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あいつは一体何を考えているんだ

 甚内(じんない)という教官が死んだ。人格者で、かなり慕われていたらしい。

 相談ごとにも乗っていたそうなので、多分頭も良かったのだろう。

 今のシステムについて、是非色々と聞いてみたかったが――、


「それで、まさか俺達にその報告をしに来たわけじゃないんだろう?」


 重要なのはそっちだ。

 まさか意味もなく教官組がこんな所に来たりはしない。

 大体、あまりにも自然に現れたから体が反応しなかったが、本来なら出会って即戦闘となる様な関係だぞ。


「報告に来たのは事実だ。それなりに、君らとも関わりのある男だったのでな」


 そう言ってサングラスをくいっと上げる。

 だからやめろそれ。攻撃の合図かと思ってやるたびに体が反応してしまう。


「だがそれよりも、問題があってな。甚内(じんない)を殺したのは西山龍平(にしやまりゅうへい)だ」


 ペタン――と先輩が崩れ落ちた気配を感じた。

 何かを言おうとしている様だが、声が出ない様だ。龍平(りゅうへい)と先輩との関係は知っているだろうに、本当にデリカシーの無い奴だよこいつは。


「君の目を見れば言いたい事はわかるがな。それどころでは無いのだよ」


「悪いが、今回はそちらに関わるつもりはない。何かさせようって話なら、事前に断らせてもらうぞ」


 まあ関わるつもりは無いってのは半分嘘だけどな。全部が終わったら、どさくさ紛れに奈々(なな)を奪還するつもりだし。


西山龍平(にしやまりゅうへい)は我々が出払った後、ロンダピアザの商人や有力者を多数殺害。その屋敷に火を放った。それだけではない、召喚者の宿舎にもな」


 先輩がガチガチと震えているのが分かる。

 もうこれ以上は――、


「そして甚内(じんない)の他にも、かつてのチームメンバーである安藤秀夫(あんどうひでお)中内要(なかうちななめ)神田川久美(かんだがわひさみ)他9人の召喚者を殺害した」


 先輩が、完全に硬直したのが背中越しに分かる。

 これ以上はダメだ。

 まだ何か言おうとする木谷(きたに)を制止すると、


「分かった分かった。話はあっちで聞く。それで良いだろう?」


「実際に用件があるのは君だけだ。だが他の者も完全に無縁とも言えないがね」


「とにかく俺が話を聞く」


 そういって、俺は木谷と共に茂みへと入った。

 まあ二人っきりじゃなく、雅臣(まさおみ)さんや咲江(さきえ)ちゃん。それに菱沼(ひしぬま)さんや鷲津(わしず)さんも来ている。まあ仕方がない。

 ひたちさんとセポナは、何も言わなくても先輩についていてくれた。ありがたい事だ。





「それで、話ってのは何だ?」


「単刀直入に言おう。彼は何らかの形で君たちの位置を把握しているようだ。まあ多少の迷走はあるので、確実に正確かといえば違うようだがな」


「いやちょっと待て、要約すると……」


「ここに向かっている。目標が君なのか、それとも水城瑞樹(みなしろみずき)なのかわからないがね」


「それを早く言え!」


 どちらが目標なのか? それは俺にも判断が出来ない。俺への復讐なのか、それとも先輩を取り戻しに来たのか。そもそもどうやって俺達の位置を判別しているのかさえ分かれば、少しは予測も立てられるのだが。


「困っているようだね。困っているのだろう? んん?」


 嬉しそうだな木谷(コイツ)。まだサングラスを壊して放置したことを根に持っているのか。


「だが真面目な話、困っているのはこちらも同じだ。甚内(じんない)はもちろん、他にも召喚者を12人も殺された。これが意味する事を、今更解らないとは言うまい」


「新たに召喚をするって事か」


「そうだ。これはもう確定事項なのだよ。君の研究ごっこも、これまでという事になる」


 ごっこ遊びのつもりなんかじゃない! と言いたいところだが、実際に何の成果も出せなかった事は事実だ。それにしても、全部筒抜けって感じだな。

 迷宮(ダンジョン)で出会ったアルバトロスさんとの会話を思い出す。

 正直あれだけの事を言った手前、本当にどんな顔をして会えば良いのやら……。


「だがそれよりも先に片付けねばならない問題がある。西山龍平(にしやまりゅうへい)の事だ」


 まあ、確かに今はそうだ。

 正直に言えば、あいつが今やっている事がまるで解らない。

 何らかの手段でこちらに向かっている事は分かる。だけど、なぜそんなにも沢山の召喚者を殺した?

 そうしたら再召喚が必要になって、俺が時計を取り返されるからか? 嫌がらせ?

 いやいや、そういった面倒な手段を取る奴じゃない。

 大体、時期が悪い。今優先しているのはイェルクリオって国の問題で、召喚の話はその後だろう。





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― 新着の感想 ―
[良い点]  瑞樹先輩の様子からすると、龍平の意図に気づいたのでしょうか?  先輩に対する想いを拗らせて、その命まで狙うほどに狂っている龍平。  彼を止めてやるのも敬一の務めなんだろう。  寄生生物と…
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