表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

205/685

炸裂

 頭の頂点から胸までを大斧で裂かれ、ダークネスの動きが止まる。


「それは溝内信二(みぞうちしんじ)が愛用していた斧か」


 そういった木谷(きたに)の右肩と脇、そして左足には2本、黒い投げナイフがスーツを貫き刺さっている。

 何時放ったのか、誰の目にも映らなかった。


「そしてこのナイフは斯波裕乃(しばゆの)が愛用していたものだ。先ほどの曲刀(シミター)蔵屋敷里香(くらやしきりか)の物だったな。おおかた、持ち運びは伏沼至(ふしぬまいたる)が隠し持っていた小箱を使っているのだろう。死体から奪うとは、随分と落ちたものだ」


 出血はある。刺さったままなので薬の効果も半減だ。そもそもこの程度で強力な薬を使う訳にはいかない。

 痛みをこらえながらも、木谷(きたに)は淡々と分析する。もちろん挑発も忘れない。


「召喚者を殺して奪う。アンタらがずっと容認してきた事だ! 今更何を」


「ならば、奪った者はすぐに帰還した事も知っているだろう? さて、まだ色々な武器を奪ってきたはずだ。それで自らの心臓を突き刺して元の世界へ帰りたまえ」


「世迷いごとを。そうやって騙すだけ騙し、奪うだけ奪い、そのくせ何もしなかった。敬一(けいいち)を殺そうと思えばいつでも出来たはずだ! 瑞樹(みずき)たちがどんな目にあっているか、お前たちは知っていたはずだ! なのになぜ止めなかった! 守れたはずだ! 禁止できたはずだ」


敬一(けいいち)の処分に関しては確かに返す言葉も無いか。制限はされていたとはいえ、機会はあった。だが例の女に関してはどうでも良い事だな。守りたければ自分で守れば良かっただけの話だ。君に知識も力も無かった。ただそれだけの話だろう。それとも、今更になって他力本願かね? 呆れるばかりだ。手を出さなかったのはそう決まっていたからだよ。召喚者のルールは教えたはずだがね」


「ああ、確かに言っていたな。なら、全ての元凶のクロノスって奴を俺が必ず殺してやるよ。その前に、貴様をこいつで串刺しだがな」


 そう言ってポケットから取り出したのは、2メートルはあるかという長槍だ。

 さすがに長すぎて、今回は一瞬だが出す場所が見えた。あそこに入れている訳か。なら――、

 作戦は幾つか思いついた。だが、先に動いたのはダークネスであった。


 片腕だけで、龍平(りゅうへい)にしがみ付く。

 だが攻撃手段はない。その姿に、龍平(りゅうへい)の動きが止まる。

 何かを警戒した訳でも、無駄だと知りながら戦う姿に感銘した訳でもない。ただの侮蔑。死にぞこないの最後の抵抗に、心底呆れたのだ。


玉子(たまこ)!」


 だがその男が叫ぶ。同時に、世界は紅蓮の炎に包まれた。

 爆発は世界を照らし、爆風は土煙を上げ、周囲の木々や岩までも薙ぎ払いながら広がった。

 当然、爆心地近くにいた木谷(きたに)もまた、黒焦げになりながら吹き飛んでいた。

 さすがに1回分では無理だ。手持ちの薬全てを使い、かろうじて生きている。

 だが熱風に包まれた爆炎の中では焼け石に水でしかない。その耳元で、ダークネスの声がした。


「我の仲間が貴様にスキルを使う。同意するか?」


「同意しよう。他に何も出来ぬよ」


 同時に、木谷(きたに)の姿は消え、村の案山子(かかし)が残された――が、爆風の中で一瞬にして燃え尽き、灰となって消えた。

 かつてダークネスとひたちの位置を入れ替えたスキル。僅かでも抵抗されたらまるで意味のないスキルだが、こういう時は便利だ。

 こうして木谷(きたに)は、村へと飛んだ。





 一方、その爆発の中心部に、龍平(りゅうへい)は立っていた。

 金城(かねしろ)が持っていた、致命傷すら一瞬で治療する薬。さすがは最高級品だ。

 だが、龍平(りゅうへい)の頭は沸騰しそうな程に怒り狂っていた。

 あんな木偶の坊に出し抜かれた。おそらく、あの体の中にはフランソワ教官が研究を重ねた火薬が満載されていたのだろう。正確には火薬ではなく、あれもまたアイテムではあるが。

 だが腹に穴を開けた時も、頭を裂いた時も、中身は空っぽだった。

 抱きついた瞬間、物体移動(アイテムテレポーター)で中に詰めたのだ。

 二人だけだと思って油断した。実際には作戦を立て、何人もの召喚者が監視をしながら虎視眈々と機会を狙っていたのだ。


 だが――全ては無駄だったな。


「フフフ……ハハハハハハ! 俺は強い! 今の俺なら敬一(けいいち)も、教官共も、クロノスとやらや他の3人の最古の連中も、全員倒すことが出来る。そうだ、全て破壊してやる。こんな国のゴミのようなシステム、その全てをだ。召喚者も全員殺す! 邪魔する者も全員倒す! 俺は無敵だ! もう誰にも負けないんだ!」


「さてそれはどうかな……」


 それは微かな声だったが、強化された龍平(りゅうへい)の耳にはハッキリと届いていた。





毎度々、感謝です。

ご意見ご感想やブクマに評価など、何でも頂けるとピョンピョンします。

餌を与えてください(*´▽`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >「花子!」 田中玉子さん、作者さんにも事情があるんですよ、知らんけど。
[良い点]  激闘が続きます。  龍平の壊れっぷりは、おぞましいけど、哀れさも感じます。  誰か止めてあげてくれ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ