あの子と戦うのか
急遽集められた教官組は、風見絵里奈、磯野輝澄、千鳥ゆうの三人だけだった。
幸い、全員連絡が付く範囲にはいたんだよ。それだけに、胃が痛くなり溜息すら出ない。
風見絵里奈はいつもの魔女帽子にビキニ、それに今回は全身を覆うローブ。
下は分からないが、ローブは上を少し開けてあるので胸元がチラチラと見える。
だが今はそんな事を気にしている時ではない。つかいつも似たような格好だしな、今更だ。
磯野輝澄は高校3年生。といっても6期生だから、こちらの世界では7年過ごしている。今更高校生とは言えんな。
身長は168センチと少し小柄だが、横幅は広く、髪はもちろん髭もゴワゴワ。腕や足、胸にも黒い剛毛が生えており、熊を思わせる風貌だ。
そんな外見だが、実は賢く成績はいつも上位。そして運動部に所属した事はないという。
穏やかな性格もあって、教官組の中でもかなり慕われている。
千鳥ゆうは中学2年だったが、こちらは7期生。6期生と半年しか違わないのだから、とっくに子供ではない。
まあ成長はしないので、召喚した時のままだけどな。
身長は152センチ。そして細くて薄い。最初の頃はコンプレックスもあったのかラーセットの高露出衣装に強い拒否感があったが、今では隙間だらけの革紐のようなボンテージを身に着けている。
まあ迷宮産だから、こう見えてそこいらの鎧とは比較にならない程の高性能だけどね。
スキルは空間把握。結構広範囲の状況を瞬時に理解することが出来、風が吹き木の葉が落ちるタイミングまで把握できる。スキルの無い人間から見れば、まるで未来予測だ。
当然それは怪物や人間にも及ぶ。戦闘系のスキルではないが、ある意味戦闘にも応用できるスキルだ。
教官組は5人。一人はリカーン側についた宮神明だ。スキルは脚力強化。攻撃に特化した奴だな。
高校生だが何処か大人びており、思慮深く面倒見も良い。
今回の教官組は、俺が力だけでなく人格や人気も見て選んだからな。そういった意味では、こう言った事をするような奴ではなかったはずだ。
それに何より問題なのが、アイツが招集に応じられない程風見と離れて行動しているとは思えない事か。
「児玉里莉はどうしたんだ?」
嫌な予感を隠せずに聞いてみるが――、
「里莉ちゃんは向こうに付いた」
これ以上の話は無用とばかりに、風見がピシッと言い切った。
なんかもう詮索できる雰囲気じゃないが、二人でこの世界で頑張って来たんだ。なのに彼女を置いて向こうへ行った……複雑な感情だろう。
しかし彼女は今回の件を知らなかったのだろうか?
聞いてみたいが、俺には聞く勇気がない。ヘタレですまんな。
「現在の範囲で、向こうに付いたのは誰だ? 分かっている範囲で良いから教えてくれ」
「じゃあ、私がやる」
そういったのは風見だ。やりたくはないだろうが、児玉がいない今、彼女が教官組のトップなのだから仕方ないか。
「先ず6期生の宮神明さん」
そう言って、少しデフォルメされた宮神明の人形がコトリと机の上に置かれる。
空中から突然現れたかのように見えるが、これは彼女のコピースキルによるものだ。
そっくりそのままに作らなかったのは、スケールを考えたらこちらの方が見やすいからか。
「それに10期生の荒木幸次郎さん」
俺が高校生だった時に教官組だった男か。プロレスラーの様な恰好をしていたな。
スキルは持久力。成長すれば疲労とは無縁になるだろうが、まだ召喚されてから1ヵ月とちょい。まるで成長していないわけで、いわば赤ん坊みたいなものだ。
……いや、ならなぜ2番目に名前が出た?
かつての教官組は、それはそれで他と違うって事か。
「後は6期生の橋本浩二」
コトリと置いたその人形の背後には、更に3人の人形が置かれている。
ああ、その名は聞いたよ。
「それと一緒に同期の沼古伊佐美、大窪石綺梨、それに……児玉里莉が付いて行った」
その声は淡々としていたが、それが逆に怖い。
と言うかとっくに人生の先輩になっているのに、同級生以上には”さん”を付ける風見が敬称を付けない時点で怒りのほどが分かるというものだ。
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