その頃3人は
西山龍平の宿舎から、6人の召喚者が外に出た。
「全員の顔も名前も知らないけど、全部で6人じゃないっけ? あれ全員で出ちゃったんじゃ?」
「そのようですね。敬一様のターゲットである水城瑞樹様も確かにおられました」
「ひたちさんは全員把握しているんだっけ? アンタ達の組織も侮れないね」
「まあ組織と言いましても、表面上は敵対ではなく別行動しているだけとなっていますので。仲間の何人かはしょっちゅうロンダピアザで行動しているのです」
「結構いい加減だよね、召喚者の扱いって」
「まあ優遇されているといいましょうか……色々とあって、今の形になったようです。ただ詳しい経緯は――」
「要は特権だらけなのですよ、召喚者というものは。私の様な一般人からしたら羨ましいですよ」
美和咲江、南条ひたち、そしてセポナ・カム・ラソスの3人は、出て行った彼らの様子をアイテムで確認すると、丸くなって話し合っていた。
場所は公園の一つ。目的の場所からはまだ5キロメートル以上離れている。
さすがに視認できる距離で話し合ってなどいたら、一発で龍平に聞かれてアウトだ。
そこで、こうして遠くから作戦会議をしていた。
今までの情報から考えて、地上での活動では西山龍平他数名の少数で動き、残りは待機していると聞いていた。
ただ一例、成瀬敬一が現れた時だけは全員で行動したという。
内容が内容だっただけに当然ではあったし、今回もその可能性は高いとは考えられていたが――、
「どうする? さすがに5人……いや、本人が抵抗したら6人か。それだけを相手にしながらターゲットを攫うのは無理だよ」
「そもそも西山龍平の戦闘力が桁違いですからね。彼一人を相手にするだけでも大変です」
「他はええと、広域探査に明暗反転に……って考えても意味は無いね。下手に頭に入れておくと、逆に失敗するか」
「確かに咲江様のスキルもそうでございましたね」
「でもどうするんです? このままだと手は出せませんし、今の敬一さんが前と同じような行為に及ぶとも思えないのですが」
確かに、以前の件に関しては相当に反省していた。
またも高層ビルを破壊して大量殺戮を行う事は考え難い。
となれば、絶対に阿鼻叫喚の大騒ぎとならないし、当然それだけ隙も生まれないわけで。
「とにかく分散するのを待ちましょう。希望的な観測ですが、全員で敬一様と戦う事は考えられないと思います。特に瑞樹様は双方にとって大切なお方。一度敗れている西山様が、敬一様との戦いに連れ出すとは思えません」
「アイツにとって大切な人間で、西山は負けているんだろ? それだけに人質にするって可能性は?」
「無いでしょう。むしろそうしてくれた方が、敬一様にとっては簡単だと思います」
「何とも難しいね。だけどいつまでもここにいても仕方がない。いつでも動けるように、あたしらも追うとしよう」
□ ◆ □
龍平としては、瑞樹は絶対に置いて行きたかった。
前回は押し切られた形になってしまったし、それ以前に敬一相手に負ける事は無いと思っていた。だが、今はそうはいかない。
もう帰ることは出来ない。倒せば死ぬ。そのこと自体に微塵の躊躇もない。
ただそれだけに、いざという時に瑞樹が邪魔をする可能性が高い。
もし俺と奴、どちらを選ぶかの選択を迫ったら……答えはもう、決まりきっている。
いざトドメとなった時に奴を庇ったら?
もしくは俺が倒されそうになった時に、彼女が静観していたら……どちらも、精神的に耐えられそうにない。
瑞樹が夢見るのは、奴と奈々、それに自分の3人で作る優しくて暖かな世界。そこに俺の居場所はない。元々無かったのだ。
では諦めるのか? そんなみじめな選択をする人生など歩んでは来なかった。
奴が邪魔なのなら、奴を殺せばいい。ここはそれが許される世界なのだから。
だが『もし連れて行かないなら、一人でも行く』と言われてしまったらこうせざるを得ない。
一応、同じ杉駒東の須田亜美と岸根百合にお守を頼んである。いざとなったら2人に無理やりにでも連れ帰ってもらおう。
それ以前に、周辺に幾人もの召喚者の気配を感じる。今は多くの者が迷宮に潜っているが、まだ数人が――いや、違う。これは教官組だ!
彼等もいよいよ本気になったという事か。
自分で始末をつけた方が安心だ。この目で最期を見られるのだから。だが結果が同じなら、それでもいい。
確実なのは、これで敬一の命運も尽きたという事だ。
いつもお読みいただき感謝です。
ご意見ご感想やブクマに評価など、何でも頂けると凄く頑張ります。
餌を与えてください(*´▽`*)






