表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

275/685

大変動を忘れていたわけではないが

 結論の出ない事をいくら考えても仕方がない。

 ただ誰かと議論できるかといえば、結局は何も知らない者同士。最終的な問題に関して正しい答えを導き出せるかといえば謎だ。

 だけどそれでも、それは今の話だ。

 より召喚者として成長し、この世界を知って、出来れば好きになってもらって……その上で、選りすぐった人間には徐々に情報を伝えていこう。

 どっちにしたって、俺一人では何が出来るって訳でもないしな。


 今考えて見れば、それはあまりにも呑気な考えではなかったのだろうか?

 だけど後悔したところで、もうどうしようもない。

 結果だけが全てだ。





 ❖     ◆     ❖





 事の起こりは、大変動だった。


「クロノス様、そろそろ大変動が近いと予想されているであります」


「ああ、そうだな。今回はかなり間が開いたな」


「長い時は本当に何年も起きませんからね」


「そういや気になっていたんだけど、大変動ってのは世界全ての迷宮(ダンジョン)で一斉に発生するのか? それともある程度の地域内に限定されるものか?」


「当然、迷宮(ダンジョン)全てで発生するであります」


「クロノス様の世界の地震っていうのとは違いますね」


「やっぱりそうなのか」


 まあ予想はしていた。あれだけ地形が変わるのに、迷宮(ダンジョン)は何処も同じ構造だったからね。


「それにしても、もう少し正確に分かると良いんだけどな」


 召喚庁の庁舎には大変動を計測するメトロノームのような装置が置かれている。

 俺が初めてセポナに出会った時にあったような奴だが、見るからに旧式だ。

 時期が正確には測れない点は同じだが、こっちは更に精度が落ちる。現在の予想だと、今この瞬間から4か月くらいの間に発生するって予測だ。

 何というか、これが一番悪い。せめて2か月後から6か月以内とかなら退避の時間が取れるのだが。

 他国にはそんな感じで更に高性能な品があるそうだし、作成は不可能ではないんだよな。


「召喚者達はまだ迷宮(ダンジョン)だったか」


「心配ですね」


「ああ」


 とにかく、やはり召喚者を増やすしかないか。

 より良いものを作るための材料も必要だし、何よりスキルの幅が欲しい。

 もっと多くの人間が集まれば、それだけ選択肢が増えるわけだしね。

 だが実際に大変動が発生したのは、そこから僅か3日後の事だった。





 □     〇     □





「俺は急ぎ迷宮(ダンジョン)へと向かう。10日ほどで一度戻るから、その間に誰かが戻っても地上で待機させておくように」


「了解であります」


 これほど早く起こるとは予想していなかった。

 誰か巻き込まれたりしていなければいいのだけど。





 こうして、俺は久々に迷宮(ダンジョン)へと潜った。

 今の迷宮(ダンジョン)床から壁、天井に至るまで縫い針のような細く鋭い針が無数に生えている。しかも長さがまちまちだ。揃っていれば剣山の様に案外何とかなるが、これでは触れようものなら確実に大怪我だ。

 俺はスキルで見ているが、実際の光を当てればさぞかしキラキラと光っている事だろう。

 尖端恐怖症の人間なら見ただけで気絶しそうだが、そうでなくてもこの迷宮(ダンジョン)はダメだ。


 ちなみに距離を外して適当にポンと飛んだから、俺のブーツは完全に貫通して足に針が刺さっている。

 金属板が入ったスパイク付きの迷宮(ダンジョン)探索用だが、甘かったようだ。

 痛みを外していなかったら、今頃は痛みで転がって、最後は穴だらけになって死んでいるだろう。

 もう不安しかない。


 だが引き返している余裕はない。

 いない可能性のあるルートは全て外す。だがまだまだ曖昧だ。距離が遠すぎるか?

 だがそんな事を気にしてどうする。曖昧とはいえいる方向が分かる。確実に生きているんだ。

 とにかく距離を外して飛ぶ。同時に、着地地点の針を全て外す。

 だがこんな真似が出来るのは俺だけだ。頼むから、セーフゾーンに居てくれよ。





 こうして何度目かの移動をして辿り着いたのは、セーフゾーンの中だった。

 壁も床もレンガ作り……というより、無造作に積んである感じだ。結構な高低差がある。

 中には見慣れた召喚者が集まっている。まずはほっと一息だ。

 だけど……


「他の連中はどうしたんだ?」


「え、あ、ク、クロノス様?」


 最初に反応したのは風見絵里奈(かざみえりな)。あの役にも立たない魔法使いの帽子を持っていた子だ。未だに何で持っていたのかは分からないが、まあ人の趣味なんてどうでもいい。

 スキルはコピー。最初は白黒の複写くらいだが、今では少し成長してカラーコピーも可能になっている。

 この状態では、何の役にも立たないけどな。





いつも読んで頂きありがとうございます。

告知を忘れていましたが、今回から新章です。

ご意見ご感想やブクマに評価など、何でも頂けると、とても励みになります。

餌を与えてください(*´▽`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 指導者として大変な毎日を送っているのがわかります。 以前にもありましたが、当代のクロノスは、敬一が会ったクロノスとは性格が違うようにも思えます。先代はいささかイケズでした。 更新ありがとう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ