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貴方は誰なの

 かなり急ぎだったが――というよりもいつになく瑞樹(みずき)が張り切ったからだが、瑞樹(みずき)やひたち、セポナらの女性陣は無事クロノス一行に合流した。

 ここまでの案内は、かつて瑞樹(みずき)と同じチームであった須田亜美(すだあみ)岸根百合(きしねゆり)が担当した。

 木谷(きたに)の配慮によるものだ。


「おねえちゃん!」


 到着を聞いた奈々(なな)は、嬉々として天幕付きの馬車から出て瑞樹(みずき)に抱きついた。

 初見のセポナは、実際に聞いた通り、二人がそっくりな事に驚いた。

 まあ似た姉妹はいるが、同時に何か違う。同じなのに、100パーセント完璧に見分ける自信がある。それ程に強い違和感があった。


瑞樹(みずき)久しぶり、元気してた?」


「フランソワ教官、お久しぶりです」


「隊列は止められないから、話すなら歩きながらにするように」


 出会って早々に叱られたが、逆に変わっていなくて安心した。

 小柄だが、強く厳しい。だけど面倒見のいい教官だと知っている。

 というより、教官は多かれ少なかれ、みな面倒見が良い……ただし、戦闘以外ではだが。


「了解です」


 こうして、ぞろぞろと隊列に加わって話しながら進むことになった。

 周囲にいるのは他には全身紫色のミイラのような一ツ橋健哉(ひとつばしけんや)教官。

 荒木(あらき)教官と三浦(みうら)教官、それに案内してくれた須田(すだ)岸根(きしね)の姿もない。

 教官も召喚者もそれぞれの任務があって動いているのだろうが、思ったよりも警備が緩い。

 だけどそれも、龍平(りゅうへい)が大勢殺したのだと考えると、瑞樹(みずき)は胸が締め付けられる思いだった。





 ひたちは警備の状況から、奈々(なな)を連れ出すことは不可能だと見ていた。

 事が終わって敬一(けいいち)が合流してからなら可能かもしれないが、見ただけで教官組が二人。それに馬車の中にもう一人気配がある。情報にあった栗森剛(くりもりごう)だろう。

 これに奈々(なな)が抵抗したら、もうどうしようもない。

 まだ神罰のスキルを見たことは無いが、ここまで作戦の要になっているのだ。迂闊な事をすれば、それだけで全滅させられる可能性がある。


 それに、最大の懸念は他に気配がない事だ。認識阻害があるにせよ、クロノスの気配を感じない。

 完全に消している? だがそんな事をする意味は?

 ひたちとしては、嫌な予感しかしなかった。





 他愛のない姉妹の話。そんな会話をしながら、瑞樹(みずき)はセポナとはまた全く違った違和感の中にあった。

 自分がロンダピアザを離れた事や、その理由を奈々(なな)は知っているはず――というよりも、知っていて当然だと思っていた。

 今は栗森(くりもり)先輩と付き合っている事は知っているが、それでも姉がかつての恋人と一緒に暮らしている事が気にならないのだろうか?


「ねえ奈々(なな)敬一(けいいち)君はハスマタンで戦っているのよね。無事だといいけど……心配にならない?」


「あの男の事? どうでも良いじゃない。ハスマタンは私のスキルで一掃するの。そうクロノス様がお命じになって、(ごう)様も賛成しているの。それだけで十分よ」


 いつもと変わらない奈々(なな)の声、しぐさ、表情。

 だけど違う。奈々(なな)敬一(けいいち)君の事をこうも簡単に無視できるものなのだろうか?


「ねえ、どうして指輪を小指にはめているの?」


「気分よ。どうして? 意味なんて無いでしょ?」


 ――ここでスキルを使う事は、敵対行為になるかもしれない。


 それが危険な賭けだとは、自分でも分かっている。

 でも確かめずにはいられない。


 ――広域探査(エリアサーチ)――奈々(なな)


 ……周辺に、奈々(なな)はいなかった。

 恐怖で体が震える。唇は紫色になっているだろう。

 だけど、こう言うしかなかった。他に言葉は選べなかった。


「ねえ……貴方は誰なの?」


「私は私だよ、変なの。それじゃあ子供の頃の話をしよっか。お姉ちゃんが、初めて友達を家に連れてきた日の事? それとも10歳の誕生日に、河原で犬に追いかけられた時の話なんかはどお?」


 いつもと変わらない奈々(なな)。こちらに来る前の事も知っている奈々(なな)

 敬一けいいち君も広域探査(エリアサーチ)で探知できなかった。なら奈々(なな)もそうなの? 本当にそれだけ?


「じゃあ、奈々(なな)敬一(けいいち)君と正式に交際するっていった日の事は?」


「んー、あれは気の迷いっていうか、自然の成り行きというか。だって私達だけの世界で生きていたじゃない。だから他の事なんて知らなかったの。でも今は違う。本当の愛を見つけたの。これって、凄く素敵な事なのよ」


「そ、そうね……」


 瑞樹(みずき)は確信した。この妹の姿をした何かは、絶対に妹ではないと。





いつもありがとうございます。

この章も、いよいよ残り2話。

そしてそこで一つの大区切りとなります。お楽しみにです。

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― 新着の感想 ―
敬一「肉体もスキルもこの目に映る情報はお前を水城奈々だと言っている (回想)だが俺の魂がそれを否定してんだよ、さっさと答えろオマエは誰だ!!」 ???「キッショ(スーー)何で分るんだよ(パカッ)」
[一言] 人間やめてる奴は何人もいたけど まさか本人をやめてるとはなぁ… 誰なんだお前は!?
[一言] 面白い!
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