表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

144/685

やっぱり召喚者同士で戦う日が来たか

 茂み――とはいえ、この辺りは巨木も多い。

 それに腰まである草が邪魔で、動くのはなかなかにしんどい。

 しかも相変わらず矢も飛んで来る。形状と角度からしてボウガンか。咲江(さきえ)ちゃんが撃たれた時もそうだったが、やっぱり飛び道具が多い。

 まあ勝つか負けるか分からない近接格闘よりも確実だしな。だけど――、


 視界から邪魔な茂みを外す。そうすれば、隠れている連中は丸見えだ。

 確かに飛び道具は強力だ。だけどこんな所で使うにはあまりにも不向き。

 狙うのもそうだが、敵味方の識別もしなくちゃいけない。そんな訳で距離はせいぜい10メートル程。俺のスキルにとっては0距離と変わらない。


 相手が驚く前に、ボウガンに新たな矢をつがえていた男の首が飛んだ。

 殺さなくても良かったのだろうか? 心のどこかでもそんな事を考える。

 だけどそれは、いつも全てが終わってからだ。今の俺の心には虚無感しかない。後悔も罪悪感も同胞意識も、全て外してあるからだ。


 周りを囲んでいる連中が何か叫んでいる。だけど言葉は通じない。

 剣の切っ先を向けて突っ込んで来る男。槍を構える女。その後ろで弓に矢をつがえようとしてとしているのも女か。意外と女性も戦場に来るんだな。

 そんな事を考えながらも、俺は三人とも葬っていた。


「すごいね……でもやっぱり、戦う時は雰囲気が違うね」


「そうだな。俺のスキルは話したと思うけど――」


「うん、聞いたけど。やっぱり実際に見ると凄いよ」


 その凄いとは、どっちの意味なのか。すごく強いのか、それともすごく人でなしなのか……。

 彼女と肌を合わせた時、俺もまた彼女に自分のスキルを話した。元々隠す予定もなかったし。

 ただ予想はしていたが、半分も理解していなかったと思う。大体説明した俺が理解していないのだから当然と言える。

 一応、便利だけど万能じゃないのと味方を巻き込まない事――それに、


 両手に半月刀を持った少女が木の上から飛び降りて襲い掛かってくる。いや、過去形だな。

 美しく輝く二本の剣が背後から俺の背中を一直線に斬り裂いた。

 だけど言うまでもない。本体をこんな簡単に斬らせるものか。

 外してあった偽物の体は消え、本物の体はくるりと振り向むくと、そのまま攻撃者の胴を切り裂いた。


 それは、身長150センチ程度。迷彩が施された全身ローブに身を包んだ少女だった。鮮やかなブルーの髪で片目を隠しているが、驚愕に見開かれたその紺の瞳が俺の胸を刺す。

 小柄で可愛らしい子だった。もしこんな状況で出会わなければ、何をされたって手を上げたりなんてするものか。

 だけど今はちょっとの後悔で済む。余計な心は外しているからな。


 とはいっても、完全に殺人ロボットの様にはなれない。これは俺のスキルがまだ未熟なのか、それとも最後の一線を外せないのか……まあその点はどちらでも良いだろう。

 だけどおもいっきり引かれているよな。自分でも分かる。本当なら、もっと躊躇するものだ。

 この戦いが終わったら、いきなり別れ話を切り出されるかもしれない。そんな先の事を考えていた俺達の目の前で、いきなり火球が炸裂した。

 まさに大爆発と言って良い。巨大に膨らんだ真っ赤な炎は轟音を響かせながら炸裂し、周囲の木や草を薙ぎ払った。


 木谷(きたに)と戦った時にハッキリと気が付いたが、俺の本体が受けた上で外すと相手にダメージが返る……と言えば聞こえはいいが、あれって俺もモロに食らっているんだよね。先に死んだらそれでアウトだ。まあそう簡単には死なない事は、頭を鎖で貫かれて時に分かってはいる。でも奈々(なな)の攻撃をそのまま受けたら確実に退場だろう。

 その境界線が分からない以上、無理は出来ない。


 とはいっても、じゃあスキル攻撃自体を外す事が出来るかといえば出来なかったりする。結構不便。

 でも今回は幸いだ。爆発させるまでがスキルで、爆風自体は自然現象だったからな。これなら外すのはさほど難しくはない。

 炸裂する前に一瞬見えた小さな火種。あれの直撃を喰らわなければ何とかなるだろう。

 問題は――、


 周囲が吹き飛んで少し視界が開けた俺達の前に、2人の男が現れた。

 正しくは粛清部隊とかいう現地人の兵士も結構いるが、こいつらはどうでも良い。

 いや何を持っているのか分からない以上無視は出来ないが、


「あれで死なない程度の(アイテム)は持っているって訳か、スキルなしが」


「久しぶりだな、美和(みわ)。男と組んでるなんて珍しいじゃねえか。ようやくお堅いお前も股を開いたってわけか」


 どう見ても敵意剥き出しの召喚者の方が問題だよな。





いつもありがとうございます。今日も無事更新できました。

ご意見ご感想やブクマに評価など、何でも頂けると凄く頑張ります。

餌を与えてください(*´▽`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ここで「スキル?あるよ」というと逃げてしまいそうなふたりではある。なんか格下以外手を出せない感じに思えたんで。
[良い点]  かわいい女の子をためらいなく惨殺する人でなしの所業。ハズすスキルで冷静さを保っているけど、心のどこかは自己嫌悪で叫び声を上げているようにも見える。  そうまでしてでも取り戻したいものが、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ