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この都市はもうダメなんだろうな

 日が昇り、破壊された首都ハスマタンの全容が見えてくる。

 敬一(けいいち)は壁を登った時の様に、咲江(さきえ)ちゃんを背負って高層ビルの屋上まで登っていた。

 高度は約4200メートル。敬一(けいいち)のスキルは肉体強化ではないが、それでもある程度の地上の動きは把握できる。そして町の破壊され具合も。


咲江(さきえ)ちゃんは少し休んでいてくれ」


「うん、ごめん」


 召喚者――それも咲江(さきえ)ちゃんくらい強化されていれば数日の徹夜など問題無い。だがスキルを行使しながらでは話が違う。しばらく休ませないと、早々に倒れてしまいそうだ。


 敵はやはり川のように幾筋もの流れを作りながら、あちこちに分散して襲撃を行っている。

 とはいえ、外とは違い中では結構ばらけている。群れからはぐれた奴が、ただ生き物を見つけては殺して回っている感じだ。

 このビルを登っている時に、ちいさな女の子と目があった。どう見ても民間人だ。ここに立て籠もっているのだろう。

 確かに、地上の建物よりは守りやすそうだが、2つの意味で長くはもたない。一つは怪物(モンスター)の襲撃から守り切れない。もう一つは、時間を置けばここが神罰で消滅するという事だ。


 ――やはり本体を見つけないといけないな。


 だけど分からない。何か法則性でもあればいいのだけど、何の情報もないのが痛い。

 他の都市へのトンネルに集中しているのは確かだ。本能なのか、あの先に人間が沢山いる事を知っているのかも分からない。

 だけどもしあそこに本体がいるのなら、分かりそうなものなんだよね。

 やはりどこかで命令しているのだろうか? だとしたら結構お手上げだぞ。この広い都市に無数の怪物(モンスター)、片っ端から倒そうにも、外からどんどん流れ込んでくる。


「そろそろ大丈夫、行こう」


「いや、まだ考えが纏まっていないんだ。咲江(さきえ)ちゃんはもう少し休んでいてくれ。いざ動き出したら、またしばらく休めないからね」


「うん……分かった」


 そう言うと、すぐに外套を纏って眠りに入る。プロの戦士の様だ。俺も負けてはいられないな。

 こういう時の為に、俺のスキルはあるような気がする。

 とにかく無駄を外す。必要なのは本体のみ。初心に帰れ、俺。

 あそこの群れはどうだろう? あっちは? そこは? 何処もピンと来ない。何処も行くだけ無駄なんだ。

 そうして都市全体を見渡していると、足がムズムズする。何処かは分からないけど、行きたい場所――いや、行くべき場所がある。

 全体を見渡しても分からないが、心のままに進むしかない。


「すぐで悪いけど、出発するよ」


「問題無いよ。分かったんだね」


「まだ確信は無いよ。だけど、行くべき道を体が理解したんだ」


「ならそこが正解だよ。他の誰が信じなくても、あたしは敬一(けいいち)を信じている。――なんて言葉はずるいね。みんな信じているよ。敬一(けいいち)なら、どんな不可能だって可能にするって。」


 そういって、ごく自然に背中に回る。


「今度は大人しくしていてくれよ」


「一度落ちればもう慣れたよ」


「では、行くか」


 そう言って、俺は咲江(さきえ)ちゃんを背負ってビルから飛び降りた。

 大丈夫と言ったが、目をつぶって全力でしがみ付いてくる。可愛いなぁ。

 等と油断していたら、着地位置をミスって民家の屋根を突き破った。痛い。


「随分荒っぽかったけど、大丈夫?」


「大丈夫だ、問題無い」


 余計な事を考えていましたとは言えないな。

 とにかく今は進むだけだ。だけど他人の運転だと指示をしきれない。というか、道の状況などスキルが配慮してくれるかどうか――しないな、うん。


「街を突っ切る事になるから車は無しだ。このままおんぶしていく」


 顔を真っ赤にして絶句しているのが分かる。だけどまあ、この可愛さが俺の力になる。心の中で俺は変態だなと自覚しながら、俺は道なき道を進み始めた。


 スキルが導く目的地は、彼らが守る別の町へのトンネルじゃない。それどころか、連中が集まっている場所でもない。

 だけど、この都市の中だ。もしかしたら、最初に予想した事が当たっていたのかもしれない。

 本体は賢く用心深い。そして何らかの手段で指示を出し、自分は集団からは離れている。

 だとしたら、それはそれでチャンスだ。





いつもお読みいただきありがとうございます。

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これからも頑張りますので、今後もまたよろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  主人公たちが何とかしなければ、確実に街が破壊され人々が消滅する…… 「決戦!怪獣対マット」「マットアロー1号発進命令」「ポケットの中の戦争」「シン・ゴジラ」…… 私の大好物のシチュエーシ…
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