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鍾乳洞の先で見たものは

 目の前にあるのは3人の白骨死体。

 変わり果てた姿だが、状況は同じだから疑いようが無い。

 ただ違うのは、虫共がいなくなっている事か。

 骨も多少なくなっている所を見ると、骨を食うやつもいたのかもしれない。

 もしくは芋虫よりも立場が低い死体あさり(スカベンジャー)の類か。


 だけど、途中で芋虫の群れや、明らかに肉食の生物は見当たらなかった。

 良い事なのか悪い事なのか……とりあえず、見落としがある事だけは分かったよ。


 3人を埋葬しようにも、地面は固く道具も無い。

 せめて骨を集め、それぞれ一欠けらだけポケットに入れた。いつかどこかで、きちんと埋葬してあげよう。


 ついでに細かく確認するが、あいつらは繊維も食べるのだろう。制服やスーツも僅かな痕跡程度の破片しか落ちてはいなかった。

 そしてあの時ちらりと確認した様に、普段見ない物――そう、スキルを使うための道具が見当たらない。

 もしあったら……スキル次第では助かったかもしれないのにな。飛翔とか言うスキルを持っていた先輩なんて特にそうだ。

 でもまあ、意識を失っていたら同じか。

 そんな事を考えながら、俺はしぶしぶ2周目を開始するのだった。





 〇     △     □





 前回よりも注意深く、慎重に周辺を確認する。

 以前は濡れるのが嫌で入らなかったが、鍾乳洞には水溜りが各所にある。

 もちろん酸素ボンベなんて無いのだし、水は恐ろしく冷たい。空洞があっても泳いで潜る勇気はないが、道を塞いでいる川程度の場所は泳いで渡った。

 ……火が欲しい。凍えて死ぬ。


 そういえば腹も減ってきたが、このまま食料も無く放浪したらどうなるのだろうか?

 最後には死ぬ?

 そう考えると、あのスキルがやはり気になってしょうがない。

 死を回避するスキルか? 一見すると便利そうだが、あれは落下中だからあれで良かった。

 だがもしこの水の中で死んだら? 目が覚めたら再び水の中。冷たくて体も動かないだろう。襲い来る再びの死。

 永遠にスキルが発動し続けるのだろうか……それは地獄だな。


 そもそも本当にそういったスキルなのかは分からない。マジで不便だ。

 スキルがあるなら、発動アイテムとかはどうして出なかったんだ?

 考えるほど腹が立つ。連中の不備じゃないか。

 更にはそれでスキルがハズレだからお帰り下さいときたもんだ。もう笑いすら起きない。


 だが怒りは(わず)かだが空腹を和らげる。

 改めて考えてみると、よくあれほどの間休まず歩き続けたと感心するほどの時間、俺は鍾乳洞を歩き続けた。

 そしてあの場所に立って、あの光景を見てしまったんだ。





 ◎     〇     ◎





 そこは崖の上と言って良いだろう。

 鍾乳洞の、ギリギリ立てるような穴を抜けた先。そこは広い場所でも3メートル程度の幅しかない細い場所だった。

 そしてその下に広がる盆地の様な広間。


 見た所、広い。それに鍾乳洞とはまた違った光る石――いや、サイズ的に岩だな。

 そんなものがゴロゴロと転がっていて、明るいとは言わないが比較的はっきりと見渡せる。


 そこにいたのは例の芋虫達。群がっているのはやはり人間の死骸だろうか。だけど数が違う。おそらく30か40、いや、もっといるかもしれない。

 更には、巨大なトカゲのような動物の群れが、芋虫ごと死体を食べている。

 大きさは3メートル程か。芋虫を恐れた俺が、あんなモノと戦えるわけがない。


 伏せて様子を見ると、食べられているのは全部死体。生きている人間はいない様だった。

 洞窟の中って事もあるのだろうが、噛み砕かれる鎧と骨の音がここまで響いて来る。

 地面に散らばる武器は剣や槍、斧といった原始的なものだ。


 だけど俺達の世界の知識があるのなら、銃があってもおかしくはない。

 それっぽいものは見えないが、見つからないだけだろうか?

 出来れば原始的な武器よりも、近代的な武器が欲しいのは自明の理。

 とはいえ、火縄銃レベルだったらいらないかな。使い方も良く分からないし、暴発も怖すぎる。


 しかし不謹慎だが、人間の死体が食われているのに、その様子を見ていると腹が減る。

 いや、見なくても減っていたんだけどね。

 こっちの世界に来てから、何も食べていない。それに休息だってまだだ。

 でもだからといって、ここはマズいだろう。だけど一度止まってしまったからか、体は鉛のように動かない。

 また奈々(なな)の作ってくれた弁当が食べたい……そう思いながら俺の意識は闇へと沈んでいった。





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― 新着の感想 ―
[一言] 「また奈々ななの作ってくれた弁当が食べたい」 沢山の死体に群がっている虫を見て、食欲が出るって、普通の人とは呼べないね。
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