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忙しすぎて目が回る

 ラーセットに戻って仔細を報告した後、今度は南方の大国イェルクリオに行く事にした。

 今回は参加しなかった国だが、将来ラーセットが急速に発展した時には北と牽制し合ったと聞いている。

 ただ今回参加しなかっただというだけで、野心はあるわけだ。


 とはいっても、野心があるというだけの理由で暴れに行っても仕方が無い。

 それじゃただの狂犬だ。

 様子見している国まで全部敵対状態になるだろう。





「そんな訳で、イェルクリオに使者として向かいたいので会談をセッティングできないだろうか?」


「またすごい無茶を言いに来ましたね」


 ここは内務庁。場所は毎度の質素な執務室で、目の前にいるのは内務庁長官のゼルゼナ・アント・ラグだ。

 相変わらず特徴というものが無い。紺色の長髪くらいか。俺より一回り年上で、良くも悪くもそう見える。

 服装はまあこの世界らしく露出は高いが、さすがに40近くにもなればそれなりに肌色率も下がる。声も高くもなく低くもなく、大きすぎず小さすぎずで、モブという言葉がよく似合う。

 本人には言えないけどな。


 ちなみにある意味今更なので、完全に認識を外すのは控える事にした。ちょっと失礼だし、話し掛ける度に驚かれても困る。緊急時は別だけどな。

 これからは顔が隠れるフードを被り、顔と声の認識だけを外すようにしている。

 クロノスとは分かるが、俺本人とは知り合いが見ても分からない。この辺りが妥協点だろう。

 いやまあそれは置いておいて――、


 なんでも、外交は内務庁が受け持っているらしい。まあ一応は内容によって変わるらしいので、今回は軍務庁の管轄かもしれないという話だ。

 その辺りの話し合いもあるそうなので、今日の所は帰宅した。


 何せ戻ったのは出発した日。まだ2番目の召喚チームも戻ったばかりで地上で待機中。

 俺の回復もあって数日休む事になるが、とにかく今のうちに新しい召喚者を呼び出したい。

 今回は前回の5人に案内と説明を頼む予定だ。そのためにも、召喚する数は少ない方がいい。万が一の時は押さえられるようにね。

 そしてこれは、今後の為でもある。


 俺がこの世界に初めて来た時にはもう、教官組という新人の教育システムがあった。

 前回のクロノスと行動を変える必要があるが、どうしてもこれだけは必要だ……と思う。

 これが元凶ですとか言われたらどうしようもない。

 だけど、少しずつだが良くなっていると以前の(クロノス)は言っていた。

 俺にはしっかりとした口伝が用意されていないのが痛い。せめてその位……ってのは今までのクロノスがやって来たんだろうな。

 だからあえてこうしたのだろうが、情報が少なすぎて初期状態に逆戻りって気もするぞ。

 でもそれなら良くなっているとは言わない。何かあるのだと信じよう……。





 翌日、俺は神殿庁へと出向いた。

 俺には召喚は出来ないからな。それに何より、生贄の問題がある。

 実際には、いざ召喚となったら3庁それぞれで志願者を募る。

 どれほど召喚者が必要だったとしても、犯罪者などを無理やり処刑する様な事はしない。その辺りはしっかりとしている。


 だけどやっぱり慣れないな。ラーセットの人たちの命で俺達の世界の人間を召喚し、騙して死ぬまで働かせるんだ。

 何とかしたいと思うがどうにもできない。胃が痛い……この感情だけは外せない。外しても、外しても、何度でも湧き上がる。きっと忘れてはいけない気持ちなんだ。


 こうして神殿庁の執務室……というより、まるで図書館のような場所だ。

 分厚い古そうな本がずらりと並んだ本棚にギュウギュウと詰められ、職員たち――まあ司祭や見習いが忙しなく働いている。

 そういえば、召喚の間や私室には行ったけど、こうして執務室に入るのは初めてか。

 神殿なのだから他とは違う気はしたが、思ったよりも違う点は驚きだ。


「お待ちしておりました、クロノス様」


 そう言って出迎えたのは、ミーネルではなかった。

 緑の髪に混ざる白のメッシュが特に目を引く。以前、ミーネルと一緒に抱いた子だな。

 その個性的な髪は後ろで一本に束ねられ、腰の長さで切られている。その様子は緑と白が渦を巻くように混ざり合い、ちょっと不思議な感じがした。

 瞳は髪よりもわずかに濃い翠玉の瞳(エメラルドアイ)。とても神秘的だが、いつも眠そうな目をしているのでちょっと台無しだ。


 服装は少し大きめの胸を薄いチューブ状のブラで止めているが、それも脇までで後ろは紐。

 腰には斜めのパレオを付けているが、その下には水着のような衣服を着用している。

 というかこれもう水着だろ。まだ冬だぞ。

 色が白一色という所もなんか色々目に毒だ。所々に金の装飾が入っているのは、この国の宗教の特徴だろうか。ミーネルの衣装にも意匠されていたしな。


挿絵(By みてみん)


「シェマンか。ミーネルはどうしたんだ?」


「ミーネル姉さまは産休に入りました。ですのでほら――」


 そう言って、チューブトップブラの下に親指を入れ、左側をグイッと押し出してくる。

 いやまてこぼれる。ただでさえヤバいのに完全に見えてしまう――と思ったが、見るべき場所はそこではない。

 丁度内側から親指で押されて強調されている部分に、円に重ねた水晶のような金細工がされている。

 ミーネルのブラにも同じマークが確か付いていたな。

 なるほど、これが神殿庁長官の証って訳か。

 するとあれだな。この宗教の偉い人を探す時は、胸をガン見しながら探すわけか。

 極一部の人を除いてハードル高いなー。

 まあ、この世界の人には当たり前なのだろうが。





新章スタートです。

今後ともよろしくお願い致します。

餌もどんどん与えてください(*´▽`*)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大事な感情は外し切ることができない。少しほっとしました……
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