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相変わらず強情なやつだなー

 奥に行くには金属の頑丈な扉があった。その辺りはしっかりしているな。

 だけど、こういったのはむしろ俺の得意分野だ。何の苦労も無く、ノブに触れただけで鍵を外して中に入る。


 その先にあったのはガラス張りの壁。横には金庫のような分厚い扉があるが、当然閉まっている。

 ガラスには丸く幾つもの穴があり、まるで刑務所の面会所だな。行った事は無いけれど。

 部屋の中はそこそこ整っており、普通の部屋のようにも見える。だがトイレなども全部丸見え。プライベートは欠片も無い。まあ囚人なのだからそうだろう。

 そんな部屋に、見知った顔があった。まあ当然か。いなかったら慌てて帰っているところだ。


 向こうもこちらに気が付いたのだろう。だがその時の表情を何と表現したらいいのだろう。嫌悪、怒り……だけど何処か憎めない空気を醸してる。

 だけど一番大きいのは不快だな。見るからに嫌そうな顔をすると――、


「何しに来たのですか。文句ですか? それとも拷問でもしますか? 残念ながら、何をされてもスキルの制御アイテムは渡しませんけどね」


 吐き捨てるようにそう言った。まあそうだろうな。


「それとも復讐? 殺しに来たの? 凌辱したいの? まあ貴方なら入るのも容易でしょう。何でもお好きに」


 言われてみれば、彼女は少し厚めのガウンの様な衣装だけ。バスローブに近いが紐などの類は無い。当然下着も無いだろう。自殺に使えそうなものは無いって訳だ。

 確かにやろうと思えばそんな事も出来るだろう。一発ぶん殴ってやりたいと思っていたのも事実だ。

 だけど気になったのはそこじゃない。


「その様子だと、俺がスキルでこの扉の鍵を外せるって知っているって訳だ。スキルなしのハズレとはよくもぬけぬけと言い切ったものだ。最初から分かっていたな」


「さあどうでしょうね」


 いかにもなすっとぼけ。本気で殴ってやりたい。

 だけどここは心を落ち着けよう。

 というより、この時点で予定と違う。本当はもっと厳重で、彼女も大騒ぎをして、その上で俺が逃げる。迷宮(ダンジョン)に向かってな。

 その間にひたちさんが瑞樹(みずき)先輩を何とか誘い出す計画だった。彼女の顔を咲江(さきえ)ちゃんは知らなかった。そうなれば、龍平(りゅへい)の仲間にも知られていないだろう。


 そして外に出て、素直に付いて来てくれるならそれも良し。ダメなら咲江(さきえ)ちゃんが気絶させて攫う。

 我ながら乱暴な手段だが、それが一番確実だろう。

 まあ龍平(りゅうへい)がいたら計画は頓挫だが、俺が騒ぎを起こしても来ないとは思わない。

 なのに、何でこいつはこんなに落ち着いているのやら……。


「まあ少し話せるのならそれもいいさ。なぜ俺にスキルを制御するアイテムを渡さなかったんだ?」


「スキルなしのハズレだからですよ」


 ……やはり拷問するか。


 俺が召喚された日を覚えていたから渡さなかった――その可能性は無い。

 あの日、一緒に穴に落ちたサッカー部の先輩にはスキルがあり、当然制御するアイテムも貰っていた。

 あの時、俺だけが例外としてもらえなかったんだ。そして誰もが俺がスキルなしだと思い込んだ。おかげで変な意味で有名人だ。


「正直言って、俺のスキルは結構便利だと思うんだよ。それにそちらが変な工作さえしなければ、ここまで問題がこじれる事も、あんな惨劇を引き起こす事もなかった。責任転嫁とは言わないが、お前がきちんとスキルを説明して制御アイテムさえ渡していれば、ここまで問題は大きくならなかったんだ。分かっているのか? 元をただせば、あの殺戮(さつりく)はお前のつまらない意地悪が原因なんだぞ」


「何と言われようが、貴方に制御アイテムを渡さなかった事に後悔はありません。復讐をしたいのならお好きに。どうせ死刑になる身ですしね」


 完全に開き直りやがったなー。


「ならこういうのはどうだ? お前をここから逃がしてやる。もちろん大神官様とやらの贅沢な暮らしは出来ないが、まあ生きていれば色々出来るさ。そこまで自暴自棄になっているのなら、試してみるのも良いんじゃないか? 当然、タダじゃないがな。最低限、アイテムを渡さなかった理由だけ話してもらうぞ」


 悪くはない提案だと思う。彼女だって死にたくは無いだろう。それに手元に置いてしまえばこっちのものだ。聞き出す手段は色々とあるだろう。

 だが――、


「ふふふ、面白い事を言いますね。わたしくは死刑になる事など恐れてはいませんわ。ここで惨めに逃げて晩節を汚すより、素直に、堂々と死を選びます。貴方の様に何の誇りもない人間とは違うのですよ」


 俺の提案は、あっさりと却下された。





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― 新着の感想 ―
よし、拷問だ!!
[良い点]  ヨルエナ・スー・アディン…… 思い出した。召喚をした張本人。スキル判定時に、敬一から胸を揉まれた女性神官。  まだ死刑執行前だったのか…… まさか仲間に?
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