも先に、二人は話し合っていたわけか。

 でもだったら、反乱になんて加わって欲しくはなかったな。

 けれど俺と同じように児玉(こだま)の心もスキルという力の強すぎる反動に飲み込まれていった。

 というより、俺でも避けられないんだ。もっと考えるべきだったよ。


「それは全員一緒。軽重は人次第だけど、後悔しないで生きている人間なんてこの世にはいよ。少なくとも、こっちの世界に召喚された人間は、みんなそうなんじゃないかな。どんな失敗も、絶対に忘れる事は出来ないんだから」


 それもそうか。やっぱり日本に帰す条件は軽減しよう。これは教官組だけの話ではなく、召喚者すべての話だ。

 ラーセットの負担は増えてしまうが、強くなり過ぎた召喚者は頼もしいが脅威でもある。

 本人が帰りたくないというなら仕方ないが、希望者はどんどん帰して入れ替えよう。

 それに残った連中はそれなりに帰りたくない理由があるだろうしな。なんとか仲間に引き込むとしよう。


「ほら、この状況で考え事をしているのは失礼だよ」


 すでに風見(かざみ)は全裸になっていた。

 うん、今後の事はすべきことをしてから考えよう。





ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。

次回より新章へと突入。そしていよいよ…

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