当たり前だけど物騒な会議だな
外れる可能性を全て外す。そうすれば、残るのは当たりだけ。
ダークネスさんがそう言ったって、檜室さんが言っていたな。
まあいい。目標は定まった。今はまだ昼食前。時間としては11時って辺りか。雁首揃えている様だが、食事の話ではないだろうな。
俺はそこへの移動を外し、直接飛んだ。当然、認識は外したままな。
「直ちに第二次討伐隊を出すべきだ!」
飛んだ瞬間、そこには野太い怒声が響き渡っていた。
ラーセットの会議室より大きくて立派。だがどこかお役所の会議室的なイメージがあるのは殺風景な調度品のせいだろうか。
大理石のような素材の長くて大きなテーブルは立派だが、椅子は肘掛も無い粗末な品だ。
もっとこう、ゆったりしたソファとかは使わないものだろうか。
壁も床も天井も石造り。カーテンは綿の生成り。
さすがにかなり冷え込んでいるので、奥の暖炉には真っ赤な炎が燃えている。
ただそれだけで説明がつかないほど温かい。何かのアイテムだろうが、騒いでいる男の熱気という可能性も少しはありそうだ。それ程までに、暑苦しい。
「今攻めないでどうする! 奴らも今なら来ないと油断しているはずだ! それに一度撃退して侮っている。我らにとってはささいな部隊であったが、あの小国にとっては十分な大軍であった。今もまだ、次も勝てると夢でも見ている頃だろう。目を覚ましてやろうではないか、我らの全軍を持ってな!」
騒いでいるのは軍服姿の大男。190センチはあろうかという巨漢だが、腹もまた凄まじい。まるで相撲取りの様だ。更に胸まで伸ばした灰色の髭に灰色の長髪が特徴だが、それを器用に合わせて編みこんでいる。オシャレか? それとも伝統的な意味合いがあるのだろうか。
まあ何処も3庁制と言うから、こいつが軍務庁のトップなのだろう。
左右には同じような軍服を着た人間が並ぶ。
それに続くように声を張り上げたのは、数本の毛が粗末なパイナップルの葉の様に広がった髪型をした男だ。あえて剥げているとは言わない。実際まだあるのだから。
歳は軍務庁の長官らしき男と同じくらい……多分50歳前後だろう。
軍務庁の男に比べると身長は170センチ程か。高校生の頃の俺と同じくらいかな。
体形は恰幅が良いというよりデブだな。ぽこんと突き出た腹の様子から、運動不足が手に取るようにわかる。
ラーセットとはまるで雰囲気が違うが――というか、こいつがミーネルと同じ格好していたら本能で殴っていた。
いやそれは余談だったな。とにかく他と違い、ローブの上から肩、胸、背中までを覆う一体型の翡翠のような色合いの装飾品を付けている。
見た事のない模様が付いているが、雰囲気からこいつが神殿庁のトップに間違いない。
というか、この国のトップは男なんだな。
召喚されたのがラーセットで良かった。
こいつの左右にも、似ているが少し質素な衣装の男が控えている。この国でどう呼ぶか分からないが、まあ司教あたりか。
「我ら神殿庁も賛成ですぞ。かつて現れた召喚者は、神を冒涜し、あろうことか迷宮の主どもを解き放った。まさに悪魔の所業。暴虐の化身。召喚者など、この世に存在してはいけないのです。周辺国家の信者たちも皆賛成しています。我等神の戦士隊だけでも100万は直ぐに集まりましょう。確かに雪中での行軍は厳しいものがありますが、信仰の力があれば何も問題はありません!」
……まあこういう事を言っている奴に限って自分は行かないんだろうと思う。
「現実問題として考えれば、雪の間は大型怪物の動きは制限されますし、小型や中型怪物も斥候が発見しやすくなります。ただその分、輸送は困難となりますし、食料の現地調達も難しくなります。その辺りは一長一短ではありますが」
そう言ったのは、高齢の男女を左右に控えさせている男。
歳は30歳程度と俺と変わりはなさそうだが、真っ白な見事な髭が印象に残る。肌も病的なほどに白く、服まで白いのでまるで蝋人形だ。髪もまた白いが、豹のような模様がうっすらと浮かんでいる。将軍もそうだったし、やはり人種的なものか。
体格も普通。特に鍛えている様子は見えないし、服も質素なものだ。こいつが内務庁のトップだろう。
いやまあ、ただの消去法だけどね。
それにしても、どうしてくれようか。
元々はここで大暴れする予定だったが、せっかくなので少し聞いてからにしよう。
連中の内情も分かるしな。
とまあそんな訳で話を聞いていたのだが、どうにもやる気マンマンだ。
前回の失敗で懲りた様子が欠片も無い。
内容を聞いている限り、前回は連中にとって斥候程度。本番はこれからという事らしい。
ただその斥候程度でもラーセットは降伏すると考えていたが、俺という存在は相当に誤算だったようだ。
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