土産くらい持ってくればよかったな
だけどまあいいか。折角時間が出来たんだ。今のうちにやるべきことをやっておこう。
考えるのはその結果からでも良い。
「ケーシュ、ロフレ。俺は出かけて来る。10日もかからないと思うが、まあ心配するな」
「心配するなと言われましてもですね」
「クロノス様の強さは十分に承知していますが……」
「さほど危険な事はしないよ。旧知の……うーん、まあ友人じゃないけどちょっと複雑な間柄の奴にあって来るだけだよ」
ついでに青白い怪物の本体も探すことは伏せておこう。
どちらにしても、10日程度で見つかるもんでもないだろうしな。
▽ ▲ ▽
さてそんな訳でやってきましたセーフゾーン。
今回はかなり遠く、来るまでに7日もかかってしまったよ。
距離的にも相当なものじゃないか?
このセーフゾーンは完全に剥き出しになった土の上に、大量の藁が敷き詰められている。
ここの主が集めたとは思わないので、迷宮が作り出したのだろうな。
そしてその主とは、そろそろおなじみになりつつある黒竜だ。
「やあ、またちょっと聞きたい事があってやって来たよ」
相変わらず表情筋が無いのか全く顔に変化はない。まあ竜だしな。
だが意思のある生物だ。目が全力で迷惑だと訴えている。何か手土産くらい持ってくればよかったな。
今更だが、こいつはある意味不死身だ。
以前に訪ねた時に倒したが、召喚の6期と7期の間に起きた大変動で復活している。
ただ住居は移動するので、探すのが少し面倒くさいというね。
まあ同じセーフゾーンで復活されると、それはそれで迷惑ではある。
今ある迷宮内の町も、元々こういったのがいたセーフゾーンもあるしな。
たまに戻ってくる奴もいるそうだが、中に誰かがいると外からという事になる。
その為に町にしたセーフゾーンは要塞化されているわけだな。
なんて余計な事を考えている間に、黒竜は容赦なく炎のブレスを吐き散らしていた。
当然藁に燃え広がって、一面火の海だ。それに煙も凄い。
これは流石に堪らない。全ての火と煙を外す。
「だからいきなり攻撃するのはやめろって。俺だから良いが、別の俺だったら何も出来ずに毎度のアナウンスを聞く羽目になっているぞ」
「お前の話を聞いていると頭がおかしくなりそうだ」
「分からない点は無視してくれて構わないよ。それより聞きたい事があって来たんだ」
「以前も言った通りだ。お前の知りたい連中が今どこにいるかなど知らぬ」
「いや、今回は別件だ。どうしても気になっていることがあってね」
「手短に済ませろ」
何か戦う気マンマンだなー。
そういう本能なんだろうか?
「以前にこの世界から帰った人間はいない様な事を言っていただろう? その事が気になっていてね。大昔、この世界に召喚者が現れたと聞いているんだが、その時の事が元で因縁を付けられて戦争にまで発展したんだ」
「知らぬ」
「そりゃ興味はないだろうど、知りたいのはその召喚者だ。何度も行き来していると聞いた。それに他の国にも召喚されたことがあると聞く。実際、そいつらは帰ったのか? 特に最初の召喚者は本当に帰ったのか? それとも名を引き継いだ別人か?」
「お前とそんな話をした事は無い」
そりゃそうだ。初めて会った時だしな。
あの時こいつが死にかけていなければ俺は死んでたろうな。
けれど今は別の話だ。
「その辺りの細かい事はこの際置いておこう。これまでの歴史上でも、過去何人も召喚された様な話が色々残っている。その人たちは誰も戻れなかったのか? それとも分からないってだけの話か?」
「お前たちの尺度でいう召喚者で、この世界から元の世界へと帰ったものはいない」
「ではかつて北の国でやらかした召喚者というのは?」
「それが誰を示すのかは不明だが、それとなく予想がつく。あえて言うのなら、そいつは人ではない。故に違うであろう」
意味が分からん。ロボットみたいなものか?
「人に似せて作られた別物。お前達の言葉でいえば怪物だ」
そんなもの……いや、待てよ。
「それはもしかして、ここでも俺達の世界でもない、別の世界の存在なのか?」
「そうだ。だからお前たち脆弱な人間と違い行き来も可能だった。もう良いか?」
そんな世界もあるんだな。俺たちとは別の世界の住人か……まあ怪物と言われるとあまり会いたくはないが。
でもかつて召喚があったのは事実。そして怪物は人間よりも容易く世界を越えられるのか。
「なあ、以前話した世界を滅ぼせる怪物……いや、異物か。それの最後に話した増える奴、そいつはお前のように知恵があるのか?」
「そいつに限らず、全て知恵を持つ」
県一つ飲み込む様な奴までかよ……。
だけどこれで一つ仮説が立てられる。
これはずっと疑問だった点の一つだ。
イェルクリオを襲った時、何処からあれほどの人間を集めたんだ?
考えられる事は、最初の予想より遥かに恐ろしいものだった。
今日も今日とて無事更新です。まだまだ走りますよー。
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