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何も知らない事はそれだけで怖い

 行きと違い、帰りは鎧付き。それにベルトと鞘、それに剣も貰って来た。

 そして実は、ついでに竜の肉も3キロくらい持っている。近くに落ちていた死体のローブを拝借して風呂敷にしたのだ。


 降りるのと違い、登るのは意外と簡単だった。

 それに下からはこの入り口は完全に死角だ。誰が来たって解るまい。

 まるで犯罪者のようだと自嘲じちょうしながら鍾乳洞へと戻り切った所で、遂にお腹が決壊した。





 そこから(しばら)くは地獄の日々だった。

 頭痛と眩暈(めまい)に襲われ、数日の間は動けなかった。

 だけど幸いここには水は幾らでもある。それに竜の肉も少しだけ熟成したのだろうか……いや、ただの腐敗かもしれないが、それでもある程度は噛み切れるようになってきた。

 それに体も慣れて来たのだろう。今ではすっかり食べても問題は無い。

 むしろ力が湧いてくるようだ。と言っても、それは満腹になったからってだけだな。

 ご都合主義的な物語のように、竜の力を手にしました。パラッパーみたいな感じはしない。


 だけどこれで支度は整った。とにかく迷宮を出よう。

 どう説明するかとかはその場で考えるしかない。もしかしたら、最悪の結果が待っているかもしれない。

 だからと言って、ここに居てどうする。こんな鍾乳洞で一生を過ごすなんて絶対に無理だ。

 それに早く奈々(なな)に会いたい。瑞樹(みずき)先輩にも。ついでに龍平(りゅうへい)もだな。

 いよいよ穴倉から出る時だ。





 盆地には、もう骨も残ってはいなかった。


「派手に食われたものだな」


 素直な感想だった。

 迷宮の生き物達は、よほど飢えているのだろう。

 まあどこかの巣穴に運んだという仮説も立つが、そんな場所があっても見なかった事にするだろうから同じである。


 だがそれよりもおかしさに気付く。


「どういう事だ……」


 周りを見渡し、光っている岩の下なんかも覗き込んでみる。だが無い。あるべきはずの物が何処にも無い。


「武器や鎧は何処へ行った?」


 あれは金属製だ。芋虫や大トカゲ、さらに小型の掃除屋まで集まっていても、武器などの金属は手付かずだった。

 だが今は消えている。

 人間の部隊が来て回収していった……ああ、これが一番自然な流れだ。


 遅れて金属を食べる生き物が来て食べていった。いや、案外あの時点でそういったバクテリアがいたのかもしれない……俺にとって一番幸いなのはこれだ。

 仮にいたとしても、実際ここまで彼らは金属の武器や防具を使っていたんだ。注意していれば問題ないレベルだろう。


 もっとも面倒なのが、人間の武器や防具を使う知恵はあるが、意思も言葉も通じない連中がいた場合。

 オーク、ゴブリン、リザードマンといった、いわゆる亜人(デミヒューマン)

 それも、消えた装備の量を考えれば少数ではない。大軍だ。

 話し合いが通じるとは思えない。そして質の悪い事に、ここはそんな彼らのテリトリーである可能性が高い。

 今後は待ち伏せや罠にまで注意を払わないといけないって事か。


 そんな事を考えて苦笑する。今までが、無防備すぎただけだ。

 ここは”こんな下層”だと勇者は言った。

 上に行くほど敵は弱い……そんなのは本当のゲームの中だけだ。

 実際には食物連鎖で――あ、いやいや。それは人間の強さを考えないと分からないな。今は忘れよう。

 だけど軍勢を率いてやってきたって事は、ここから上は比較的手薄になっているのではないだろうか?


 いやでも、そうすると他の召喚者は……そもそも、この迷宮ってどれだけ広いんだ?

 答えの無い問いが、頭の中でぐるぐると回る。

 もういつもの事だ。ここに来て、毎日これの繰り返し。

 完全に時間の無駄だ。俺は無駄な考えは無視して、素直に上への道を探すことにした。





予定通り本日2回目の更新です。

これまた予定通り土日はお休みしますが、ポイントがグーンと増えたら頑張ります(*´▽`*)

次回より新章突入。お楽しみにです。

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