これは俺のせいでもあるんだな
「さあ、そろそろクライマックスなのかな? それともクロノス様はまだ余裕?」
「どうだろうな」
いやもう無理です、死にます、消えます。本当に勘弁して。
戦えるやつが後1人か2人残っていたら本当にアウト。
いざとなったらラーセットまで逃げ帰るという手もあるが、もうスキルを制御するアイテムが壊れそうだ。長距離移動は失敗の可能性もある。
最初から無い時はもう暴走一直線。終局までノンストップだが、このアイテムはそうならない為のストッパーだ。
有難い事でもあるが、同時に壊れると暫くは行動不能になる。スキルの使い過ぎは厳禁って訳さ。
これは存在する限り、手放したって意味がない。
いっそ壊してから来れば良かったとも思うが、その反動の代償をケーシュやロフレでは解消しきれなくなっているからそうもいかない。
結局のところ――、
飛んでくる武器を叩き壊す。
全くもったいない。これを入手するのにどれだけの苦労があったか。
だけどそんな事は言っていられない。どれだけ貴重でも、また探して来ればいいんだからな。
避けては砕き、刺さったものは外す。
もう部分ごと全部外すだけの余裕はない。武器をするりと外し、出血も外す。今出来るのはこれだけだ。
痛みも外してあるとはいえ、こうもズタズタにされると動きも鈍る。制御アイテムも悲鳴を上げっぱなしだ。
スキル自体の攻撃とは違ってカウンターも出来ないが、限界が近いのは児玉も同じか。
もう飛んで来る武器に迂回もフェイントも無い。ただ真っ直ぐ飛んで来るだけ。しかも同時に来る数も少ない。
「さすがにもう限界だろう」
「たとえそうだとしても、降参はしないよ。受け入れる気も無いんでしょう」
「そこまでわかっていながら、なんで風見を裏切ったんだよ!」
飛んで来る武器を砕きながら叫ぶ、結局は、これを一番聞きたかった。
それに比べれば、連中が裏切ったって事自体も霞む。
「あいつとはずっと親友だったんだろうが!」
「言ったでしょ。あたしは男を選んだの。確かに絵里奈は親友だけど、仲良しこよしだけで生きるには、この世界は辛すぎるのよ」
言われて、今更ながら自分の迂闊さを呪う。
召喚者を任せられると思った。だから任せた。
実際に、彼らや彼女たちは応えてくれた。ここまで頑張ってくれた。
新人を教育し、召喚者同士のトラブルを鎮め、迷宮でトラウマになってしまった者の心のケアもしてもらった。
そうやって全てを丸投げした。そうして、時間が出来たと喜んだ。
だけど、彼女は誰がケアしたんだ。彼女の苦しさを、誰が分かち合ったんだ?
確かに風見は大切な親友だろう。だけど、それだけじゃ足りなかったんだ。
影に立つ風見と色々な意味で最前線の児玉では、負担が全然違うのだから。
「俺は馬鹿だな」
あの時、俺に抱かれても良いって言ったのは、こいつなりのSOSだったんだ。
もしあの時応えていれば、彼女はあの男の元へは行かなかった。
「そうだねぇ。クロノス様って頭は良いけど、結構単純だよね」
いやそういう意味じゃないんだけどな。
最後に飛んできた巨大剣を打ち砕き、同時にこちらの手斧も限界を迎えた。
……あとは予備のナイフが2本ってところか。
だけど俺が持っている武器を彼女は使えない。これで詰みだ。
「悪いけど、俺の勝ちだ」
「それはどうかな? 勝ち誇るには早いと思うよ」
考えてみれば、何処にまだ埋まっているか分からない。
こいつ意外と策士だしな。
体に張り付けてある制御アイテムを意識で確認する。もう幾つもの亀裂が入り、限界はすぐそこだ。これ以上くらったら、さすがに終わりかもしれない。
とは言っても、ここで弱気を見せてはだめだな。
「強がりはよせ。素直に降伏しろ」
「……それは意外。裏切り者は許さないと思っていたよ。実際許さなかったじゃない」
「ああ、許さないさ。それはお前でも変わらない。けじめは必要だからな。だから……」
「だから?」
「お前には帰ってもらう。日本にな」
「それって、結局向こうに現れる怪物に殺されるって事でしょ?」
「そんな事はさせないさ。必ずこの世界に居る奴を見つけ出して倒す。もう地球にあいつは行かせない」
俺としては必死に言ったつもりだったが、児玉は寂しそうに笑った。
こいつ、絶対に俺には出来ないとか考えているな。
「信じてあげてもいいけど。一つだけ条件があるよ」
「なんでも聞いてやろう」
「あたしに勝ったら。単純明快で分かりやすいでしょ?」
その言葉と共に、今まで砕いた武器が浮かび上がる。
それは渦を巻きながら俺の周囲を囲み、さながら銀色の花吹雪だ。まあそんな可愛いものじゃないけどな。
というか、これは反則だろう。
まだまだ続きます。長くなりましたが、今後もよろしくお願い致します。
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